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82nd Concert
アンサンブル山手バロッコ第82回演奏会
洋館サロンで味わう
バッハとアーベルの音楽会
Bach & Abel Concert
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第86回
横濱・西洋館de古楽2019 オープニング・コンサート
2019年2月2日(土) 18時開演(17:30 開場) 山手111番館
Feb. 2nd, 2019 at Yamate
111
主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会
協力:アンサンブル山手バロッコ
出演
坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。
国立音楽大学、上野学園中学校・高等学校非常勤講師。日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会理事。
実家は浅草で靴製造業を営んでいる。古くから靴職人には芸術家が多いそうである。ハンス・ザックス、デル・エンシーナ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバの名手マラン・マレも靴屋の子であった。関係があるか定かではないが、靴に囲まれて育った環境が今の自分をささえていると多少思っている。
寺村
朋子(チェンバロ)
東京芸術大学チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール山梨にてチェンバロ部門第2位入賞。イタリア、オーストリア、ベルギーなど国内外のアカデミーに参加して研鑽を積む。
NHK「FMリサイタル」に出演。その他バロックダンスとのセッションや声楽マスターコースの伴奏など様々な分野で多くの団体と演奏活動を行う。トリム楽譜出版より、「フルートバロックソナタ集」「J.S.バッハ作品集」(増刷)を編曲、出版。チェンバロソロCD「Capriccioお気に召すまま」(レコード芸術準推薦)リリース。
宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会会員。
アンサンブル山手バロッコ (古楽アンサンブル)
1998年、横浜山手の洋館「山手234番館」のリニューアルに行われた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家・朝岡聡を中心に結成された古楽器アンサンブル。山手の洋館での演奏活動を続ける。西洋館でのコンサート「洋館で親しむバロック音楽」などの企画・プロデュース、古楽祭「横濱・西洋館de古楽」にも演奏・運営を通じて参加し、バロック音楽を分かりやすく伝える活動も行っている。
アンサンブル山手バロッコ第82回演奏会
洋館サロンで味わう
バッハとアーベルの音楽会
Bach & Abel Concert
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第86回
「むかしの楽器は素敵だ」をテーマにする古楽祭「横濱・西洋館de古楽2019」のオープニング・コンサートにようこそ。本日は親子二代にわたって深い親交を結んだ、鍵盤楽器の名手バッハとヴィオラ・ダ・ガンバの名手アーベルの音楽を、様々な切り口でお楽しみいただきます。
プログラムノート
クリスチャン・フェルデナンド・アーベル(以下アーベル父)は、1663年ドイツのケーテンで生まれたヴィオラ・ダ・ガンバとチェロの名奏者で、1715年にケーテンの宮廷楽団に就職し、1717年には、宮廷楽長に就任したJ.S.バッハ(バッハ父)と出会いました。ケーテン侯は自らヴィオラ・ダ・ガンバの演奏を楽しむ音楽好きで、ヴィオラ・ダ・ガンバのソナタ、ブランデンブルク協奏曲などが宮廷で演奏されたと考えられています。バッハ(父)には、ケーテン赴任時にウィルヘルム・フリーデマン、カール・フィリップ・エマニュエルというのちに音楽家に成長する息子たちがいました。1723年にケーテンを離れ、ライプチッヒの音楽監督になりますが、ちょうどその年に、アーベル家にはカール・フリードリッヒ・アーベル(以下アーベル子)が生まれ、その10年ほど後ライプチッヒでバッハの末息子 ヨハン・クリスチャンが生まれ、2人は音楽家として成長していきます。その後も、アーベル家、バッハ家の親交は続きました。バッハ父は、1736年に、念願のザクセン侯(ドレスデン)宮廷作曲家の称号を得ます。1746年には長男フリーデマンはバッハ父の絶大な応援を受けドレスデン教会オルガニストに就任。ヴィオラ・ダ・ガンバの名人に育ったアーベル子はバッハに推薦状を書いてもらい、1748年にドレスデン宮廷音楽家となりました。
アーベル子はこの宮廷楽団を1759年に去り、ロンドンに渡り、シャーロット王妃のお抱え室内楽団に就職し、作曲と演奏で活躍しました。バッハの末息子クリスチャンは、ドイツを離れイタリアを経て、1762年にロンドンに渡り、アーベル子と再会し、アーベル家に同居してロンドン生活を始めました。クリスチャンは、作曲家として、またシャーロット王妃の鍵盤楽器教師として活動する一方、アーベルと共同でコンサートを1764年より開始し、亡くなる前年の1781年まで続けました。このコンサートは「バッハ・アーベル・コンサート」として知られていました。モーツアルト一家は1764年にロンドンに到着し、1年3か月の滞在の間バッハ、アーベルと家族ぐるみで親交を深めました。K18の交響曲は長いことモーツアルトの作品とされていましたが、幼いモーツアルトが「ロンドンの最新の音楽」を勉強するために筆写したアーベルの作品でした。
C.F.アーベル / ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ト長調
C. F. Abel / Sonata in G major for Viola da gamba and Basso continuo WKO144
アレグロ - アダージョ - メヌエット
Allegro - Adagio - Minuetto
最初に演奏するアーベルのヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ト長調は1771年にアムステルダムで出版された「6つのやさしいソナタ集」に収められた愛らしい曲です。この曲集はおそらく教育用に書かれたもので、タイトルページにはチェンバロ独奏でも、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴァイオリン、フルートなどの旋律楽器と通奏低音で演奏してもよいと書かれています。現在でも、ガンバを始めた人が最初に弾く曲集の一つとなっています。私(坪田)もまさにそうでして、その古典派音楽的な作風から、小学生の頃ピアノの学習に「ソナチネ・アルバム」を使った身にとても親しみがあったのを思い出します。アレグロ-アダージョ−メヌエットの3楽章からなります。
