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87th Concert
アンサンブル山手バロッコ第87回演奏会
西洋館で味わう
チェンバロと室内アンサンブルによる〜音楽の捧げもの〜
“Musical Offering” with
Cembalo and Chamber Ensemble
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第93回
横浜山手西洋館サマーフェスティバル 外交官の家バロック・コンサート
2019年9月22日(日) 18時開演(17時30分開場) 外交官の家
1800 22nd September 2019 at Gaikoukan-no-ie
主催:公益財団法人 横浜市緑の協会/外交官の家
出演
大村 千秋(チェンバロ)
東京藝術大学大学院古楽科を大学院アカンサス賞を得て修了。2009年度文化庁新進芸術家海外研修員としてオランダに留学、アムステルダム音楽院チェンバロ科およびフォルテピアノ科にて学ぶ。第21回古楽コンクール山梨において最高位受賞。帰国後は、チェンバロのみならず、フォルテピアノ、クラヴィコード、ポジティフオルガン等様々な鍵盤楽器に取り組み、ソリストとして、また通奏低音・アンサンブル奏者として演奏を行うほか、後進の指導にも力を注いでいる。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。http://www.chiakiomura.wordpress.com
坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。国立音楽大学、上野学園中学校・高等学校非常勤講師。日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会会員。実家は浅草で靴製造業を営んでいる。古くから靴職人には芸術家が多いそうである。ハンス・ザックス、デル・エンシーナ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバの名手マラン・マレも靴屋の子であった。関係があるか定かではないが、靴に囲まれて育った環境が今の自分をささえていると多少思っている。
曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
角田 幹夫(バロック・ヴァイオリン)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得。現在、カメラータ・ムジカーレ同人、NHKフレンドシップ管弦楽団団員。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
アンサンブル山手バロッコ第87回演奏会
西洋館で味わう
チェンバロと室内アンサンブルによる〜音楽の捧げもの〜
“Musical Offering” with
Cembalo and Chamber Ensemble
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第93回
横浜山手西洋館サマーフェスティバル 外交官の家バロック・コンサート
プログラムノート
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
J.S.バッハ
Johann Sebastian Bach
「音楽の捧げもの」より 3声のリチェルカーレ BWV1079
(チェンバロ独奏)
Ricercar a 3 from "The Musical Offering" BWV1079
本日は、J.S.バッハ(1685〜1750)がプロイセンの王フリードリヒ大王(1712〜1786)の宮廷に招待された機会につくられた曲集「音楽の捧げもの」を中心に、関係した曲をお届けします。バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエル(1714〜1788)は宮廷チェンバロ奏者としてフリードリヒ大王に仕えていましたが、大王から、エマヌエル・バッハの父であり、鍵盤楽器(オルガン、チェンバロ)の名手にしてフーガ作曲の大家の大バッハを招きたいということになり、1747年にバッハは長男のウィルヘルム・フリーデマン(1710〜1784)を伴ってベルリン郊外のポツダムにある宮殿を訪ねました。フリードリヒ大王は、当時のフルートの名手J.J.クヴァンツ(1697〜1773)を召しかかえ師事し、自らも上手にフルート演奏するだけでなく、数百曲のフルート曲を作曲し、宮廷音楽会でも演奏するほどの音楽好きでした。進歩的な啓蒙思想を進める大王の宮廷の音楽は新しいギャラント様式の軽やかでダイナミックかつ分かりやすいものが好まれました。
1747年5月7日、大王は、バッハが到着するや否や音楽室に招き入れました。バッハは、即興演奏を披露したあとに、王にフーガの主題を与えて欲しいとお願いし、その主題(王の主題)に基づいてフーガを即興で作曲・演奏し、宮廷の人々を感嘆させました。この主題での即興の演奏に満足せず、バッハはライプチッヒに帰った後、3声と6声のフーガ(リチェルカーレ)、各種のカノンとトリオソナタを完成させ、一冊の曲集「音楽の捧げもの」として印刷し、7月には大王に献呈しました。
曲集の冒頭におかれた3声のリチェルカーレは、バッハが宮廷で即興的に王の主題に基づいて作曲した3声のフーガと思われます。王の主題をもとに3声のフーガを自由な形式で展開するのが特徴です。リチェルカーレとはフーガの古称で、言葉の意味は「探し求める」で、主題に基づき発展的、即興的に作られるフーガ形式の曲のことです。献呈の辞にバッハは“Regis Iussu Cantio Et
Reliqua Canonica Arte Resoluta”(王の命により主題とその応用をカノンの技法で解決)と書きました。この文の謎解きは、その頭文字を並べるとRICERCAR(リチェルカーレ)となっていることです。この3声のリチェルカーレをお聴きいただき、フリードリヒ大王と大バッハの出会いを味わいましょう。
