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木島千夏ソプラノコンサート Vol.17
洋館で楽しむバロック音楽 第102回
ソプラノとハープの調べ
〜美しの島へ〜
Fairest isle
2021年3月21日(日) 14時開演/16時30分開演 横浜市イギリス館
14:00/16:30 21st March, 2021 at British House Yokohama)
主催:アンサンブル山手バロッコ
出演:
木島千夏(ソプラノ)
©星合隆広
国立音楽大学在学中に古楽に出会い、卒業後バロックのオペラを初め様々なコンサート活動を経験した後、ロンドンに留学。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会に出演し経験を積む。帰国後はバロックを専門にソリストとして活躍。古楽ユニット「ひとときの音楽」シリーズや横浜山手の洋館でのリサイタルを毎年開催し、身近で楽しめる独自のコンサート作りを続けている。 「カペラ・グレゴリアーナ ファヴォリート」メンバーとしてヴァーツ国際グレゴリオ聖歌フェスティバルに出演。アンサンブル・レニブス、アンサンブルDDメンバー。聖グレゴリオの家教会音楽科講師、横浜合唱協会ヴォイストレーナー。
伊藤 美恵(ハープ)
英国ギルドホール音楽院大学院古楽科に奨学金を得て入学し、古楽ハープをアンドリュー・ローレンス=キング氏に師事。
在学中より数多くのアンサンブルやバロックオーケストラと共演する。これまで通奏低音奏者として、キングス・カレッジ聖歌隊、エンシェント室内管弦楽団(AAM)、ロンドン・ヘンデルフェスティバル、エネスク国際音楽祭、東京春音楽祭、第12回HFJ公演、オード「アレクサンダーの饗宴」(ハープ協奏曲付)、北とぴあ国際音楽祭「ウリッセの帰還」、声楽アンサンブル「ラ・フォンテヴェルデ」定期公演に出演している。 エマ・カークビー、イアン・ボストリッジ、サラ・コノリーなど海外の著名な演奏家との共演も多い。
ソプラノとハープの調べ
〜美しの島へ〜
Fairest isle
プ ロ グ ラ ム
(プログラムノート:木島
千夏/伊藤 美恵)
ようこそいらっしゃいました。 横浜市イギリス館は、1937年に、英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。歌とハープのアンサンブルの響きで、ルネサンスからバロック、民謡、近・現代まで、イギリスの様々な音楽を、広々としたテラスで芝生の庭につながっているイギリス館の素晴らしい客間の雰囲気の中でお楽しみいただきたいと思います。
♪ ♪ ♪
イギリス民謡:スカボローフェア
Traditional song : Scarborough Fair
W.コーニッシュ:ああ、ロビン
William Cornish (1465?-1523) : Ah, Robin
ヘンリー8世:仲間との楽しみ
Henry VIII (1491-1547) : Pastime with good company
N.ラニアー :もう泣くな、疲れた眼よ
Nicholas Lanier (1588- 1666) : Weep no more, my wearied eyes
N.ラニアー :野が花で飾られることはなく
Nicholas Lanier : No more shall meads be deck’d with flowers
サイモンとガーファンクルによって世界的に有名になった「スカボローフェア」。古くから人々に親しまれて来た民謡で、メロディーも歌詞も様々なヴァージョンがあります。実現不可能な問いかけやハーブの名前が続くリフレインが不思議の国イギリスらしい雰囲気を醸し出しています。
W.コーニッシュはヘンリー王のお気に入りの音楽家で、王室礼拝堂の合唱隊長を務めるなど王の寵愛を受けて優遇されました。「ああ。ロビン」は当時の流行歌をもとに3声の輪唱のように作曲されています。
テューダー朝第2代イングランド王ヘンリー8世は離婚結婚を繰り返し、王妃や家臣らを処刑した暴君としてクローズアップされることが多いですが、一方でスポーツマンでもあり知識や高い教養を持ち、音楽の才能もあって作曲や演奏もしていました。
N.ラニアー はチャールズ1世と2世に仕えた宮廷音楽家。絵画収集のためにイタリアへ行った際にモンテヴェルディらの音楽に触れ、当時最先端だったモノディー様式の歌曲をイギリスで作曲し始めた1人です。通奏低音に支えられて語るように歌われる「もう泣くな」、繰り返されるバスのメロディーに乗って変奏するように歌われる「野が花で飾られることはなく」の2曲をお楽しみいただきたいと思います。
W.ローズ:パヴァーヌ ト短調
William
Lawes (1602-1645) : Paven in G minor
from Harp Consort 10
次にハープ独奏でお聴きただくパヴァーヌを作曲したW.ローズはチャールズ1世の宮廷楽団員として活躍し、声楽曲、器楽曲を中心に多くの作品を残しています。この曲のようなハープコンソートや、ヴィオールコンソート等の合奏曲は、17世紀のイギリス独自の音楽ジャンルとしても有名です。このパヴァーヌは、ローズの師匠であるJ.コペラリオのヴィオールとオルガンのファンタジアのベースラインを引用しています。
J.ダウランド:私の過ちを許してくれるだろうか
John Dowland (1563- 1626) : Can she excuse
my wrongs
J.ダウランド:暗闇に住まわせておくれ
John Dowland : In darkness let me dwell
