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横浜イギリス館コンサート
木島千夏ソプラノコンサート Vol.16
洋館で楽しむバロック音楽 第94回
西洋館で味わう
〜バロックなクリスマス〜
Christmas in Baroque Style
2019年12月15日(日) 15時開演(14時30分開場)
横浜市イギリス館
15:00 15th December, 2018 at British House Yokohama)
主催:横浜市イギリス館、協力:アンサンブル山手バロッコ
後援:横浜市中区役所
出演:
木島千夏(ソプラノ)
©星合隆広
国立音楽大学在学中に古楽に出会い、卒業後バロックのオペラを初め様々なコンサート活動を経験した後、ロンドンに留学。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会に出演し経験を積む。帰国後はバロックを専門にソリストとして活躍。古楽ユニット「ひとときの音楽」シリーズや横浜山手の洋館でのリサイタルを毎年開催し、身近で楽しめる独自のコンサート作りを続けている。「カペラ・グレゴリアーナ ファヴォリート」メンバーとしてヴァーツ国際グレゴリオ聖歌フェスティバルに出演。アンサンブル・レニブス、アンサンブルDDメンバー。聖グレゴリオの家教会音楽科講師、横浜合唱協会ヴォイストレーナー。
野入志津子(アーチリュート)
京都生まれ。同志社女子大学音楽学科(音楽学専攻)卒業。在学中よりリュートを岡本一郎氏に師事。リュートとルネサンス、バロック音楽を学び深めるためにバーゼルのスコラ・カントルムでオイゲン・ドンボアとホプキンソン・スミスに師事、1991年ソリストディプロマ。アムステルダムを拠点に活動している。古楽界の巨匠ルネ・ヤーコブスの専属リュート奏者として20年以上にわたりヨーロッパ各国はじめUSA, イスラエル、アルゼンチン、オーストラリアでオペラやオラトリオの上演を続けている。フィリップス(イムジチ合奏団)、ハムモニア・ムンディ・フランス(ルネ・ヤーコブス指揮)など多くのレーベルに録音。ソロのCDはレグルスから”G.A. Casteliono, Intabolatura de Leuto“ „Giovanni Zamboni, Sonate d’Intavolatura di Leuro“をリリース。レコード芸術誌特選版。2017年、Acoustic revive から“Aure Nuove 薫る風 ,新しい様式によるリュートのためのトッカータと舞曲” をリリース。
森洋子(チェンバロ)
福岡市出身。福岡女学院高校音楽科、愛知県立芸術大学及び同大学院(ピアノ科)を修了後、桐朋学園大学研究科にてチェンバロを学ぶ。1991年アメリカ "Southeastern Historical Keyboard Society"主催のチェンバロコンクールで優勝。'93年アメリカ議会図書館のコンサートシリーズに招かれる。同年「第7回古楽コンクール山梨 チェンバロ部門」にて第3位を受賞。'94、'98、2000年に東京他でのリサイタル開催など各地で活発な演奏活動を行う。'94年から'06年まで国立音楽大学にて非常勤講師。'06年より函館を本拠にする。'09 (平成21)年度 函館音楽協会奨励賞、'17 (平成29)年度函館音楽協会賞を受賞。CD「バッハ インヴェンションとシンフォニア全曲」、「Cembalism !チェンバロの冒険」、 DVD「いつか見た音」を函館にて制作、リリース。現在、札幌大谷大学、函館工業高等専門学校で非常勤講師を務める。
西洋館で味わう
〜バロックなクリスマス〜
Christmas in Baroque Style
横浜市イギリス館は、1937年に英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。広々としたテラスで芝生の庭につながっている素晴らしい客間で、山手の西洋館のクリスマス装飾のなか、歌とリュートのアンサンブルの響きでイタリアバロックのクリスマスをご一緒に味わいましょう。
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
プ ロ グ ラ ム
(プログラムノート:木島千夏/野入志津子/森洋子)
クリスマス・キャロル
ひさしく待ちにし Veni, veni, Emanuel
みつかい歌いて What child is this?
