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69th Concert
アンサンブル山手バロッコ第69回演奏会
洋館サロンで味わう
バッハ&モーツァルトのオルガン
Organ ensemble music of J.S.Bach and W.A.Mozart
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第68回
2017年2月4日(土) 18時開演 ベーリック・ホール(横浜市中区山手町72番地)
18:00 4th Feb. 2017 at Yamate Berrick Hall
主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会
共催:公益財団法人 横浜市緑の協会/横浜古楽プロジェクト、 後援:横浜市中区役所/日本チェンバロ協会
協力:横浜山手聖公会/アンサンブル山手バロッコ/オフィスアルシュ/The Table“ALICE”(主宰:竹内 薫)
出演
吉田恵(ポジティフ・オルガン)
東京藝術大学オルガン科及び同大学院修士課程修了、ハンブルグ音楽大学卒業。オルガンを島田麗子、廣野嗣雄、Z.サットマリー、W.ツェラーの各氏に師事。91年 ブルージュ国際オルガンコンクールにてバッハ・モーツァルトプライスを受賞。2004年から2010年、日本大学カザルスホールにて、全12回のJ.S.バッハオルガン作品全曲演奏会を行う。オクタヴィアレコードからJ.S.バッハオルガン作品集vol.1〜3をリリース。レコード芸術特選盤、Stereo特選盤、毎日新聞今月の一枚等、各誌から高い評価を受けている。現在、愛知県立藝術大学、日本大学藝術学部音楽学科講師。カトリック吉祥寺教会オルガニスト。
小野萬里(バロック・ヴァイオリン)
東京芸術大学ヴァイオリン科卒業。在学中のバロック・ヴァイオリンに出会い古楽の研究を始める。1973年ベルギーに渡り、バロック・ヴァイオリンをS. クイケンに師事。帰国後はソリスト、室内楽奏者、主要な古楽オーケストラのメンバーとして活躍、たゆみない演奏活動を展開している。現在、コントラポント、クラシカルプレイヤーズ東京、チパンゴコンソート、ムジカ・レセルヴァータのメンバー。
大山 有里子(バロック・オーボエ、オーボエ・ダモーレ)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、「大阪コレギウム・ムジクム」のソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。その後ピリオド楽器(バロック・オーボエ)による演奏に専念し、バロック・アンサンブル「アルモニー・アンティーク」等に参加。近年はバロック時代だけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。2016年リサイタル「バロック・オーボエの音楽」開催し好評を博す。「クラングレーデ」、「ダブルリーズ」メンバー。
朝岡 聡(お話)
横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年からフリー。TV・ラジオ・CMの他、コンサートソムリエとしてクラシック演奏会の司会や企画にもフィールドを広げている。特に古楽とオペラでは親しみやすく本質をとらえた語り口が好評を博している。リコーダーを大竹尚之氏に師事。著書に「笛の楽園」(東京書籍)「いくぞ!オペラな街」(小学館)など。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手地区西洋館でのコンサートを継続している。「横濱・西洋館de古楽」実行委員長。
曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
角田 幹夫(バロック・ヴァイオリン)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田純子(バロック・ヴァイオリン,バロック・ヴィオラ)
洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏に師事。慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。
卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。
モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブル「デュナミス」、アンサンブル山手バロッコメンバー。
山口 隆之(バロック・ヴァイオリン)
学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコメンバー。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。
小川 有沙(バロック・ヴィオラ)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコメンバー。
中尾 晶子(バロック・チェロ)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコメンバー。
