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68th Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第68回演奏会

お話しとチェンバロ演奏で味わう

〜バロックの描写的音楽〜

Descriptive music in Baroque with Cembalo

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第67

2016116() 18時開演  山手111番館ホール  
18
00 6th November 2016 at Bluff 111

 

 

主催:公益財団法人 横浜市緑の協会/山手111番館

 

出演

お話と演奏:寺村 朋子

チェンバロ(堀栄蔵:1990年、1600年頃のイタリアン・チェンバロによる)

東京芸術大学チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール山梨 第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外の講習会を受講し研鑽を積む。

 

NHKFMリサイタル」に出演。その他オーケストラやバロックダンスとのアンサンブル、ソロ、マスタークラスの伴奏など多方面で活動し、多くの団体と様々なコンサートを行う。トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「J.S.バッハ作品集」(2009年増刷)を編曲、出版。2010年チェンバロ・ソロCD「お気に召すままCapriccio」(レコード芸術準推薦)リリース。

小金井アネックス(宮地楽器)チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会正会員。アンサンブル「ダブルリーズ」メンバー。


 

アンサンブル山手バロッコ第68回演奏会

お話しとチェンバロ演奏で味わう

〜バロックの描写的音楽〜

Descriptive music in Baroque with Cembalo

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第67

 

横浜山手の洋館へようこそ。バロック音楽の標題音楽といえばヴィヴァルディの合奏協奏曲「四季(春〜冬の情景を表す詩と音楽)」があまりに有名ですが、他にも味わい深い標題音楽や描写的な音楽が数多く残されています。今回はチェンバロ奏者 寺村朋子さんをお招きし、チェンバロのために作曲された標題音楽(描写音楽)を、歴史の香りの溢れる山手111番館の親密な空間で、標題となったお話しとその描写する音楽を一緒に味わいます。

     

 

プログラム

 

G.フレスコバルディ(15831643): 戦いのカプリッチォ
G.Frescobaldi / Capriccio sopra la Battaglia
 

 

J.J.フローベルガー(16161667): アルマンド 荒れ狂うライン川を小舟で渡りながら作曲FbWV-627
J.J.Froberger / Allemande, faite en passant le Rhin dans une barque en grand peril
  FbWV-627 

フローベルガーの楽譜に記された描写:

1) ミッターナハト氏は、持っていた剣を船にいる船員に渡そうとして、近づいた小舟から身を乗り出しすぎてしまい、

2) 川へと落ちてしまった。

3) 船は大騒ぎになり、アールフェルト氏がまず船に駆け上がり

4) ボーデック氏がこれに続き

5) アールフェルト氏の子息もためらうことなくこれに続いた。

6) トゥルン伯爵は大いに発奮して、船に駆け上がった後、小舟へと飛び降りた。

7) 船員たちが小舟でやってきて彼を助けようとしたものの、うまくいかなかった。

8) ミッターナハト氏は、ため息をつき始めた。

9) フローベルガー氏もようやく目を覚まし、神に祈った。

10)船員が先にカギのついた長い竿で彼を引き寄せようとしたが、単に上着を切り裂いただけだった。

11)ミッターナハト氏は泳ぎだしたが、

12)それは非常に困難で、うめき声を上げ始め、

13)疲れ果ててしまった。14)さらに、渦に巻き込まれてしまったが、

15)足をバタバタさせて、

16)なんとか渦を抜け出して、体を高く保てるようにした。

17)船員が再び長い竿をもって彼を救おうとやって来たが、

18)彼の肩をしたたかに打っただけに終わった。

19)「おお神よ、わが神よ」

20)ミッターナハト氏は、ライン川を泳ぎきろうと決心したが、

21)強い川の流れに流され、

22)おのが魂を神に委ねたものの、

23)流れにより下流へ押し流された。

24)再び、神の前に嘆きのため息を漏らしたとき、

25)ようやく船員が彼をとらえ、

26)小舟へと引き上げた。       

 (藤原一弘氏の翻訳を元に構成)

 

J.J.フローベルガー(16161667): 組曲ト短調 FbWV-614
J.J.Froberger / Partita in g-minor FbWV-614

