バロック音楽の楽器について | Homeへ | |||
バロック時代の楽器 ルネサンスからバロック時代の16〜18世紀には,多くの楽器が発明され,さまざまな工夫や改良が重ねられました。しかし,18世紀の後半になると,近代市民社会の成立・進展とともに,音楽をめぐる環境(たとえば演奏する場所,その広さ,音響特性など)や人々の好みが大きく変わったため,それらの楽器のうち、あるものは全く使われなくなり,生き残った楽器もその後の数十年間に大幅な変革を余儀なくされました。 そこで,変化して今日の形になったものを「現代(モダン)楽器」と呼び,変化する前,変化途上の形のものや廃れてしまった楽器を,それらの複製(レプリカ,コピー)も含めて,「古楽器」と呼んで区別しています。 一方,「古楽器」とほぼ同義で使われることの多い「オリジナル楽器」または「ピリオド(時代)楽器」という言葉は,本来は「その作品が作曲された当時に使われていた楽器」という意味です。 なお,17世紀イタリアの名匠ストラディヴァリ,グァルネリらによるヴァイオリンやチェロは歴史的名器として有名ですが,これらの大部分もやはり19世紀に改造されて現在演奏されているので,そのような楽器は「古楽器」とか「バロック・ヴァイオリン」とは言わないわけです。 現代の楽器との違い バロック時代の楽器と現代楽器で同じ名前が付いていれば,基本的な構造と発音原理は同じですが,形や材質,音を出すための仕組みなどに,多くの違いがあります。 たとえば,18世紀までの木管楽器はどれも文字どおり木製の管で,楽器に開けられた孔の数は両手の指の数を大きく超えることはなく,キーも数個です。ヴァイオリンなどの弦楽器は,外形はほとんど変わっていませんが,18世紀までは胴体の補強材が少なく,弦の張力が弱いなど,細かく見るといろいろな違いがあります。また,弓の形も現代のものとは異なります。 18世紀後半以降の楽器とそれに見合った奏法の変化は,一般に音量の増大と音域の拡大,全音域にわたる音色の均質化,そして力強く輝かしい音をもたらすとともに,より高度な技巧を可能にしました。そして,このような変化のしにくかったリコーダー,ヴィオラ・ダ・ガンバ,チェンバロなどは,使われなくなってしまったのです。 バロック音楽は「歌う」というよりも「語る」音楽だと,よくいわれます。磨き抜かれた張りのある美音で長い旋律を朗々と歌い上げるのではなく,フレーズ(ひとまとまりの音の連続)を短くとって抑揚をはっきりつけ,一つの音の内でも微妙に表情を変化させながら,親密に語りかけるように演奏するのが理想とされました。このような表現のスタイルは,まさに当時の楽器とその特性を生かした奏法によって生み出されたのです。
|
リコーダー
バロックヴィオラ コントラバス、 |