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横濱・西洋館de古楽2019

洋館で楽しむバロック音楽 第87

Trios for Two

〜リコーダーとチェンバロによるバッハ室内楽〜

Trios for Two / Chamber Music with Recorder & Cembalo by J.S.Bach

 

201933日(日)14時開演 横浜市イギリス館

1400 3rd March, 2019 at British House Yokohama

 

主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会

協力:アンサンブル山手バロッコ

 

出演:

根岸 基夫(リコーダー)

東京生れ。慶應義塾大学卒。12歳で飯室謙に、その後大竹尚之にリコーダーを師事。室内楽を大竹尚之、及川眞理子に師事。またW.v.ハウヴェ、H.M.リンデ、C.シュタインマン、W.クイケン、T.コープマンらの指導を受ける。在学中より室内楽を中心に演奏活動を開始。1990年、第4回古楽コンクール(現国際古楽コンクール〈山梨〉)最高位(1位なし2)入賞、リコーダーでの初の受賞者として注目される。

 1998年、東京オペラシティリサイタルホールにおいて自身の編曲によるオール・バッハ・プログラムでのリサイタルを開催、高く評価される。全国各地での演奏活動の他、教育活動も行なう。

 2018ALM RECORDSよりCD『リコーダーとチェンバロによる J.S.バッハ 6つのソナタ BWV525-530』をリリース、音楽現代誌にて推薦盤に選出されるなど好評を得ている。

 

鈴木 理賀(チェンバロ)

 

17歳よりチェンバロを始める。東京音楽大学チェンバロ科を実技優秀賞を得て卒業。同大学研究科1年修了。チェンバロを渡邊順生、及川眞理子、室内楽・バロック奏法を大竹尚之の各氏に師事。トン・コープマン、ユゲット・ドレフュス両氏に指導を受ける。現在はソリスト、室内楽奏者として活躍している。

特にバッハ演奏には定評があり、フォンテックよりリリースしたCDJ.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』はNHK「ラジオ深夜便」で特集されたほか、『J.S.バッハ:イタリア協奏曲・フランス風序曲』も高評を得ている。

 

 

朝岡 聡(ご案内)

横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年からフリー。TV・ラジオ・CMの他、コンサートソムリエとしてクラシック演奏会の司会や企画にもフィールドを広げている。特に古楽とオペラでは親しみやすく本質をとらえた語り口が好評を博している。リコーダーを大竹尚之氏に師事。著書に「笛の楽園」(東京書籍)「いくぞ!オペラな街」(小学館)など。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手地区西洋館でのコンサートを継続している。「横濱・西洋館de古楽」実行委員長。


 

 

Trios for Two

〜リコーダーとチェンバロによるバッハ室内楽〜

Trios for Two / Chamber Music with Recorder & Cembalo by J.S.Bach

 

プ ロ グ ラ ム

ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ

Johann Sebastian Bach (1685-1750)

フルートとチェンバロのためのソナタ イ長調BWV1032

Sonata for Flute and Harpsichord in A major BWV1032

Vivace* - Largo e dolce - Allegro

(*Alfred Dürrによる補筆版)

 

ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021

Sonata for Violin and Basso continuo in G major BWV1021

Adagio - Vivace - Largo - Presto

 

フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013

Partita for Flute in A minor BWV1013

Allemande - Corrente - Sarabande - Bourrée anglaise

 

♪♪♪休憩♪♪♪

 

リュートまたはチェンバロのためのプレリュード、フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV998

Prelude, Fugue and Allegro for Lute or Harpsichord in E-flat major BWV 998

Prelude - Fuga - Allegro

 

オルガンのためのソナタ 第4番 イ短調(原調:ホ短調)BWV528

Sonata for Organ No.4 in A minor (Original Key:E minor) BWV528

Adagio/Vivace - Andante - Un poco Allegro

 

オルガンのためのソナタ 第6番 ハ長調(原調:ト長調)BWV530

Sonata for Organ No.6 in C major (Original Key:G major) BWV530

Vivace - Lento - Allegro

 

 

プログラム・ノート

 (根岸基夫)

Trios for Two

 本日の演奏者は2名ですが、曲目の内BWV1032528530の3曲は三重奏、つまりトリオになっています。二人で三重奏(Trios for Two)とはこれ如何に?