私が盗まれ、思うがままに奪われたもの、そして何より私をひどい目にあわせた兵士たちへの哀歌/クーラント/サラバンド/ジーグ
Lamentation sur ce, que j
ay êté volé. Et se joüe à la discretion, et encore mieux que les soldats mont traicté/Courrant/Sarabande/Gigve

 

 

J.クーナウ(1660-1722): 聖書ソナタ(聖書の物語の音楽的叙述)より 「ダヴィデとゴリアテの戦い」
J.Kuhnau / Sonata No. 1, "Il Combattimento tra David e Goliath"
 from "Musicalische Vorstellung einiger biblischer HistorienBiblical Sonatas"

ゴリアテの雄叫びと威嚇/この恐ろしい敵を見たイスラエルの民の慄きと神への祈り/ダヴィデの勇気、この巨人の高慢な鼻をへし折りたいという激しい思い、そして神の加護への深い信仰/ダヴィデとゴリアテの言い争い、そして闘いが始まる/ゴリアテは額に石を受けて倒れ、死ぬ/ペリシテ人の逃走、イスラエルの民は追いかけ、剣を振り下ろす/この勝利に歓喜するイスラエルの民/ダヴィデを讃える女たちの合唱が始まる/ついに、すべての人々が、踊り、飛び跳ねてこの喜びを表す

 

A.ポリエッティ(?1683): カッコウのカプリッチェット 
Alessandro Poglietti / Capriccietto sopra il Cu Cu
 

J.クーナウ(1660-1722): 聖書ソナタ(聖書の物語の音楽的叙述)より「ヤコブの結婚」
J.Kuhnau / Sonata No. 3, "Il Maritaggio di Giacomo"
 from "Musicalische Vorstellung einiger biblischer HistorienBiblical Sonatas"

愛する従兄弟ヤコブの到着を喜ぶラバン家の人たち/ヤコブの苦役は満ち足りた愛で和らげられる/ラケルの友人たちが歌う婚礼の歌/結婚と祝いの言葉/ラバンの策略: 結婚の夜、花婿のもとにラケルではなく姉のレアを行かせる/
婚礼の夜、幸せに溢れた花婿は何か良からぬ予感がするが、すぐにそれを忘れて眠りに落ちてしまう/策略に対するヤコブの怒り/ヤコブの新たな結婚とその喜び

 

J.S.バッハ (1685-1750): 最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリッチォ 変ロ長調 BWV-992 
  J.S.Bach/ Capriccio Sopra la lontananza del suo fratello dilettissimo in B-Major BWV-992

兄の旅立ちを引きとめようとする友人たちの甘い言葉/異国で出会うだろう様々な出来事の想像/友人たち皆の嘆き/避けられないと分かった友人たちがやってきて別れを告げる/郵便馬車の御者のアリア/郵便馬車の角笛を模したフーガ

プログラムノート

横浜山手の洋館へようこそ。バロック音楽の標題音楽といえばヴィヴァルディの合奏協奏曲「四季(春〜冬の情景を表す詩と音楽)」があまりに有名ですが、他にも味わい深い標題音楽や描写的な音楽が数多く残されています。今回はチェンバロ奏者 寺村朋子さんをお招きし、チェンバロのために作曲された標題音楽(描写音楽)を、歴史の香りの溢れる山手111番館の親密な空間で、標題となったお話しとその描写する音楽を一緒に味わいます。

 

フレスコバルディは、イタリア北方のフェラーラで生まれ、オルガンを修め、ローマの教会や宮廷のオルガニストとして活躍しました。バロック音楽における鍵盤音楽の作曲や演奏技法の基礎を作った人で、バッハにも影響を与えています。カプリッチョは気ままにといった意味で、模倣の技法を基にした自由な曲で、多くの音楽家が作曲と演奏の腕前を競ったジャンルです。戦いのカプリッチョは、「チェンバロのためのトッカータとパルティータ集第1巻」の再出版の時に追加された曲で、ラッパの音や兵隊たちの様子が賑やかに描写されています。 