もろびと声あげ In dulci jubilo
まず、よく知られているクリスマスの讃美歌と、もとになったオリジナルの曲や器楽曲などを組み合わせて演奏します。単旋律のラテン語聖歌「Veni, veni, Emmanuel/ひさしく待ちにし」。シンプルに歌とリュートでキリストの誕生を待ちわびる思いを歌い、コダーイによる編曲も取入れて新しい響きもお楽しみ頂きます。グリーンスリーブスのメロディにクリスマスの歌詞をのせて讃美歌にした「What child is this?/みつかい歌いて」。そしてドイツの古いクリスマス・キャロル「In dulci jubilo/もろびと声上げ」はプレトリウスを初め多くの作曲家による合唱曲がありますが、J.Rutterの編曲版も交えて演奏します。
Veni, veni, Emmanuel
来ませ、エマヌエルよ、捕らわれのイスラエルの民を解放してください
喜べ、救い主があなた方のためにお生まれになる
What child is this?
マリアのひざで眠っている赤ちゃんは誰?
天使たちが優しく賛美の歌を歌い、羊飼いたちが見守っている
さあ、急いでマリアの赤ちゃんをお祝いしに行こう
In dulci jubilo
甘い喜びのうちに歌い祝おう
私たちの心の喜びが飼い葉桶の中に
太陽のように輝きながら、御母の胸で眠る
J.S. バッハ:チェンバロ協奏曲
ト短調 BWV975 (原曲 A.ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 RV316 )
Johann Sebastian Bach : Concerto g-moll BWV975
---- / ラルゴ
/ ジーガ、プレスト
--- / Largo / Giga, Presto
バッハは20代のワイマール時代 (1708-17) に、イタリアの協奏曲様式の研究、習得のため、ヴィヴァルディやマルチェロなどによる十数曲にのぼる協奏曲を鍵盤作品へと書き改めました。
第1楽章は4分の2拍子で速度表示はありませんが、これは後のバッハのオリジナルである「イタリア風協奏曲 BWV. 971」(1734)と同様です。イタリア風協奏曲の第1楽章の主題は堂々としたものであると同時に、華やかさや颯爽とした心地良さを感じさせますが、このヴィヴァルディの曲からアイデアを得たのではないかと思わせます。第2楽章は原曲のスコアは4分音符主体のシンプルなものですが、これは元々、ヴァイオリン奏者が装飾を加えて演奏することが求められているためと考えられます。バッハは右手に自らの装飾を書き加えています。また、原曲よりもサイズを拡張し、構成を一部変更しています。第3楽章はオリジナルとは全くの別曲。8分の12の急速なジーグは、この頃の器楽曲の最終楽章によく見られますが、演奏している実感としては、これがバッハと言われると少々違和感があって同時代の何かの曲を当て嵌めたような印象があります。
さて、今回はチェンバロとリュートでのコンチェルトとなりますが、音の重なり、広がり、奥行きなどオーケストラやソロとまたちがう響きが味わえそうです。お楽しみください。
G.ザンボーニ:ソナタ6番 Giovanni Zamboni : Sonata VI
アレマンダ - ジーガ - サラバンダ - ガヴォッタ
Alemanda - Giga - Sarabanda – Gavotta
ジョバンニ・ザンボーニのリュートソナタは、ヴァイスの作品などと並んで現在知られている最後期のリュートレパートリーにあたります。ザンボーニは、ジェミニアーニやボッケリーニ、その後にはプッチーニも生まれたトスカーナ地方の街、ルッカで多様な楽器を演奏し、また宝石職人でもありました。このザンボーニのソナタは、緩〜急〜緩〜急の舞曲でできています。アレマンダとサラバンダは哀愁漂うメランコリックな楽章。終楽章のガヴォッタは、当時の流行歌のような軽いタッチです。18世紀イタリア・バロック特にコレッリのスタイルに通じるザンボーニの装飾などは、記譜された音楽資料として興味深く、美しいものです。
F.ガスパリーニ:カンタータ「どこにいるの?ぼくの愛する宝よ」
Francesco Gasparini : Dove sei, dove t'ascondi?
ガスパリーニはコレッリやパスクィーニに学び、教会のオルガニストや楽長として活躍し、また宮廷の音楽家として沢山のオペラや祝祭の音楽を作曲しました。「どこにいるの?ぼくの愛する宝よ」は1695年にローマで出版されたカンタータ集に収められています。珍しくリュートのオブリガートを伴ったソプラノ独唱カンタータです。
どこにいるの?ぼくの愛する宝よ
呼んでも答えてくれず、ぼくがため息をついていても耳を貸そうともしない
君はぼくをあざ笑い、ぼくはただ君に憧れるばかり
多くのため息をついた後、君の麗しい瞳を見つめることができる日はいつやってくるのだろう
愛の神よ、教えておくれ、ぼくの心が喜ぶ日はいつ?
