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95th Concert
アンサンブル山手バロッコ第95回演奏会
曽禰愛子メゾソプラノリサイタル
春へのあこがれ
“Sehnsucht nach dem Frühling”
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第103回
2021年3月23日(火) 19時開演 横浜市イギリス館
2021年3月24日(火) 19時開演 東京オペラシティ 近江楽堂
19:00 23rd March 2021 at
British House Yokohama
19:00 24th March 2021 at Ohmi Gakudo
主催:アンサンブル山手バロッコ 協力:クラングレーデ・コンサート事務局
出演
曽禰 愛子(メゾソプラノ)
鹿児島国際大学短期大学部音楽科、同専攻科卒業。洗足学園音楽大学大学院 音楽研究科修了。第28回鹿児島新人演奏会、第85回横浜新人演奏会出演。第32回国際古楽コンクール〈山梨〉ファイナリスト。スイス・バーゼル音楽院スコラ・カントルムにてBachelor及びMasterを修了し、現在も同学院に在籍し研鑽を積んでいる。これまでに声楽を川上勝功、ウーヴェ・ハイルマン、ゲルト・テュルク、ローザ・ドミンゲスの各氏に師事。ルネサンスからバロック、ロマン派のドイツリートなど幅広い時代の作品をレパートリーとし、ソリストとしてまた声楽アンサンブルメンバーとして活動しており、ヨーロッパ各地でのコンサートに参加。バッハのカンタータ、C.P.E.バッハ マニフィカート、C.グラウプナーのオラトリオ、モーツァルト レクイエムのソリスト等を務める。ヴォーカルアンサンブル・ヴィクトリア、Affetti mvsicali、La Cetra Barockorchester & Vocalensemble Basel メンバー。
瀧井 レオナルド (リュート、テオルボ)
日系ブラジル人三世。サンパウロ州立大学クラシックギター科卒業。バーゼル・スコラ・カントルムで名手ホプキンソン・スミス氏のもとリュートを学び、学士号及び修士号を取得。欧州、ブラジル各地や日本国内でソロコンサートを開催し、2014年サンパウロ州立音楽院に招かれリュート属楽器のマスタークラスを開催。2020年東京藝術大学古楽科にて特別講座を担当。つのだたかしや波多野睦美とのデュオで好評を博す他、通奏低音にも長け、R.ヤコブス、R.アレッサンドリーニ等著名な音楽家の監修/指揮するアンサンブルで多数演奏。2017年秋に日本へ移住後は国内の主要なオーケストラとも多数共演。佐藤裕希恵とのデュオ《ヴォクス・ポエティカ》では独自の世界観を追求。研ぎ澄まされたアンサンブルで聴く人を魅了し、CD『テオルボと描く肖像』はレコード芸術特選盤に選出。 公式サイト www.voxpoetica-duo.com
寺村 朋子(チェンバロ、フォルテピアノ)
東京芸術大学チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール山梨にてチェンバロ部門第2位入賞。イタリア、オーストリア、ベルギーなど国内外のアカデミーに参加して研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」に出演。その他バロックダンスとのセッションや声楽マスターコースの伴奏など様々な分野で多くの団体と演奏活動を行う。トリム楽譜出版より、「フルートバロックソナタ集」「J.S.バッハ作品集」(増刷)を編曲、出版。チェンバロソロCD「Capriccioお気に召すまま」(レコード芸術準推薦)リリース。宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会会員。YouTubeチャンネル「Cembaloチェンバロう!」を開設し演奏動画配信中。
アンサンブル山手バロッコ第95回演奏会
曽禰愛子メゾソプラノリサイタル
春へのあこがれ
“Sehnsucht nach dem Frühling”
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第103回
プログラムノート
(曽禰愛子)
「曽禰愛子メゾソプラノリサイタル 春へのあこがれ」にお越しいただきましてありがとうございます。本日のコンサートは、バロック初期〜ロマン派時代のドイツリートまで時代を巡りながら、恋の季節、春へのあこがれをテーマに様々な愛の歌をお届けします。
♪ ♪ ♪
