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65th Concert
アンサンブル山手バロッコ第65回演奏会
開港記念会館で味わう
バッハのチェンバロ協奏曲
Bach’s Cembalo Concerto
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第63回
2016年5月28日(土)午後2時開演(1時半開場) 横浜市開港記念会館講堂
14:00 28th May 2016 at Yokohama Kaikou-kinenkan Hall
主催: アンサンブル山手バロッコ
http://www.geocities.co.jp/yamatebarocco
特別共催: 横浜市中区役所
協力:公益財団法人 横浜市緑の協会、島口チェンバロ工房、Atelier Moet 森田朋子
出演
朝岡 聡 (ナビゲーター)
1959年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。フリーとなってからはTV・ラジオ・CM出演のほか、コンサート・ソムリエとしてクラシックやオペラの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。「音楽の友」などに音楽関連の連載多数。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続している。横濱・西洋館de古楽2016実行委員長。
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
小野 萬里 (バロック・ヴァイオリン)
東京芸術大学ヴァイオリン科卒業。1973年ベルギーに渡り、バロック・ヴァイオリンをS. クイケンに師事、以来たゆみない演奏活動を展開している。現在、コントラポント、クラシカルプレイヤーズ東京、チパンゴコンソート、ムジカ・レセルヴァータのメンバー。
角田 幹夫(バロック・ヴァイオリン)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田純子(バロック・ヴァイオリン)
洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏に師事。慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブル「デュナミス」メンバー。
山口 隆之(バロック・ヴァイオリン、ヴィオラ)
学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。アンサンブル山手バロッコ メンバー、歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。
小川 有沙(バロック・ヴィオラ)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコ メンバー。
中尾 晶子(バロック・チェロ)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ メンバー。
飯塚 正己(コントラバス)
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。アンサンブル山手バロッコ メンバー
野口 詩歩梨(チェンバロ)
©篠原栄治
桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業。同大学研究科修了。チェンバロを鍋島元子、アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。さらにクイケン兄弟、モルテンセン氏などのレッスンを受ける。これまでに国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。“音の輝きをもとめて”と題したリサイタルシリーズ(2000〜2004年)やアンサンブル“ブラヴォー!バロック”のコンサートでは、チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。2011年ワオンレコードよりソロCD「バロックの華」をリリース(「レコード芸術」誌・準特選盤)。古楽情報誌「アントレ」製作ビデオ、吉岡次郎フルートリサイタルCD「疾風怒濤」等に出演。http://shihocem.petit.cc/
大村 千秋(チェンバロ)
東京藝術大学大学院古楽科チェンバロ専攻を大学院アカンサス音楽賞を得て修了。2009年度文化庁新進芸術家海外研修員としてオランダに留学、アムステルダム音楽院チェンバロ科およびフォルテピアノ科にて学ぶ。これまでに崎川晶子、大塚直哉、ボブ・ファン・アスペレン、リチャード・エガーの諸氏に師事。第21回古楽コンクール山梨において最高位受賞。2011年に帰国後は、チェンバロ、フォルテピアノのソリストとして、また通奏低音奏者として国内外で演奏を行うほか、CD録音や音楽祭、レクチャーコンサートなど多方面で活躍している。現在、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。 http://www.chiakiomura.wordpress.com
アンサンブル山手バロッコ第65回演奏会
開港記念会館で味わう
バッハのチェンバロ協奏曲
Bach’s Cembalo Concerto
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第63回