本年生誕400年を迎えるフローベルガーは、17世紀ドイツの鍵盤音楽において重要な作曲家として知られています。各地を旅した彼は、イタリアの鍵盤の大家フレスコバルディや、フランスの作曲家ルイ・クープランから多様な技法や様式を学び、それらを自ら発展させました。70年ほど後に生まれる大バッハにもフレスコバルディと同じように大きな影響を与えたと言われています。フローベルガーは標題音楽も多く残しており、アルマンド 荒れ狂うライン川を小舟で渡りながら作曲は、フローベルガー自身の経験したライン川の渡しでの出来事を26の音型を使って比喩的に表現したもので、それぞれに説明が加えられています(右図を参照)。私が盗まれ、思うがままに奪われたもの、そして何より私をひどい目にあわせた兵士たちへの哀歌は、フローベルガーが旅行中に兵士たちに身ぐるみ強奪されたことをうけて作曲されたもので、組曲ト短調の冒頭に置かれています。 

 

クーナウはドイツ生まれの音楽家で、今日では、この聖書ソナタの作曲者として知られていますが、ライプチッヒの音楽監督として15歳年下のバッハの前任者で、教会音楽、鍵盤音楽の作曲や音楽に関わる小説を残したほか、弁護士、翻訳家としても活動するなど博識・多才な音楽家でバッハに大きな影響を与えました。聖書ソナタは、クーナウは「聖書の物語の音楽的叙述」と呼んでますが、1700年に作曲され、旧約聖書の6つの物語を音楽で表したものです。各曲にはクーナウ自身による物語の詳細な解説文が書かれており、曲の各楽章にも場面の説明が付けられています。本日は、6曲のソナタのうち2曲「ダヴィデとゴリアテの闘い(第1番)」と「ヤコブの結婚(第3番)」をお聴きいただきます。「ダヴィデとゴリアテの戦い」は、旧約聖書「サムエル記」の17章に記されています。巨人ゴリアテに立ち向かう羊飼いの少年ダヴィデの神への深い信頼と戦いに臨む勇気が、この無敵の巨人を倒しイスラエル人を救った物語を8つの部分に分けて描写的に作られています。「ヤコブの結婚」は旧約聖書「創世記」の29章の話を描いたものです。青年ヤコブが泉で出会った美しい娘ラケルとの結婚の条件に父親から出された7年間の苦役を終えた後、父親に欺かれラケルではなく決して美人でない姉のレアと結婚させられ、さらにもう7年間の苦役の末、愛するラケルと結ばれた物語を8つの部分に分けて描写的に作られています。

 

ポリエッティは、イタリアで生まれウィーンで活躍した教会音楽家です。カッコウのカプリッチョは、鳥の声を模倣した旋律が巧みに織り込まれた愛すべき小品です。

 

最後に演奏する最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリッチョは、バッハがまだ10代の作品で、1704年に3歳年上の兄ヨハン・ヤコブがスウェーデン王カール12世の軍楽隊のオーボエ奏者として採用され赴任する際に作曲された描写音楽です。ヨハン・ヤコブは、バッハのすぐ上の兄で、両親に死に別れた直後に2人で、オールドルフの長兄のもとに身を寄せ、一緒に苦労を共にした間柄でした。バッハは、作曲の4年前に出版された、クーナウの「聖書ソナタ」の影響を受け、愛する兄、軍隊へ赴く兄への友人や親戚のかかわりや光景を描写する、心温まるチェンバロ音楽につづりました。曲は6つの部分に分かれています。まず、旅立ちを止めたいという、ご機嫌取りの曲。メロディーに6度の和音が寄り添うことで、その様子が表されています。2曲目は、フーガ様式でかかれていますが、次々と転調を重ねていくことで、赴任先の軍隊での不安を表しています。3曲目は、半音階の低音の動きの上に、何度も「嘆きのモチーフ」が現れ、別れの悲しみを歌います。4曲目は、厳かな曲想でいよいよ別れの時の情景を描きます。最後の2曲は出発の馬車を表しています。御者のラッパの音が響くアリアに続き、兄を連れて走り去る馬車の快適な足取りをラッパの音をテーマにしたフーガに仕立てて、バッハは兄への贈り物を完成させています。

(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)

アンコール

どうもありがとうございました。

沢山の拍手をいただきましたので、

バッハのゴルドベルク変奏曲 BWV988のアリアお聴きいただきました。

ありがとうございました。

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