T.モーリー/「恋に落ちた若者と彼女」
T.Morley/“It was a lover and his lass”
まず最初にお届けするのは3曲のリュートソングです。
トマス・モーリー Thomas Morley (1557/58-1602) は、イギリスを代表する劇作家・詩人であるシェイクスピアと同じ時代を生きた作曲家で、「恋に落ちた若者と彼女(It was a lover and his lass)」もシェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』の中で歌われる劇中歌です。軽快なリズムと「ヘイノニノ」「ディンディンディン」といった囃し言葉を用いて、恋人たちの愛する春を歌い上げます。
J.ダウランド/ 「流れよ水晶の涙よ」、「悲しみよ、とどまれ」
J.Dowland/“Go crystal tears”,“Sorrow, stay”
続く2曲は同じくイギリスのリュートソングの大家、ジョン・ダウランド John Dowland
(1563-1626)の作品です。『涙のパヴァーヌ』の愛称で知られ、当時大変な流行歌となった「流れよ我が涙(Flow, my tears)」に代表されるように、メランコリックな作品が印象的なダウランドですが、今回演奏する「流れよ水晶の涙よ(Go, crystal
tears)」「悲しみよ、とどまれ(Sorrow, stay)」もそんなダウランドの魅力を満喫できる愛と悲しみを歌った楽曲です。
C.モンテヴェルディ/「アリアンナの嘆き」
C.Monteverdi/“Lamento d’Arianna”
テオルボとチェンバロの通奏低音でお聞き頂くのは、クラウディオ・モンテヴェルディ Claudio
Monteverdi (1567-1643) の「アリアンナの嘆き(Lamento d’Arianna)」です。モンテヴェルディは最初のオペラ作曲家としても有名ですが、このアリアンナの嘆きは彼の失われたオペラ作品『アリアンナ』の中で唯一残された傑作のアリアです。その後何人もの作曲家が同じ歌詞に作曲し、またモンテヴェルディ自身もこれを5声のマドリガーレに編曲するなど、当時大変人気を博した曲でした。クレタ島のアリアンナは愛するテセオと共にアテネに向かう途中、寄港したナクソス島で彼に置き去りにされてしまいます。そのときの彼女の悲しみや嘆き、怒りや絶望を感性豊かに表現した楽曲です。
M.A.チェスティ/「私の憧れの人のまわりに」(『オロンテーア』より)
M.A.Cesti /“Intorno all‘idol mio” (from “Orontea”)
前半の最後には、愛にまつわる また違った感情を歌い上げる2曲のオペラアリアをお届け致します。
アントニオ・チェスティ
Antonio Cesti (1623-1669) のオペラ『オロンテーア(Orontea)』は、エジプト女王オロンテーアが、フェニキアの王宮から逃れてやってきた若い画家のアリドーロに身分違いの恋をする物語です。最後にはこのアリドーロが実は長い間行方知れずとなっていたフェニキアの王子であることがわかり、オペラはハッピーエンドで終わるのですが、「私の憧れの人のまわりに(Intorno all‘idol
mio)」は、女王オロンテーアが秘めていた自らの愛を初めて吐露し、それを告白する手紙と王冠を眠っているアリドーロに託す場面のアリアで、彼女の愛の苦悩と切ない想いが美しいメロディに乗せて歌われます。
G.F.ヘンデル/「恐ろしい地獄の残忍なる怒りよ」(『セルセ』より)
G.F.Handel/”Crude furie degl‘orridi abiss”i (from “Serse”)
一方、ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル Georg Friederich
Händel (1685-1759) による後期のオペラ作品『セルセ(Serse)』は、古代ペルシャを舞台に好色な王セルセが引き起こす、男女5人の愛と嫉妬の物語が描かれた作品です。「恐ろしい地獄の残忍なる怒りよ(Crude furie degl‘orridi abissi)」は物語のクライマックス、最終場の直前にセルセ王によって歌われる怒りに満ちたアリアです。本来の婚約者を差し置いてセルセが思いを寄せ、結婚しようと画策していたお相手の女性ロミルダは、セルセの目論みをよそに彼女が真に愛するセルセの弟・アルサメネと結婚してしまいます。そのことを知ったセルセが身勝手にも嫉妬と怒りに狂う様子を、ヘンデルは激しいコロラトゥーラを伴った音楽で表現しました。とはいえ物語の最後には、事の次第を密かに全て見ていた婚約者アマストレによってセルセ王の企みが暴かれ、全て元の鞘に戻り大団円となります。
