これまでの演奏会へ戻る

 NEW!!
37th Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第37回演奏会

横濱・西洋館de古楽2011コンサート

山手の丘に香る≪コーヒーカンタータ≫
"Bach Coffee Cantata in Seiyou-kan

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第18

2011213() 18時開演(1730分開場) ベーリックホール(横浜市中区山手町72) 
18
00 13rd February. 2011 at Berrick Hall

主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会

共催:財団法人横浜市緑の協会/公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/横浜市市民活力推進局/横浜市中区役所/横浜古楽プロジェクト
後援: 東急グループ、元町SS会 協力:横浜山手聖公会/アンサンブル山手バロッコ/オフィスアルシュ 

出演 アンサンブル山手バロッコ 

わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。

 

朝岡聡(お話、リコーダー)
Satoshi Asaoka (Recorder and Concert Navigation)

1959年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年フリーとなってからはTV・ラジオ・CM出演のほか、コンサート・ソムリエとしてクラシックやオペラの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。福岡古楽音楽祭にも毎年参加して、オープニングコンサートで軽妙かつ的確な司会は好評を得ている。「音楽の友」などに音楽関連の連載多数。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の西洋館でのコンサートを継続している。「横濱・西洋館de古楽2011」実行委員長。

 

鈴木美紀子(ソプラノ)
Mikiko Suzuki (Soprano)

ベルギー王立リエージュ音楽院を最優秀の成績で修了し、プルミエ・プリ(優秀賞)を受賞。在学中からヨーロッパ、アメリカのさまざまな音楽祭・レコーディングに参加。その歌唱は高く認められ、海外メディアからも「表情豊かでまばゆいばかりの演奏」「この世のものならぬ美しさ」と絶賛を受ける。声楽を鈴木優子、遠藤恭子、G.ド・メイ、バロック歌唱法を故大橋敏成、フランスバロック歌唱法をジル・フェルドマンの各氏に師事。現在はルネサンス・バロック歌曲のスペシャリストとして意欲的な演奏活動を行っている。2006年には、つのだたかし氏の伴奏でフランスバロック歌曲のリサイタルを行い、好評を得た。《Bless B Quintet》《アンサンブル・エクレジア》のコンサート、CD録音に参加。横浜市在住。

 

石川洋人(テノール)
Hiroto Ishikawa (Tenor)

7歳より静岡児童合唱団に入団。ソリストとして3回のヨーロッパ演奏 旅行に参加。国立音楽大学声楽科卒業。スイスバーゼル音楽大学大学 院、及びスコラカントールムに留学。芸術修士取得。在学中よりヨー ロッパ各地でコンサート出演。スイス、ポラントリュイ・バッハ アカデミー、ウィーン、ザルツブルグ・トゥジュール モーツァルト音楽週間、ドイツ、ボーデン湖国際音楽祭、ニュル ンベルク教会音楽週間等の音楽祭にも招かれた。M.コルボ、 M.ラドレスク、A.ルーリー、J.リフキン等著名な音楽家と も共演、いずれも好評を博す。200611月帰国後、バッ ハ・コレギウム・ジャパン等に参加し、ソリスト及びアンサンブ ル歌手として国内外で活躍している。戸崎裕子、牧野正人、K. ヴィトマー、E.タブ、G.テュルクの各氏に師事。

 

藤井大輔(バス)
Daisuke Fujii (Bass)

明治大学商学部、東京芸術大学声楽科を卒業。声楽を直野資、ロバート・ホワイトの各氏に師事。これまでにオペラでは、モーツァルト「ドン・ジョバンニ」のタイトルロール、「コシ・ファン・トゥッテ」のド ン・アルフォンソ、ニコライ「ウインザーの陽気な女房達」のフルート、ドニゼッティ「愛の妙薬」のドゥルカマーラ、また宗教曲では、フォーレ「レクイエム」、モーツァルト「レクイエム」、「戴冠ミサ」、バッハ「ヨハネ受難曲」、「カンタ−タ」、ヘンデル「メサイア」などのソリストをつとめる。バッハ・コレギウム・ジャパンの国内外の公演、録音にも参加している。

