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78th Concert
アンサンブル山手バロッコ第78回演奏会
ギターと歌で巡る
バロック〜古典派の音楽
Baroque to Classical music with Song and Guitar
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第81回
2018年8月3日(金) 19時 横浜市イギリス館
19:00 3rd August 2018 at Yokohama Igirisukan
主催:アンサンブル山手バロッコ
出演
曽禰 愛子(メゾソプラノ)
鹿児島国際大学短期大学部音楽科、同専攻科卒業。洗足学園音楽大学大学院 音楽研究科修了。第 28 回鹿児島新人演奏会、第 85 回横浜新人演奏会出演。声楽を川上勝功、ウーヴェ・ハイルマン、ゲルト・テュルクの各氏に師事。現在、バーゼル・スコラ・カントルム在学。ヴォーカルアンサンブル・ヴィクトリア、 Affetti mvsicali、 Capella Sacra、Ensemble SCOPRIAMOメンバー。
大野 彰展(テノール)
愛知県立明和高等学校音楽科を経て、国立音楽大学音楽学部及び同大学院音楽研究科(ドイツ歌曲)修了。第30回国際古楽コンクール〈山梨〉声楽部門最高位。2014年より渡欧しスイス・バーゼル音楽院スコラ・カントルムにてゲルト・テュルク、エヴリン・タブの両氏に師事。在学中より同地を中心にソリストとして演奏活動を行う他、仏コルマール音楽祭、墺インスブルック音楽祭等に客演するなど、スイス国外にも活動の幅を広げている。またフランチェスコ・ペドリーニを中心としたアンサンブル”La Pedrina”の主要メンバーとしてコンサート・録音活動も盛んに行っている。La Cetra Barockorchester&Vocalensemble
Basel, Zürcher Sing Akademieメンバーとしても活躍中。
吉崎 恭佳(フラウト・トラヴェルソ、クラシカル・フルート)
桐朋学園大学にフルート専攻で入学、同大学研究科古楽器専攻卒業。現在、バーゼル・スコラ・カントルム音楽院に在籍し、研究・研鑽を積んでいる。16世紀から19世紀までの幅広い時代の作品をレパートリーとし、各時代の異なるフルートを用いて演奏活動を行っている。これまでに、有田正広、飯島和久、白尾彰の各氏に師事。現在、フラウト・トラヴェルソをマルク・アンタイ氏に、ルネサンスフルートをヨハンナ・バルト氏に師事。第26回国際古楽コンクール<山梨>で最高賞を受賞。
松本 富有樹(バロックギター、19世紀ギター)
14歳からクラシックギターを始める。中野義久、レオナルド・ブラーボ、福田進一各氏に師事。2011年からバーゼル音楽院に留学し、パブロ・マルケス氏に師事しルネッサンス時代から現代までの音楽を幅広く勉強。2017年からバーゼル・スコラ・カントルムにてホプキンソン・スミス氏に師事しルネッサンス、バロック、19世紀など各時代の異なるギターを学ぶ。通奏低音をアンドレア・シェーラー、ピーター・クロトン両氏に師事。
第54回九州ギター音楽コンクール首席2位。第1回韓国国際ギターコンクール首席2位。第9回リヒテンシュタイン国際ギターコンクール4位。東京国際ギターコンクールファイナリスト。
アンサンブル山手バロッコ第78回演奏会
ギターと歌で巡る
バロック〜古典派の音楽
Baroque to Classical music with Song and Guitar
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第81回
本日は「ギターと歌で巡る バロック〜古典派の音楽」にお越しくださいましてありがとうございます。時代ごとに異なる楽器を用いながら、17世紀初頭〜19世紀に至るまでの様々なスタイルの音楽を、オリジナル編成と編曲を織り交ぜながらお届けいたします。
プログラムノート(出演者による)
S.ディンディア(1582-1629)
Sigismondo D’india
むごいアマリッリよ
Crud’Amarilli
G.カッチーニ
Giulio Caccini(1545-1618)
麗しのアマリッリ
Amarilli, mia bella
シジスモンド・ディンディア(Sigismondo D’India, 1582-1629)は、イタリア生まれの初期バロック時代の代表的な作曲家であり、最初のオペラ作曲家として有名なモンテヴェルディの同時代人にあたります。ルネサンス音楽とバロック音楽の過渡期であったこの時代に生きたディンディアは様々な音楽形式の声楽曲を作曲しましたが、中でも有名なのはモノディ様式と呼ばれる、独唱に伴奏楽器を伴ったスタイルの作品です。ジュリオ・カッチーニ(Giulio Caccini, 1545-1618)はそういったモノディ様式の考案者であり、このモノディ様式は後にオペラのレチタ ティーヴォへと発展し、その他多くのバロック音楽の様式に影響を与えました。今回演奏する 「むごいアマリッリよ」「麗しのアマリッリ」もそういった形式で書かれた 楽曲です。
