これまでの演奏会へ戻る
NEW!!
81st Concert
アンサンブル山手バロッコ第81回演奏会
外交官の家で味わう庭園と音楽
古楽器の響きで味わう 〜パリのモーツァルト〜
Chamber Music of Devienne and
Mozart
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第85回
2019年1月19日(土) 18時開演 外交官の家
18:00 19th Jan. 2019 at at Yokohama Gaikoukan no ie
主催:公益財団法人 横浜市緑の協会/外交官の家
出演
永谷
陽子 (クラシカル・ファゴット)
桐朋学園大学卒業。同大学研究科及びオーケストラアカデミー修了。バロックファゴットを堂阪清高氏に師事。'
12年横浜・西洋館de古楽で、モーツァルト作曲ファゴット協奏曲をピリオド楽器で熱演し好評を博す。第26回国際古楽コンクール(山梨)にてバロックファゴット初の奨励賞を受賞。
古楽、モダン両分野でオーケストラや室内楽、録音等に参加。八王子音楽院、ドルミール音楽教室講師。烏山バロック倶楽部主宰。
アンサンブル山手バロッコ (古楽アンサンブル)
1998年、横浜山手の洋館「山手234番館」のリニューアルに行われた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家・朝岡聡を中心に結成された古楽器アンサンブル。山手の洋館での演奏活動を続ける。西洋館でのコンサート「洋館で親しむバロック音楽」などの企画・プロデュース、古楽祭「横濱・西洋館de古楽」にも演奏・運営を通じて参加し、バロック音楽を分かりやすく伝える活動も行っている。
曽禰 寛純(クラシカル・フルート)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得し、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
角田 幹夫(クラシカル・ヴァイオリン、ヴィオラ)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田 純子(クラシカル・ヴァイオリン、ヴィオラ)
洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏・海野義雄氏に、ヴィオラ・室内楽を岡田伸夫氏に師事。卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。また都留・札幌・福岡での古楽祭、フランスでのマスタークラスに参加し研鑽を積む。モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブルデュナミスメンバー。
小川 有沙(クラシカル・ヴィオラ)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコメンバー。
中尾 晶子 (クラシカル・チェロ)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコメンバー。
アンサンブル山手バロッコ第81回演奏会
外交官の家で味わう庭園と音楽
古楽器の響きで味わう 〜パリのモーツァルト〜
Chamber Music of Devienne and
Mozart
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第85回
横浜山手の洋館で古楽器によるひとときを楽しみませんか。外交官の家は、ニューヨーク総領事などをつとめた明治政府の外交官内田定槌氏の邸宅を、寄贈を受けた横浜市が山手イタリア山に移築復原したものです。このイタリア式庭園を臨む洋館の雰囲気を生かし、モーツァルトとフランスのモーツァルトと称されたドヴィエンヌの室内楽をお楽しみいただくコンサートを企画しました。クラシカル・ファゴットの永谷陽子さんをお迎えし、地元の古楽アンサンブルと共に、当時のスタイルの管楽器と弦楽器を組み合わせ、外交官の家の親密な空間で、いにしえの木の響きと音楽を味わっていただきます。
プログラムノート
