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38th Concert
アンサンブル山手バロッコ第38回演奏会
「横浜セントラルタウンフェスティバルY152」参加
開港記念会館で親しむ
ヘンデル・愛のアリアとバッハの市民音楽
"Handel’s Opera aria and Bach’s Public Concert ”
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第20回
2011年6月4日(土)午後2時開演(1時半開場)
横浜市開港記念会館講堂
14:00
4th June. 2011 at Kaikou-kinen-kaikan Hall
主催: アンサンブル山手バロッコ
後援: 横浜市中区役所、協力: 財団法人 横浜市緑の協会
楽器提供:島口孝仁(チェンバロ製作家)、フラワーコーディネーション:森田朋子(Atelier Moet)
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
朝岡聡(お話、リコーダー)
Satoshi Asaoka (Recorder
and Concert Navigation)
1959年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年フリーとなってからはTV・ラジオ・CM出演のほか、コンサート・ソムリエとしてクラシックやオペラの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。福岡古楽音楽祭にも毎年参加して、オープニングコンサートで軽妙かつ的確な司会は好評を得ている。「音楽の友」などに音楽関連の連載多数。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続している。横濱・西洋館de古楽2010実行委員長。
木島千夏(ソプラノ)
Chinatsu Kijima(Soprano)
国立音楽大学卒業後、同大学音楽研究所の研究員として、バロック歌唱の研究と演奏活動に従事。川口絹代、橋本周子に師事。92年英国へ留学し、J.キャッシュに声楽を師事、ギルドホール音楽院にて E.カークビー、D.ロブロウ、 N.ノースのレッスンを受ける。
第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。翌年同音楽祭に招待され、モーツァルトの「聖墓の音楽」のソロ等を歌う。W.Christie指揮によるシャルパンティエのオペラ公演「ダヴィデとヨナタン」に参加。
帰国後は、バロックを専門にグレゴリオ聖歌から現代曲まで幅広いレパートリーに取り組みソリストまたはアンサンブルで活躍している。2002年より横浜山手の洋館でのリサイタルを継続している。
現在、聖グレゴリオの家教会音楽科講師。
国枝俊太郎(リコーダー)
Shuntaro Kunieda (Recorder)
東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。
これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」などに出演、CD録音にも参加する。
現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。
バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
Hirozumi Sone (Flauto Traverso)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロックを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。「横濱・西洋館de古楽2011」実行委員会事務局長。
大山有里子(バロック・オーボエ)
Ariko Oyama (Baroque Oboe)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。
そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、バロック・オーボエを始める。これまでに各地でピリオド楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加し、現在は関東を中心に活動している。
バロックアンサンブル「アルモニー・アンティーク」、「クラングレーデ」メンバー。
石川和彦(バロック・ヴァイオリン)
Kazuhiko Ishikawa (Baroque Violin)
大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。
フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。
ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・ブイステー、桐山建志各氏に師事。オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウ
ゲストコンサートマスター。バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)
Mikio Tsunoda (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
原田純子(バロック・ヴァイオリン)
Junko Harada (Baroque Violin)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロック・ヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。モダンとバロックの両楽器で活躍。カメラータ・ムジカーレ同人