2009年横浜開港150周年の記念行事としてスタートした開港記念会館での「開港記念コンサート」。継続して横浜市のご支援をいただき、本年のテーマは「バッハのチェンバロ協奏曲」。バッハ親子のチェンバロ協奏曲とそれに関連する協奏曲を、たっぷりとお楽しみいただきます。みなさまを、いにしえのライプツィヒのコーヒーハウスや王侯貴族の館での舞台へご案内いたします。素晴らしいゲストのみなさまの演奏とともに、どうぞお楽しみください。
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「しばらく中断していた、バッハ氏率いるコレギウム・ムジクムによる素晴らしい演奏会が、再開される予定。17日水曜日の午後4時から、グリムシュタイン通りのツィンマーマンの庭園にて。当地ではまだ演奏されたことのない新しいチェンバロが披露されるとのこと、音楽愛好家も専門家も大いに期待されたし」
これは1733年にライプツィヒで発行された新聞の記事の一節です。コレギウム・ムジクムはライプツィヒ大学の学生を中心とする合奏団。ツィンマーマンは有名なコーヒーハウス(当時ヨーロッパ中で流行したコーヒー専門の喫茶+娯楽施設)経営者で、彼の店や庭園で毎週開かれたこのコーヒー付コンサートは、ライプツィヒの街の呼び物となっていました。記事にある「新しいチェンバロ」を弾いたのはもちろんバッハ自身です。ここでは、バッハ自身の作曲の協奏曲、ソナタや独奏曲、カンタータなどが演奏され、当時台頭し始めた富裕な商人などの市民の楽しみの場を提供していたのでした。 また2台〜4台のチェンバロのための協奏曲では、バッハ自らの独奏に加え、弟子や優れた腕前をもつ息子たちも独奏に参加したと考えられています。
プログラム
J.S.バッハ(1685-1750): チェンバロ協奏曲 第4番 イ長調 BWV1055
J.S.Bach : Concerto for Cembalo in
A-Major BWV1055
アレグロ - ラルゲット - アレグロ・マ・ノン・タント
Allegro – Largetto – Allegro ma
non tanto
ヨハン・ゼバスチァン・バッハは、このコーヒーハウスでの演奏のために、多数のチェンバロ協奏曲を作曲しましたが、独奏〔1台の〕チェンバロのための協奏曲については、有名なニ短調の協奏曲BWV1052を第1曲とする、6曲のセットがまず作られました。これらの多くはヴァイオリン協奏曲を原曲とし、チェンバロ用に再構成されたと考えられていますが、チェンバロ協奏曲
第4番 イ長調については、その音域、旋律の構成などから、オーボエ・ダモーレを独奏とする協奏曲が原曲ではないかと考えられています。一方で、導入楽章のチェンバロならではの音型やチェンバロでの演奏効果も高さから、元来がチェンバロを意識した曲であった可能性も捨てきれません。2009年の開港記念コンサートでは、復元版(オーボエ・ダモーレ独奏)でお聴きいただきましたが、本日はバッハが書き残した形で演奏いたします。チェンバロと弦の分散和音的な導入部から始まる当世風のギャラントで歌うようなアレグロの第1楽章、シチリアーノ風の情感豊かな旋律をもつ緩やかな第2楽章を経て、3拍子の踊るような快活な第3楽章(アレグロ・マ・ノン・タント)でしめくくられるチャーミングな曲になっています。
J.S.バッハ: フルート協奏曲
ロ短調 BWV209/156/207
J.S.Bach : Concerto for Flauto traverso in b-Minor
BWV209/156/207
アレグロ – ラルゴ - アレグロ
Allegro - Largo – Allegro
フルート協奏曲 ロ短調は、バッハのカンタータの楽章から音楽学者のフランチェスコ・ジメイにより再構成された協奏曲です。ジメイがこの再構成を思いついたきっかけは、当時の音楽評論家シャイベのバッハへの批判にありました。「・・ごてごてとした装飾の多い、複雑な構造で・・・技巧の過剰によって美しさを曇らせ・・・」です。これは行き過ぎた批判とされてきましたが、ジメイはバッハの作曲におけるパロディや器楽と声楽の組み換えの実践を考えると、バッハの特徴の正確な描写であると考えます。さらに、これまでの音楽学者の定説なども鑑みて、バッハの音楽では器楽曲と声楽曲は相互に変換可能であるとし、この協奏曲の起点としています。第1楽章は、1734年頃に作曲された、世俗カンタータ「悲しみのいかなるかを知らず」BWV209の導入のシンフォニアを原曲としています。本日演奏する2台のチェンバロにための協奏曲と類似の主題で始まる緻密な協奏曲楽章です。第2楽章は、ジメイ版でなく山手バロッコ版でお送りします。今回のコンサートのテーマ「バッハのチェンバロ協奏曲」とのつながりも考えて、1729年作曲の教会カンタータ「わが片足すでに墓穴に入りぬ」BWV156のシンフォニアを選びました。この曲は、バッハが1730年代に編曲したチェンバロ協奏曲ヘ短調の第2楽章の原曲と考えられています。独奏のオーボエをフルートへ変更するに当たっては、当時の習慣に合わせ、2度上のト長調へ移調しました。最終楽章は、ジメイの原案通り、1726年に作曲した世俗カンタータ「鳴り交わす絃の相和せる競いよ」BWV207の第3曲のテノールアリアを原曲としています。第1楽章と同じ調性で、合奏と独奏が巧みに折り合わされた緊密なリトルネロ形式で書かれています。
J.S.バッハ: 2台のチェンバロのための協奏曲
ハ短調 BWV1062
J.S.Bach : Concerto for Two Cembali in c-Minor BWV1062
(アレグロ) - アンダンテ・エ・ピアノ- アレグロ・アッサイ
(Allegro) - Andante e
piano - Allegro assai