もし苦しみしか語ってくれないなら、ぼくは喜びと満足のうちに苦しもう
《 休 憩 》
J.S.バッハ:プレリュードとフーガ ハ短調 & 変ホ短調
Johann Sebastian Bach : Praeludium und Fuga c-moll BWV847 &
es-moll BWV853
いわゆる「"平均律"クラヴィーア曲集」第1巻からの2曲。この平均律という訳は「良く、適正に調律された」とするべきことは、チェンバロ等の鍵盤楽器が奏者の考えで調律を自由に設定出来ることが知られてきた現代において、適切で必要なことだと考えています。もっとも、現状、話し言葉では「平均律」の方が通るし、当然ですが、決してそれを口にしてはならぬとまでは思いません。西洋音楽が取り入れられた時代、鍵盤楽器として、まず入ってきたのはピアノであったため、よく調律する、すなわち平均律に調律すると皆が考えたのは無理もないことだったでしょう。
さて、今日、取り上げる2曲について。最初はハ短調 BWV. 847。プレリュードは、一つ前のハ長調プレリュードをそのまま短調に移したかのような構造ですが、後半トッカータ的な性格が施されています。フーガは、穏やかな主題で始まるが提示部の後、主題モチーフの拡大や縮小、また、掛け合いなどにより徐々に緊張感とスケール感を増していきます。次に変ホ短調 BWV. 853。プレリュードはメロディと伴奏和声という構造。ソプラノが主要部分を担いますが、アルト、バスにも聴かせどころがあります。16分音符以下の細かい音によるパッセージは、本来即興で加えられる装飾です。フーガは十字架の音型による主題の様々な展開が見られます。ストレッタ (主題が終わらないうちに他声部が主題を奏する)、反行形、拡大などを駆使し、まさに音による壮麗な建造物が創り出されます。
J.S.バッハ: マニフィカートより「わたしの霊は喜びたたえます」
Johann Sebastian Bach : Magnificat BWV243 “Et exsultavit spiritus meus”
ルカ福音書に「マニフィカート」のもとになった出来事が書かれています。大天使ガブリエルから「あなたは聖霊によって神の子を産む」というお告げを受けたのち、マリアは親戚のエリサベツが妊娠していたのでお見舞いに行きました。マリアの挨拶を聞いてエリサベツのお腹の子が喜び踊ったので、エリサベツはマリアを神から祝福された方、と呼びました。そこでマリアが語った一連の言葉「私の魂は主をあがめ〜Magnificat anima mea」の冒頭の言葉から「マニフィカート」と呼ばれています。
バッハの「マニフィカート」から〜 マリアの心の高揚感と神への信頼を歌います。
私の霊は救い主である神を喜びたたえます
G.H.シュテルツェル(J.S.バッハ):あなたがそばにいてくれたら
Gottfried Heinrich Stölzel : Bist du bei mir
ゴータ宮廷礼拝堂の楽長を務め、沢山の宗教曲や祝典のための曲を作ったシュテルツェル。生前彼はバッハより有名だったと言われていますが、「あなたがそばにいてくれたら」が今でも多くの人に好まれよく演奏されることからもうなずけます。歌詞は、私が死ぬ時にあなたがそばにいてくれて、その優しい手が私の眼を閉じてくれたらなんと幸せなことでしょう、という内容で、「あなた」を神と恋人とも捉えることができます。キリスト教においてはイエスを花婿と表現することもあり、どちらにしても同じなのかもしれません。
あなたがそばにいてくれたら、私は喜びのうちに死へ、安らぎへと向かいます
私の最期はどれほど幸せでしょう、あなたの手が私のまなこを閉じてくれたら
G.F.ヘンデル: オペラ「リナルド」より 泣かせて下さい
Georg Friedrich Händel : Lascia ch'io pianga
(Opera”Rinaldo”HWV7 )
オペラ「リナルド」よりアルミレーナのアリア「私を泣かせてください」。ヘンデルの時代のオペラ歌手はこぞって自分の力量を披露しようと華麗な装飾をほどこして歌いました。ヘンデル自身が書いたとされる装飾も残されており、信じられないほど技巧的なものです。今回はBabellによるチェンバロ版と、ルネ・ヤコブスが歌手のために書いた装飾を取入れつつ演奏いたします。
厳しい運命に涙し、自由を思い焦がれるままにさせてください
悲しみが私の苦しみの縄を断ち切ってくれますように
G.F.ヘンデル: これこそ乙女たちの女王
Georg Friedrich Händel : Haec est Regina Virginum
HWV235
「これこそ乙女たちの女王」はカルメル山のマリアの祝日の晩課におけるアンティフォナ。弦楽器と通奏低音とソプラノのために書かれています。ヘンデルは自分の作品や他人の作品を拝借して作曲することで有名ですが、この曲でも自身の「水上の音楽」第4曲の冒頭に使われているモチーフが使われています。ヘンデルらしい流麗なメロディと劇場的な華やかさをもった作品です。
これこそ乙女たちの女王、王を産んだかた、美しいバラ、
神の母なる乙女、私たちのために神にとりなしてください
♪ 演奏者のみなさまに今回のコンサートについてインタビューしてみました。♪
- チェンバロの森洋子さん、リュートの野入志津子さんとはこの西洋館のシリーズでのそれぞれ共演をされていますが、今回お二人同時に共演になります。どのようなことが楽しみですか?
