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99th Concert
イギリス館で聴く 18世紀のクラリネットとシャリュモー
Salon Concert with Chalumeaux
and 18th Century Clarinet
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第108回
2021年8月11日(水) 16時開演 横浜市イギリス館
16:00 21st August 2021 at British House Yokohama
主催: MITSUEピリオドクラリネット研究会 / アンサンブル⼭⼿バロッコ
出演
満江 菜穂子(クラリネット、シャリュモー)
オランダ デン・ハーグ王立音楽院修了。18世紀オーケストラや、フライブルク・バロック・オーケストラなどのオーケストラで演奏。2011年帰国。東京文化会館においてモーツァルトの協奏曲を演奏。作曲当時のバセット・クラリネットを使用したその演奏は、「音楽の友」の演奏会評などで高く評価された。オーケストラ・リベラ・クラシカ、バッハ・コレギウム・ジャパン、オルケストル・アバン=ギャルド等のオーケストラ奏者。コンサートシリーズ「モーツァルトが愛した楽器」を主宰。昭和音楽大学講師。MITSUEピリオドクラリネット研究会主宰。
粟谷 明菜(クラリネット)
国立音楽大学卒業、同大学院修士課程修了。2019年に瀬木芸術財団より給付金を得て、ウィーン国立音楽大学マスタークラスに参加。クルト・フランツ・シュミット氏のレッスンを受講。同マスタークラス主催のコンペティションにて、第二位を受賞。 クラリネットを武田忠善、伊藤寛隆、大谷淳子、木原亜土の各氏に師事。第13回クラリネットアンサンブルコンクール一般部門第一位、並びにグランプリ受賞。現在、国立音楽大学大学院博士後期課程に在籍中。
飯塚 健太(クラリネット)
昭和音楽大学演奏家コースを卒業。芸劇ウインド・オーケストラ・アカデミーを経て渡仏。スコラ・カントルム音楽院にてアラン・ダミアン氏に師事。修了試験にて満場一致の一等賞の成績を収め帰国。2019年12月、ジャカルタ・モダン・アンサンブルの現代オペラ「The opera Gandari」に参加。\nデュオ・マリネ、Quartet I's メンバー。2021年は自主公演シリーズ「健太の部屋」を企画。
木原 亜土(シャリュモー)
国立音楽大学卒業。クラシック音楽に軸足を置きながらアルプス音楽のスペシャリストとしても活動。この分野では2014年以降オーストリア各地のイベントに招かれ現地のトップクラスの音楽家たちと共演を重ねる。2017年「東京シュピッツブアム」結成。クラシック奏者としてはこれまで4回リサイタルを開催。2010年と2012年にはスリランカ交響楽団より独奏者として招かれウェーバーの協奏曲などを共演。湘南音楽院藤沢講師。
品田 博之(バセット・クラリネット)
高校のオーケストラ部でクラリネットを始め、佐藤誠氏に指導を受ける。高校・大学と慶應義塾ワグネルソサイエティオーケストラ、卒業後はアマチュアオーケストラ新交響楽団に所属し今に至る。数年前にモダンバセットホルンを購入。緊急事態宣言下巣ごもり期間にモーツァルトのディベルティメントの一人多重録音とSNSを通じた不思議な縁で夢にまで見たピリオドバセットクラリネットを譲り受け古楽器に目覚める。
戸田 竜太郎(クラリネット、シャリュモー)
武蔵野音楽大学卒業。クラリネットを坂本由美子、柏野晋吾の両氏に師事。2016年より歴史的クラリネットの活動を開始し、同年ウルビーノ古楽音楽祭にてL.コッポラ氏のマスタークラスを受講。2018年ブルーニコ古楽アカデミーにてL.シュクリャーヴェル氏のマスタークラスを受講。これまでにアンサンブル・ジェネシス、オーケストラ・シンポシオン、バッハ・コレギウム・ジャパンなどの古楽オーケストラに参加。
野田 祐介(クラリネット)
パリ国立高等音楽院修了。群馬交響楽団首席奏者。第6回日本管打楽器コンクール・クラリネット部門入選、第3回日本クラリネットコンクール第3位入賞。プラハ放送交響楽団、ニューフィルハーモニー千葉(現千葉交響楽団)、群馬交響楽団、群馬バロックオーケストラと協奏曲を共演。なにわ《オーケストラル》ウィンズメンバー。群響団員による室内楽《Ensemble G》主宰。習志野シンフォニエッタメンバー。昭和音楽大学、桐朋学園大学音楽学部、各講師。
