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43rd Concert
アンサンブル山手バロッコ第43回演奏会
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第28回コンサート
開港記念会館で親しむ
〜 バッハの市民音楽とその周辺 〜
"Bach, Telemann and Handel’s Public Concert”
2012年6月2日(土)午後2時開演(1時30分開場)
2:00pm
2nd June. 2012 at Kaikou-kinen-kaikan Hall
特別共催: 横浜市中区役所、協力: 公益財団法人 横浜市緑の協会 楽器提供・協力: 島口孝仁(チェンバロ製作家)
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
朝岡聡(お話、リコーダー)
Satoshi Asakoka (Recorder
and Concert Navigation)
1959年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年フリーとなってからはTV・ラジオ・CM出演のほか、コンサート・ソムリエとしてクラシックやオペラの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。福岡古楽音楽祭にも毎年参加して、オープニングコンサートで軽妙かつ的確な司会は好評を得ている。「音楽の友」などに音楽関連の連載多数。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続している。横濱・西洋館de古楽2010実行委員長。
木島千夏(ソプラノ)
Chinatsu Kijima (Soprano)
国立音楽大学卒業後、同大学音楽研究所の研究員として、バロック歌唱の研究と演奏活動に従事。
川口絹代、橋本周子に師事。92年英国へ留学し、J.キャッシュに声楽を師事、ギルドホール音楽院にて E.カークビー、D.ロブロウ、 N.ノースのレッスンを受ける。
第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。翌年同音楽祭に招待され、モーツァルトの「聖墓の音楽」のソロ等を歌う。W.Christie指揮によるシャルパンティエのオペラ公演「ダヴィデとヨナタン」に参加。
帰国後は、バロックを専門にグレゴリオ聖歌から現代曲まで幅広いレパートリーに取り組みソリストまたはアンサンブルで活躍している。
2002年より横浜山手の洋館でのリサイタルを継続している。現在、聖グレゴリオの家教会音楽科講師。
国枝俊太郎(フラウト・トラヴェルソ)
Shuntaro Kunieda (Flauto
Traverso)
東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」などに出演、CD録音にも参加する。現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。バロックアンサンブル「クラングレーデ」、ルネサンス・フルート・コンソート「ソフィオ・アルモニコ」メンバー。
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
Hirozumi Sone (Flauto
Traverso)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。
1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロックを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
大山有里子(バロック・オーボエ)
Ariko Ohyama(Baroque Oboe)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、バロック・オーボエを始める。
これまでに各地でピリオド楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加し、現在は関東を中心に活動している。バロックアンサンブル「アルモニー・アンティーク」、「クラングレーデ」メンバー。
石川和彦 (バロック・ヴァイオリン)
Kazuhiko Ishikawa (Baroque Violin)
大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プィステー、桐山建志各氏に師事。バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)
Mikio Tsunoda (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田純子(バロック・ヴァイオリン)
Junko Harada (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロックヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。
モダンとバロックの両楽器で活躍。カメラータ・ムジカーレ同人
伊東ゆき乃(バロック・ヴァイオリン)
Yukino Itoh (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。