2台のチェンバロのための協奏曲は3曲残されています。ハ長調の曲BWV1061は当初よりチェンバロ2台を想定して書かれており、弦楽アンサンブルの役割も小さいものです。残りの2曲BWV1060,1062は、双子のように似た構成になっており、旋律楽器のための協奏曲を、コレギウム・ムジクムでバッハ親子がチェンバロで演奏するために編曲されたと考えられています。2台のチェンバロのための協奏曲
第3番 ハ短調 (BWV1062)は、2台のヴァイオリンのための協奏曲BWV1043を原曲としており、原曲も編曲も当時の楽譜が現存しています。ヴィヴァルディが開発した協奏曲の原理に基づきながらも、細密な内声や対旋律などの織りを加え、ドイツとイタリアの2つの趣味を巧みに融合させた作品です。第1楽章では合奏で提示されるテーマにつづき、2台のチェンバロがフーガの形で相次いで登場し、リトルネロ形式で曲が進みます。第2楽章は、ピチカートで奏でる舞曲(シチリアーノ)のリズムに乗って、2台のチェンバロが心に残る対話を続けます。最後の第3楽章はテーマが次々と重なり合い追いかけるような形で始まり、要所に独奏の火花のほとばしりを挟みつつ、緊張感を保ったままこの曲を閉じます。
C.Ph.E.バッハ: チェンバロ協奏曲
ニ短調 Wq.23/H.427
C.P.E.Bach : Concerto for Cembalo in d-Minor Wq.23/H.427
アレグロ - ポコ・アンダンテ - アレグロ・アッサイ
Allegro – Poco Andante - Allegro assai
チェンバロを独奏楽器とした協奏曲は、父親(J.S.)バッハによって開発されたジャンルですが、息子達、弟子たちは演奏に参加しただけでなく、この形式を自分のものとして多くの曲を残しました。バッハの次男カール・フィリップ・エマニュエル・バッハは、自伝で書き残しているように実に49曲のチェンバロ協奏曲を作曲しており、ハイドン、モーツァルトのピアノ協奏曲への道を開いたとも言えるでしょう。
チェンバロ協奏曲 ニ短調は、まだ父親が存命中の1748年にベルリンの宮廷で作曲されました。チェンバロ協奏曲ニ短調といえば、父親 ゼバスチャンのチェンバロ協奏曲(BWV1052)が有名で、大バッハの協奏曲の中でも最も技巧的、個性的な名曲として知られています。エマニュエルも若いころ親元でこの曲に触れており、自分も同じ主題で協奏曲(編曲・習作)を残していますので、強い影響を受けたに違いありません。チェンバロ奏者の渡邊順生さんは、「このC.P.E.バッハの協奏曲を一度聴けば、息子のバッハが父親の作品と同種の感情内容を表現したいという衝動に身を委ねざるを得なかった状況が即座に納得できるであろう。」と述べています。バッハの息子で最も成功したエマニュエルらしく、この衝動をエネルギーに変えつつも、父親の直接的な影響を吸収したうえで、模倣に陥るのではなく、それを乗り越えた個性的な曲として仕上げています。立派に独立した音楽家として新たな境地を確立した素晴らしい作品だと言えるでしょう。曲は、緩-急-緩の3楽章構成、第1楽章および第3楽章は全奏と独奏が交互にあらわれるリトルネロ形式を採用するなど父親のチェンバロ協奏曲と同じ構成を採用していますが、その内容は、ユニゾンの多用や突然の休止や感情(強弱)の大きな変化など、新しい多感様式を取り入れ、それにエマニュエルの個性と優れた鍵盤奏者としての火花の飛び散るような独奏部が加わり、この曲を魅力的なものにしています。
J.S.バッハ: 3台のヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1063a
J.S.Bach : Concerto for Three Violini in d-Minor
BWV1063a
(アレグロ) - アラ・シチリアーナ - アレグロ
(Allegro) - Alla Siciliana -
Allegro
J.S.バッハのチェンバロ協奏曲は他の独奏楽器(ヴァイオリンなど)のための協奏曲からの編曲したものと考えられていますが、原曲が残されているのは、そのうちの一部にすぎません。バッハの3台のチェンバロのための協奏曲は2曲残っており、昨年のコンサートでは第2番ニ長調を3台のヴァイオリン協奏曲として演奏しました。本日演奏する3台のヴァイオリンのための協奏曲
ニ短調は、もう1曲の第1番 ニ短調BWV1063から復元を試みたものです。
昨年の第2番は、多くの学者や演奏家がその復元に取り組み、復元された楽譜も出版され、録音も数多く行われています。しかし第1番は、復元された演奏を聴く機会はほとんどありません。なぜ復元の機会がそれほど少ないかというと、まず全体に分散和音や早い音階が随所にあらわれ、そのままではヴァイオリンなどの旋律楽器には不向きなこと、また独奏が第1チェンバロに集中しており(バッハ自身が弾くためでしょうか?)、3つの独奏楽器のバランスがとりにくいことなどによるものと思われます。そしてこれらは、とりもなおさずこの曲が最初から3台のチェンバロを独奏楽器として作曲されたのではないかという推理もできます。
しかし山手バロッコでは今回その難題に敢えて挑戦。ヴァイオリン3台用に、原曲のイメージを保ちつつ3人の独奏者がヴァイオリンならではの旋律を奏でられるよう復元を試みました。お聴きいただいて、この曲からバッハの響きを少しでも感じていただければこの試みは成功と言えるかもしれませんが、果たして?
(プログラムノート: アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたので、
J.S.バッハの カンタータ 第182番 「天の王よ、汝を迎えまつらん」BWV182より最終曲合唱「いざ行かん 喜びの国へ」
を出演者全員の器楽合奏でお聴きいただきました。
ありがとうございました。
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