F. ドヴィエンヌ(1759-1803)は、フランスのジョワンヴィルでモーツァルトより3歳年下に生まれ、歌うような旋律を特徴とした作曲家として、また卓越したフルート、ファゴットの演奏家としても知られていました。その作風と若くして不遇の死を迎えたことから、フランスのモーツァルトとも呼ばれています。早くから才能を発揮し、演奏や作曲で活躍し、宮廷楽団のファゴット奏者として、またパリ音楽院の初代フルート教授として、指導や教則本の出版をするなど活躍しています。今回のドヴィエンヌをテーマとしたコンサートへの想いを、ファゴットの永谷さんは、「アンサンブル『ダブルリーズ』のメンバーでもあるバロック・オーボエ奏者の大山有里子さんが、モーツァルトのオーボエ四重奏曲をアンサンブル山手バロッコと共演されているのを間近で拝見し、私もいつか四重奏曲を演奏してみたいと思っておりました。ドヴィエンヌはフルート奏者であり、ファゴット奏者であり、両楽器の為の協奏曲、四重奏曲を作曲しています。山手バロッコとの共演にはぴったりだと思い提案しました。たまたま一昨年ドヴィエンヌのソナタをフォルテピアノとクラシカル・ファゴットで演奏する機会があり、モダンファゴットで演奏するのでは味わえない、楽器の性能ギリギリで作曲されたファゴットの名手ドヴィエンヌの曲目に興味が湧きました。感謝を込めて演奏をお届けしたいと思います。」と話してくださいました。
W.A.モーツァルト(1756-1791)は、ザルツブルクで生まれ、最後の10年はウィーンで活躍しましたが、幼い時から音楽の天才として欧州中に演奏(および就職活動)旅行を行いました。6歳の時と22歳の時に、フランス旅行をし、パリの貴族と接し、またコンセールスピリチュエルのような音楽舞台でも注目されました。多種多様な楽器のための室内楽を書いています。管楽器の曲は、当時の管楽器の名手とモーツァルトの親交から生まれたものも多く、現在まで管楽器奏者にとって重要なレパートリーになっています。
今回はドヴィエンヌとモーツァルトの管楽器の活躍する曲を中心にお楽しみください。2人の夭折の音楽家の年表をまとめておきます。
F.ドヴィエンヌ / フルートとファゴットのための協奏交響曲 ヘ長調 Op.31より第1楽章 マエストーソ
F. Devienne /
Sinfonia Concertante for flute and basoon in F major, Op.31 1st Movement Maestoso
(arr. of Bréval,
Jean-Baptiste's Sinfonia Concertante for oboe and
horn)
協奏交響曲とは、複数の独奏楽器とオーケストラ(本作品は弦楽合奏)の編成で(バロック時代のコンチェルトグロッソのように)全奏と独奏が交互にあらわれ、ソロ奏者は独奏でまた独奏楽器のアンサンブルで、全奏のテーマを展開させ、腕前を披露するものです。特に管楽器を独奏とする協奏交響曲は、フランス、パリのコンセールスピリチュエルを中心に18世紀の最後に大変栄えました。モーツァルトも20代の初めのパリ訪問時に、そこで活躍する旧知のマンハイムの管楽器の名人達に協奏交響曲を作曲しました。
さて、本日演奏するドヴィエンヌの協奏交響曲ヘ長調 作品31は、1790年頃に、パリのコンセールスピリチュエルで、自ら独奏を担当するために、同じくパリで活躍していたチェロ演奏家で作曲家のブレーヴァルの作曲したオーボエとホルンのための協奏交響曲を、フルートとファゴットのために編曲したものです。原曲(1789年頃作曲)は失われたために、ドヴィエンヌがどこまで手を加えたかは定かではありませんが、自分の楽器である両楽器のソロが存分に活躍する仕上がりになっています。本日は第1楽章を演奏いたします。
W.A.モーツァルト / 弦楽四重奏曲第3番ト長調 K.156
W.A.Mozart /
String Quartet in G-Major K.156
プレスト - アダージョ - テンポ・ディ・メヌエット
Presto - Adagio - Tempo di Menuetto
1773年秋、17歳のモーツァルトはオペラ公演のためにイタリアを訪問しました。ミラノでのオペラ公演の途中、彼はイタリアで生まれた新しい弦楽四重奏という形式に触発され、滞在中に後にミラノ四重奏曲集と呼ばれる6曲からなる弦楽四重奏曲を作曲しました。本日演奏いたしますト長調 K.156は、当時のイタリアの習慣にならい3楽章で書かれています。全体にイタリア的な明るさがあふれていますが、短調で書かれた第2楽章には後のモーツァルトの作品を予感させるような強い情感が満ちています。
W.A.モーツァルト / ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調 K.292
W.A.Mozart /