当時は今のように伴奏の楽器を詳細に指定することは珍しく、通奏低音と呼ばれるこのパート
はチェンバロやオルガンのような鍵盤楽器だけでなく、リュートやテオルボ、また今回用いるギ ターのような和音の出せる楽器が状況によって色々に用いられていました。
R.de.ヴィゼー
Robert de Visée, (c1650-1725)
組曲 イ短調
Suite a-moll
プレリュード - アルマンド - クーラント - サラバンド - ジーグ - ロンド
Prelude - Allemande - Courante - Sarabande - Gigue
- Rondeau
ロベール・ド・ヴィゼー(Robert de Visée, 1650頃-1725)はフランスのギター、リュート奏者、そして歌手であり、ルイ14世・15世の時代のフランス宮廷で活躍しました。若きルイ15世のギターの教師でもあったド・ヴィゼーは、ギターやテオルボのために多くの作品を残しています。 今回演奏する組曲は、1686年に出版されたギターのための作品集と、1716年に出版されたリュー トとテオルボのための作品集からの抜粋で、この2つの異なる時代に書かれた組曲には同じプレリュードが使われており、また同じイ短調 で書かれています。このように他の作品から一部分を 切り取って使うという例は当時しばしば見受けられるもので、おそらくド・ヴィゼーも1686年の 組曲からインスピレーションを受け新たな組曲を作曲したのでしょう。
G.ロヴェッタ Giovanni Rovetta, (1596-1668)
モテット「愛する人よ、あなたは美しい」 “Quam pulchra es“
A.カルダーラ Antonio Caldara, (1670-1736)
モテット「わたしの肉はまことの食物」 “Caro mea vere est cibus”
続く2曲のデュエット「愛する人よ、あなたは美しい」「わたしの肉はまことの食物」はどちら もモテットと呼ばれる宗教曲です。ジョヴァンニ・ロヴェッタ(Giovanni Rovetta, 1596-1668)はディンディアの同時代人モンテヴェルディの元で学び、彼の亡き後、イタリア・ヴェネ ツィアのサン・マルコ大聖堂の楽長も務めた人物で、その音楽にもモンテヴェルディの影響が色濃 く残っていると言われています。アントニオ・カルダーラ(Antonio Caldara, 1670-1736)も 同じくイタリアの作曲家ですが、時代的にはもう少し後の人物で、ヘンデルやスカルラッティら と同じ時代を生きた作曲家であり、今回演奏するような宗教曲だけでなく、オペラの作曲でも名 を残した人物でした。 「わたしの肉はまことの食物」の歌詞は聖書の中のヨハネによる福音書からの引用であるのに 対し、「愛する人よ、あなたは美しい」はソロモンの雅歌と呼ばれるヘブライ聖書の中の一編か らの引用です。このソロモンの雅歌は聖書に収められているものの、中身は恋愛と男女の賛美を歌い上げる詩であるため、扱いを巡って古くから議論が絶えませんでした。キリスト教において は比喩的に解釈し、「キリストと教会の関係」を歌う歌であるとも捉えられてきた異色の作品で あり、今回歌うこの曲も歌詞だけを見るとまるで世俗曲か のような内容となっています
G.P.フォスカリーニ Giovanni Paolo Foscarini (c.1600-1647)
トッカータ・ムジカーレ
Toccata musicale
F.コルベッタ Francesco Corbetta (c1615-1681)
チャッコーナ Chaconne
16世紀の終わりから1640年頃まではバロックギターはいわゆるコード(和音)を弾く伴奏楽器 としての役割しかなく、記譜もアルファベット、つまりコード表なるものしか使われていませんでした。その伴奏楽器だったギターをソロ楽器として確立させた人物として、イタリア人ギタリストのジョ ヴァンニ・パオロ・フォスカリーニ(Giovanni
Paolo Foscarini, 1600頃-1647)とフラ ンチェスコ・ コルベッタ(Francesco
Corbetta, 1615頃-1681)が挙げられます。1640年頃に なるとアルファベットとプンテアード(指弾き奏法)を合わせた記譜法、ミックスタブラチュア が使われ始めますが、彼等はいち早くそれを取り入れた人物でした。「トッカータ・ムジカー レ」は完全にプンテアード奏法で書かれていて、即興的要素も盛り込まれているのに対して、
「チャッコーナ」ではバロックギター特有の搔き鳴らし奏法がふんだんに使われています。
H.パーセル Henry
Purcell (1659-1695)
夕べの讃歌 Evening Hymn