L.v.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ ハ短調 作品13「悲愴」より第3楽章 ロンド(アレグロ)
L.v.Beethoven/ Piano Sonata in C minor Op.13 “Sonata Pathétique”
3rd Movement Rondo: Allegro
後半は少し時代の歩みを進め、フォルテピアノの伴奏による音楽をお楽しみ頂きます。まずフォルテピアノのソロで演奏するルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig
van Beethoven(1770-1827)のピアノソナタ第8番「悲愴」は、1797〜98年頃に作曲されました。この曲は、ベートーヴェンの有名なピアノソナタの中では、最も若い時期に作曲された曲で、演奏する第3楽章のようにフォルテピアノでの演奏が効果的で新しい表現を持つ一方で、学んできた伝統的なバロックの様式(教会ソナタ)も取り入れています。
F.シューベルト/「春に」
F.Schubert/“Im Frühling”
フランツ・シューベルト Franz
Schubert (1797-1828)、ロベルト・シューマン Robert Schumann (1810-1856)、そしてヨハネス・ブラームス Johannes
Brahms (1833-1897) は、三人とも数多くの歌曲を残したドイツリートの分野を代表する作曲家ですが、今回は「春へのあこがれ」にちなんで、春の季節を思わせる曲を中心に演奏致します。シューベルトの「春に(Im Frühling)」はそのタイトル通り美しい春の情景の描写から始まりますが、うきうきとした新たな恋を歌う曲ではなく、実は無くした恋を歌う曲です。とはいえその悲しみに沈むというよりは、春の美しい自然の中で昔の恋の楽しい思い出を懐かしく思い出すような、しみじみとした味わいのある楽曲になっています。
R.シューマン/「三月すみれ」、「くるみの木」
R.Schumann /“Märzveilchen”,“Der Nussbaum”
シューマンの「三月すみれ(Märzveilchen)」と「くるみの木(Der Nussbaum)」はどちらも春の植物の様子が題材になった歌です。「三月すみれ」はまだ寒さの残る早春に雪の中に咲く花で、若者の目に映った青い瞳の少女の微笑みをそれになぞらえて、恋の始まりの予感を歌います。「くるみの木」はシューマンの歌曲の中でもとりわけ有名なものの一つで、連作歌曲『ミルテの花(Myrten)』の中の1曲です。青々と葉を広げ可愛らしい花をつけた
くるみの木の下で想いに耽る乙女心を愛らしくも美しく描いています。『ミルテの花』は妻であるクララに結婚の前日に贈られた作品であり、シューマン自身の愛の喜びを映したかのような、優しさに満ちた楽曲になっています。
J.ブラームス/「セレナーデ」、「永遠の愛について」
J.Brahms / “Ständchen”,“Von ewiger Liebe”
そんなシューマンの妻・クララとも関わりの深かったブラームスは、心の痛みや人間の孤独といった暗く重いテーマを扱った作品を数多く残した作曲家でしたが、今回演奏する「セレナーデ(Ständchen)」は微笑ましく爽やかなメロディが美しい作品です。通常セレナーデというと、恋する男性が意中の女性へ向けて窓の下から想いを伝える愛の歌ですが、この曲はその情景を外から眺めている、というものになっています。
最後に演奏する「永遠の愛について(Von ewiger
Liebe)」はブラームスらしく、暗く沈んだ情景描写から始まりますが、愛について語らう恋人同士の対話が多彩に変化して歌われていく楽曲です。自分たちの愛は所詮儚いものだと、焦りや不安から半ば投げやりに歌う男に対して、娘は自分たちの愛は永遠なのだと希望に満ちて歌い上げ、伴奏も呼応するように力強く重厚な響きを添えて曲を締めくくります。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
全員で最初にお聴きいただいたT.モーリー/「恋に落ちた若者と彼女」をお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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