モダンヴァイオリンを久保田良作氏、木村恭子氏に師事。バロックヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。
山口隆之(バロック・ヴィオラ)
Takayuki Yamaguchi (Baroque Viola)
学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサ
ンブルを千成千徳氏に師事。
カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。
小川有沙(バロック・ヴィオラ)
Arisa Ogawa (Baroque Viola)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。
中尾晶子(バロック・チェロ)
Akiko Nakao (Baroque Violoncello)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己(コントラバス)
Masami Iizuka (Contrabass)
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
寺村朋子(チェンバロ)
Tomoko Teramura (Cembalo)
©篠原栄治
東京芸術大学音楽学部チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を、山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回古楽コンクール・チェンバロ部門第2位入賞。
シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外のアカデミーに参加し研鑽を積む。NHK「FMリサイタル」に出演。その他多くの団体と様々なコンサート活動を行う。
トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「JS.バッハ作品集」(2009年再版)を編曲、出版。宮地楽器小金井アネックス・チェンバロ科講師。
2010年 チェンバロソロCD「カプリッチョ」(レコード芸術準推薦盤)レリース。
酒井絵美子(チェンバロ)
Emiko Sakai (Cembalo)
洗足学園音楽大学ピアノ科卒業。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。
CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年横浜イギリス館にてソロリサイタル開催。
現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として講習会のアシスタントや日本各地で演奏するなど、意欲的に音楽活動を行っている。
バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
開港記念会館で親しむ
〜 バッハの市民音楽とその周辺 〜
"Bach, Telemann and Handel’s Public Concert”
2009年横浜開港150周年記念の行事として、重要文化財で歴史的な西洋建築である横浜市開港記念会館でのコンサート「バッハの市民音楽」を開催いたしました。西洋館でのお客様・演奏者とバッハの音楽との出会いの楽しい空間は、おかげさまで好評でした。本年は横浜市中区役所の特別共催のご支援をいただき、さらに趣向をこらして開催するはこびとなりました。
150年余前の横浜開港は、同時に日本の西洋音楽の本格的な受容の開始される年でもありました。日本は開国ということで1700年から1850年の150年の西洋音楽を一度に受けいれることになりました。開港150周年の年から100年ほど前に市民の集いの場として建設された開港記念会館で毎年お届けしているコンサート、今年はバッハ、テレマンとヘンデルというバロックの3人の巨匠が、自らの手で行った市民への公開コンサートのように演奏してみることにいたしました。
曲の背景、劇での位置づけを舞台での語り(ナビゲータ)で思い描いていただきながら、3人の作曲家の名曲の数々を、ロンドン市民やコーヒーハウスのお客様になったつもりで、ごゆっくりお楽しみください。
テレマンと市民音楽
テレマンは1681年ドイツのエアフルト近郊に生まれました。テレマン家は大学で学び教会関係に勤める教養のある家柄でしたが、音楽一家ではありませんでした。テレマンは若くから音楽の才能に恵まれ、独学で音楽を修めました。1701年ライプツィヒ大学に入ると、教会のカンタータを作曲し始め、学生オーケストラ「コレギウム・ムジクム」を創設し、市民の人気を博しました。1721年ハンブルグの音楽監督に就任して以来、1760年代まで、ドイツで最も有名かつ影響力のある音楽家になりました。台頭した市民階級の音楽需要を満たすために市民音楽会や家庭音楽会が多く開かれるようになりましたが、テレマンは、その機会に望まれるあらゆる組合せの楽曲を作曲し、自ら楽譜出版を手がけ財を成しました(バッハも購入者として記録が残っています。) バッハとの親交も厚く、バッハの次男カール・フィリップ・エマニュエルには名付け親になり、最終的にはハンブルクの音楽監督のバトンをこのエマニュエル・バッハに渡すことになります。
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681〜1767)
組曲 ホ短調 「食卓の音楽 第1集」より TWV 55 e1