G.Ph.テレマン
G.Ph.Telemann
ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ト長調 TWV42G:10
Sonata for Violin, Viola da gamba and Basso continuo in G-Major
TWV42G:10
カンタービレ – ヴィヴァーチェ – アフェッツオーソ - アレグロ
Cantabile – Vivace – Affettuoso – Allegro
テレマンは、バッハがポツダムを訪問したときには、ハンブルクの音楽監督として活躍し、作曲した楽譜の出版でも欧州中に知れ渡る流行作曲家でした。バッハとは若い時から親交が深く、次男エマニュエル・バッハの名付け親でもあり、死後はエマニュエル・バッハがテレマンの後任として、ハンブルクの音楽監督に就任するなどバッハ家との関係は長く続きました。一方で、ベルリンの宮殿との関係では、クヴァンツは、大王のための音楽帳にテレマンの曲を取り入れるほど、テレマンの作曲家としての力量、フランスとイタリアの様式を取り入れたドイツならではの混合様式を高く評価していました。テレマンも当時のフルートで演奏するのが難しいハ短調、ホ長調などの調性からなる曲集があり、フルートの名手としてのフリードリヒ大王とクヴァンツに献呈されたのではないかととも言われています。演奏するヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタは、1730年代末から40年代初めの筆写譜で伝えられており、ドイツの宮廷楽団の職業演奏家のために作曲されたものと考えられています。
J.S.バッハ
Johann Sebastian Bach
「音楽の捧げもの」より フルート、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調BWV1079
Sonata sopr'il Soggetto Reale in c-minor from "The Musical
Offering" BWV1079
ラルゴ - アレグロ - アンダンテ - アレグロ
Largo - Allegro - Andante - Allegro
トリオリオソナタ ハ短調は音楽の捧げものにリチェルカーレと共に収められた大作です。大王の愛する楽器フルートとヴァイオリン、通奏低音のためのソナタで、フリードリヒ大王の宮廷のギャラントな趣味を取り入れながらも、声部や楽器の掛け合いなどフーガの手法が駆使されており、対位法の名人として招かれたバッハの面目躍如な曲と言えましょう。この曲はいくつかの不思議があります。ポツダムで愛好されていた緩-急-急の3楽章の形式でなく、伝統的な緩-急-緩-急の4楽章の教会ソナタの形式で書かれていること、クヴァンツのフルート奏法の著書の中でも、余程の自信がなければ人前で演奏するべきでない難しい調性(ハ短調)で書かれている難曲であることです。♭3つのハ短調は、当時のD管フルート(そのまま吹くとニ長調)からみると♭5つに相当する指使いや音程が難しく滑らかな演奏が困難な調性です。
C.P.E.バッハ
Carl Philipp Emanuel Bach
ディヴェルティメント ト長調 H.642
Divertimento in G-Major H.642
アレグロ – ラルゴ・ウン・ポコ・アンダンテ – テンポ・ディ・メヌエット
Allegro -Largo un poco Andante –
Tempo di Minuetto
バッハを宮廷で迎えた次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作曲したディヴェルティメント ト長調は、宮廷の好みのフルートを中心とした軽やかな曲です。フルートの付点のリズムと弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ)のスタカートで始まるアレグロに、フルートがオペラアリアのように歌うアンダンテが続き、メヌエットのテンポでフルートと弦楽器がそれぞれに活躍する終曲で軽やかに締めくくります。王様の宮廷の趣味と一致したこの曲と大バッハの曲との対比もお楽しみください。
W.F.バッハ
Willhelm Friedeman Bach
ファンタジー イ短調 F.23
Fantasie in A minor F.23
大バッハに随行した長男ウィルヘルム・フリーデマンは、幼いころから父バッハに英才教育を受けました、パイプオルガンを含む鍵盤楽器の演奏や作曲など教えるために、インヴェンションとシンフォニア、平均律クラヴィーア曲集など、バッハの代表作もこの教育の機会に関連したものです。この英才教育(父親の期待)と、変わりつつある音楽の趣味(息子の時代)との間に挟まり、メランコリックな人生を送ったフリーデマン、2つの時代の間の葛藤をエネルギーとしたような、チェンバロ独奏のためのファンタジー イ短調をお届けします。
J.S.バッハ
Johann Sebastian Bach
「音楽の捧げもの」より 6声のリチェルカーレ BWV1079
(アンサンブル)
Ricercar a 6 from "The Musical Offering" BWV1079
6声のリチェルカーレは、大王の御前の即興演奏で(その主題がフーガを作りにくい特徴を持っていることもあり)果たせなかった、大王の主題による6声のフーガで、3声のリチェルカーレと異なり、壮大な構想と緻密な対位法で作られており、大変に聴きがいがあります。本日は、フルート、ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバで3つの声部を、チェンバロが3つの声部を分担するアンサンブルの形式で演奏します。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
音楽の捧げものから無限カノンをお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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