横田 揺子(クラリネット)
東京藝術大学音楽学部、ミュンヘン音楽大学、バーゼル市立音楽院卒業。クラリネットを小林利彰、村井祐児、山本正治、G.シュタルケ、F.ベンダの各氏に師事。室内楽を中心に活動、2008年より古楽器演奏にも携わる。一般社団法人日本クラリネット協会常務理事、東京藝術大学グローバルサポートセンター特任准教授。
渋谷圭祐(クラリネット)
昭和音楽大学卒業、同研究生修了。 昭和音楽大学大学院修士課程を、学⻑賞を得て修了。 第16回クラリネットアンサンブルコンクール⼀般部⾨において、第1位ならびにグランプリを受賞。クラリネットを堀川豊彦、中村克己、野田祐介の各氏に師事。2015年から3年間、テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラに在籍。 現在、広島ウインドオーケストラE♭クラリネット奏者、Quartet I’sメンバー。
山根孝司(クラリネット)
国立音楽大学、ベルギー王立フランダース音楽院、リエージュ音楽院でクラリネット、室内楽、作曲を学ぶ。ブリュッセルのアンサンブル・イクトゥス、パリのアンサンブル・アルテルナンスのクラリネット奏者として、数多くの現代音楽祭で演奏した。NHK交響楽団楽員。
曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
黒滝 泰道(バロック・チェロ)
矢島富雄、三木敬之、山崎伸子各氏の指導を受ける。慶應バロックアンサンブルOB。弦楽合奏団、古楽アンサンブルなどで活動。ザロモン室内管弦楽団メンバー。アンサンブル山手バロッコメンバー。
柳部
容子(チェロ)
8歳からチェロを始める。早稲田大学交響楽団を経て、大学卒業後は主にアマチュアオーケストラ新交響楽団に所属。アンサンブル・フィルムージカ・トウキョウではウィーンフィルやベルリンフィルの首席達をソリストに迎え、バロック音楽や古典派楽曲を演奏している。マスタークラス等で苅田雅治氏、ナターリャ・シャホフスカヤ氏に師事。第3回日本クラシック音楽コンクール全国大会秀演賞受賞。
寺村 朋子(フォルテピアノ)
東京藝術大学チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール山梨にてチェンバロ部門第2位入賞。イタリア、オーストリア、ベルギーなど国内外のアカデミーに参加して研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」に出演。宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会会員。ソロCD「Capriccioお気に召すまま」(レコード芸術準推薦)をリリース。YouTubeチャンネル「Cembaloチェンバロう!」にて演奏動画配信中。
アンサンブル山手バロッコ第99回演奏会
イギリス館で聴く 18世紀のクラリネットとシャリュモー
Salon Concert with Chalumeaux and 18th Century Clarinet
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第108回
プログラムノート
山手234番館の夏に恒例の古楽コンサートへようこそ。昨年は感染症の関係で開催ができませんでしたので、2年ぶりのコンサートになります。本日は、「バロック〜ロココの室内楽」と題して、山手234番館の親密な空間で、バロック〜古典派の少し前の時代に使われた木管フルート(フラウト・トラヴェルソ)、ガット弦のチェロとチェンバロによるアンサンブルを楽しみます。
♪ ♪ ♪
C.グラウプナー(1683-1760) :3本のシャリュモーのための組曲ハ長調 GWV401
Christoph Graupner : Ouverture a 3 Chalumeaux in C, GWV401
序曲 - エア・アフェトゥオーソ – メヌエット – ガボット – サラバンド -エコー
Ouverture ― Air
affettuoso ― Menuet ― Gavotte ― Sarabande ― Echo
アルト:満江 菜穂子 テナー:木原 亜土 バス:戸田
竜太郎