木島:「毎年山手の洋館の素敵な雰囲気の中でコンサートをさせて頂けて、大変有り難く存じます。今年はコンティヌオ(通奏低音)の名手お二人とご一緒させて頂くという、とても贅沢なコンサートになり、私自身も楽しみにしています。それぞれに共演の機会はありましたが、3人が一緒に演奏するのは今回が初めてです。音楽を支配し進めていくのはメロディーではなくバスと和声、つまりコンティヌオです。強力な2人のコンティヌオに支えられ、引っ張られながら、しっかり歌って、3人ならではの響きがお届けできると思います。お楽しみに!」
- 今回のコンサートのテーマ「バロックなクリスマス」について一言。
木島:「プログラムは、バッハ、ヘンデル、ガスパリーニなどバロック後期の作品を中心にお届け致します。また古楽の作品がもとになっているクリスマスの讃美歌を選び、この3人で様々に演奏してみようと思います。」
− お忙しい中、来日ありがとうございます。昨年に続き木島さんとの共演ですが、横浜西洋館での木島さんとのコンサートはどんな楽しみがありますか?
野入:「ただいま、ベルリンのオペラ劇場でスカルラッティとヘンリー・パーセルのオペラ2本立て公演中です。もうすぐ日本で、また横浜の西洋館で演奏させていただくのが楽しみです。山手バロッコのお客様は、木島さんの歌をずっと親しんでいらっしゃるので、”通”ならではの味わい方をしてくだるのがよくわかります。今回は森さんのチェンバロと一緒に通奏低音の編成が大きくなるので、前回とまた違った歌の世界が広がると思います。また西洋館でみなさまにお会いできるのを楽しみにしています。」
- 久しぶりに山手西洋館にお帰りなさい。リュートとチェンバロという組み合わせで、コンサートを聴く機会はなかなかないですが、どのようなところを聴いていただきたいですか?
森: 「はい、久しぶりに西洋館での演奏が出来、とても嬉しいです。今回はリュートとチェンバロで通奏低音を担当する曲、また、お互いにソロや伴奏を振り分けて演奏する曲、それぞれのソロをたっぷり、楽器2台の様々な面をお聴きいただくことが出来ると思います。私自身も楽しみにしております。」
− 北海道で地元のアンサンブルとの共演や多くのジャンルの演奏家を招いてのコンサートを精力的に続けていらっしゃいますが、私たち、山手バロッコにアドバイスをいただけますか?
森: 「私が行なっているのは、お店や教会、文化サークルなどの小さな単位で開催されるものがほとんどですので、大きなことは何も言えません。山手バロッコさんの精力的且つ横断的な活動は素晴しいなといつも拝見しております。
もし、何か言えるとすれば、これから恐らく、より規模の小さな企画がマスメディアを通さずにあちこちで開催されるようになっていくように思いますし、すでにその兆しはありますね。そうすると、元々の音楽ファンや直接音楽に関わる方だけでなく、ジャンルが違えども町の楽しみを創り出したり、人と人をつなぐような活動をしている方々と連なっていくことが求められると思います。また、それによって、現役の私たちだけでなく、若い世代も息の長い活動をする助けになるのではないかなあと思っています。」
・・・ ありがとうございます。地域密着ということでいろいろなコラボレーションも広がっています。朝岡さんとのスタートは、「古楽器で自由に」ということでしたので、そこの軸はこだわっていこうと思っております。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので、会場のみなさんもご一緒に、クリスマス・キャロルを歌いましょう!「もろびと声あげ In dulci jubilo」
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