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98th Concert
山手西洋館サマーフェスティヴァル
バロック〜ロココの室内楽
Baroque and Rococo Ensemble
Music
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第107回
2021年7月18日(日) 15時開演 山手234番館
15:00 18th July 2021 at Yamate 234 House
主催:横浜市緑の協会・山手234番館 協力:アンサンブル山手バロッコ
出演
清野 由紀子(フラウト・トラヴェルソ)
昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。アンサンブル山手バロッコメンバー。
曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
黒滝 泰道(バロック・チェロ)
矢島富雄、三木敬之、山崎伸子各氏の指導を受ける。慶應バロックアンサンブルOB。弦楽合奏団、古楽アンサンブルなどで活動。ザロモン室内管弦楽団メンバー。アンサンブル山手バロッコメンバー。
和田 章(チェンバロ)
小林道夫氏にチェンバロを師事。慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
アンサンブル山手バロッコ第98回演奏会
山手西洋館サマーフェスティヴァル
バロック〜ロココの室内楽
Baroque and Rococo Ensemble Music
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第107回
プログラムノート
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
山手234番館の夏に恒例の古楽コンサートへようこそ。昨年は感染症の関係で開催ができませんでしたので、2年ぶりのコンサートになります。本日は、「バロック〜ロココの室内楽」と題して、山手234番館の親密な空間で、バロック〜古典派の少し前の時代に使われた木管フルート(フラウト・トラヴェルソ)、ガット弦のチェロとチェンバロによるアンサンブルを楽しみます。
♪ ♪ ♪
P.ロカテッリ(1695-1764)
Pietro Locatelli
2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 作品5−2
Sonata for two flutes and basso continuo in e-minor Op5-2
ラルゴ–アンダンテ–アレグロ–アレグロ
Largo – Andante – Allegro – Allegro
ピエトロ・ロカテッリは、イタリアのベルガモ生まれのヴァイオリンの名演奏家・作曲家です。14歳でベルガモの器楽アンサンブルに入り、16歳のときにローマに移り有名なヴァイオリン演奏家にして作曲家であるコレッリに師事しました。コレッリとヴィヴァルディの作風をもとに、室内楽や協奏曲を作り、欧州中で演奏活動を続けましたが、1729年にオランダのアムステルダムに移り住み、亡くなるまでオランダで活動しました。
演奏する作品5のトリオ・ソナタは、オランダ時代の1736年に出版された6曲のソナタからなる曲集です。旋律楽器はフルートでもヴァイオリンでも良いと書かれていますが、フルートの吹けない低音域や重音は避けられていますので、フルート愛好家への販売も重視したのかもしれません。演奏するホ短調のトリオは、短い序奏ののち、短・長のペアの音符を組み合わせたロンバルディア風のリズムで始まるアンダンテ、2つの旋律楽器が巧みに絡み合うアレグロ、最終楽章の舞曲風アレグロの構成になっています。
J.S.バッハ(1685-1750)
Johann Sebastian Bach
チェンバロ独奏のためのアルマンド
イ短調 BWV1013
Allemande for Cembalo solo in a-minor BWV1013
ヨハン・セバスチャン・バッハはバロック時代を代表するドイツの作曲家にして鍵盤楽器の名手です。アンサンブルの中では鍵盤楽器以外に、曲全体が見渡せるヴィオラを演奏したと伝えられています。自分の楽器であるチェンバロやオルガンのためのソナタや組曲に加えて、ヴィオラの両脇のヴァイオリンとチェロのために優れた無伴奏曲を作ったことで有名です。管楽器については、唯一フルート独奏のための無伴奏パルティータ(組曲)が残されています。ヴァイオリンやチェロの無伴奏曲は、バッハや弟子の手によりチェンバロやリュートでの演奏曲として(多声部のフーガや暗示的な対位法などをより直接的な声部や和音として加えるなど)編曲したものが残されています。