 

 通常、リコーダーに限らずヴァイオリン、フルートもしくはオーボエと言った旋律楽器で独奏ソナタ等をチェンバロと演奏する場合、大抵は上声部と通奏低音声部の二重奏となっています(本日のプログラムでもBWV1021はこの形態です)。演奏者2名で二重奏なら何の不思議も有りませんよね? ちなみに通奏低音は数字付低音とも言われ、鍵盤楽器で演奏する場合は左手で低音旋律を、さらに右手は数字等で譜面に示された和音その他を即興的に加えながら演奏しました。ですからチェンバロ奏者の右手も遊んでいる訳では有りません。

 一方、バロック時代を通して最も愛好された室内楽は、当時はしばしば単に「トリオ」と称された2つの旋律楽器と通奏低音による3声部のソナタ、今日で言うところのトリオソナタでした。演奏には最低でも3名、通奏低音声部を複数種の楽器で重ねる場合には三重奏とは言うものの4名以上必要となる事も有りました。

 J.S.バッハは室内楽の分野でも数々の名曲をのこしましたが、上記編成での伝統的なトリオ(仮にトリオの「第1形態」とします)にはあまり熱心ではなかったようで、現在真作と認められている曲数はたったの2曲(BWV1039BWV1079のソナタ)だけです。一方、この分野における創作活動の中心となったのが「2人で演奏するトリオ」でした。チェンバロの左手は以前と変わらず低音旋律を担当しますが、右手は通奏低音における即興的な和音充填を止めて上声部の一方を演奏する事により、もう一方の上声部を受け持つ旋律楽器1つを加えて三重奏となるのです。チェンバロが一人二役をこなしていると見ることもできるでしょう。フルート(とチェンバロ)用2曲、ヴァイオリン用6曲、ヴィオラ・ダ・ガンバ用3曲の計11曲が知られています。バッハ自身が鍵盤楽器の名手であった事がこれらの創作意欲に繋がったと見て間違いの無いところでしょう。

 

 2人で演奏するトリオを第2形態の三重奏とするならば、バッハはさらに第3の形態、つまり「1人で演奏するトリオ」として6曲の「オルガンのためのソナタBWV525-530」を作曲しました。2つの上声部を右手と左手、さらに低音声部を足鍵盤(ペダル)が担当する事により、ある意味究極の「省エネ・トリオ」を実現させたのです。

 

表1. トリオ演奏における3つの形態

第1声部

第2声部

通奏低音声部

演奏者数

第1形態

旋律楽器@

旋律楽器A

鍵盤楽器  and/or            低音楽器

最低3名

第2形態

旋律楽器

チェンバロ右手

チェンバロ左手

2名

第3形態

オルガン右手

オルガン左手

オルガン足鍵盤

1名

 

興味深いのは、しばしば同じ曲を他の形態へ編曲・転用するケースが見られる事です。例えば、「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1027」は「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1039」からの「移植」(第1形態→第2形態)である事が知られていますし、さらに同曲の第4楽章には同時代人によるオルガン独奏への編曲版(第2形態→第3形態)が存在します。少し時代は下りますが、かのモーツァルトが「オルガンのためのソナタ」から3つの楽章を弦楽三重奏に編曲(KV404a)しており、第3形態→第1形態への例と見る事もできるでしょう。本日演奏する曲の内、オルガンのためのソナタ2曲(BWV528530)は第3形態→第2形態への編曲を試みたものです。

 

《バッハとリコーダー》

 17世紀後半、リコーダーはフルートやオーボエ等他の木管楽器と時を同じくして大きな変容を見せます。装飾性を増した外観の変化に加えて、音域は高音方向へ拡大され、音色も倍音を多く含んだより輝かしいものとなっていきました。バロック音楽後期とされる18世紀前半にはヴィヴァルディ、ヘンデル、テレマンをはじめとする数多くの作曲家がこの楽器のために作品をのこしています。

 バッハもリコーダーを用いた一人です。有名なブランデンブルク協奏曲第2番と第4番、教会カンタータを中心とした声楽曲等、合わせて30近い作品でリコーダーを登場させており、その的確な用法や要求される演奏技術の高さからは、バッハがこの楽器をしっかりと理解していた事がうかがえます。ところが、実に、誠に残念な事に、楽器が主役となる室内楽や器楽の分野ではリコーダーを使用した曲が1曲ものこされていません。従って、本日の曲目はすべてが元々は他の楽器のために書かれた曲からの転用となっているのですが、実は当時においても他楽器からのレパートリー借用はしばしば行われていた事でした。さらには、本日の演奏曲においても他楽器からの編曲(BWV528第1楽章)または編曲の可能性が指摘(BWV10131032)されているケースが見られ、楽器編成についてはそれほど厳密ではなかったとも考えられるのです。原曲とは違った響きが新たな曲の魅力を引き出す事につながれば、と願っております。

 

 

 

 

アンコール

 

たくさんの温かい拍手をありがとうございました。

バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第3番 イ長調より第四楽章をお聴きください。

朝岡聡のリコーダーも加わり、バッハ 狩のカンタータ BWV208より アリア 「羊は穏やかに草を食み」をお聴きください。

 

 

 

 

 

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