山口隆之(バロック・ヴァイオリン, バロック・ヴィオラ)
Takayuki Yamaguchi (Baroque Violin, Baroque Viola)
学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサ
ンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。
小川有沙(バロック・ヴィオラ)
Arisa Ogawa (Baroque Viola)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。
中尾晶子(バロック・チェロ)
Akiko Nakao (Baroque Violoncello)
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己(コントラバス)
Masami Iizuka (Contrabass)
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
野口詩歩梨(チェンバロ)
Shiori Noguchi(Cembalo)
©篠原栄治
福井県生れ。桐朋学園大学古楽器科卒業、同研究科修了。ピアノを伊原道代、雨田信子、チェンバロを故鍋島元子、又アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。その後クイケン兄弟、モルテンセン氏などの指導を受ける。
現在、通奏低音奏者、ソリストとして幅広く活動。これまでに内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。2000年から継続して「音の輝きをもとめて」と題したソロリサイタルを開催。山手西洋館でもソロ、アンサンブルで活躍中。2011年ソロCD「バロックの華」レリース。
2010年〜2011年にはCDレリース記念のリサイタルを福井と横浜で開催し、各方面より好評を得る。横浜市在住。
酒井絵美子(チェンバロ)
Emiko Sakai (Cembalo)
洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。故
小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。
また、フォルテピアノの伊藤深雪氏のレッスンを受講。CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年イギリス館で、2010年山手234番館でソロ・リサイタルを開催。
現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として、日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務める傍ら、ピアノ奏者としてアンサンブルに参加するなど、意欲的に音楽活動を行なっている。バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。
アンサンブル山手バロッコ第38回演奏会
開港記念会館で親しむ
ヘンデル・愛のアリアとバッハの市民音楽
"Handel’s Opera aria and Bach’s Public Concert ”
一昨年、横浜開港150周年記念の行事として、重要文化財で歴史的な西洋建築である横浜市開港記念会館でのコンサート、バッハの市民音楽を開催いたしました。バッハの曲を中心に据えた西洋館でのお客様・演奏者の出会いの楽しい空間は、おかげさまで好評をいただきました。本年も横浜市中区役所のご支援をいただき、山手西洋館で活躍の大勢のゲスト演奏家にも賛同・参加いただき、ヘンデルのオペラアリアを加え、さらに趣向をこらしたコンサートをトークとともにお楽しみいただけるよう企画いたしました。島口孝仁さん(チェンバロ製作家)にはチェンバロ協奏曲を始め、今回のコンサートでじ活躍するフレンチ様式の「チェンバロの提供と調律」にご協力をいただきました。また、会場を百合の香りで包みセルセの舞台を盛り上げていただいた「フラワーコーディネーション」には森田朋子(Atelier Moet)さまに全面的な協力をいただきました。
150年余前の横浜開港は、同時に日本の西洋音楽の本格的な受容の開始される年でもありました。日本は開国ということで1700年から1850年の150年の西洋音楽を一度に受けいれることになりました。日本の開国・開港と共に入ってきた西洋クラシック音楽の原点であるバッハの音楽を中心に、100年ほど前に市民の集いの場として建設された開港記念会館で、バッハ自らが一般市民に解放した公開コンサートのように演奏してみることにいたしました。
***
「しばらく中断していた、バッハ氏率いるコレギウム・ムジクムによる素晴らしい演奏会が、再開される予定。17日水曜日の午後4時から、グリムシュタイン通りのツィンマーマンの庭園にて。当地ではまだ演奏されたことのない新しいチェンバロが披露されるとのこと、音楽愛好家も専門家も大いに期待されたし」
これは1733年にライプツィヒで発行された新聞の記事の一節です。コレギウム・ムジクムはライプツィヒ大学の学生を中心とする合奏団。ツィンマーマンは有名なコーヒーハウス経営者で、彼の店や庭園で毎週開かれたこのコーヒー付コンサートは、ライプツィヒの街の呼び物となっていました。記事にある「新しいチェンバロ」を弾いたのはもちろんバッハ自身です。ここでは、バッハ自身の作曲の協奏曲、ソナタや独奏曲、カンタータなどが演奏されましたし、記録によれば、ヘンデルやテレマン、イタリアのヴィヴァルディの曲なども演奏され、当時台頭し始めた富裕な商人など市民の楽しみの場を提供していたのでした。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