飯塚 正己(コントラバス)
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。アンサンブル山手バロッコメンバー。
アンサンブル山手バロッコ第69回演奏会
洋館サロンで味わう
バッハ&モーツァルトのオルガン
Organ music of J.S. Bach and W.A. Mozart
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第68回
山手西洋館で随一の雰囲気を誇るベーリック・ホールからお届けする、18世紀末のサロンコンサートにようこそ。
古楽祭「横濱・西洋館de古楽」も回を重ね、8回目を迎えました。今回はオルガンが古楽祭に初登場、オルガニストの吉田恵さんをお招きして、ソロや古楽器とのアンサンブルを、親密な空間でご一緒に味わいます。
プログラムノート
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
バッハとオルガン
J.S.バッハ(1685-1750)と楽器の王様と呼ばれるパイプオルガンとの関係は深く、オルガニストを輩出した家系に生まれ、幼いころから教会やオルガンに親しんできた若き音楽家バッハにとっての最も重要な楽器でした。職業音楽家としての最初の活躍もオルガンを中心としており、18歳から32歳まで教会オルガニストとしての職務に就いていました。職業音楽家として次の転換点となるケーテン宮廷楽長就任の直前のヴァイマールの時代は、バッハにとって最も実り多き時代だったと死後に出版された「故人略伝」でも記されています。しかし、その後も生涯を通じてバッハはオルガンの大家として、各地のオルガンの試奏や評価者として招かれたり、独奏者として招かれたりと、オルガンの演奏家、作曲家としての活動が続いています。また、長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハを筆頭に子供たちや弟子たちにオルガンを含む鍵盤演奏と作曲を学ばせる良き教師としての活動も続きました。
当時教会の聖堂に据え付けられた巨大なパイプオルガンに加え、移動が可能なポジティフ・オルガンも用いられていました。本日はこのベーリック・ホールにポジティフ・オルガンを運び、バッハの後年の時期に焦点を当てライプチッヒの音楽監督として作曲した、教会音楽や市の行事での音楽、新たな市民音楽とオルガンとのかかわりをお聴きいただきます。
バッハとオルガンソナタ、オルガン協奏曲
オルガンといえば、教会の礼拝での讃美歌やその変奏曲、教会の信徒のための音楽など、宗教と密接に関係するものと考えるのが一般的ですが、一方でバッハは、ソナタ、協奏曲という世俗を代表する音楽にも、オルガンで新たなジャンルを切り開きました。その代表的な作品は、ライプチッヒ中期の1730年に作られた6曲からなるオルガン独奏のためのトリオソナタです。トリオソナタといってもオルガン1台で演奏し、右手と左手で2つの旋律をペダルで通奏低音を演奏するので、独奏曲ということになります。伝記作者フォルケルは「(トリオソナタは)長男ヴィルヘルム・フリーデマンの作曲と演奏技術の習熟のために作られたもので、バッハの最も円熟した時期の曲集であり他に類を見ない」と記しています。しかし残された当時の筆者譜などの資料を調査すると、バッハは同時期に、これらのソナタの初期稿やオルガンのための曲を残しています。その中には複数のカンタータのシンフォニア、アリアの編曲や自作および同時代の作曲家の室内楽のオルガンへの編曲など、トリオソナタへの道を示していると同時に、カンタータやオブリガート・ソナタとオルガンと密接な関連があることもわかってきました。
ヨハン・ゼバスチァン・バッハ
J.S. Bach(1685-1750)
組曲 ト短調より 序曲 BWV1070
Overture from Suite g-minor (BWV1070)
ラルゲット
– ウン・ポコ・アレグロ
Largehtto – un poco Allegro
コンサートの始めに聴いていただくのは、管弦楽組曲第5番の序曲です。ライプチッヒでは市民のための公開コンサートが行われており、バッハは自ら率いた合奏団コレギウム・ムジクムを指揮し好評を博していました。そのコンサートのためには多くの曲が必要であり、この時期の器楽曲の多くはこの公開演奏会のために準備されました。この曲もここで演奏されたと考えられ長く父バッハ作として扱われていましたが、その様式から現在では父バッハではなく、フリーデマンの作ではないかと考えられています。父バッハから作曲と演奏のすべてを学んだ優秀な生徒であると同時に、新たな時代精神や音楽との狭間で苦悩した長男の作らしく、曲は父親譲りの労作でありながら、新しいイタリア風の序曲を志向した時代精神も盛り込まれています。ゆっくりした序奏のあと、対位法的な速い部分が切れ目なく演奏されます。
ヨハン・ゼバスチァン・バッハ
J.S. Bach(1685-1750)
カンタータ第49番 「われは行きて汝をこがれ求む」より シンフォニア ホ長調 BWV49
Sinfonia from Cantata No.49 “Ich
geh und suche mit Verlangen“ (BWV49)
