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木島千夏ソプラノコンサート Vol.19
ひとときの音楽
〜美しの島からバロックの精華へ〜
Music for a while, “Fairest Isle” to High Baroque
洋館で楽しむバロック音楽 第132回
2023年9月23日(土)14時開演 横浜市イギリス館(横浜市中区山手町115−3)
14:00 23rd September, 2023 at British House
Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコ
出演:
木島 千夏(ソプラノ)
©星合隆広
国立音大在学中に古楽に出会い、卒業後バロックのオペラを初め様々なコンサート活動を経て、ロンドンに留学。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。 W.Christie指揮のオぺラ公演やリュートのNigel Northとデュオ・リサイタルをはじめ、ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会に出演。 帰国後は、バロックを中心に、グレゴリオ聖歌から現代曲まで幅広いレパートリーに取り組み演奏活動を行っている。2004年より毎年横浜山手西洋館でリサイタルを行っている。2013年には横浜市開港記念館で横浜音祭り「パーセルのオペラ」に主演し好評を博す。アンサンブル・レニブス、アンサンブルDD、helice feliceメンバー。聖グレゴリオの家教会音楽科講師。
坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。
上野学園中学校、国立音楽大学非常勤講師。
野口 詩歩梨(チェンバロ)
©篠原栄治
桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業、同大学研究科修了。チェンバロを鍋島元子に師事。これまでに国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。ソロCD「バロックの華」/ワオンレコード(「レコード芸術」誌・準特選盤) 、「古楽団あおば」メンバー。
ひとときの音楽
〜美しの島からバロックの精華へ〜
Music for a while, “Fairest Isle” to High Baroque
プ ロ グ ラ ム
横浜市イギリス館は、1937年に英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。広々としたテラスで芝生の庭につながっているイギリス館の素晴らしい客間の雰囲気の中で、歌手と2人の器楽演奏家のアンサンブルの響きをお楽しみいただきます。はじめに、美しの島イギリスの隠れた名曲を味わい、後半にはバッハをはじめとする盛期バロックの曲をお聴きいただけるバラエティに富んだ「ひとときの音楽」をご一緒に味わいましょう。
♪ ♪ ♪
H. パーセル Henry Purcell (1659-1695)
ルシンダはうっとりするほど美しい “Lucinda is bewitching fair”
イギリス・バロックを代表する2人の作曲家、ジョン・ブロウ(John Blow)とヘンリー・パーセル(Henry Purcell)。ブロウが10歳年上ですが、二人とも王室礼拝堂の聖歌隊員を経験し、またちょうど20歳の時にウェストミンスター・カテドラルのオルガニストに就任しています。年少のパーセル の方が36歳という若さで先に亡くなってしまい、ブロウが追悼の音楽を作っています。
前半は、そんな2人が作曲した恋の歌の数々をお聴きいただきますが、そこにはシンシア、ルシンダ、シーリア、フィランダー、ストレフォンと言った恋人たちの名前が登場します。それらは豊かな自然と田園風景広がる理想郷アルカディアで繰り広げられる、羊飼いの若者と娘たちの恋の物語パストラルに登場する人物の名前です。短い歌曲だけでは彼らがどんな性格なのか詳しいことはわかりませんが、想像を膨らませて聴いていただけたらと思います。
H. パーセル Henry Purcell (1659-1695)
リッチモンドの丘の上 “On the brow of Richmond hill”
シーリアはとっても魅力的 “Celia has a thousand charmes”
最も美しい島 “Fairest Isle”
彼女は愛し、語る “She loves and she confesses too”
ニューグラウンド ホ短調 A New
Ground in E-minor
パーセルのニューグラウンドのグラウンドとは反復されるバス旋律の意味で、イタリアではバッソ・オスティナートとも言われています。一定に繰り返されるバス進行の上で自由な旋律が展開していくグラウンド。当時イギリスで好まれていたこの手法をパーセルも多くの曲に用いています。淡々と時を刻む様なフレーズから浮かび上がる美しい旋律が魅力の小品をお楽しみ下さい。
J. ブロウ John Blow (1649-1708)
もう愛してると言わないで “Tell me no more, you love”
アナクレオンの詩による "Translation out of Anacron"
C. シンプソン Christopher Simpson (1605頃-1669)
プレリュード ホ短調、グラウンド上のディヴィジョン ト長調 「ディヴィジョン・ヴァイオル」より
