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山手111番館バロックコンサート
木島千夏ソプラノコンサート Vol.11
洋館で楽しむバロック音楽 第52回
イタリアバロック
〜愛のアリアとデュエット〜
Love Arias and Duets
2014年9月28日(日) 午後6時開演 山手111番館
18:00 28th September. 2014 at Yamate
Bluff 111)
主催:公益財団法人 横浜市緑の協会
協力:アンサンブル山手バロッコ、森田朋子(フラワー&テーブルコーディネーター)
出演:
木島千夏(ソプラノ):
©星合隆広
国立音楽大学卒業後、同大学音楽研究所の研究員として、バロック歌唱の研究と演奏活動に従事し、数々のバロックオペラやコンサ−トに出演。川口絹代、橋本周子に師事。92年英国へ留学し、J.キャッシュに声楽を師事、ギルドホール音楽院にてE.カークビー、D.ロブロウ、 N.ノースのレッスンを受ける。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。翌年同音楽祭に招待され、モーツァルトの「聖墓の音楽」のソロ等を歌う。W.Christie指揮によるシャルパンティエのオペラ公演「ダヴィデとヨナタン」に参加、ロンドンと日本各地でリュートのN.ノースとデュオ・リサイタルを行った他、ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会、ラジオに出演。帰国後は、バロックを専門にグレゴリオ聖歌から現代曲まで幅広いレパートリーに取り組みソリストまたはアンサンブルで活躍している。2002年〜2003年横浜市開港記念館でカンタータ演奏、2004年から毎年、山手西洋館でのリサイタルを開催。2013年には横浜音祭り「パーセルのオペラ」に主演し好評を博す。「カペラ・グレゴリアーナ ファヴォリート」メンバーとしてヴァーツ国際グレゴリオ聖歌フェスティバルに出演。現在、聖グレゴリオの家教会音楽科講師。横浜合唱協会ヴォイストレーナー。
長尾 譲(テノール):
東京音楽大学卒業。同大学院修了。ロータリー財団、M・フォデッラ財団、文化庁派遣芸術家在外研修員の奨学金を得て、ミラノ市立音楽院古楽科に留学しバロック声楽科でディプロマ取得。声楽を東敦子、篠崎義昭、C・ミアテッロ、C・アンセルメ、 V・マンノ各氏に、音楽学を金澤正剛氏に師事。また1600年代イタリア初期バロックをR・ジーニ氏の下で4年間研鑽を積む。録音では、B・ジーニ指揮:カヴァッリ作曲“Magnificat”〔Amadeusレーベル〕をはじめ イタリアにおいてCD録音参加多数。演奏では、ヴァチカン市国聖ペトロ大聖堂で催されたイザベッラ・レオナルダ没後300年記念のソリストを務めるなど、イタリア各地で演奏多数。2007年に活動の拠点を東京に移し、北とぴあ国際音楽祭オペラ“オルフェオ”出演など、イタリアルネサンス、イタリア初期バロックを主なレパートリーに演奏活動を展開している。近年では、日本歌曲とフランス歌曲の演奏を精力的に行っている。Ufficio UccellinoよりCD『アヴェマリア』をリリース。日本イタリア古楽協会会員。ホームページ www.jonagao.com
寺村朋子(チェンバロ):
©篠原栄治
東京芸術大学音楽学部チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回古楽コンクール・チェンバロ部門第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外のアカデミーに参加し研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」に出演。その他多くの団体と様々なコンサート活動を行う。トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「JS.バッハ作品集」(2009年再版)を編曲、出版。現在、宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会運営委員。2010年 チェンバロソロCD「カプリッチョ」(レコード芸術準推薦盤)リリース。
イタリアバロック
〜愛のアリアとデュエット〜
Love Arias and Duets
本日は、山手111番館バロックコンサートにおいでいただきありがとうございます。当館は、広い芝生を前庭とし、ローズガーデンを見下ろす住宅として大正15(1926)年に建てられました。コンサートでは、ソプラノ木島千夏氏をお迎えし、共演は、イタリアバロックのスペシャリストのテノール長尾譲さん、チェンバロ奏者の寺村朋子さん。
この古き香りのただよう西洋館の贅沢な空間で、「愛のアリアとデュエット」の愛の響きをご一緒に味わいましょう。
本日登場する作曲家を生年の古い順に簡単にご紹介します。
プ ロ グ ラ ム
B.ストロッツィ:帰還
Barbara Strozzi : Il Ritorno
B.ストロッツィ(1619-77)は、イタリア初期バロック音楽の女流作曲家・声楽家です。有名な台本作家ジュリオ・ストロッツィの養子となった彼女は、父親の関係でイタリアの貴族や上流階級での芸術サロンへの出入りし、声楽や作曲を学びました。当時、歌手は別として多くの職業音楽家は男性でしたので、女流作曲家というのは珍しい存在です。また、当時の人気と家の財力を背景に高価な曲集を何巻も出版しています。
《歌詞大意》 愛しい人が帰還すると、憂いや憔悴はたちまち消え去り、心は愛を取り戻す。二人は喜びに満ちあふれ、しばし甘い愛の喜びを享受する。
S.ディンディア:誰があなたの希望を膨らませるの?
