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77th Concert
アンサンブル山手バロッコ第77回演奏会
西洋館で味わう
クラシカル・フルートの魅力-II
Ensemble music of Classical Flute and Cello – Part2
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第80回
山手234番館サマーコンサート
2018年7月15日(日) 16時 山手234番館
16:00 15th July 2018 at Yamate Bluff 234
主催:公益財団法人 横浜市緑の協会/山手234番館
出演
清野 由紀子(クラシカル・フルート)
昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、現在モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。
曽禰 寛純(クラシカル・フルート)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
中尾晶子(クラシカル・チェロ)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。
アンサンブル山手バロッコメンバー。
アンサンブル山手バロッコ第77回演奏会
西洋館で味わう
クラシカル・フルートの魅力-II
Ensemble music of Classical Flute and Cello – Part2
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第80回
山手234番館の夏に恒例の古楽コンサートへようこそ。本日は、「西洋館で味わうクラシカル・フルートの魅力-II」と題して、山手234番館の親密な空間で、古典派の時代に使われた多鍵フルート(クラシカル・フルート)とクラシカル・チェロによるアンサンブルを楽しみます。
プログラムノート
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
C.F.アーベル
C.F.Abel (1723-1787)
2本のフルートとチェロのためのトリオ ト長調 作品16-4
Trio in G-Major for two Flutes and Violoncello
アレグロ - アンダンテ − テンポ・ディ・メヌエット
Allegro– Andante – Tempo di
Menuetto
カール・フリードリヒ・アーベルはドイツの音楽家一族の生まれで、父のクリスティアン・フェルディナントはJ.S.バッハが楽長を務めていたケーテン宮廷楽団のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者でした。両家の親交は続き、後に息子のカール・フリードリヒ・アーベルがロンドンに移り住み、バッハの末息子のヨハン・クリスティアンと共にシャーロット王妃付きの室内音楽家に任命され、2人はロンドンで公開演奏会「バッハ=アーベル・コンサート」を長く続けました。作品16のトリオは4曲セットという変則的な構成で1785年ころに出版されました。ト長調のトリオはセットの最後の曲で、第1楽章はソナタ形式、第2楽章は低音の上に2つの旋律楽器が歌うアリア、第3楽章はメヌエットのテンポの軽やかなロンドです。
W.Aモーツァルト
W.A.Mozart(1756-1791)
オペラ「魔笛」K. 620よりデュオ「私は鳥刺し」
Duet for two flutes “Der
Vogelfänger bin ich ja” from Die Zauberflöte KV.620
オペラ「フィガロの結婚」K.492よりトリオ「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」
Trio for two flutes and Violoncello “Non
più andrai farfallone amoroso” from Le Nozze di Figaro
KV.492
18世紀後半には、人々は聴いてきたオペラのアリアなどの曲を編曲して自宅やサロンで楽しむようになります。多くの名作を世に送り出したモーツァルトのオペラ・音楽劇も様々な編成に編曲されました。
1曲目は、音楽劇「魔笛」のアリアをフルート二本のために編曲した曲集から「私は鳥刺し」です。この曲集は本編の初演(1791年)翌年、モーツァルト自身による編曲と謳って出版されました。王子タミーノと共に王女パミーナを救うことになる鳥刺しパパゲーノが、最初に登場してその陽気な性格を披露する曲です。2曲目は、オペラ「フィガロの結婚」(1786年作曲)のアリアをバセットホルン(低音域の拡がったクラリネット)三本のために編曲した曲集から「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」です。伯爵の怒りに触れて軍隊行きを命じられた小姓ケルビーノをフィガロがからかい、励ます歌で、最後の部分には軍隊の行進やラッパの響きが聴こえてきます。本日はフルート二本とチェロで演奏します。
F.ドヴィエンヌ
F.Devienne (1759-1803)
2本のフルートとチェロのためのトリオ
ニ長調 作品19-1
Trio in D-Major for two Flutes and Violoncello Op.19-1
アレグロ − 変奏付きグラチオーゾ
Allegro – Grazioso con Variazione
ドヴィエンヌは、モーツァルトより3歳年下のフランスの音楽家、フルートとファゴットの名手で、たくさんの合奏曲や協奏曲を残しました。その伸びやかな曲想と40余歳で夭折したことも相まって、フランスのモーツァルトとも呼ばれました。トリオ ニ長調は1790年頃に出版された作品19の第1曲に納められている曲で2つの楽章から構成されています。軽快で2本のフルートが寄り添い、また競い合う第1楽章アレグロ、ここではチェロも旋律の一翼を担っています。第2楽章は、テーマと3つの変奏からなっていて、技巧の変化だけでなく、微妙な和声の移ろいも味わえます。
L.v.ベートーヴェン
L.v.Beethoven (1770-1827)
アレグロとメヌエット ト長調 WoO 26
Allegro and Menuetto in G-Major for two Flutes WoO26
アレグロ – メヌエット
Allegro – Menuetto
1792年、青年時代のベートーヴェンは、友人であるM.デーゲンハルト氏にこのアレグロとメヌエットを献呈しました。その少し前にドイツを訪れたハイドンに認められて弟子入りが叶い、晴れて音楽の都ウィーンに向かう決意をしたばかりの時期の希望と自信に溢れた曲です。第1楽章アレグロはソナタ形式で書かれていますが2本のフルートが軽やかにかけまわるソナタ形式、第2楽章メヌエットは間にトリオを挟む三部形式です。
F.J.ハイドン
F.J.Haydn(1732-1809)
2本のフルートとチェロのための「ロンドントリオ」第3番 ト長調 Hob. IV-3
The London trio No.3 in G-Major for two Flutes and Violoncello Hob.
IV-3
スピリトーゾ – アンダンテ – アレグロ
Spiritoso – Andante – Allegro
ハイドンはエステルハージ侯の宮廷楽長として、長らくその館に留まり、交響曲、協奏曲や室内アンサンブルの作曲と演奏を行いました。都会から離れた地方都市に留まってはいましたが、新しい古典派の扉を大きく開いた楽曲や演奏の名声はヨーロッパ中に知れ渡っていました。エステルハージ侯が亡くなり、自由な身になった晩年には、英国の興行師ザロモンの招聘を受け二度に渡ってロンドンに滞在し、現在も多く演奏されるロンドンセットなどの交響曲や弦楽四重奏曲の名曲を作曲・演奏し熱烈な歓迎を受けました。
ロンドントリオは、このロンドンに滞在中の時期に作曲されたもので、フルート二本とチェロの編成で4曲残されています。第3番ト長調のトリオは、3楽章からなり充実した構成になっていますが、重苦しいことは1つもなく、生気に溢れる喜遊曲といった趣の曲に仕上がっています。第1フルート、第2フルートが交互に重要な役割を果たし、チェロの低音の上で活躍します。チェロも要所要所で、技巧的な旋律でフルートに対抗し、楽しいやり取りがちりばめられています。
昨年、楽器のデータの記載をというリクエストありましたので、本日の使用フルートを紹介します。
(左) William Potter: 6鍵フルート(c.1795 ロンドン)、(右) R.Tutz: Heinrich Grenser 8鍵フルート(c.1810)のコピー
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
、メゾソプラノの曽禰愛子さんも加わり、モーツァルトのオペラ「魔笛」から3人の童子の合唱“Seid uns zum zweitenmal
willkommen”(ようこそ、二度目だね)をお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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