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Special Concert
横浜山手の洋館で味わう
ソプラノと古楽器アンサンブルによる
〜ヘンデル・愛のカンタータとアリア〜
"Handel as an Aria Composer"
2006年9月23日(祝) 午後6時30分開演
ベーリックホール(元町公園内)
6:30pm 23 Sept. 2006 at at Berrick Hall
出演
木島千夏 Chinatsu Kijima (ソプラノ Soprano)
国立音楽大学卒業後、同大学音楽研究所の研究員として、バロック歌唱の研究と演奏活動に従事し、数々のバロックオペラやコンサ−トに出演。川口絹代、橋本周子に師事。92年英国へ留学し、J.キャッシュに声楽を師事、ギルドホール音楽院にてE.カークビー、D.ロブロウ、 N.ノースのレッスンを受ける。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。翌年同音楽祭に招待され、モーツァルトの「聖墓の音楽」のソロ等を歌う。W.Christie指揮によるシャルパンティエのオペラ公演「ダヴィデとヨナタン」に参加、ロンドンと日本各地でリュートのN.ノースとデュオ・リサイタルを行った他、ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会、ラジオに出演。
帰国後は、バロックを専門にグレゴリオ聖歌から現代曲まで幅広いレパートリーに取り組みソリストまたはアンサンブルで活躍している。
現在、聖グレゴリオの家教会音楽科講師。
アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
曽禰寛純 Hirozumi Sone(フラウト・トラヴェルソFlauto
traverso,):
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
角田幹夫Mikio Tsunoda(バロック・ヴァイオリンViolin、バロック・ヴィオラViola):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
小松久子Hisako Komatsu(バロック・ヴァイオリンViolin):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブルEFFEコンサートミストレス。
原田純子Junko Harada(バロック・ヴァイオリンViolin、バロック・ヴィオラViola):
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロック・ヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。現在はモダンとバロック楽器の両方で活躍。
中尾晶子Akiko Nakao(バロック・チェロVioloncello):
2000年〜03年の都留音楽祭に参加。アマチュア・チェリストとして、モダン、バロック・チェロで活躍中。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己Masami Iizuka(コントラバスContrabass):
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
酒井絵美子Emiko Sakai(チェンバロCembalo):
洗足学園音楽大学ピアノ科卒。チェンバロを岡田龍之介氏に師事。現在、ピアノ及びチェンバロ奏者として幅広く音楽活動を行っている。
横浜山手の洋館で味わう
ソプラノと古楽器アンサンブルによる
〜ヘンデル・愛のカンタータとアリア〜
"Handel as an Aria Composer"
プログラム
Program
ヘンデルはバッハと並ぶバロック時代の大作曲家として知られていますが、ヘンデルが名を成したのは、アリアの作曲家としてでした。ヘンデルは、生涯で実に2000曲以上のアリアを作曲し、情感豊かで味わい深くかつエネルギッシュなアリアをつくる名人として知れ渡っていました。
カンタータは、主に独唱で通奏低音または器楽の伴奏を伴った世俗的な声楽曲で、レシタティーヴォとアリアが交互に何組か演奏されるのが一般的です。
オペラは、ヘンデルの場合、イタリア語の台本に基き、歌手が登場人物の配役を担当し、語り(レシタティーヴォ)と歌唱(アリア)を中心に演技を伴って展開する音楽劇です。
オラトリオは、ヘンデルにより作り出された、劇場向け宗教的劇音楽で、内容的に宗教的な色合いが濃く、英語で歌われますが、その精神はオペラに近く、合唱(会衆)の役割が増えるのと、衣装・演技がない以外はオペラとの共通点が多いものです。
アリアは、この3つの声楽曲のいずれにも登場し、歌詞を持ち特定の感情を生き生きと表現するものです。
9つのドイツアリアより
Flammende Rose, Zierde der Erden(燃えるようなバラの花、大地の飾り)
G.F.Handel / Aria "Flammende Rose, Zierde der Erden" from 9 German Arias
Singe Seele, Gott zum Preis (歌え、霊魂よ、神を称えて)
G.F.Handel / Aria "Singe Seele, Gott zum Preis" from 9 German Arias
1720年代後半にドイツの詩人ブロッケスの詩に、オブリガード楽器と通奏低音を伴奏とする9つのドイツアリアを作曲しました。オペラやイタリアンカンタータと違い、このアリアの詩は、内容は聖書や聖句に関連しているので、劇的な要素が少なく、大向こうをうならせるしかけもありません。
むしろ中庸を尊び、ドイツ語の詩の構造や韻や宗教的な意味を深く味わう趣で作曲されたもので、その宗教的な内容は、後年のオラトリオの創作を暗示するようにも思えます。
ソプラノ、2本のヴァイオリンと通奏低音のためのカンタータ (Tu fedel, tu costante? お前は誠実か、お前は貞節か)
G.F.Handel / Cantata "Tu fedel, tu costante?"