Sonata in in Bflat-Major for Bassoon and Violoncello K.292
アレグロ - アンダンテ - アレグロ
Allegro - Andante – Allegro
ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調は、その少し後の1775年(19歳)ころ、滞在していたミュンヘンで、ファゴットを巧みに演奏することでも知られていたデュルニッツ男爵のために作曲したと考えられています。ファゴットとチェロという珍しい編成で、当時流行していたフランス趣味のギャラント様式に基づいています。様式的には、ソナタ形式があり、カデンツァなど協奏曲的な要素も盛り込み、一方でチェロにはバロックの通奏低音の名残も見られるという、若きモーツァルトの佳作と思います。第1楽章は、ソナタ形式でファゴットソロをチェロが伴奏し、協奏曲的な動きも交えます。第2楽章は2つの楽器が寄り添って重奏する構成、第3楽章はファゴットらしい楽し気なテーマで始まる軽快なロンドです。
F.ドヴィエンヌ / フルート四重奏曲 ニ長調 作品66-2
F. Devienne /
Quartet for Flute, Violin, Viola and Cello in D Major, Op.66 No.2
アレグロ - アダージョ・カンタービレ - ロンド・アレグレット
Allegro - Adagio cantabile - Rondo allegretto
ドヴィエンヌはフルート四重奏曲を多数作曲しています。1799年ころまでに、合計21曲のフルート四重奏曲を残しましたが、最も充実し、また新たな試みを取り入れたのが、1774年頃に作曲された、6曲のフルート四重奏曲 作品66です。この曲集のタイトルは協奏的四重奏曲、つまり協奏曲のアイデアを四重奏の枠組みで取り入れるというもので、演奏するニ長調の四重奏曲も協奏的というアイデアが存分に生かされており、フルートと伴奏という形ではなく、すべての楽器が独奏も伴奏も担当するように作られています。きっと当時は聴いても、弾いても新鮮だったことでしょう。
第1楽章アレグロは、全楽器のユニゾンで始まり、協奏曲のいわばリトルネロとして展開され、その後 ソロと弦楽が活躍する変化に富んだ構成になっています。第2楽章は、変奏的アリアといった趣の曲で、テーマがフルートにより提示されて、変奏されていきます。中間部は短調となり、チェロが独奏として歌い、再び長調のさらに飾り立てられたテーマに戻り、静かにこの楽章が終わります。第3楽章は、ニ長調のロンド。ロンドのテーマと独奏が交互に出てくるように工夫されています。中間部の短調を挟んで、最後にニ長調のテーマに回帰し、最後は全員が舞台挨拶を1人1人するかのように続けて登場し、大団円となります。
F.ドヴィエンヌ / ファゴット四重奏曲 ト短調 作品73-3
F. Devienne /
Quartet for Bassoon, Violin, Viola and Cello in G minor, Op.73 No.3
アレグロ・コン・エスプレッシオーネ - アダージョ・ノン・トロッポ – ロンド、 アレグレット ポコ モデラート
Allegro con esprressione
- Adagio non troppo – Rondo, Allegretto poco moderato
ファゴット四重奏曲 ト短調 作品73-3は、1798年に出版された3曲の四重奏曲に含まれるもので、当時珍しいファゴットを独奏とする四重奏曲です。パリ音楽院でドヴィエンヌの弟子でフルートの演奏家、教師として活躍したJ.ギユーは、「ドヴィエンヌは欧州最高のフルート奏者の一人で、その演奏の発音の確かさと優美さで並ぶものがいない。もっとも、ファゴットの演奏の完璧さは、フルートの演奏以上のものを持っている」と述べています。第1番ハ長調、第2番ヘ長調、この第3番ト短調は、唯一ファゴットが主旋律を奏で曲が始まります。この曲も協奏的四重奏の構成になっており、ファゴット奏者であったドヴィエンヌが、技巧の限界に挑戦しているような華やかなパッセージと、叙情的な部分の両面を弦楽器の彩りと共に楽しめます。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので、モーツァルトが2度目のパリ旅行からザルツブルクに帰郷してすぐに作曲したディベルティメント ニ長調 K.334から 有名なメヌエットをお届けします。
ありがとうございました。
これまでの演奏会へ戻る