ザクセン出身、ハンブルク歌劇場を経てダルムシュタットの宮廷楽長を務めたグラウプナー。1723年バッハがライプツィヒの聖歌隊監督になる際彼より先にグラウプナーに声がかかったという事実からも、当時の評価の高さを窺い知る事ができます。本日取り上げるハ長調の組曲はアルト・テナー・バスの3種類のシャリュモーを用いた三重奏曲で、今回がオリジナル編成による本邦初演となります。編成の珍しさを理由に埋もれさせてしまうには惜しい佳品です。(木原)
J.B. ヴァンハル(1739-1813):クラリネット・ソナタ 第3番 変ロ長調 より 第1楽章
Johann Baptist Wanhal:Sonata
No.3 B-flat Major for Clarinet and Piano
アレグロ・モデラート
Allegro Moderato
クラリネット:粟谷 明菜 フォルテピアノ:寺村
朋子
ヴァンハルは18世紀に活躍したチェコの作曲家であり、主にウィーンで高く評価された人物です。この楽曲(クラリネット・ソナタ 変ロ長調)はクラリネットのために書かれた初期のソナタです。急-緩-急の全3楽章を通してピアノとクラリネットの掛け合いが非常に軽快で面白味のある作品です。今回演奏する第1楽章は明確なソナタ形式となっており、快活さとどこか陰りを帯びたような旋律を併せ持った楽章です。(粟谷)
J-X.ルフェーブル(1763-1829):クラリネット・ソナタ 第1番
Jean-Xavier Lefèvre : Sonate
pour clarinette et piano
アレグロ・モデラート – アダージォ – ロンド
Allegro Moderato ― Adagio ― Rondo
クラリネット:飯塚 健太 フォルテピアノ:寺村
朋子
ルフェーブルはパリオペラ座の首席クラリネット奏者を務めパリ音楽院初代教授でもありました。クラリネットを中心に木管楽器の曲を残しており、本日演奏される2曲のソナタを含む12のソナタが掲載されたクラリネット教本を1802年に出版しています。(品田)
ソナタ第1番:耳馴染みの良いメロディーが心地よいテンポで始まります。2楽章は物寂しいイ短調。曲中に何度か「# 」が出てきます。5鍵のクラリネットのその音は結構かすれて聞こえます。非常に味わい深い音なので、ぜひ耳を澄ませて聴いてもらいたいと思います。3楽章はロンド形式。軽やかな音と滑らかな音の対比が心地よく奏でられます。(飯塚)
C.P.E. バッハ(1714-1788):2本のクラリネットのための二重奏曲ハ長調 Wq.142/H.636
Carl Philip Emanuel Bach :Duet in C
Wq.142/H.636
アダージョ・エ・ソステヌート - アレグロ
Adagio e sostenuto – Allegro
クラリネット:渋谷 圭祐 クラリネット:山根
孝司
カール・フィリップ・エマニュエル・バッハは大バッハの次男で、フルート奏者のクヴァンツとともにベルリン宮廷のフリードリヒ大王に仕えたことで知られています。二重奏曲は「音楽時計またはバレル・オルガンのためのさまざまな小品」の一部として収録されていました。作曲の経緯は明らかではありませんが、エマニュエル・バッハがベルリンからハンブルクに居を移した1770年代に書かれたようです。手稿譜には「2本のクラリネットのための」と明記してあり、クラリネットのために作曲されたものを転用した可能性もあります。いずれにせよ、シンプルながらも愛らしいこの小品が、実演に堪えうるものであることは間違いないでしょう。(渋谷)
F. ドヴィエンヌ(1759- 1803):クラリネット・ソナタ 第2番 変ホ長調
François Devienne:Deuxième Sonate
pour Clarinette si♭ et piano-forte
アレグロ
コン・スピリトーソ – アダージョ - ロンド・アレグロ
Allegro con spiritoso ― Adagio ― Rondeau
Allegro
クラリネット:横田 揺子 フォルテピアノ:寺村
朋子
ドヴィエンヌはパリ音楽院のフルートの教授を務めた人物です。フルートやファゴットの協奏曲はじめ、室内楽曲や吹奏楽曲を多く作曲し、優雅な作風が人々から好まれました。クラリネットがらみではフルートとの二重奏、クラリネット2本の二重奏、フルートとファゴットの三重奏、そしてソナタは2曲あります。本日はクラリネット・ソナタ 第2番をセゲルケ製の9キィグレンザーの復元楽器で演奏します。(横田)
F=A. ボワエルデュー(1775-1834) :クラリネット・ソナタ 変ホ長調
より第2楽章