  

大山有里子(バロック・オーボエ)
Ariko Oyama (Baroque Oboe)

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋弥氏に師事する。卒業後、関西を中心にオーケストラやアンサンブルで、またソロ奏者として活動する。大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心として数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、バロック・オーボエを始める。これまでに各地でオリジナル楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加している。「アルモニー・アンティーク」、「クラングレーデ」メンバー。横浜音楽文化協会会員。

 

曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)
Hirozumi Sone (Flauto Traverso)

フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロックを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。「横濱・西洋館de古楽2011」実行委員会事務局長。

 

角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)
Mikio Tsunoda (Baroque Violin)

慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。

 

小松久子(バロック・ヴァイオリン)
Hisako Komatsu (Baroque Violin)

慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。エッフェ弦楽アンサンブルコンサート・ミストレス。

 

原田純子(バロック・ヴァイオリン)
Junko Harada (Baroque Violin)

慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロック・ヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。モダンとバロックの両楽器で活躍。カメラータ・ムジカーレ同人

  

山口隆之(バロック・ヴァイオリン)
Takayuki Yamaguchi (Baroque Violin)

学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサ ンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。

 

小川有沙(バロック・ヴィオラ)
Arisa Ogawa (Baroque Viola)

慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。

 

中尾晶子(バロック・チェロ)
Akiko Nakao (Baroque Violoncello)

チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

水越友顕(コントラバス)
Tokoaki Mizukoshi (Contrabass)

学生時代よりコントラバスを始める。1992年よりバッハカンタータアンサンブルにて通奏低音を担当しバッハカンタータ全曲演奏プロジェクトに参加。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

酒井絵美子(チェンバロ)
Emiko Sakai (Cembalo)

洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。故 小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。また、フォルテピアノの伊藤深雪氏のレッスンを受講。CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年横浜イギリス館で、2010年山手234番館でソロ・リサイタルを開催。現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として、日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務める傍ら、ピアノ奏者として様々なアンサンブルに参加するなど、意欲的に音楽活動を行なっている。バロックアンサンブル「クラングレーデ」メンバー。


 

アンサンブル山手バロッコ第37回演奏会

横濱・西洋館de古楽2011コンサート

山手の丘に香る≪コーヒーカンタータ≫
"Bach Coffee Cantata in Seiyou-kan

 

昭和の初めにイギリス人貿易商の邸宅として建てられたベーリックホールには欧米の伝統的なサロンがあります。ここを会場に18世紀の貴族や市民が楽しんだ音楽をお届けします。貿易で栄えた都市国家ヴェネツィアに響いた協奏曲、ライプツィヒに当時流行したコーヒーを題材に、父と娘のユーモラスなやりとりを音楽で綴った「コーヒーカンタータ」… 休憩時間には、実際に薫り高いコーヒーお楽しみいただく予定です。豊かな歌声と古楽器のハーモニーをお楽しみください。

***

「しばらく中断していた、バッハ氏率いるコレギウム・ムジクムによる素晴らしい演奏会が、再開される予定。17日水曜日の午後4時から、グリムシュタイン通りのツィンマーマンの庭園にて。当地ではまだ演奏されたことのない新しいチェンバロが披露されるとのこと、音楽愛好家も専門家も大いに期待されたし」

これは1733年にライプツィヒで発行された新聞の記事の一節です。コレギウム・ムジクムはライプツィヒ大学の学生を中心とする合奏団。ツィンマーマンは有名なコーヒーハウス経営者で、彼の店や庭園で毎週開かれたこのコーヒー付コンサートは、ライプツィヒの街の呼び物となっていました。記事にある「新しいチェンバロ」を弾いたのはもちろんバッハ自身です。ここでは、バッハ自身の作曲の協奏曲、ソナタや独奏曲、カンタータなどが演奏されましたし、記録によれば、ヘンデルやテレマン、イタリアのヴィヴァルディの曲なども演奏され、当時台頭し始めた富裕な商人などの市民の楽しみの場を提供していたのでした。