フルートの無伴奏曲はこのような編曲が残されていないことから、グスタフ・レオンハルトがチェンバロ独奏に編曲しレコーディングしています。レオンハルトは現代におけるチェンバロの復興の中心となる演奏家で、この楽譜が2012年の没後に遺族からの提案で公開されました。本日は第1楽章アルマンド演奏します。フルートの単旋律だった曲が、まるで初めからチェンバロで演奏するために書かれたと錯覚するほど見事な仕上がりになっています。
F. ドヴィエンヌ(1759-1803)
François Devienne
2本のフルートとチェロのためのトリオ イ短調 作品19-4
Trio in a-minor for two Flutes and Violoncello OP.19-4
アレグロ コン・エスプレッシオーネ
– ロンド モデラート
Allegro con espressione –
Rondo moderato
フランソワ・ドヴィエンヌは、モーツァルトより3歳年下のフランスの音楽家、フルートとファゴットの名手で、たくさんの合奏曲や協奏曲を残しました。その伸びやかな曲想と40余歳で夭折したことも相まって、フランスのモーツァルトとも呼ばれました。
イ短調のトリオは、1798年に出版された作品19の6つのトリオの第4曲に納められている曲で、バロックを大きく飛び出し「速く、感情豊かに・・」という第1楽章の表記にあるように新しい時代を感じさせる曲です。第1フルートを中心にメランコリックな曲想で作られていますが、時に2本のフルートが寄り添い、歌い合う第1楽章とロンド形式の第2楽章の2つの楽章から構成されています。全曲でチェロも一部でメロディーを受け持ち活躍するなど通奏低音の時代からの変化を感じさせます。
L. ボッケリーニ
Luigi Boccherini
チェロと通奏低音のためのソナタ ハ長調 G.6
Sonata in C major,for Cello and Basso
continuo G.6
アレグロ - ラルゴ
- アレグロ・モデラート
Allegro - Largo - Allegro moderato
ルイジ・ボッケリーニは、イタリア生まれの当代のチェロ名手、作曲家として活躍しました。チェロ/コントラバス奏者の父親のもとで学び、13歳で演奏家としてデビューし、20歳でウィーン宮廷へ仕え、高い評価を獲得しました。その後、パリの有名なコンセール・スピリチュエルでのコンサートをはじめとして、欧州中で演奏活動を行いました。26歳の時、スペインの宮廷に招かれ、それ以降、生涯をスペインで過ごしました。
チェロを中心とした多数の室内楽を残していますが、チェロと通奏低音のためのソナタは、おおらかな曲想と超絶技巧が散りばめられています。演奏するハ長調のソナタもハイドン風の作風ながらのびやかな旋律や和声展開の上に、当時のチェロでは画期的な技巧が散りばめられており、聴き応えがあります。
J.S.バッハ
Johann Sebastian Bach
2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調 BWV1028
Sonata for two Flute and Basso continuo in D-major BWV1028
アンダンテ
– アレグロ – アンダンテ – アレグロ
Andante – Allegro – Andante – Allegro
最後に演奏するバッハの2つのフルートと通奏低音のためのソナタは、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタをこの編成のために再構成したものです。バッハのヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタは、ライプチッヒ時代の作と考えられており、3曲が残されていますが、その1曲(ト長調)は原曲(2本のフルートと通奏低音のためのソナタ)とライプチヒ時代の自筆譜が残されています。そこで、本日はこの形に従って、逆にヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの曲を、2本のフルートと通奏低音(チェロ、チェンバロ)に戻す試みという訳です。
原曲のニ長調のソナタは、(低音域が拡大された)7弦のヴィオラ・ダ・ガンバを想定したもので、チェンバロの右手がもう1つの旋律を、左手が低音を担当します。本日演奏する形では、ヴィオラ・ダ・ガンバの声部は、原曲より高い音域で、しかもチェンバロの右手を担当するフルートと、同じ楽器同士の2本の旋律が響き合う新鮮な曲に仕上がりました。瞑想的な第一楽章で始まり、活発な第二楽章に続いて、息の長い旋律が歌い交わされる深い味わいを持つ第三楽章が印象的です、最後は技巧的な独奏部分が挟み込まれた協奏曲のような第四楽章で曲を閉じます。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
テレマンの2つのフルートと2つのチェロのための四重奏曲からディヴェルティメントをお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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