序曲 – リジョイサンス – ロンド– ルーレ– パスピエ– エア –ジーグ
– 終曲
Georg Philipp Telemann
Suite e-minor from “Tafelmusik Production-1”
Ouverture (Lentement-Vite-Lentement) –Rejouissance – Rondeau – Lourée – Passepied
- Air un peu vivement – Gigue –
Conclusion
組曲ホ短調は、テレマンの出版譜の中でも最も有名で、欧州中より注文が殺到したという3集からなる「食卓の音楽」の第1集の巻頭を飾る曲です。組曲とは、当時流行した舞曲を組み合わせ楽曲です。現在は管弦楽組曲と呼ばれていますが、フランスで活躍した大作曲家リュリのオペラの序曲と舞曲に遡る起源を持つ管弦楽(管楽器と弦楽合奏、通奏低音)を起源としており、当時は冒頭に置かれるフランス風序曲にちなんで序曲(Overture)と呼ばれていました。演奏する組曲は、2本のフルートと弦楽合奏という編成で標題は「序曲(Overture)」と記載されています。独奏楽器として、フルート、ヴァイオリンとチェロが序曲の中間部分や舞曲で独奏として活躍します。
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681〜1767)
リコーダーとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ロ長調 「音楽の練習帳」より TWV42 B4
ドルチェ –ヴィヴァーチェ – シシリアーナ– ヴィヴァーチェ
Georg Philipp Telemann
Trio for Recorder, Obligato Cembalo and Basso continuo Bb-major from “Essercizii Musici”
Dolce – Vivace – Siciliana – Vivace
リコーダーとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ロ長調は、1739〜49年にかけて出版された「エッセルチーツィ・ムジチ(音楽の練習帳)」に含まれています。練習帳となっていますが、コンサートで楽しめる独奏曲とトリオソナタが24曲、様々な構成で含まれており今日の演奏者にとっても貴重な曲集になっています。オブリガート・チェンバロとは右手で独立した声部を演奏するチェンバロのことで、この声部とリコーダーが2つの上声部を構成します。面白いのは、(バッハのオブリガート・チェンバロと独奏楽器のソナタと異なり)独奏チェンバロとは別に通奏低音のパートが独立しており、低音楽器と共に演奏します。本日は、リコーダー、独奏チェンバロ、通奏低音(もう1台のチェンバロ+コントラバス)という構成でこの曲の広がりをお楽しみいただきます。曲は緩・急・緩・急の4楽章構成で、リコーダーとチェンバロがあるときは同じ主題を模倣し、またあるときはそれぞれに特徴のある別の主題で主張し合うなど、室内楽の編成ながら大きな編成を想像させるテレマンの才覚に感心します。
ヘンデルとロンドンの劇場音楽
ヘンデルは、バッハと同じ年にドイツのハレで生まれました。一生をドイツの限られた範囲に留まり活動したバッハとは対照的に、ヘンデルは、イタリアで修行し、英国にわたり活躍し、オペラやオラトリオを劇場で演奏し市民の喝采を博し、最終的にイギリスに帰化し、ジョージ・フレデリック・ハンデルとして一生を送りました。バッハとヘンデルはお互いに会うことはありませんでしたが、お互いを知り、尊敬しあっていたと考えられています。(バッハは生涯に2度ヘンデルと会うことを試みましたが、2回とも叶いませんでした。)
ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685〜1759)
オペラ『ジュスティーノ』より「あふれだす急流は」 HWV37
Grorge Frederich Handel
Quel torrente che
s'innalza(Giustino HWV37)
本日は、ヘンデルがバッハのコレギウム・ムジクム活躍と同時期の1737年にロンドンで初演したオペラ「ジュスティーノ」から、第2幕の最後で、皇帝の妃アリアンナが歌うアリア「あふれだす急流は」をお聴きいただきます。敵将ヴィタリアーノは今や捕われて死刑を待つのみ。彼はアリアンナをずっと愛しており、死の前にせめて優しいまなざしを向けてほしいと願う。しかしアリアンナはなんて厚かましい!と一蹴し、暗い塔に閉じ込めておくよう兵士に命じてから、決然と歌います。
歌詞大意
岸辺にあふれだし崖を超えて流れる急流は、海にその墓を見いだします
そのように、無遠慮な願望は、私の軽蔑という海についには流れ落ちていくのです
オラトリオ『時と真理の勝利』より「守護の天使よ、ああ、お守り下さい」
Guardian angels, oh protect me(The Triumph of Time and Truth
HWV71)