ヘンデルは、1706年から1709年の間にたびたびイタリアをおとずれました。イタリアでは貴族の館に集う芸術家たちは独自のサークルを作り、詩人、文学者、音楽家を会員として優遇されました。当時オペラの上演が禁止されていたローマでは、カンタータは音楽劇を提供するものとして人気を集めていました。ヘンデルもイタリア時代を中心に150曲以上のイタリア語のカンタータを作曲しており、声楽曲作曲家での名声を確固たるものにした意味で重要です。また、カンタータで作曲した数百に及ぶアリアは、後年のオペラやオラトリオを生み出す上での作曲技法上の基盤になっただけでなく、多くのメロディを後年転用(パロディ)する意味でも大きな蓄えになったといえます。
Tu fedel, tu costante?(お前は誠実か、お前は貞節か)は、1707年にローマの貴族ルスポーリ卿の館に客人として遇されていたときの曲で、女性主人公が、恋人のフィレーノの気まぐれと不実を嘆き、彼が自分のもとを去ってしまうのではないかという不安を歌うものです。最後には、新しい恋人を捜すか、以前のように自由な気持ちになれるのなら、もう恋人なんて要らないという結末になります。
曲は、ヘンデルの器楽伴奏つきカンタータでは中庸な編成(2本のヴァイオリンと通奏低音)構成されています。ソナタと題された序曲で、主人公の不安な気持ちを表した後、いくつかの語りとアリアの組み合わせで、女性主人公の気持ちの動きを表していきます。
チェンバロ組曲 ホ長調よりプレリュード
G.F.Handel / Prelude from Suites for Cembalo E-Major
オラトリオ「メサイア」より アリア (I know that my redemer liveth 我は知る救い主は のちの日に 地の上に 立ちまさん)
G.F.Handel / Aria "I know that my redemer liveth" from Oratorio Messiah
イギリスに渡ってからのヘンデルは、オペラの作曲家として活躍する一方、自ら作曲したチェンバロ曲を使ってイギリス王室や貴族の子弟の音楽教師としても活動し、当時の実力者との関係を深めました。1720年には、これらの曲をまとめてチェンバロ曲集第1巻として出版しました。
チェンバロ組曲ホ長調は、その中でも「調子の良い鍛冶屋」付きとしてよく演奏されます。この組曲の前奏曲であるプレリュードをメサイアからのアリアの前奏と演奏します。
1742年に初演されたヘンデルのオラトリオの最高傑作といえる「メサイア」は、旧約・新約聖書の聖句を題材に、チャールズ・ジェネンズがまとめた極めて宗教色の色濃いもので、1611年の欽定訳聖書の力強く豊かな英語とジェネンズの全体構成の見事さが、この作品を際立たせています。メサイアは、ヘンデルの生前も死後も、今日に至るまでヘンデルの最高傑作として評価されていますが、それはこの優れたテキストに、ヘンデル定番のいきいきしたアリア、ダイナミックな合唱の組み合わせを適用しただけでなく、この作品の深い宗教性に答え、ヘンデルの他の作品に無いような一貫性と集中力がみなぎっているからに他ならないと思います。ヘンデルも「私は眼前に天国と偉大な神の姿を確かに見たように思った。」と言ったとも伝えられています。
メサイアは、3つの部分、「予言」、「受難」、「復活」からなっていますが、アリア"I
know that my redemer liveth"は、第3部の冒頭で、キリストの死に対する勝利、すなわち復活の確信を示すものとして歌われます。
オペラ 「セルセ」より序曲、レシタティーヴォ(Frondi tenere e belle 美しく繁り伸びよ)とアリア (Ombra mai fu 安らぎの木陰)
G.F.Handel / Overture, Recitativo"Frondi tenere e belle" and Aria "Ombra mai fu" from Opera ”Serse”
オペラは、教会における宗教曲を除いて、世俗音楽のなかでは最高の形態として持てはやされていました。ヘンデルはイタリア時代の後、1710年から1759年になくなるまでほぼ半世紀ロンドンで活躍しますが、前半はオペラ作曲家として30数曲のオペラを上演し、ロンドンオペラ界を引っ張る大活躍をしました。しかし、徐々にイギリスの聴衆は外国語でのオペラに飽き、英語での総合的な娯楽を求めだしました。ここでヘンデルはイタリア語のオペラに代わって、英語の劇的オラトリオというジャンルを創作し、劇場音楽の主力として1730年代の末からはこちらに軸足を移していくことになります。