ヘンリー・パーセル(Henry Purcell, 1659-1695)はバロック時代にイギリスで活躍した作曲家で、イタリアやフランスなどの影響を受けつつ独自の音楽を生み出しました。「夕べの讃 歌」は宗教的な意味合いを含む歌詞に柔らかな旋律が当てられ、オスティナート・バスと呼ばれる何度も繰り返される低音の音型が穏やかに流れる歌曲です。この曲が書かれた当時イギリス王 室の礼拝オルガニストでもあったパーセルですが、こうした歌曲やアンセムと呼ばれるジャンルの曲は教会の会衆向けに書かれたものではなく、当時のイギリスで一般的になっていった、よりプライベートな祈りの場での音楽として書かれたもののようです。
♪♪♪
W.A.モーツァルト
Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
夕べの想い
Abendempfindung
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)は言わずと知れた古典派音楽を代表する巨匠の一人です。華やかなオペラや軽快な音楽のイメージ が強いモーツァルトですが、今回演奏する歌曲「夕べの想い」はモーツァルトの父・レオポルトが死去した後の2ヶ月間の間に書かれた6曲の歌曲のうちのひとつで、モーツァルトが死というものと向き合い想いを馳せながら作曲したであろう、しっとりと美しい作品です。
M.ジュリアーニ
Mauro Giuliani (1781-1829)
フルートとギターのための大二重奏曲
作品85
Grand Duo Concertant for flute
and guitar Op.85
第2楽章 アンダンテ 第3楽章 スケルツォ
- トリオ
2nd movement: Andante,
3rd movement: Scherzo - Trio
M.ジュリアーニ
Mauro Giuliani (1781-1829)
6つのカヴァティーナ 作品39から「私のこの涙をみて」、「今や苦悩の終わりは近い」
“Alle mie tante lagrime” ,“Gia’presso al termine de’suoi martiri” from Sei Cavatine
Op.39
イタリア出身のマウロ・ジュリアーニ(Mauro Giuliani, 1781-1829)は19世紀初頭ヨーロッ パで最も名を馳せたヴィルトゥオーゾギタリストでした。1806年にウィーンへ移り、ベートーヴェ ンなど著名な音楽家達と交流を持ち、ソロ曲だけでなく室内楽曲も多く残しています。「フルー トとギターの為の大二重奏協奏曲」の第2楽章と第3楽章は、ギターの前奏で始まり美しいフルー ト旋律が印象的なアンダンテと、一転して軽快で小気味の良いスケルツォとの対比をお楽しみく ださい。
L.シュポーア
Louis Spohr (1784-1859)
6つのドイツ語の歌 作品37及び41から「夜の声」「愛のときめき」「引き裂かれた愛」「輪舞に寄せて」「三本のバラの嘆きの歌」「初めてのくちづけ」
“Die Stimme der Nacht”,“Liebesschwärmerei”,“Getrennte Liebe”,“Zum Rundtanz” , “Klagelied von den drei Rosen” and “Der erste Kuss“ from Sechs Deutsche Lieder Op.37, 41
L.シュポーア
Louis Spohr (1784-1859)
歌劇「ツェミーレとアゾール」より ロマンツェ
Romanze (from “Zemire und Azor”)
今日ではあまり演奏される機会が少ないルイ・シュポーア(Louis Spohr, 1784-1859)はヴァイオリンの大家であり、作曲家としても多作な人物でした。ヴァイオリンの顎当てを発明した人物でもあり、また指揮者として最初に指揮棒を使った人だとも伝えられています。シュポーアはいくつものドイツ歌曲を残しており、オリジナルは歌とピアノの為に書かれていますが、同時代にギターでも伴奏できるよう編曲され出版されています。音楽の完成度は非常に高く、もっと演奏されて然るべき作曲家ではないかと考え、今回は彼の多くのドイツ歌曲作品を取り上げてお聴き頂きます。
M.ジュリアーニ
Mauro Giuliani (1781-1829)
パストラーレ 作品149
Pastorale Op.149
プログラムの最後の「パストラーレ」はテノール、アルト、フルート、ギターの為に書か れており、如何にもサロン的で愛らしい作品となっています。
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
モンテヴェルディの“Zefiro torna”(西風が戻り)をお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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