 

B.マルチェロ(1669- 1747
B.Marcello
  

オーボエ協奏曲 ニ短調
Concerto for Oboe and String Orchestra d-minor 

アンダンテ・エ・スピカート – アダージョ – プレスト
Andante e spiccato - Adagio
Presto

マルチェロ(1669- 1747)はイタリアのヴェネチアで活躍した作曲家です。このオーボエ協奏曲は、バッハがワイマールの宮廷に仕えていた時期に知ったイタリアの協奏曲の中のひとつでもあります。バッハはこの曲をチェンバロ1台で演奏する協奏曲として編曲し、2楽章に豊かな装飾を加えたものを残しています。本日は、原曲の形でお楽しみください。曲は特徴のある弦楽器のユニゾンで始まり、オーボエが高らかに歌い始める第1楽章。続く第2楽章は、イタリア映画「ベニスの愛」で使われたことで有名ですが、静かな弦楽器の伴奏の上に、オーボエが長く抒情的な旋律を歌います。第3楽章は舞曲風な曲想で弦楽と独奏が会話を楽しみ、華やかに曲を閉じます。

 

伝バッハ(M.ホフマン) (1679-1715
M.Hoffmann
 (att. J.S.Bach)

カンタータ 「私の魂はほめたたえる」 BWV189 
Cantata Meine Seele ruhmt und preist BWV189

アリア  レチタティーヴォ  アリア  レチタティーヴォ  アリア
Aria Recitativo Aria - Recitativo Aria

カンタータ「私の魂はほめたたえる 」BWV189は、長くバッハの作と考えられ旧バッハ全集に含まれていますが、現在はホフマン(1679-1715)作と考えられています。1679年ドレスデン近郊に生まれたホフマンは、バッハやコレギウム・ムジクムとも大いに関係する音楽家です。ホフマンは、テレマンのスタートしたライプツィヒのコレギウム・ムジクムを1705年に引き継ぎました。1722年に市の音楽監督になったバッハは、ライプツィヒのコレギウム・ムジクムを、やがて大いに発展させ、冒頭の新聞記事のように市の名物にしました。また、1714年には、ハレのオルガニストのポストをバッハと競った間柄でもあります。作曲家としては、カンタータだけでなく、(バッハの就任前に廃止されてしまった)ライプツィヒのオペラハウスのためにオペラの作曲もしています。このようにバッハともいろいろな接点があったので、この曲もバッハの曲と混同されたのかもしれませんし、当時もバッハの仲間内でも知られていた曲だったのかもしれません。曲はテノールを独唱とし、リコーダー、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音からなる室内楽形式のもので、オペラ作曲家らしい親しみやすいメロディーと舞曲風の趣味を取り入れた佳曲になっています。

<歌詞大意>

1. アリア

           私の魂は、主をほめたたえます。主の優しさと良きはからいを。私の魂は、心と命は、わたしの救い主であり、扶助者である主を持つことで喜び満ち足りています。 

2. レチタティーヴォ

           わたしがわたし自身と生き方を見つめるとき、思わず口から言葉がでてきます。おお主よ、主よ!あなたがわたしにしてくださったことは、たとえ何千もの人々でも1つも約束できないだろうことなのです。あなたの御業はなんと素晴らしく、あなたの言葉は何と誠実なことでしょう。そして、なんと豊かで慈悲深いことでしょう。ですから、わたしは主を、ほめたたえ、大声で、あなたをたたえ歌います。

3. アリア

           神さま、あなたは、わたしたち下界にいるものを、高みより見守ってくださいます。現世では、低く、貧しいだけのわたしさえも、主よ、あなたは忘れずにいてくださいます。それで、わたしは、とても大切にされていると感じることができます。

4. レチタティーヴォ

           見なさい。わたしが、ありとあらゆる場所と機会に出会う、不思議な出来事、それは主がなしたもうものです。わたしは、心から神に感謝をささげますそれは、天が、天使セラフィムでさえ、へりくだることを忘れないほど、その行いをもって栄光を高め、主は、わたしに命と体を与えてくださいました。主は、愛によって、わたしをあらゆる場所で祝福してくださり、このわたしにも復活の機会をお与えになりました。

