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48th Concert
アンサンブル山手バロッコ第48回演奏会
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第39回コンサート
開港記念会館で親しむバロック
“港の見える”音楽会
“A Concert to face of the port”
2013年6月1日(土)午後2時開演(1時30分開場)
2:00pm
1st June. 2013 at Kaikou-kinen-kaikan
Hall
特別共催: 横浜市中区役所、協力: 公益財団法人 横浜市緑の協会 楽器提供・協力: 島口孝仁(チェンバロ製作家)
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
朝岡聡(お話、リコーダー)
Satoshi Asakoka (Recorder
and Concert Navigation)
横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年からフリー。TV・ラジオ・CMの他、コンサートソムリエとしてクラシック演奏会の司会や企画にもフィールドを広げている。特に古楽とオペラでは親しみやすく本質をとらえた語り口が好評を博している。
リコーダーを大竹尚之氏に師事。著書に「笛の楽園」(東京書籍)「いくぞ!オペラな街」(小学館)など。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手地区西洋館でのコンサートを継続している。「横濱・西洋館de古楽」実行委員長。
国枝俊太郎(フラウト・トラヴェルソ、リコーダー)
Shuntaro Kunieda (Flauto
Traverso,Recorder)
東東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」などに出演、CD録音にも参加する。
現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。
バロックアンサンブル「クラングレーデ」、ルネサンス・フルート・コンソート「ソフィオ・アルモニコ」メンバー。
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
Hirozumi Sone (Flauto
Traverso)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。
1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロックを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
大山有里子(バロック・オーボエ・ダモーレ)
Ariko Ohyama(Baroque Oboe d’amore)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。
そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、バロック・オーボエを始める。これまでに各地でピリオド楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加し、現在は関東を中心に活動している。
バロックアンサンブル「クラングレーデ」、「ダブルリーズ」、「アルモニー・アンティーク」メンバー。
石川和彦 (バロック・ヴァイオリン)
Kazuhiko Ishikawa (Baroque Violin)
大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。
フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。
ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プィステー、桐山建志各氏に師事。バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)
Mikio Tsunoda (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田純子(バロック・ヴァイオリン)
Junko Harada (Baroque Violin)
洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏に師事。慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。
モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブルデュナミス、バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
山口隆之(ヴィオラ・ダモーレ、バロック・ヴァイオリン,)
Takayuki Yamaguchi (Viola d’amore, Baroque Violin)
学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサ
ンブルを千成千徳氏に師事。
カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。
小川有沙(バロック・ヴィオラ)
Arisa Ogawa (Baroque Viola)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。
中尾晶子(バロック・チェロ)
Akiko Nakao (Baroque Violoncello)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己(コントラバス)
Masami Iizuka (Contrabass)
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
寺村朋子(チェンバロ)
Tomoko Teramura (Cembalo)
©篠原栄治
東京芸術大学音楽学部チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回古楽コンクール・チェンバロ部門第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外のアカデミーに参加し研鑽を積む。
NHK「FMリサイタル」に出演。その他多くの団体と様々なコンサート活動を行う。トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「JS.バッハ作品集」(2009年再版)を編曲、出版。
現在、宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会運営委員。2010年 チェンバロソロCD「カプリッチョ」(レコード芸術準推薦盤)リリース。
野口詩歩梨(チェンバロ)
Shiori Noguchi(Cembalo)
©篠原栄治
桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業。同大学研究科修了。チェンバロを故・鍋島元子、アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。さらにクイケン兄弟、モルテンセン氏などのレッスンを受ける。
これまでに国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。“音の輝きをもとめて”と題したリサイタルシリーズ(2000〜2004年)やアンサンブル“ブラヴォー!バロック”のコンサートでは、チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。
2011年ワオンレコードよりソロCD「バロックの華」をリリース(「レコード芸術」誌・準特選盤)。古楽情報誌「アントレ」製作ビデオ、吉岡次郎フルートリサイタルCD「疾風怒濤」等に出演。
開港記念会館で親しむバロック
“港の見える”音楽会
“A Concert to face of the port”
2009年横浜開港150周年記念の行事として、重要文化財で歴史的な西洋建築である横浜市開港記念会館でのコンサート「バッハの市民音楽」を開催いたしました。歴史ある洋館と由緒あるバロック音楽との出会いの空間は、おかげさまで好評でした。毎年開港記念の6月に横浜市中区役所のご支援をいただき、今回は、複数楽器を独奏とした協奏曲を中心に、ヴィヴァルディ、テレマンなど港町に縁の作曲家とバッハの名曲を集めた“港の見える”音楽会として、さらに趣向をこらして開催するはこびとなりました。
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681〜1767)
フルート、オーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダモーレのための 三重協奏曲 ホ長調 TWV53:E1
アンダンテ – アレグロ – シシリアーノ – ヴィヴァーチェ
Georg Philipp Telemann
Concerto for Flute, Oboe d’amore and Viola d’amore in E-Major TWV53 E1
Andante –Allegro – Siciliano – Vivace
テレマンは、ドイツの内陸マクデブルクで生まれましたが、ライプチッヒで学び、バッハの生地アイゼナッハ宮廷楽長やフランクフルトの音楽監督を経て、1721年には優れた港を持ち、貿易で大いに栄えたハンザ自由都市ハンブルクの音楽監督に就任し、その地で亡くなるまで長く活躍しました。オペラ、協奏曲、室内楽曲や教会音楽を多数作曲し、また楽譜の予約出版を行い、ヨーロッパ中に高い名声を轟かせ、当時随一の流行作曲家となりました。
フルート、オーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダモーレのための三重協奏曲は、大変めずらしい楽器の組み合わせで書かれています。オーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダモーレともにドイツで好まれた楽器で、オーボエ・ダモーレは、通常のオーボエよりも3度低い音域を持ち、愛のオーボエとも言われるように、洋梨のような独特のベルの形と柔らかい音色で愛好されました。ヴィオラ・ダモーレは、ヴィオラのように肩にのせて演奏する楽器ですが、構造はヴィオラ・ダ・ガンバに類似していることと、通常のガット弦の下に金属の弦が共鳴弦として何本も張られていることが特徴で、独特の響きを提供します。ヴィオラ・ダモーレは、1720-30年代にドレスデンやダルムシュタットの宮廷でソロ楽器として多くの曲が作られ、演奏されているので、テレマンがハンブルク音楽監督の時期に、ダルムシュタットの宮廷のためにこの曲を作曲したのではないかと考えられています。テレマンは自伝の中で、どんな組み合わせでも各楽器にあったように作曲すれば、演奏者は満足して演奏でき、そうすると聴いている人も満足させることができる、と自信を持って述べていますが、この曲もその最も成功した例であり、3つの特徴ある楽器の微妙な色合いを組合せ描き出した名画のような印象さえ感じさせます。