Sigismondo
d'India: Chi nudrisce tua speme
S.ディンディア:私の涙に涙する
Sigismondo d'India: / Piangono al pianger mio
S.ディンディア(1582頃-1629)は、モンテヴェルディと並び称されるイタリアの作曲家です。モノディー様式の発展に大きな貢献をした初期バロック声楽曲の大家で、シシリアで生まれ、フィレンツェやヴェネツィアを始め各地で作曲家やパトロンと出会い、音楽の研鑽を重ねました。卓越した作曲技法により、多くのジャンルの声楽曲を作曲しました。
誰があなたの希望を膨らませるの?
《歌詞大意》 あるふたりの対話:恋への希望を膨らませ、恋の苦しみを和らげ、時には恋の悲しみを増すものは何か?-それは、愛する人の美しい瞳です。
一度あの瞳が微笑めば、苦しみは払拭され生きる力を与えてくれる。
私の涙に涙する
《歌詞大意》 私が嘆き悲しむと、野獣が涙を流し、岩までがため息をつく。雲は哀れみながら流れゆき、万物は私に問いかける『かわいそうに、何をしているの、独り辛そうに』と。
T.メールラ:半音階ソナタ(チェンバロ独奏)
Tarquinio Merula: Sonata Cromatica
T.メールラ: そんなふうに思うなんて
Tarquinio Merula: / Folle
e ben che si crede
T.メールラ(1594/5-1665)は、クレモナで活躍した作曲家、オルガニスト、ヴァイオリニストです。ヴェネツィア楽派の一人でモンテヴェルディの影響を受け、新しい作曲技法を積極的に用いて、カンタータ、アリア、室内ソナタ、グラウンド変奏やシンフォニアなどバロック期に盛んに用いられるようになるジャンルの先駆けとなる作品を多く手がけました。
そんなふうに思うなんて
《歌詞大意》 バカだなあ、彼女が冷たいからって僕の心が離れて行くとでも?僕の囚われの心が自由を求めているなんて思っているのか?
たとえ嫉妬の女神が毒を吹きかけても、たとえ死が僕の命を奪い去っても、この愛しい結び目は失われることはない。言いたいやつには言わせておけばいいさ。
B.カスタルディ:夜のこだま
Bellerofonte Castaldi : Echo notturno
B.カスタルディは、イタリア、モデナ生まれの作曲家、リュート奏者です。リュート奏者としては、複雑なリュート譜(タブラチュア)を残しています。声楽曲の作曲家としては、当時盛んであった男性ソプラノ(カストラート)に対して賛成せず、男性、女性本来の声に対しての作曲をしたと言われています。
夜のこだま
《歌詞大意》 静寂に包まれた漆黒の夜、片想いの男は、谺に胸のうちを打ち明ける。谺は、己の言葉の繰り返しでしかないのだが、恋に盲目な男には気持ちの代弁となって、ひとときの安心を得る。
B.ストロッツィ:秘密の恋人
Barbara Strozzi : L'amante segreto
B.ストロッツィ:恥ずかしがりでわくわくな恋人
Barbara Strozzi : L'amante timido e
eccitato
秘密の恋人
《歌詞大意》 愛を告白する勇気がでない男:彼女の眼差しは「さあ、言ってしまいなさい」と誘っているようだが、分かってしまうなら死んでしまいたい。
美しい姿を見つめれば見つめるほど、口は重くなってしまう。愛の神よ、もうやめてくれ、死にそうな者を殺しても名誉にはならないだろう。
恥ずかしがりやでわくわくな恋人
《大意》 「遊びの恋はご免だわ!」という女を、「恋とは燃え上がって楽しむことが大切!」という男が言葉巧みに誘う。
最後には、 理性と欲望の狭間でゆれる女も、どきどきわくわくする感情に身を委ね、恋の架け橋を渡り愛を知る。
C.モンテヴェルディ:ステキな羊飼いさん
Claudio
Monteverdi : Bel pastor
C.モンテヴェルディは、マントヴァのゴンザーガ家の宮廷楽長を務め、沢山のマドリガーレやオペラを作曲しました。後にヴェネツィアへ移り、サン・マルコ大聖堂の楽長となって教会音楽を作曲しました。ルネサンスからバロック時代への転換期に活躍し、新しい作曲技法を大胆に取入れて声楽曲において独自の作風を展開した、イタリア・バロックの重要な音楽家です。
ステキな羊飼いさん
《大意》 恋に積極的な羊飼いの娘は、内気な羊飼いの青年に、「私のこと好き?ねぇどれくらい」と幾度も問う。
その度に「とっても好きさ、美しい娘さん」と答える青年。
しかし美辞麗句を並べられても満足しない娘は、「愛してる!とはっきり言って」と迫り、青年もやっと「愛している!!」と言えて、めでたし、めでたし。
G.フレスコバルディ:こんなふうに僕を蔑むのか
Girolamo
Frescobaldi : Cosi mi disprezzate?