C.F.アーベル / 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための小品集より 3つの小品
C. F. Abel / Three pieces from 27 pieces for
the viola da gamba WKO205, 206 and 208
無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための3つの小品は、当時の筆写譜(ジョセフ・コーギンス1801年)に含まれています。なんと19世紀、アーベルが亡くなってから14年後のものです。卓越したヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であったアーベルを彷彿とさせる技巧的な作品で、重音奏法や装飾の仕方において、その時代にヴィオラ・ダ・ガンバの可能性をどのように追及していったかがよく分かります。WKO205は和音だけが記譜されておりアルペジオで演奏します。6弦ガンバの本領を発揮します。WKO206は3拍子の曲です。3拍子の曲にはメヌエットとタイトルが付いている場合が多い中、タイトル無しなのであえてゆったりと演奏します。終盤に響く偽終止の和音が魅力です。WKO208は4拍子の自由な形式で書かれた曲です。
ちなみに本日使用するヴィオラ・ダ・ガンバは18世紀にロンドンの工房で作られたN.クロス作のチェロをガンバに改造したものです。「バッハ・アーベル・コンサート」が行われた時代にその場の空気を吸っていた楽器で、このような演奏会をさせていただくことに不思議な縁を感じます。
J.S.バッハ / アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳より (ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロ合奏)
J. S. Bach / Pieces from the Notebook for Anna
Magdalena Bach
バッハ父は、前妻に死別し、1717年にケーテンでアンナ・マグダレーナと再婚しましたが、優れたソプラノ歌手だった新たな妻と家族の音楽の楽しみのために、2冊の音楽帳を贈りました。アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳と呼ばれるこの楽譜帳の1冊目は1722年にケーテンで、2冊目は1725年にライプチッヒで書き始められました。本日は、その音楽帳から、いくつかの曲をお聴きいただきましょう。バッハ家の団らんに招かれたつもりでお楽しみください。この音楽帳には自作のほかに当時の流行の曲や息子たちの曲も書き込まれています。最初のメヌエットはバッハのメヌエットとして有名ですがペツォルトの曲、ロンドはフランスのクープランの曲、またポロネーズとメヌエットは10代の息子エマニュエルの曲です。
メヌエット ト長調・ト短調 Menuet in G major/g-minor BWV Anh.114/ 115
ロンド 変ロ長調 Rondeau in B flat major (arr. of F. Couperin’s piece) BWV Anh.183
メヌエット イ短調 Menuet in a minor BWV Anh.120
ポロネーズ ト短調 Polonaise in g minor by C. Ph. E. Bach BWV Anh.123
マーチ ト長調 Marche in G major by C. Ph. E. Bach BWV Anh.124
アリア ト長調 Aria in G major by J. S. Bach BWV988,1
コラール「ただ愛する神の摂理にまかすもの」 Choral “Wer nur den lieben
Gott läßt walten” BWV 691
♪♪♪ 休憩 ♪♪♪
J.S.バッハ / ソナタ ニ短調
BWV964 (チェンバロ独奏)
J. S. Bach / Sonata for Cembalo in d minor
BWV964
アダージョ - フーガ:アレグロ - アンダンテ - アレグロ
Adagio - Fuga: Allegro
- Andante – Allegro
バッハはヴァイオリン1台でフーガなどの多声音楽を奏する無伴奏ヴァイオリンソナタと組曲を6曲作曲しました。この曲は現代でもヴァイオリン奏者の最高の目標になっているほど、技術的音楽的に優れたものです。この曲のうちソナタ2番をバッハ自身または弟子がチェンバロのために編曲したものが、本日のソナタ ニ短調です。ゆっくり-速い-ゆっくり-速いの4楽章構成で、とてもヴァイオリン1本とは思えない和声や対位法(フーガ)に満ちていますが、ヴァイオリンの時には暗示的だった隠れた和声や声部もチェンバロ版では明示的に加えられており、新たな鍵盤楽曲という趣を添えています。
J.S.バッハ / ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1027
J. S. Bach / Sonata for Viola da gamba and Cembalo in G major BWV1027
アダージョ - アレグロ マ ノン タント - アンダンテ - アレグロ モデラート
Adagio - Allegro ma non
tanto - Andante - Allegro moderato
バッハは、当時徐々にチェロにその座を取って代わられつつあったヴィオラ・ダ・ガンバのために3曲のソナタを残しています。バッハ自身が演奏したかは定かでありませんが、アーベル親子を通じて楽器の特性やテクニックについて良く知っており、教会カンタータや受難曲でここぞという場所でヴィオラ・ダ・ガンバの音色や表現を使っています。演奏するヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調は、1742年ころのバッハの自筆譜が残されています。誰のために、どのような機会に作曲されたかは良くわかっていませんが、アーベル親子との関係を想像してしまいます。曲はヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの右手が2つの上声部を、チェンバロの左手がバス声部を演奏する、バッハが時代に先駆けて作曲した形式になっています。曲は、ゆっくり-速い-ゆっくり-速いの4楽章からなります。
アンコール
たくさんの拍手をいただきありがとうございます。話題にあがりながらプログラムになかった、ヨハン・クリスチャン・バッハの曲をお届けします。
フルート(曽禰寛純)も加わり、フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのための四重奏曲 ハ長調 Op18より、第3楽章アレグロを演奏します。バッハ・アーベル・コンサートを想像しながら演奏したいと思います。
ありがとうございました。
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