第1楽章は独奏楽器3つの色彩が次々にあらわれ、混ぜ合わされながら、楽器の個性が展開していきます。続く第2楽章は、テレマンの好むポーランド風の民族音楽を主題とする、ヴィヴァルディ風のリトルネロ形式の楽章です。最初に提示される長大なリトルネロ主題と各独奏楽器が名人芸が披露される部分が交互にあらわれます。構成的に変化に富んでおり、画一的な形式に陥らないような工夫にもあふれています。第3楽章は、弦の伴奏でヴィオラ・ダモーレがシシリアーノのメロディーを奏で、他の2つの独奏楽器はそれに飾りをつけます。最後の楽章は、田園風のロンドです。おおらかな気分にあふれた楽章で、弦楽器のドローン(バグパイプを模した長い音)など、羊飼い役のソリストたちを盛り上げ、楽しく曲を閉じます。
ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685〜1759)
2つのリコーダーと通奏低音のためのソナタ ヘ長調
アレグロ – グラーヴェ – アレグロ
Grorge Frederich Handel
Trio for Two Recorders in F-major
Allegro – Grave – Allegro
ヘンデルも、ドイツの内陸ハレで生まれましたが、故郷を離れ、港町ハンブルクでオペラを作曲し、イタリアに渡り、ローマ、ヴェネチィア、フィレンツェなどの大都市で枢機卿や侯爵の館に客人として滞在し、イタリア上流階級の芸術・音楽活動に参加しました。その後、ロンドンに渡り、終生そこで活躍するというヨーロッパの貿易や芸術の中心地を巡り活躍しました。
2つのリコーダーと通奏低音のためのソナタは、 2本のリコーダーのために書かれた唯一の作品で、ヘンデルのイタリア時代(1706年〜1710年)に作曲され、貴族のサークルで演奏されたと考えられます(手稿譜だけでなく、筆写譜も残っていますので、広く知られていたのでしょう。) 軽快に始まる第1楽章は、1707年のオラトリオTrinfo del Tempo e del Disinganno (時と真理の勝利)の序曲として使われています。また、1708年のオラトリオLa Resurrezione
(復活)の導入曲にも再利用されているなど、お気に入りの曲だったのではないかと思います。第2楽章はコレッリ風のGraveで、ヘンデルがイタリア時代に知り合った作曲家の好んだ形式です。最後の第3楽章はジーグのリズムに乗った、いかにもヘンデルという主題で始まります。この主題は、リコーダーソナタ(作品1-11)やオルガン協奏曲(作品4-5)でも再利用されてますので、どこかでお聴きになっているかもしれません。ヘンデルらしい明快な曲想が、リコーダー2本の冴え冴えとした響きと相まって、小品ながら印象に残る曲になっています。本日は低弦をコントラバスで演奏します。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
アレグロ –アダージョ – アレグロ
Johann Sebastian Bach
Cembalo Concerto in d-minor BWV1052
Allegro - Adagio –Allegro
バッハはヘンデルと同じくドイツの内陸のザクセン地方で伝統的な音楽一家に生まれ、一生をドイツ国内のしかも限られた地域で過ごしました。その意味では、港の見える土地で生活したことはありませんでしたが、若いころは有名な音楽家に会いに宮廷や教会都市を訪ね、バッハ家に伝わる曲やヴィヴァルディなど時代の先端を行く曲を筆写し勉強しました。また後年は、多くの有名な音楽家や作曲家はバッハとの親交を求めバッハ家を訪問し、各国の最新流行の音楽を伝えました。後年ベートーヴェンは、「音の組み合わせと和声とのあの無限の、汲み尽くしがたい豊かさのゆえに、彼は小川(バッハ)でなく大海(メーア)と称すべきだ」と述べていますが、音楽的には大きな海のように過去および未来につながる全ての要素を取り込み、支えた大海のような存在だったと思います。
バッハは50代の半ばに、以前に書いた旋律楽器のための協奏曲を7曲まとめてチェンバロ協奏曲に編曲しました。これらは当時まだ珍しかった一般市民のための公開演奏会(コレギウム・ムジクム)で、バッハ自身が独奏チェンバロを弾いて披露したようです。本日演奏するチェンバロ協奏曲ニ短調は、その第1曲目に作られたもので、19世紀のバッハ再発見以来、最高の名作と認められている一方で、原曲と考えられる協奏曲についてバッハの筆の真偽に議論が盛んな皮肉な曲です。バッハは、このチェンバロ協奏曲への編曲以外にも、教会カンタータにオルガン独奏で編曲しています。また、バッハの次男C.P.E.バッハの手によるチェンバロ協奏曲編曲も残されています。資料的にはバッハの作を疑うものは何も無いですし、バッハが他人の作を編曲しカンタータのシンフォニアや楽章に転用した例は知られていないので真作説が有力だと思います。構成される3つの楽章それぞれを説明する必要のない統一的な曲であり、リトルネロ主題の構成、音楽的な密度や楽曲構成の巧みさから、バッハ以外の作曲者を考えるのは難しいように思いますし、演奏してみると有名な半音階的幻想曲とフーガに通じるバッハの作品の中でも最高の世界にいることを感じます。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)