5. アリア

           ああ神さま、あなたのなさる全ての善きこと、全ての慈悲は、時を超えて続きます。そして、貧しき忠実なる下僕にも、あなたの優しさをお見せに下さいます。

(訳:曽禰寛純)

 

W.F.バッハ(17101784) 
W.F.Bach

アダージョとフーガ ニ短調 Falck-65

Adagio and Fuga d-minor Falck-65

 

バッハの長男、ヴィルヘルム・フリーデマン(1710-1784)は、特に父親が手塩にかけて音楽教育をしたことで有名です。10歳の時に父親より、「フリーデマン・バッハの音楽帳」が与えられ、インヴェンションやフランス組曲、さらに平均律クラヴィーア曲集の初期稿が徐々に書き足され、チェンバロ演奏と作曲技法の訓練に使われました。コレギウム・ムジクムの演奏会で、父親とともにチェンバロ協奏曲の独奏で腕前を披露したフリーデマンは、やがてドレスデンの宮廷やハレのオルガニストとして音楽家としての好スタートを切りました。しかし、偉大な父親の音楽と新たな啓蒙思想時代の音楽との間に揺れ動いたのでしょうか、性格的にも不安定な部分が多かったようで、晩年にはベルリンで音楽教師を務め不遇のなかで人生を終えました。アダージョとフーガ ニ短調の作曲年代は明らかではありませんが、安定した歩みを進める低音の上で2本のフルート(本日はフルートとオーボエ)が透き通った掛け合いをしながら、曲の中心となるフーガへの前奏曲の役割をし、続いて速いフーガが続きます。この4声のフーガは新しい時代の息吹も込められていますが、父親から学んだ緻密な様式で書かれており、ライプツィヒの市民音楽とのつながりも感じられます。            

. J.S.バッハ16851750 
J.S.Bach

カンタータ 「そっと黙って、おしゃべりなさるな」 BWV211
Cantata
Schweigt stille, plaudert nicht BWV211

レチタティーヴォ  − アリア  レチタティーヴォ  アリア  レチタティーヴォ  アリア - レチタティーヴォ  アリア  レチタティーヴォ  合唱
Recitativo
Aria - Recitativo Aria Recitativo Aria - Recitativo Aria - Recitativo Coro

         ああ、コーヒーの味わいの何と甘いこと。                  わがまま、強情な娘たちは、どうにも言うことを聞かないわい。

猫がねずみ捕りを止めないように、娘たちはコーヒーがやめられない。

バッハ(1685-1750)のコーヒーカンタータ「そっと黙って、おしゃべりなさるな」 BWV211は、このツィンマーマンのコーヒーハウスで1734年頃演奏された音楽劇。バッハは生涯オペラを書く機会に恵まれませんでしたが、この曲は一種の室内オペラと呼んでもよいような仕立てになっています。当時大流行のコーヒーのとりこになった娘リースヒェンと、その女らしくない習慣をやめさせたい父親とのやり取りがユーモラスに描かれています。音楽的にもドレスデンのオペラハウスで流行していたイタリアのギャラントな様式が積極的に取り入れられています。語りとアリア、合唱など全部で10の部分で構成されていますが作詞者ピカンダーが作ったのは8曲目までで、残りの2曲はバッハが追加したと考えられています。終曲で、猫がネズミ取りをやめられないように、娘たちもコーヒーはやめられない・・・と、自らコーヒー党であったバッハらしいユーモアたっぷりの歌詞を、舞曲風な合唱に乗せ、オペラの終曲を思わせるような大団円となっています。

<歌詞大意>

1.レチタティーヴォ (語り手)

           おしゃべりを止めて、お静かに。そして、今から始まることの次第をお聴きください。さあ、シュレンドリアン(旧弊居士の意)が、娘のリースヒェンを連れてやってきました。父親は、まるで熊のようにうなっています。どんな仕打ちを娘から受けたのかを、ご一緒に聞いてみましょう。

2. アリア (シュレンドリアン)

           子供というものは、厄介千万、苦労の種でしかない。娘のリースヒェンには、毎日毎日、何度も何度も、言ってきかせているが、私の言うことは、片方の耳から、もう一つの耳へ素通りだ。

3.レチタティーヴォ

           (シュレンドリアン) こら、この厄介者の、はねかえり娘!ああ、いつになったら分かってくれるものやら。コーヒーなんかやめなさい!