G.フレスコバルディ:お別れだ、わが魂よ
Girolamo
Frescobaldi : / Ti lascio, anima mia
G.フレスコバルディは、北イタリア、フェラーラの出身で、イタリア初期バロックの鍵盤音楽を代表する作曲家、オルガニストです。彼は、25才の若さでサン・ピエトロ大聖堂のオルガニストに就任し、以後、生涯にわたって楽譜を出版、数多くの鍵盤曲集を残しました。フローベルガーや大バッハなど、多くの後輩達が師と仰いだ大家です。
こんなふうに僕を蔑むのか
《歌詞大意》 恋する美女に軽くあしらわれ深く傷ついた男は、悪態をつく。『年を取り、その美しさが去った時、僕にしたように、誰かが貴女を傷つけるだろう。そして最後に嘲笑うのは、僕だ』と。
お別れだ、わが魂よ
《歌詞大意》 ああ、君から離れて行かなければならない。愛しいひとよ、嘆かないで。もっとつらくなるばかりだから。
M.ロッシ:トッカータ第7番(チェンバロ独奏)
Michelangelo
Rossi : Toccata 7
M.ロッシ(1601/2-1656)は、イタリア、ジェノヴァ出身の作曲家、ヴァイオリニスト、オルガニストです。若いころに、ディンディアとフレスコバルディと出会っており、師事したのではないかと考えられています。作曲家としては、オペラも作曲したが、現在では鍵盤楽曲の作曲家として名を残しています。先のフレスコバルディの影響を受けていますが、その中でも個性的な音楽を形成しています。
A.ステッファニ:お別れだ、おお愛しい人よ
Agostino
Steffani : Io mi parto, o cara mia vita
A.ステッファニ(1653–1728)は、ヘンデルやバッハよりも少し前の時代に活躍した作曲家。ヴェネツィアの聖マルコ大寺院の少年聖歌隊員だった時に、その美声を見出されてミュンヘンへ行き、バイエルン選帝侯の庇護のもと、当地でさまざまな教養を身につけました。のちにその才能を発揮し、作曲家としてだけではなく、オルガン奏者、外交官、またカトリックの聖職者としても活躍しました。作品はオペラが中心で、当時としてはかなり斬新な作曲技法を用い、同時代の劇音楽に強い影響を与えたと言われています。
お別れだ、おお愛しい人よ
《大意》 女の旅立ちで、離れ離れになる二人は心の内を伝えあう。女は御姿を心に刻むと伝え、男は他の瞳に恋することなく、面影を思いつづけると誓う。そして、お互いの想いが常に傍らにあるようにと願う。
C. モンテヴェルディ: あなただけをみつめ
Claudio
Monteverdi : Pur ti miro
あなただけをみつめ
《大意》 オペラ『ポッペアの戴冠』より“ポッペアとネロ皇帝の愛の二重唱”
ネロ帝は不倫の愛を成就させる為に、前妻をローマから追放し、お目付役で哲学者のセネカを自殺に追いやった。
ポッペアも前夫と別れ、ついに皇帝の妻の座を得る。多くの人を犠牲にした愛は実り『 私の命である人よ、私を見つめて、抱きしめて』と二人で愛を歌う。
♪♪♪♪♪
アンコール
モンテヴェルディの雅歌より「わたしは野の花、谷の百合(Ego flos campi et lilium
convallium)」でした。ありがとうございました。
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