合奏協奏曲 ニ短調 「調和の幻想」作品3-11
アレグロ – アダージョ・スピカート – アレグロ – ラルゴ エ スピカート
– アレグロ
Antonio Vivaldi
Concerto No. 11 in D minor for two violins, cello and
strings “L'Estro Armonico, Op. 3”, RV 565:
Allegro -
Adagio e spiccato – Allegro - .Largo e spiccato - .Allegro
ヴィヴァルディは、港町ヴェネチアで生まれました。ヴァイオリニストの父親に教育を受け、25歳の時に司祭に叙され、赤毛の司祭としてピエタ慈善院の付属音楽院のヴァイオリン指導を始めました。生涯を通じて多くの協奏曲や合奏曲などの器楽曲や宗教曲を作曲しましたが、このピエタの少女たちのオーケストラによるコンサートには、作曲家として曲を提供するだけでなく、少女の音楽演奏の教育を行い、コンサートのためにリハーサルを指導し、本番では独奏も担当し妙技を披露するなど、ピエタのコンサートの名声を高めることに大いに貢献しました。ヴィヴァルディによってこのピエタの少女たちのオーケストラと演奏会は大人気となり、経済的に苦しかったピエタの運営に音楽会収入でも貢献しました。名声はヨーロッパ中に広がり、オペラ作曲家としても活躍し、また各地の宮廷を訪問し作曲演奏活動も行いました。
それらを集めた合奏協奏曲集「調和の幻想」は、ヴィヴァルディが生前に出版した作品集の中で最も有名になったものです。全12曲のうち今回演奏する第11番の合奏協奏曲ニ短調は、2つのヴァイオリンとチェロが独奏楽器。やや古いスタイルで、明確な楽章の区切りがなく、急−緩−急−緩−急の5つの部分から成っています。なお、この曲が出版されたころバッハの仕えていた宮廷のエルンスト公子がオランダ遊学した際にこの作品集を入手し持ち帰りました。バッハはこの第11番を含む5曲をオルガンやチェンバロ独奏用に編曲し、コレッリ、トレッリ、アルビノーニらによって開拓され、ヴィヴァルディによって完成された器楽合奏のための協奏曲の様式を学びました。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための三重協奏曲 イ短調 BWV1044
アレグロ – アダージョ・マ・ノン・タント – アラブレーヴェ
Johann Sebastian Bach
Concerto for Flute, Violin and Cembalo in a-minor BWV1044
Allegro – Adagio ma non tanto – Alla breve
本日演奏するもう1曲、フルート、ヴァイオリン、チェンバロのための協奏曲は、この3つの楽器が独奏を受け持つ曲として、ブランデンブルク協奏曲の第5番を思い起こしますが、その由来も音楽的にも全く違った特徴を持っています。チェンバロ協奏曲と同様、旧作を基にして作られました。原曲はチェンバロ独奏用の「プレリュードとフーガイ短調」BWV894で、プレリュードは第1楽章に、フーガは第3楽章に使われました。第2楽章はオルガン独奏用の「トリオソナタ第3番」BWV527の第2楽章から転用されています。協奏曲への編曲に際して、両端楽章は大幅に補充・拡大され、より緻密で緊張感あふれる曲となっています。第2楽章はブランデンブルク協奏曲第5番と同様、3つの独奏楽器だけで演奏されます。劇的な曲想と技巧的で華麗なチェンバロ独奏をもつ、魅力あふれる作品です。
この曲はバッハ自身による編曲とされていますが、チェンバロ奏者のレオンハルトは、この曲は、チェンバロの音域が唯一、チェンバロ協奏曲で使われていない上のF(ファ)までが必要とされること、ピチカート伴奏などバッハの様式感と異なること、また演奏していてバッハの密度を感じないことから、手稿を準備した弟子のミューテルなどバッハの次の世代の手による編曲ではとないかと考えていたそうです。また、指揮者のJ.E.ガーディナーは最近の研究成果を踏まえ、本編曲が晩年のバッハのドレスデンやポツダム訪問の際に披露するように、ギャラントなこれらの宮廷の音楽の特徴を取り入れて準備されたものではないかと推定しています。本日は、バッハのチェンバロ協奏曲のなかでも名曲として知られ、同時にバッハ自身の関与に内容について議論のある2曲を聴き比べることになりました。名曲であることには何の変わりもありませんので、楽しんでお聴きいただき、曲の陰に隠れた秘密についても、みなさまご自身の推理でお楽しみください。
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたので、
テレマン 協奏曲 変ロ長調(TWV54:B2)より アレグロ
をお送りします。
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