この時期、バッハはライプチッヒの音楽監督として、市の教会での礼拝のための音楽を作曲し演奏しました。教会カンタータは、レチタティーヴォ、アリアと合唱、コラールの組合せで、その日の礼拝のテーマを会衆に音楽を通じて伝えるものです。1726年から27年にかけて、このカンタータの冒頭にオルガンの独奏を持つ合奏曲(シンフォニア)が多く作られ演奏されました。本日演奏するシンフォニア ホ長調のような長大で技巧的なオルガンソロをもつ緻密な労作はバッハ以前には例がなく、教会カンタータの新境地を開いたと考えられています。なぜこのようなアイデアが生まれたのか? また、通常は教会音楽にこのような斬新な音楽を取り入れることを反対してきた保守的な市当局が、なぜ反対していないのか? そこにはライプチッヒを治めるザクセン選帝侯の存在と見本市で知られる商業都市ライプチッヒの事情があったというのが、音楽学者のヴォルフの新説です。まず、このオルガン独奏のシンフォニアの起源を、前年に訪問した(ザクセン選帝侯の本拠地)ドレスデンでのオルガンコンサートに見出します。当時の記録「(1725年9月にドレスデンを訪問した)バッハはこの地のソフィア教会でコンサートを開き、弦楽伴奏で(オルガン)コンチェルトを演奏し、一時間以上の長きにわたり妙技を披露し、宮廷の名手や市民に評判を博した」がそれです。このコンサートはバッハの旧友でヴァイオリンの名手でもあった宮廷楽長ピゼンデルの率いる優秀な楽団とソフィア教会の評判のオルガン名器の能力をバッハが最大限に引き出した夢のようなコンサートだったのではないかと思います。市当局は「選帝侯の街での評判のバッハの協奏曲を、このライプチッヒの教会でも演奏させる、その評判は、商業の街 ライプチッヒの春の見本市への人々の訪問を活気づけられれば」と考えたのではないでしょうか?しかも、この年、ライプチッヒを治めるザクセン選帝侯ご自身も見本市の時期に市を訪問したことも考えると、的を射ている考えかもしれません。この説にはいろいろ議論もありますので、この説の真偽はともかく、こんな想像も、現代の私たちがこの曲を聴く上での楽しみかもしれません。。
この曲(シンフォニア ホ長調)は、カンタータ 第49番「われは行きて汝をこがれ求む」の冒頭に置かれたもので、チェンバロ協奏曲第2番ホ長調の最終楽章と同じ曲です。バッハのチェンバロ協奏曲(そしてオルガン独奏のシンフォニア)は、ヴァイオリンなどの独奏楽器のための協奏曲からの編曲というのが定説ですが、ヴォルフは前述の背景から、この曲とチェンバロ協奏曲の第1番は、この時期のシンフォニアに使われており、オルガンのために作曲されたオリジナルの曲と考えています。そのような考えで聴いてみると、新しい面も見えてきます。このシンフォニアは協奏曲の最終楽章らしく舞曲風の軽快なものですが、中間部のソロなど、半音で上昇する曲想がオルガンにふさわしいとも感じます。伴奏は弦楽合奏に加え、オーボエダモーレが使われています。
ヨハン・ゼバスチァン・バッハ
J.S. Bach(1685-1750)
4つのデュエット ホ短調/ヘ長調/ト長調/イ短調(クラヴィーア練習曲集 第3部より)
Four Duets for Organ (BWV802/803/804/805)
1739年に出版されたクラヴィーア練習曲第3部に含まれるオルガンソロの4つのデュエットは、キリエ、グロリア、賛美歌などに基づく オルガン独奏による壮大な曲集の最後のほうに含まれており、足鍵盤なしの手鍵盤で演奏可能な曲です。クラヴィーア練習曲の序文で「・・音楽愛好家と精通した人々の心の慰めのため・・・」と記述されているように、インヴェンションとシンフォニアのような作曲と演奏、そして鑑賞の楽しみを総合した曲ということでしょうか。この4曲は2声での構成ですが、洗練された美しさを持っています。4つの異なった味わいをお愉しみください。
ヨハン・ゼバスチァン・バッハ
J.S. Bach(1685-1750)
ヴァイオリンとオルガンのためのソナタ ト長調
Sonata for Violin and Organ (BWV1019a)
アレグロ/カンタービレ・ウンポコ・アレグロ/アレグロ
Allegro – Cantabile ma un poco adagio – Allegro
ヴァイオリンとオルガンのためのソナタ ト長調は、ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのための6曲のソナタの6番目の曲です。オブリガート・チェンバロとは、鍵盤楽器の右手が旋律を、左手が低音声部を担当し、独奏楽器と二人でトリオソナタを構成するものです。最初に説明したオルガン独奏のトリオソナタとの密接な関係があります。本日は最終稿の速い楽章の間に、初期稿からゆっくりした楽章(カンタービレ)を挟んで演奏しますが、この楽章はカンタータ第120番「神よ、讃美はシオンにて静けく汝に上がり」のソプラノ・アリアに転用されました。ここでもカンタータとの深い関係がわかります。本日はオルガンで演奏するので、アリアでのソプラノがオルガンの右手で歌われることになります。
モーツァルトとオルガン、その他の楽器について
W.A.モーツァルト(1756-1791)のオルガニストの職務は、ザルツブルクの宮廷音楽家だった時期に限定されますが、幼い時から演奏活動で廻ったヨーロッパ各地で、教会音楽やオルガンに親しみ、また求められてオルガン演奏を披露した機会も多く、モーツァルトにとって鍵盤楽器のなかでも重要な楽器の1つと考えて良いと思います。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
