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山手西洋館コンサートシリーズ
チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバで開く
〜 迷宮の扉 〜
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第24回コンサート
2011年12月18日(日) 午後2時開演
横浜イギリス館(横浜市指定文化財)
主催:アンサンブル山手バロッコ
アンサンブル山手バロッコ ホームページ:http://www.geocities.co.jp/yamatebarocco
出演:
野口詩歩梨 (チェンバロ):
桐朋学園大学音楽学部古楽器科(チェンバロ専攻)卒業。同大学研究科修了。ピアノを伊原道代、雨田信子、チェンバロを故・鍋島元子、アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。さらにクイケン兄弟、モルテンセン氏などのレッスンを受ける。これまでにM.ラリュー、F.アーヨ、中野哲也、本間正史など数々の音楽家や室内オーケストラと共演。“音の輝きをもとめて”と題したリサイタルシリーズ(2000〜2004年)やアンサンブル“ブラヴォー!バロック”のコンサートでは、チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。2011年1月 ワオンレコードより初のソロCD「バロックの華」をリリース(「レコード芸術」誌・準特選盤)。現在は東京、横浜を中心にソリスト、通奏低音奏者として幅広く活動している。
西谷尚己 (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
桐朋学園大学卒業。同大学研究科修了。翌年よりオランダに留学し、デン・ハーグ王立音楽院を、ソリスト・ディプロマを得て卒業。ヴィオラ・ダ・ガンバを宇田川貞夫、中野哲也、ヴィーラント・クイケンの各氏に師事。ネーデルランド・ダンスシアターのプロジェクトに出演するなど、オランダ各地でソリスト、通奏低音奏者として演奏活動を行う。2000年に帰国後は、日本やヨーロッパの各地で数多くのコンサートや録音に参加するなど、幅広い演奏活動を繰り広げている。桐朋学園大学嘱託演奏員。
チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバで開く
〜 迷宮の扉 〜
プログラム
クリスマスのイギリス館にようこそ。雰囲気のあるサロンで、チェンバロ奏者の野口詩歩梨さんとヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の西谷尚己さんによるコンサートをお楽しみください。チェンバロもヴィオラ・ダ・ガンバもバロック時代に隆盛を極め、王侯貴族に愛されましたが、その後 忘れ去られ20世紀の古楽の復興と共に復活した楽器です。チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバ、その楽器や演奏法においても、残された音楽においても、隠された様々な約束事や奥義があり、一度足を踏み入れると深い世界へと引き込まれます。お二人と一緒に「迷宮の扉」を開け、優雅な調べを当時の雰囲気を味わいながら楽しみましょう。
J.S.バッハ : フランス組曲
第2番 ハ短調 BWV813
アルマンド / クーラント /サラバンド /エア /メヌエット /ジグ
J.S.Bach (1685-1750) : Farnzosiche Suite 2 c-moll BWV813
Allemande / Courante / Sarabande /Air / Menuet / Gigue
J.S.バッハ : ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ
二長調 BWV1028
アダージョ / アレグロ / アンダンテ / アレグロ
J.S.Bach:Sonate : Sonata fur Viola da Gamba und Cembalo
D-dur BWV1028
Adagio / Allegro / Andante / Allegro
♪♪♪♪♪
J.デュフリ : シャコンヌ (クラヴサン曲集 第3巻より)
J.Duphly (1715-1789) : Chaconne (Troisieme livre de
pieces de clavecin)
J.N.P.ロワイエ : 威厳にみちた女 :クーラント
ザイード :ロンド ― 愛情をもって (クラヴサン曲集,1746より)
J.N.P.Royer (1705-1755) : La Majestuese:
Courante
La Zaide :Rondeau - Tendrement (Pieces declavecin,1746)
M.マレ : 迷宮 (ヴィオール曲集第4巻より)
M.Maris (1656-1728): Le Labyrinthe (Pieces de viole de quatrième Livre)
♪♪♪♪♪
アンコールは ダングルベール:シャンボニエール氏のトンボー および ラモのクラヴサン合奏曲 第3番 イ長調から「タンブーラン」でした(フラウト・トラヴェルソ:曽禰寛純)。ありがとうございました。
プログラム・ノート
バッハは、ドイツの作曲家。現在では、バロック音楽で最高の作曲家として、また「音楽の父」と呼ばれるように、西洋音楽の原点となる偉大な作曲家として知られていますが、当時は、パイプオルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器の名手として、その名がヨーロッパ中に知れ渡っていました。バッハは子弟の教育にも力を注ぎ、長男の音楽教育のために「ウィルヘルム・フリーデマンのための音楽帳」を作り、様々な曲を記入し音楽レッスンを進めました、フランス組曲 第2番は、1722年ごろこの音楽帳に記入されたものです。組曲とはルイ王朝の華やかなフランスが起源の形式で、さまざま舞曲を組合せた曲です。欧州全土に流行し数多くの曲が作られました。ゆっくりと整然としたアルマンド、軽快に走るようなクーラント、荘重なサラバンド、そして躍動感のあるジグの4つの舞曲が定番として並べられ、それにいくつかの流行の舞曲(第2番ではエアとメヌエット)を追加するのが当時のお決まりでした。
バッハは当時、徐々にチェロにその座を取って代わられつつあったヴィオラ・ダ・ガンバのために3曲のソナタを残しています。3曲とも、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの右手が2つの上声部を、チェンバロの左手がバス声部を演奏する形式になっています。演奏する第2番のソナタは、誰のために、どのような機会に作曲されたかは良くわかっていませんが、ヴィオラ・ダ・ガンバらしい重音奏法がある、チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバと別々のソロ部分を持っている、低音の第7弦目を追加した円熟期の楽器を想定しているなど、この楽器の成熟した演奏法を強く意識した構成になっています。
デュフリもロワイエも、フランスバロックの最後の時代を代表する作曲家で、チェンバロのための名曲を残しています。先輩の大クープランのチェンバロ独自の語法を受け継ぎながら、来るべき次の時代を予感させる斬新さも織り交ぜた曲作りになっています。シャコンヌは4巻残されているチェンバロ組曲の 第3巻におさめられており、フランスで好まれた同じ形の低音の上に様々な変奏が展開する舞曲のスタイルを使っています。ロワイエ鍵盤音楽と劇音楽のふたつの分野で活躍し、ルイ15世の宮廷で王の子たちにチェンバロを教えパリの劇場では、音楽悲劇やオペラ・バレの上演を行っていました。クラヴサン曲集15曲のうちの5曲は彼自身の劇作品からチェンバロ用に編曲されたもので、ザイ―ドもその中のひとつで、元はオーケストラにソロが加わる編成の作品でした。
最後に演奏するマレも、フランスの作曲家です。パリに生まれ、幼少時から音楽の才を現し、23歳の若さで宮廷ヴィオラ・ダ・ガンバ(フランス語でヴィオール)奏者として太陽王ルイ14世に仕えました。この楽器の演奏技法を完成させたマレは、「天使のごとくヴィオールを奏する」と讃えられました。演奏する迷宮は、ヴィオール曲集(組曲集)第4巻におさめられた標題つきの曲です。標題の通り様々な方向に変幻自在に展開し、迷宮の世界に引き込みます。
栄華を極めたフランス貴族の社会と貴族に愛されたバロック音楽もデュフリの亡くなった翌日に起こったフランス革命を機に崩壊し、新たな時代に移り変わることになります。
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
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