ヘンデルのロンドン生活の前半は、このようなオペラ作曲家として30数曲のオペラを上演し、ロンドンオペラ界を引っ張る大活躍をしました。しかし、徐々にイギリスの聴衆は外国語でのオペラに飽き、英語での総合的な娯楽を求めだしました。そこでヘンデルはイタリア語のオペラに代わって、英語の劇的オラトリオというジャンルを創作し、劇場音楽の主力として1730年代の末からはこちらに軸足を移していくことになります。本日のもう1曲は、最晩年の作品で、1757年3月11日にコヴェントガーデン王立劇場で初演されたオラトリオ『時と悟りの勝利』からアリア「守護の天使よ、ああ、お守り下さい」をお届けします。このオラトリオは、1707年に作曲されたイタリア語によるオラトリオ『時と悟りの勝利』(Il Trionfo delTempo e del Disinganno)を、1737年に『時と真理の勝利』(Il Trionfo del Tempo e della Verita)と改題してロンドンで上演したものを、さらに20年後の1757年になって歌詞をトーマス・モーレルが英語に訳し、タイトルも英語に改題(The Triumph of Time and Truth)して作り直したものです。約2/3が1707年の初稿と1737年の第2稿から転用され、残りの1/3もヘンデルの他の既存の作品からの転用で作られています。このオラトリオでは、「美」を間において「時」と「真理」、「快楽」と「欺瞞」が対決するテーマ設定になっています。「快楽」と「欺瞞」は、今の美しさ、今の生活を存分に満喫せよ、と主張する。一方、「時」と「真実」は、美しさは時の流れとともにすぐに色あせるはかないもの、全て真理は時の中にあると説きます。このアリアは第3幕の大詰めで、「快楽」がどんな誘いにも応じない「美」をあきらめて飛び去った後、「美」が美徳への道へ進む決意を歌うものです。
歌詞大意
守護の天使よ、ああ、お守りください
私を美徳の道に導いてください
天にこの身を委ねますかぎりは
もうこれ以上この世に欺かれることも
空しくはかない熱情に悩むこともいたしません
信仰、希望、愛によって力強く生きます
バッハのライプツィヒでの市民音楽
バッハは、先輩テレマンの設立したライプツィヒ大学の学生を中心とする合奏団コレギウム・ムジクムを受け継ぎ、ツィンマーマンというコーヒーハウスのお店や庭園で毎週コンサートを開催し、ライプツィヒの街の呼び物に育て上げました。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056
(指定なし)–ラルゴ
– プレスト
Cembalo Concerto f-minor BWV1056
( ) - Largo –Presto
バッハのチェンバロ協奏曲は、独奏チェンバロが1台のものから4台のものまで、13曲が現存しています。これらのチェンバロ協奏曲は、この音楽会でバッハ自身が(ときには息子達と一緒に)腕前を披露するために書かれたと思われます。同時代の作曲家に比べバッハがチェンバロを独奏楽器とした協奏曲をこれほど残しているのは、このためなのでしょう。本日演奏するチェンバロ協奏曲 第5番ヘ短調も、他のチェンバロ協奏曲と同じく、他の独奏楽器の協奏曲からの編曲であろうと考えられています。第2楽章は、カンタータ第156番のシンフォニア(器楽楽章)としてオーボエ独奏の形で残されています。曲は比較的コンパクトな構成ながら、独奏部分と弦楽アンサンブルが緊密に絡みあう作りになっており、ヘ短調という響きと相まっていぶし銀のような光を放つ名曲です。
第1楽章は、繰り返しを含む念押しをするようなテーマで始まります。このテーマを柱として独奏部分が挟み込まれるリトルネロ形式。第2楽章はバッハのアリオーソとして有名です。弦のピチカートにのって独奏がアリアのように歌い、そのまま切れ目なく第3楽章が始まります。活力あふれる舞曲風の3拍子の曲で、次々と緊張感あふれるエピソードを独奏と弦楽合奏の間で会話しながら曲が終了します。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
ヴィヴァーチェ –ラルゴ・マ・ノン・タント – アレグロ
Concerto for 2 Violins d-minor BWV1043
Vivace – Largo ma non tanto – Allegro
2台のチェンバロのための協奏曲は3曲残されています。開港150周年コンサートで演奏した曲(BWV1061)は当初よりチェンバロ2台を想定して書かれており、弦楽アンサンブルの役割も小さいものです。残りの2曲(BWV1060,1062)は、双子のように似た構成になっており、既存の旋律楽器のための協奏曲をコレギウム・ムジクムでバッハ親子がチェンバロ独奏の披露をするために編曲されたと考えられています。その原曲の内の1曲は、昨年の開港記念コンサートで演奏したオーボエとヴァイオリンのための協奏曲(BWV1060R)です。もう1曲(BWV1062)は、本日演奏する2台のヴァイオリンのための協奏曲を原曲としており、原曲も編曲も楽譜が現存しています。
ヴィヴァルディが開発した協奏曲の原理に基づきながらも、ドイツ好みの細密な内声や対旋律などの織りを加え、2つのスタイルを巧みに融合させた作品です。第1楽章では合奏で提示されるテーマにつづき、2つの独奏楽器がフーガの形で相次いで登場し、合奏と独奏が巧みに折り合わされたリトルネロ形式で曲が進みます。第2楽章は、オーボエとヴァイオリンのための協奏曲と双子のような曲。ピチカートで奏でる舞曲(シチリアーノ)のリズムに乗って、2つの独奏楽器が心に残る対話を続けます。最後の第3楽章はテーマが次々と重なり合い追いかけるような形で始まり、要所に独奏の火花のほとばしりを挟みつつ緊張感を保ったままこの曲を閉じます。
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたので、
バッハのカンタータ第29番より、コラール「父 み子 みたまを ほめたたえまつらん」
をお送りします。
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