W.A. Mozart (1756-1791)
教会ソナタ ハ長調 Church Sonata in
C-Major (KV.328)
教会ソナタ 変ホ長調
Church Sonata in E-flat Major (KV.67)
教会ソナタ ハ長調 Church Sonata in
C-Major (KV.336)
ザルツブルクのカトリック大聖堂での礼拝には教会音楽が演奏され、モーツァルトもミサ曲などを作曲しました。教会音楽のなかで特別の存在が、17曲残されている教会ソナタと呼ばれるオルガンと器楽アンサンブルの曲です。教会ソナタは、書簡ソナタとも呼ばれ、礼拝のなかでグロリアとクレドの間の、書簡・福音書朗読の部分で演奏されたと考えられています。編成は多くがヴァイオリン2部、低音(弦楽器+オルガン)という構成ですが、時代が進むにしたがって、オルガンが通奏低音の楽器からオブリガート、独奏楽器へと変化していきます。変ホ長調 KV.67は最も初期の1772年ころに作曲されたと考えられています。2つのヴァイオリン声部と通奏低音からなるトリオソナタの様式で、17曲の教会ソナタのなかで唯一のゆっくりした曲想を持つ曲です。2つのハ長調のソナタは、オルガンが独奏楽器として活躍します。KV.328は1779年ころの作曲で、オルガンは通奏低音を離れ両手とも書き出され、時に独奏的な動きを見せます。もう1曲のKV.336は、1780年の作曲でモーツァルト最後の教会ソナタです。編成は他の2曲と同じですが、オルガンを独奏楽器とした構成で、協奏曲への接近がみられます。そして曲の最後にはカデンツァも挿入されています。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
W.A. Mozart (1756-1791)
自動オルガンのためのアンダンテ ヘ長調
Andante for Organ in F-Major (KV.616)
モーツァルトやベートーヴェンの古典派の時代には、楽譜に合わせて円盤の上にピンを立て、円盤を回すことで空気をパイプに送る機械仕掛けの自動オルガンが流行し、モーツァルトもこの楽器のための曲を(断片を含め)5曲残しています。自動オルガンのためのアンダンテもその1曲で、ロンド形式で変奏・転調など多彩な曲想を繰り広げます。本日はオルガンで演奏しますが、1791年にクラヴィーアのためのロンドとして出版されたので、ピアノ曲としても親しまれています。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
W.A. Mozart (1756-1791)
オルガン、フルート、オーボエ、ヴィオラとチェロのためのアダージョとロンド ハ短調
Adagio and Rondo (KV.617)
最後に演奏するアダージョとロンドは、グラス・アルモニカ(ハーモニカ)と4つの楽器のための室内楽として作曲されたものです。グラス・アルモニカは、米国の科学者ベンジャミン・フランクリンが発明したものです。発音の原理は、ワイングラスの縁を濡れた指で擦ると幽玄な音がするのとまったく同じです。フランクリンは、半音階に対応する様々なサイズのグラスを並べ、自動的に回転するようにし、さらに回転時にグラスが自動的に湿るような構造としたことで、鍵盤楽器のような両手での連続的な演奏を可能とした画期的なものでした。一時大流行し、いろいろな作曲家が曲を提供しましたが、この楽器の演奏家が次々に体調を崩したり、精神的に病んでしまったり、聴衆もそのような影響を受けるなどの理由で廃れ、歴史から忘れられた楽器となりました。(指先に連続的な振動が伝わるのが影響する、その神秘的な音色が神経を刺激するため、など言われていますが、その因果関係はわかっていません)
この曲は、モーツァルト晩年の1791年に当時有名だった21歳の盲目のグラス・アルモニカの名手、マリアンナ・キルヒゲスナーのために作曲されました。本日はオルガンでこのパートを演奏しますが、ハ短調の神秘的な序奏に続き、晩年のモーツァルトならではの澄み切った天国的で深い想いの溢れるハ長調のロンドが続きます。
参考文献:
G.Stauffer/Miscellaneous Organ
Trios from Bach’s Leipzig Workshop/Bach and the
Organ/Univ. of Illinois Press (2016)
Ch.Wolff/Did J.S.Bach Write Organ
Concertos? Apropos the Prehistory/Bach and the Organ/Univ. of Illinois Press
(2016)
バッハ事典/東京書籍、モーツァルト事典/東京書籍
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので演奏者全員で、バッハのカンタータ第29番からシンフォニアをお届けします。
ありがとうございました。
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