           (リースヒェン) お父さん、そう厳しいこと言わないで。もし、一日三回のコーヒーが飲めないなら、辛くって、焼きすぎた山羊の肉みたいに干乾びちゃうわ。

4.アリア (リースヒェン)

           ああ、コーヒーの味わいの何と甘いこと。千回のキスよりもいとおしく、マスカットワインよりも滑らかよ。コーヒー、コーヒー、なしではいられないわ。私を元気にしたいのなら、どうぞコーヒーを淹れてくださいな!

5.レチタティーヴォ

           (シュレンドリアン)もしおまえがコーヒーをあきらめないなら、結婚パーティーには行かせないし、散歩にだって行かせない。

           (リースヒェン)ええ良いわ。コーヒーさえくれたらね。

           (シュレンドリアン) ええい、困ったやつだ。はやりのふわふわのスカートも買わないぞ。 

(リースヒェン) そんなのなくても、大丈夫よ。

           (シュレンドリアン)窓の中から、町を眺めることも、出来なくしてやる! 

(リースヒェン)大丈夫、おんなじことよ。ただコーヒーだけは飲ませてね。

           (シュレンドリアン)結婚式につける金銀細工も、ないのだぞ! 

(リースヒェン)ええ良いわ、でも、私の楽しみだけは取り上げないでね。

           (シュレンドリアン)なんと恐ろしい娘よ、コーヒーさえあれば何でも我慢するということか!

6. アリア (シュレンドリアン)

           わがまま、強情な娘たちは、どうにも言うことを聞かないわい。でも、やつらの「弱点」さえうまく見つけたら、きっと上手行くだろう。

7. レチタティーヴォ

           (シュレンドリアン)いいか、お父さんの言うことをしっかり聞きなさい! 

(リースヒェン)コーヒーのこと以外なら、何でもね。

           (シュレンドリアン)そうか、では結婚もなしということで良いな。 

(リースヒェン)ああ、お父さん、もちろん旦那様が欲しいわ!

           (シュレンドリアン)もう、結婚なんかは決して許さないぞ。

(リースヒェン)コーヒーをやめないなら?お父さん、それならもうコーヒーなんか飲みません。 

(シュレンドリアン) それならば、旦那を持たせてやろう!

8. アリア (リースヒェン)

           お父様、それならば、今日旦那さまを見つけてくださいね。ああ、旦那さま!なんと素晴らしいことでしょう。早く会いたいわ。
コーヒーのやめた代わりに、今夜ベットに行く前に、素敵な旦那さまが見つかりますように。

9. レチタティーヴォ (語り手)

           こうして、シュレンドリアンは、急いで娘のリースヒェンのために、婿を探しに出かけました。でも、リースヒェンは、こっそりこんな条件を流しました。「婿殿は、結婚誓約書で、私にいつでも好きなだけ、コーヒーを飲ませてくれることを約束すること!」

10. 合唱

           猫がねずみ捕りを止めないように、娘たちはコーヒーがやめられない。お母さんも飲んでいた、おばあちゃんも飲んでいた。誰が娘を責められよう!

(訳:曽禰寛純)

 

アンコール

どうもありがとうございました。

沢山の拍手をいただきましたので、実際のオペラの終曲とコーヒーカンタータの終曲の関連を

ヘンデル オペラ「ジュリアスシーザー」より終曲“Ritorni omai nel nostro core(さあ 快い喜びと楽しみが)”でお聴きいただきましょう



 

 

これまでの演奏会へ戻る

Home