J.ダウランドは当時すでにリュートの名手として有名でしたが、エリザベス1世の宮廷リュート奏者を希望するも認められることはなく、イタリア、ドイツなどヨーロッパを遍歴しました。デンマークのクリスチャン4世付きのリュート奏者を務めたのち、ジェームズ1世の宮廷リュート奏者となりました。リュート伴奏用に作曲されたリュート・ソングの名曲2曲「私の過ちを許してくれるだろうか?」「暗闇に住まわせておくれ」を、本日はハープの伴奏で歌ってみようと思います。
H.パーセル:プレリュード イ短調
Henry Purcell(1659-1695) : Prelude in a minor Z.663
H.パーセル:ひとときの音楽(「オイディプス王」より)
Henry Purcell: Music for a while
H.パーセル:もし愛が甘いものなら(「妖精の女王」より)
Henry Purcell : If love’s a sweet passion
H.パーセル:最も美しい島(「アーサー王」より)
Henry Purcell: Fairest isle
H.パーセル:狂気のベス
Henry Purcell: Mad Bess
H.パーセルは教会の少年聖歌隊員から始まり楽器係や楽譜係などを経てオルガニスト、作曲家として活躍し、イギリスを代表する音楽家の1人となりました。宗教曲、器楽曲、鍵盤楽器のための作品など様々なジャンルの作品を残していますが、劇音楽も40曲を超えています。
最初に聴きいただくプレリュードは、ハープシコード、スピネットのためのレッスン選集の組曲第4番に入っている曲です。パーセルの歌曲をお聴きいただく前奏としてハープ独奏で演奏いたします。
「ひとときの音楽」「もし愛が甘いものなら」「最も美しい島」はどれも劇の中で歌われる作品。「狂気のベス」だけは単独の歌曲として作られました。当時マッド・ソング(狂気の歌)というものが流行していましたが、多くは失恋、あるいは恋人の死によって傷つき弱った心が暴走し、脈絡なく様々な感情に変化していくドラマティックな歌です。
G.F.ヘンデル:サラバンド ニ短調
George Frederick Handel (1685-1759): Sarabande in d minor HWV 437
イギリス民謡:河は広く
Traditional song: The Water is wide
イギリス民謡:トネリコの森
Traditional song: The Ash Grove
ハープ独奏でお聴きいただくサラバンド ニ短調はヘンデルのハープシコード組曲第2巻、第4番に収められています。G.F.ヘンデルは、ドイツ生まれでイギリスに帰化した作曲家で、バロック期を代表する重要な作曲家です。サラバンドは、17,8世紀に流行した、3拍子の荘重な舞曲で、2つの変奏を伴っています。
最後に、賛美歌にも取り入れられ親しまれている民謡を2曲。「河は広く」は近年NHKのドラマに登場したりして日本でも有名になりました。「トネリコの森」は19〜20世紀に活躍したR.クイルターの編曲によるものを本日は演奏いたします。
♪ 演奏者のみなさまに今回のコンサートについてインタビューしてみました。♪
リハーサルの合間に、お二人にうかがってみました。
− 今回のコンサートは木島さんの山手西洋館コンサートで、初めてハープとの協演になりますが、ソプラノとハープの調べ「美しの島」への想いやプログラムの工夫などを教えていただけますか?
(木島)山手の数ある洋館の中でも、イギリス館では以前からコンサートが行われていて、古楽を始めたばかりの頃によく聴きに来た思い出深い会場です。明るい春に、イギリス館で、イギリスの愛らしい歌を歌ってみようと思います。しかも今回は憧れのバロック・ハープとの共演!ワクワクが止まりません。バロックだけでなく、広く親しまれている民謡も織り交ぜながら、美しきブリテン島の調べをお楽しみいただきたいと思っています。
− 伊藤さんはいろいろな組み合わせのアンサンブルで活動され、また西洋館でのコンサートもされていらっしゃいますが、木島さんとは初共演とうかがいました。どのようなところが楽しみですか? 当日、ここを聴いて欲しいというポイントがあれば教えてください。
(伊藤)パーセルやダウランドなどイギリスものは、留学時代は沢山弾いてきましたが、日本に帰ってからは、弾く機会が少なく残念に思っていました。長くこの辺りのレパートリーを歌われている木島さんとの共演は、嬉しいですし、大好きな曲ばかりですので、とても楽しみです。リハーサルでは、木島さんとは同じイギリス留学で、思い出話をしながら、楽しく音楽作りが出来ています。もしかしたら、ハープ以外の楽器も登場するかもしれません。ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
(木島・伊藤)このコンサートは今の時期にあわせて、会場の客席を20席ほどにし、2回の公演としました。イギリス館の素敵なサロンで、みなさまと「美しい島の音楽」をご一緒に楽しみたいと思います。
伊藤さんに、演奏するバロックハープについてうかがってみました。
(伊藤)17世紀頃になると、3列に弦が張られたハープがイタリアで出現しました。モダンハープと大きく異なる点は、バロックハープには半音を変えるペダルもレバーもない事です。
バロックハープの弦は、両サイドがピアノの白鍵、真ん中の列が黒鍵にあたり、真ん中の弦を弾くには、サイドの弦の間から指を通してはじきます。3列に張られた弦は、密集していて、半音弦が真ん中にあるため、♯や♭が多い曲程演奏は困難になりますが、両サイドが同じ音であるため、トレモロをきれいに演奏する事ができます。バロックハープは、約90本の弦が張られ、すべてガット弦であるため、張力はモダンハープに比べて低くなっています。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので、ロメオとジュリエットをおとどけします。
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