François=Adrien Boieldieu : Sonate pour Clarinette et Piano
Mi bémol majeur, Andante
con Variazioni
アンダンテと変奏曲
Andante con Variazioni
クラリネット:野田 祐介 フォルテピアノ:寺村
朋子
ボワエルデューはフランス・ルーアン出身の作曲家。このソナタは元々ヴァイオリン・オブリガート付きのハープまたはピアノのためのソナタで、ボワエルデューがロシア帝室作曲家としてサンクトペテルブルクに赴任した1803年に作曲されました。数年してパリに戻り、ロッシーニの出現まではオペラ作曲家として人気を得ていました。1814年、パリにあったイタリア歌劇場の名クラリネット奏者ガンバロの助言を受けてクラリネット・ソナタに改訂しました。ガンバロは13鍵のクラリネットを使用していたそうです。今日使用する楽器は5鍵なので、半音階の多い第1楽章は無理と判断、第2楽章のみ演奏します。(野田)
J-X.ルフェーブル(1763-1829):クラリネット・ソナタ第7番
Jean-Xavier Lefèvre : Sonate
No.7 pour clarinette et piano
アレグロ・マ・ノン・トロッポ
– アダージョ – ロンド・アレグレット
Allegro ma non troppo ― Adagio
― Rondeau Allegretto
クラリネット:品田 博之 チェロ:柳部
容子
ルフェーブルはパリオペラ座の首席クラリネット奏者を務めパリ音楽院初代教授でもありました。クラリネットを中心に木管楽器の曲を残しており、本日演奏される2曲のソナタを含む12のソナタが掲載されたクラリネット教本を1802年に出版しています。ソナタ第7番はバロック舞曲風の両端楽章と、モーツァルトを思わせるメロディメーカーであるルフェーブルの面目躍如たる美しい旋律による緩徐楽章で構成されています。本日は普通の楽器より4度低い音まで出せるバセット・クラリネットで演奏しますので独特の低音域にもご注目ください。(品田)
G. シローリ(1722-1781):クラリネットと通奏低音のためのソナタ
変ロ長調
Gregorio Sciroli : Sonata B♭
major for Clarinet and Basso continuo
アレグロ・モデラート - ラルゴ - アレグロ
Allegro moderato – Largo – Allegro
クラリネット:戸田 竜太郎 チェロ:黒滝
泰道 フォルテピアノ:寺村 朋子
シローリは1723年にイタリア・ナポリに生まれました。オペラブッファの作曲家としてナポリで活躍したあとシチリア・パレルモの音楽院で音楽監督を務め、そのあと北イタリアに移りボローニャ・ミラノ・ヴェネツィア・ピサ・ジェノヴァで活躍したことが記録されています。いくつか残されている器楽作品の中にクラリネット・ソナタがあり、18世紀のイタリアにおけるクラリネットのための数少ない作品です。(戸田)
C. P. E. バッハ (1714-1788):フルート、クラリネット、チェロとフォルテピアノのための四重奏曲イ短調 Wq.93/H537
C. P. E. Bach :Quartet for Fortepiano, Flute, Clarinet and
Violoncello in a-minor Wq93/H537
アンダンティーノ
– ラルゴ・エ・ソステヌート – アレグロ・アッサイ
Andantino - Largo e sostenuto - Allegro assai
フルート:曽禰 寛純 クラリネット:満江
菜穂子 チェロ:黒滝 泰道 フォルテピアノ:寺村 朋子
四重奏曲イ短調は、エマニュエル・バッハの最晩年にベルリンの演奏家サラ・レヴィの依頼により1788年に作曲されました。モーツァルトが宮廷作曲家になった円熟の時、バッハの周辺でもクラリネットが活躍するなど音楽も大きく変化しており、古典派の形式への転換が見えます。鍵盤楽器(フォルテピアノ)が中心的役割で、フルート、ヴィオラ(本日はクラリネットで演奏)が対旋律で掛合い、また和声を支えます。(曽禰)
お客様のお帰りになったあと、演奏メンバーが集合し、息をひそめて記念撮影をいたしました。
ありがとうございました。
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