オペラ「セルセ」はオペラ時代の最後期の1738年に初演されました。題名のセルセは、紀元前5世紀に実在したアケメネス朝ペルシャの王、クセルクセス1世のことです。この物語も歴史上のエピソードに基いています。ペルシャの王、セルセは、婚約者のある身でありながら、自分の弟のアルサメーナの恋人ロミルダに一目ぼれし、策略を使って弟を引き離し、ロミルダを自分の物にしようとしますが、ロミルダの父親の気転と一部始終を男性に扮装し見ていた婚約者アマストレの登場で、弟たちの結婚を祝福し、自分も婚約者と結婚すると宣言し幕となります。
充実した序曲で幕が上がると、ペルシャ王セルセが、プラタナスの大木の前に登場し、大木を見上げながら「美しく繁り伸びよ・・・」と器楽伴奏付のレシタティーヴォで語ります。そして、その枝葉の素晴らしさをたたえ、「こんな木陰は(オンブラマイフ)」と穏やかなアリアを歌うところから、この恋の横恋慕のドラマが始まります・・・。
オペラ「ジュリオ・チェーザレ」より レシタティーヴォ(E pur cosi in un giorno こうして、ただ一日のうちに)と アリア(Piangero la sorte mia辛い運命に涙溢れ)
G.F.Handel / Recitativo ”E pur cosi in un giorno”and Aria "Piangero la sorte mia" from Opera ”Giulio Cesare”
オペラ「ジュリオ・チェーザレ」は、ローマ皇帝ジュリアスシーザーとエジプトのクレオパトラを題材としたオペラで、ヘンデルの英国でのオペラ活動の絶頂期の1724年に作曲初演されました。物語はローマの皇帝ジュリアスシーザーが、競争相手ポンペーオを打ち破り凱旋したところから始まります。ポンペーオの妻コルネーリア、子セストのシーザーへのあだ討ちと、歴史上類を見ない魅力的な女性であるクレオパトラ、その弟でエキセントリックな性格で、シーザーを狙い、ポンペーオの未亡人コルネーリアを我が物にしようとするトロメーオたちが絡んでこのオペラは展開します。トロメーオは残忍で自分勝手な性格により、コルネーリアやセストからも反感を買い逆に殺害され、最後は、シーザーがクレオパトラにエジプト女王として王冠を与え、愛の二重唱を歌い平和の宣言をするところで幕が下ります。
レシタティーヴォとアリア「辛い運命に涙溢れ」は、クレオパトラが、弟のトロメーオ軍との戦いに敗れ捕虜として捕らえられた際に、切々と歌う嘆きの歌です。中間の部分では、弟の無法な行動に対して激しい怒りをぶつける曲想になり、ダイナミックな構成になっています。
4声の協奏曲 ニ短調より 第一楽章
G.F.Handel / Adagio from Concerto for four voices d-minor
マスク「アシスとガラテア」より レシタティーヴォ(Ye verdant plains青々とした平原)と アリア(Hush, ye pretty warbling choir しっ!あなたのすてきな歌声は)
G.F.Handel / Recitativo ”Ye verdant plains” and Aria "Hush, ye pretty warbling choir" from Mask ”Acis and Galatea”
4声の協奏曲ニ短調は、フルート、ヴァイオリン、チェロの3つのソロと通奏低音というアンサンブルでの協奏曲で、1715年にドイツを旅した折に作曲されたと考えられています。本日はアシスとガラテアのアリアへのプレリュード(序奏)として協奏曲の第1楽章アダージョを演奏します。ヴァイオリンとチェロが付点のリズムで伴奏を刻む上に、フルートがアリアの歌手のようなメロディを歌います。
アシスとガラテアは、ブリッジ伯爵の館でのマスク(仮面劇)として1718年に作曲、初演されました。この仮面劇は、恋に悩む妖精のガラテアの、思い焦がれる羊飼いアシスにもう一度会いたいと歌いだすところから始まる当時好まれた田園劇で、怪物や悪魔も登場し、怪物と戦い死んでしまったアシスを再生させようというガラテアが必死の思いが通じ、アシスは泉となってこの世に復活するという物語です。
レシタティーヴォとアリア"Ye verdant plains -- Hush, ye pretty warbling choir"は、ガラテアが、鳥に向かって、「さえずるのをやめて!素敵なさえずりは私の心の痛みと愛する人への思いを募らせる。」と歌うもので、フルートとヴァイオリンが奏でる鳥の鳴き声を、ガラテアが「しっ!」と制止するところから始まります。中間部では鳥たちのさえずりは止まり、「私のアシスのところに飛んでいって、連れ戻し、もう一度彼に会わせておくれ。」という気持ちのたけを歌います。
アンコールは、オペラ「リナルド」より、”私を泣かせてください”でした。 どうもありがとうございました。
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