Prelude in e & Division upon the Ground in G from “The Division-Viol”
クリストファー・シンプソン(Christopher Simpson)は、清教徒革命の時は王党派として戦い、後にリンカンシャー州スケンプトンの領主ボルズ卿に仕えました。ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のために書かれた「ディヴィジョン・ヴァイオル」(第一版1559、第二版1665)の著者として有名です。若きパーセルもこの本を勉強しました。「楽器本体と演奏方法」「協和音の用法もしくはディスカント大要」「グラウンドによるディヴィジョンの手順」の3部からなる他、音楽と天体との関係についての記述も興味深い著書ですが、曲の例として載せられた作品がどれもとても魅力的です。本日はその中から、プレリュードとグラウンド上のディヴィジョンを組んで演奏します。
H. パーセル Henry Purcell
プレイフォードに寄せる追悼歌 "An Elegy
on the death of Mr.John Playford ”
ジ1686年にロンドンの出版業者であったジョン・プレイフォード(John Playford:1623-1686)がこの世を去り、彼のために桂冠詩人ネイハム・テイト(Nahum Tate)が詩を書き、パーセルが音楽を作りました。プレイフォードは様々な楽器やダンスのための楽譜や理論書、詩篇と賛美歌集、歌集などを出版し、パーセルとも親しかったと言われています。後を継いだヘンリー・プレイフォードのもとでパーセル もブロウも歌曲集を出版しています。詩の中で故人はセロンという牧人の名前で呼ばれ、前述の牧歌の世界で親しみを込めて偲ばれています。
C. F. アーベル
Carl Friedrich Abel (1723-1787)
「ドレクセル写本」より アダージオ ニ短調、テンポ・ディ・メヌエット
ニ長調
Adagio in d-minor A1:30 & Tempo di Menuet in D-major A1:31 from “The
Drexel Manuscript”
アーベル(Carl Friedrich Abel)はガンバ奏者の家系で、父親はJ. S. バッハのケーテン時代の親友でした。父アーベルが亡くなると、バッハは親身になって息子アーベルの面倒をみました。ガンバ奏者として開花したアーベルは、1758年にロンドンに渡り、当時すでに時代遅れになっていたこの楽器の新たな魅力を聴衆に伝え、大変な人気者となりました。本日とりあげた「ドレクセル写本」は、アーベルが自分のために書き留めたものです。見難いところも多々ありますが、当時人気だったアーベルの生演奏を彷彿とさせる内容です。本日は、抒情的なアダージオと可愛らしいメヌエットを演奏します。この写本は、アーベル亡き後、親友で画家のT. ゲインズバラが保管していましたが、19世紀にJ. W. ドレクセルが入手し、現在はニューヨーク公共図書館に所蔵されています。
J.S.バッハ Johan Sebastian Bach (1685-1750)
フランス組曲 第3番 ロ短調 BWV814
Französische Suite Nr.3 h-moll
BWV814
Allemande / Courante /
Sarabande / Anglaise / Menuett-trio / Gigue
フランス組曲はバッハ(Johann Sebastian Bach)がケーテンで過ごした1722年から1723年頃に作曲されたと考えられています。この曲名はバッハ自身が付けたものではなく、誰が名付けたかは分かっていません。
先妻マリーア・バルバラを亡くし1721年に2度目の結婚をしたバッハが、妻アンナ・マグダレーナへ贈った「クラヴィーア小曲集」(1722年)に、のちの「フランス組曲」全6曲のうち1〜5番の5曲が含まれています。親しみやすいそれぞれの舞曲にはフランス的な洒落た感覚が盛り込まれ、15歳年下の新妻への愛情が窺えます。演奏する第3番は2声でゆるやかに流れるアルマンドから始まり、6/4拍子と3/2拍子が織り交ざったクーラント、堂々とした広がりをみせるサラバンドが続き、“イギリス風”の意を持つアングレーズ、メヌエットは中間部にオブリガート楽器を用いたトリオ編成で変化をつけ、ダ・カーポでメヌエットへ戻る形式、最後は2声の対話が活き活きと表現されたジーグで締めくくられています。
G.F.ヘンデル George Frederick Handel (1685-1759)
カンタータ「私の瞳よ、何をしでかしたのか」
“Occhi miei,
che faceste?” HWV146
ヘンデル(George Frederick Handel)はドイツで生まれ、ハレやハンブルグで活躍した後イタリアに渡り主にオペラを作曲しました。のちにイギリスを訪れるとそこに留まり、最終的にはイギリス国籍を取得して生涯を終えました。イタリア語のソロ・カンタータの多くはイタリアにいた頃に書かれたものと言われていますが、本日演奏するカンタータの現存する手稿譜はイギリス製の紙に書かれていることが分かっています。ヨーロッパを飛び回って活躍したヘンデルですが、イギリスは彼を受け入れ活躍させることのできる懐の深い、またウィンウィンの関係になれる場所だったのではないかと思います。
たくさんの拍手をいただきましたので、パーセルの最も美しい島を先ほどと違う形でお聴きいただきます。
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