J.S.Bach
管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067
Suite No.2 b-minor
BWV1067
序曲 – ロンド – サラバンド – ブーレー I/II– ポロネーズ/ドゥーブル – メヌエット – バディネリ
Overture – Rondeau – Sarabande – Bourree I/II –
Polonaise/Double – Menuet – Badinerie
「新しいチェンバロ」で紹介された協奏曲のジャンルに加えて、もう1つ当時流行したのが舞曲を組み合わせた組曲です。バッハは、独奏ヴァイオリン、チェロやリュート、チェンバロなどのために多くの組曲を書いています。また、フランスで活躍した大作曲家リュリのオペラの序曲と舞曲に遡る起源を持つ管弦楽(管楽器と弦楽合奏、通奏低音)のための組曲も当時大流行しました。現在は管弦楽組曲と呼ばれているこのジャンルは、当時は冒頭に置かれる大規模なフランス風序曲にちなんで序曲(Overture)と呼ばれていました。本日演奏する管弦楽組曲第2番は、4曲残されているバッハの管弦楽組曲の中でも最も有名な曲でフルートが独奏楽器として活躍します。バッハの作成したパート譜の年代鑑定から、1739年から再開したコレギウム・ムジクムの演奏会で使われたと推定されています。曲は、定型の緩・急・緩の構成のフランス風序曲で始まり、その後に、6つの舞曲または当世風の小曲が続きます。曲の成立の起源や独奏楽器の起源については諸説がありますが、特徴的なのは、テレマン、バッハなどドイツの一部の作曲家だけが好んで採用した協奏曲風序曲(組曲)の様式で書かれていることです。協奏曲風序曲とは、組曲の中に、協奏曲で好んで使われたリトルネロ(合奏部分)とソロが交互に現れる様式を取り込んだもので、組曲第2番では、序曲の中間部分のフーガが、本日演奏するチェンバロ協奏曲の終楽章のような様式で構成されています。序曲以外にも舞曲の中に協奏曲の原理を取り入れているのがお聴きになれると思います。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
J.S.Bach
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調 BWV1060R
Concerto
for Oboe and Violin c-minor BWV1060R
アレグロ –アダージョ – アレグロ
Allegro – Adagio - Allegro
バッハの2台のチェンバロのための協奏曲は3曲残されています。1曲(BWV1061)は当初よりチェンバロ2台を想定して書かれており、弦楽アンサンブルの役割も小さいものです。残りの2曲(BWV1060,1062)は、双子のように似た構成になっており、既存の旋律楽器のための協奏曲をコレギウム・ムジクムでバッハ親子がチェンバロ独奏の披露をするために編曲されたと考えられています。1曲は原曲がわかっており2台のヴァイオリンのための協奏曲(BWV1043)です。もう1曲(BWV1060)の原曲は残されていませんが、2つの旋律の特徴から、オーボエとヴァイオリンが独奏だったと考えられており、復元がされています。原曲(と思われる)構成での演奏効果も高いので、むしろこの編成のほうが良く演奏されるかもしれません。
本日は、オーボエとヴァイオリンのための協奏曲として原曲復元版(BWV1060R)でお聴きいただきます。合奏で提示されるテーマに、独奏がエコーで応えて始まる第1楽章では、それぞれの楽器の特徴を生かした掛け合いが魅力的です。2つのソロ楽器が弦楽の伴奏の上で穏やかに掛け合い、会話をする第2楽章に続き、最後の第3楽章は良く練られたテーマで颯爽と始まり、2つの楽器が、第1楽章以上に個性が際立った技巧的な独奏部を披露し、テーマと独奏が繰り返されて進みます。
ヨハン・ゼバスチャン・バッハ(1685〜1750)
J.S.Bach
2本のリコーダーとチェンバロのための協奏曲
へ長調 BWV1057
Concerto for two Recorders and Cembalo F-Major BWV1057
(テンポ指定なし) – アンダンテ – アレグロ・アッサイ
( - ) – Andante – Allegro assai
バッハのチェンバロ協奏曲は、独奏チェンバロが1台のものから4台のものまで、13曲が現存しています。これらのチェンバロ協奏曲は、この音楽会でバッハ自身が(ときには息子達と一緒に)腕前を披露するために書かれたと思われます。同時代の作曲家に比べバッハがチェンバロを独奏楽器とした協奏曲をこれほど残しているのは、このためなのでしょう。この中で唯一の編成である2本のリコーダーとチェンバロのための協奏曲は、有名なブランデンブルク協奏曲の第4番を、バッハ自身が編曲したものです。ブランデンブルク協奏曲は、バッハがケーテンの宮廷楽長だった1721年に、ブランデンブルク州周辺を治めていたルードウィッヒ候に献呈した、いわば自作名曲選で、バッハは「様々な楽器のための6つの協奏曲」とタイトルをつけています。原曲のブランデンブルク協奏曲第4番 ト長調は、独奏ヴァイオリンと2本のリコーダーがソロとして活躍する合奏協奏曲のように書かれています。バッハは音域の関係もあり、1音下のヘ長調とし、ヴァイオリンの独奏部分をチェンバロに置き換えました。ヴァイオリン的過ぎる音型を鍵盤楽器に適するように修正し、2楽章のエコー(こだま)の部分を原曲のリコーダー+ヴァイオリンの編成からチェンバロ独奏に変更しましたが、原曲の構成をきちんと保持しており、チェンバロ奏者にとっても、高い技巧が要求される曲となっています。リコーダーの分散和音で始まり、チェンバロ独奏が低音から高音まで自在に駆け回る軽やかな舞曲風の第一楽章、全員の合奏とチェンバロのソロが、フォルテとピアノの会話を交し合う第2楽章、最終楽章はヴィオラのテーマ提起から、弦楽器とリコーダーが参加するフーガです。チェンバロはフーガの合間を縫って、目覚しい活躍を見せます。
. ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685〜1759)
G.F.Handel
オペラ「セルセ」より
Opera “Serse”
レシタティーヴォ「愛しいプラタナスのしなやかで美しい枝よ」(Frondi
tenere)とアリオーソ「こんな木陰は」(Ombra
mai fu) –アリア「この素敵な小川は」(Va
godendo)
–アリア「黙り込み、私をからかう」(Di tacere e di
schernirmi) - デュエット「まだ愛するのか?」(L’amerete?)とアリア「裏切った」(Se bramate)
–レシタティーヴォ「愛し続ける?」( L'amerò ?)とアリア 「私の心をこんなにも苦しめる」(È gelosia quella tiranna) -アリア「大切な方」(Caro voi siete all'alma )
セルセのアリア
ヘンデルは、バッハと同じ年にドイツのハレで生まれました。一生をドイツの限られた範囲に留まり活動したバッハとは対照的に、ヘンデルは、イタリアで修行し、英国にわたり活躍し、最終的にイギリスに帰化し、ジョージ・フレデリック・ハンデルとして一生を送りました。バッハとヘンデルはお互いに会うことはありませんでしたが、お互いを知り、尊敬しあっていたと考えられています。(バッハは生涯に2度ヘンデルと会うことを試みましたが、2回とも叶いませんでした。)
バッハの指揮するコレギウム・ムジクムにおいても、ヘンデルのイタリア風カンタータやオペラのアリアが演奏されたことが残された数少ない資料でもわかっています。本日は、ヘンデルがバッハのコレギウム・ムジクム活躍と同時期の1738年ロンドンで初演されたオペラ「セルセ」から、アリアをレシタティーヴォ(語り)や重唱を交えながらお聴きいただきます。セルセは冒頭のアリア「オンブラマイフ」で有名ですが、歴史上の紀元前5世紀のペルシャの王、クセルクセス(セルセ)を主人公に、セルセの弟アルサメーナと、その恋人ロミルダへのセルセの横恋慕、ロミルダの妹アトランタのアルサメーナへの恋心と姉ロミルダへの嫉妬と策略、セルセの婚約者アマストレの一部始終を知った上での賢い動き・・・など何組もの男女の愛の物語がテンポ良く進むヘンデルオペラ最終期の傑作と言えます。劇の進行を舞台での語り(ナビゲータ)で追っていただきながら、ヘンデルの愛のアリアの数々を、ロンドン市民またはライプツィヒのコーヒーハウスのお客様になったつもりで、ごゆっくりお楽しみください。
ロミルダのアリア
<歌詞大意>
1. レシタティーヴォ「愛しいプラタナスのしなやかで美しい枝よ」(Frondi tenere)とアリオーソ「こんな木陰は」(Ombra mai fu)
愛しいプラタナスのしなやかで美しい枝よ、お前たちに幸いあれ。
嵐や雷がお前達の平和をかき乱すことなく、乱暴な南風も手出しはしない。
こんな木陰は いままでになかった こんなにいとおしく 心地よい木陰は いままでになかった。
2. アリア「この素敵な小川は」(Va godendo)
この素敵な小川は自由に喜びながら野原を流れ、波がきらきらと笑うように輝きながら海へと流れて行く。
3. アリア「黙り込み、私をからかう」(Di tacere e di schernirmi)
黙り込み、私をからかう、誰がおまえにそんなことを教えたのか?ああ、残酷な!
愛しい瞳、愛する星よ、美しくなければよいのに。私を傷つけるのを止めてくれ。そうすればもうおまえ達を求めはしない。
4. デュエット「まだ愛するのか?」(L’amerete?)とアリア「裏切った」(Se
bramate)
(セルセ)まだ 愛するのか? (ロミルダ)愛し続けます
(セルセ)おまえを裏切ったのに? (ロミルダ)運命のいたずらです
(セルセ)無情だと思わないのか? (ロミルダ)愛し続けます
(セルセ)まだ 愛するのか? (ロミルダ)愛し続けます
裏切った男を愛する女など見捨てたいところだが、私にはどうしたらよいのかわからない。
おまえの愛の怒りが私にそれを教えているのだが、真似をしようとも私の心はどうしてもできない。
5. レシタティーヴォ「愛し続ける?」( L'amerò ?)とアリア 「私の心をこんなにも苦しめる」(È gelosia quella tiranna)
愛し続ける? わからないわ! 恋人は裏切り者、妹は信用できない、二人とも私の苦しみを笑っている。
ひどい女、嘘つきめ!愛し続ける?わからないわ!
私が半狂乱でわめいているのをあなた達は聞いていて、私のひどい怒りが誰のせいなのかを知りたがっているの?
私の心をこんなにも苦しめる暴君、それは嫉妬だわ。私の胸にその毒を注いで、ひどい痛みを与える。
6. アリア「大切な方」(Caro voi siete all'alma )
大切な方、愛しい方、あなたの手によって私は愛の勝利の印になる。
(訳:木島千夏)
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたので、木島さんにもう1曲歌っていただきます。こんどは、バッハのアリアを
バッハ カンタータ 第25番「汝の怒りによりて、わが肉体には全きところなく」よりアリア「私のつたない歌にも聴いてください」
でお聴きいただきましょう
(おかげさまで、日本赤十字を通じて50,711円を震災義捐金として寄付いたしました。報告申し上げます。ご協力ありがとうございました。)
送付受領証
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