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31st Concert
西洋館de古楽2010コンサート
アンサンブル山手バロッコ第31回コンサート
アンサンブル山手バロッコ&クラングレーデ演奏会
西洋館で聴く 〜笛の響き〜
(“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第8回)
"Baroque Music with Woodwind Instruments”
2010年2月13日(土) 午後6時開演(5時30分開場) 山手111館(横浜市中区山手町111)
6:00pm
13rd February. 2010 at Yamate111-House
主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会
共催:財団法人横浜市緑の協会/公益財団法人横浜市芸術文化振興財団/横浜市市民活力推進局/横浜市中区役所/山手プロムナードコンサート
協力:横浜山手聖公会/アンサンブル山手バロッコ/久保田彰チェンバロ工房/オフィスアルシュ
協賛: 東急グループ/元町SS会
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体。継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日のメンバーは以下の通りです。
朝岡 聡 (お話し、リコーダー) Satoshi Asaoka (Recorder and Talk):
元テレビ朝日アナウンサー。現在はフリー。リコーダーを大竹尚之氏に師事。愛好暦は30年以上。著書「笛の楽園」(東京書籍)のほか、コンサート司会・FM番組でもクラシック活動中。
曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)Hirozumi Sone (Flauto Traverso)::
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロックを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続している。カメラータ・ムジカーレ同人。
角田幹夫(バロック・ヴァイオリン)Mikio Tsunoda
(Baroque Violin)::
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
譜久島譲(ヴィオラ・ダ・ガンバ)Yuzuru Fukushima (Viola da gamba)::
クラシックギターを江間常男、フラメンコギターを飯ヶ谷守康の各氏に師事。その後バロック音楽に興味を持ち、ヴィオラ・ダ・ガンバを平尾雅子氏に師事。感性豊かな音楽家としてさまざまな分野で広く活躍している。またリコーダー製作を平尾重治氏の師事し、製作家としても高い評価を得ている。W.クイケン氏のマスタークラスにも参加、常に幅広いリサーチを行い演奏家としても意欲的に活動をしている。
クラングレーデ (Klangrede)
私たちが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、しかもほとんどの日本人にとっては、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。しかし、バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。そして、聴き手はそのアフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器(複製)を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、私たちはそんな演奏体験を目指しています。
国枝俊太郎 (リコーダー、フラウト・トラヴェルソ) Shuntaro Kunieda (Recorder, Flauto Traverso)::
東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演、またCD録音にも参加する。ムシカ・フラウタのメンバーとしても、NHK-FM「名曲リサイタル」にも出演する。現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。
大山有里子 (バロック・オーボエ)Ariko Ohyama (Baroque Oboe)::
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。モダン・オーボエを大嶋弥氏に師事する。卒業後、関西を中心にオーケストラやアンサンブルで、またソロ奏者として活動する。1982年より1993年まで、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心として数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、
バロック・オーボエを始める。これまでに各地でオリジナル楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加している。「アルモニー・アンティーク」メンバー。横浜音楽文化協会会員。
石川和彦
(バロック・ヴァイオリン)Kazuhiko Ishikawa (Baroque
Violin)::
大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、研鑽を積む。フランスで“Le Parlement
de Musique”などで 活躍、2005年にディプロマを得て帰国。現在、東京を拠点に室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。2007年、リサイタル開催、ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・ブイステー、桐山建志の各氏に師事。モーツァルト・アカデミー・トウキョウ(MAT)のメンバー。オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウ ゲストコンサートマスター。
酒井絵美子
(チェンバロ)Emiko Sakai (Cembalo)::
洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。故
小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。また、フォルテピアノの伊藤深雪氏のレッスンを受講。CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年横浜イギリス館にてソロリサイタル開催。現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として、日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務める傍ら、ピアノ奏者として様々なアンサンブルに参加するなど、意欲的に音楽活動を行なっている。
西洋館de古楽2010コンサート
アンサンブル山手バロッコ第31回コンサート
アンサンブル山手バロッコ&クラングレーデ演奏会
西洋館で聴く 〜笛の響き〜
(“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第8回)
"Baroque Music with Woodwind Instruments”
笛の館のコンサートにようこそ。バロック時代に愛好された笛としては、何と言ってもリコーダーがあげられます。初期バロックの時代には、ソロから何本ものリコーダーでの合奏まで、広く親しまれ、後期になっても室内楽、協奏曲や声楽曲でのソロ楽器として活躍しました。王侯貴族は、リコーダーの冴え冴えとした音色、よく他の楽器と調和する響きを大変愛し、お城や館で演奏する為の楽器を沢山所有していました。銀や象牙細工の調度品とも思えるような贅を尽くした楽器も多く作られ、笛族(属)の王様のような地位を築いていたといって良いと思います。当時は単に「フルート」というとリコーダーを意味しました。
一方、フルートは、初期には合奏のなかで使われる程度にとどまっていましたが、17世紀の終わりころに楽器が改良されると、強弱の表現のしやすいことも好まれ、ソロの旋律楽器として使われるようになりました。しかし、地位はまだ高くなく、フルート(リコーダー)と区別する為に、わざわざ「横に吹くフルート」という意味のフラウト・トラヴェルソという名前で呼ばれていました。やがて古典派に向かうころから、よりダイナミックな表現が好まれるようになるにつれて、リコーダーは徐々に使われなくなり、フルートの言葉の意味も、縦のフルートから横のフルートに次第に切り替わっていきました。
オーボエも、バロック時代の初期には合奏やその音色から野外音楽に使われるのが主流でしたが、17世紀半ば頃、フランスの製作者オトテールが手を加えてバロックの楽器として作り上げたと考えられています。そして、オーボエは木管楽器の中でも中心的な役割を担うようになり、室内楽、管弦楽曲、さらにオペラや宗教曲まであらゆる音楽領域で、中期バロックから初期古典派の時代に最も頻繁に使われた管楽器となりました。
G.Ph.テレマン(1681〜1767)
2本のフルートと通奏低音のためのスケルツォ ホ長調
ヴィヴァーチェ - ラルゴ - ヴィヴァーチェ
G.Ph.Telemann / Scherzzo for two
flutes and basso continuo E-Major
Vivace - Largo - Vivace
ドイツの作曲家で、生前はバッハやヘンデルを遥かに凌ぐ名声を得ていたテレマンは、幼い時期より管楽器、弦楽器、鍵盤楽器など多くの楽器を独学で弾きこなし、その特長、特性を熟知した音楽家でした。また、貴族だけでなく、当時台頭してきた富裕な市民層を対象に市民音楽会を催したり、楽譜出版をしたり、新たな時代を切り開いた作曲家でもありました。
2本のフルートと通奏低音のためのスケルツォは、同じくテレマンが1731年に出版した「3つのメトーディッシュ・トリエットとスケルッツオ」の中に収められています。トリエット(小さなトリオ)にはテレマン自身がつけた装飾方法(メトーディッシュ)が残されており、当時の旋律がどのように装飾されていたのかを知る貴重な資料にもなっています。スケルッツオには、そのような趣向はありませんがテレマンらしい、軽妙洒脱な味わいの小曲です。このホ長調の曲も、1楽章では2つの楽器の組合せで次々転調し曲想が変わる様子が楽譜で分かるように工夫されています。落ち着いた緩徐楽章を経て、最後の楽章はジーグの舞曲風のつくりです。カノン風に追いかけっこをしたり、平行に動いたりしながら展開し、低音と一緒にユニゾンで力強く曲を閉じます。
J.M.ルクレール(1697〜1764年)
2本のヴァイオリンと通奏低音のための序曲 ト長調
スタッカート/アレグロ - ドルチェ アンダンテ - メヌエット
J.M.Leclair / Overture for two violins and basso continuo G-major
Staccato/Allegro – Dolce andnate –
Menuett
フランスバロック時代の作曲家ルクレールは、ルイ15世の頃ヨーロッパ中に名前をとどろかせたヴァイオリン奏者でもありました。自分の楽器ヴァイオリンのためのソナタや組曲、合奏曲を作り、オペラも作曲した人気作曲家でもありました。
2本のヴァイオリンと通奏低音のための序曲は、ルクレールが1753年に出版した「2つのヴァイオリンと通奏低音のための序曲とトリオソナタ集 作品13」に収められており、フランスのしゃれた様式に、イタリアの情熱的で大胆な様式を採り入れて成功したルクレールならではの世界が広がっています。序文で「この曲集に収めた曲を調べ、また聴いていただければ、私の選曲も悪くないと認めていただけると思う。曲集には私のオペラの序曲も収めることにした。難しいためなかなか演奏されず人口に膾炙しなかったが、ここでは音楽的に失うものがなく、同時に演奏に即した形で編曲をしてある。(後略)」という意味のことを書いていますが、晩年になって自分のお気に入りの曲を出版し、世間に広めたいと思ったのではないでしょうか。このト長調の序曲は、オペラの序曲の形式で始まり、穏やかな中間楽章を経て、代表的な舞曲であるメヌエットで終わります。
D.スカルラッティ(1685〜1757)
2つのソナタ ヘ短調 K.69/変ロ長調 K.441
D. Scarlatti / Sonata for Cembalo f-moll K.69 and
Bb-major K.441
スカルラッティは、有名な作曲家アレッサンドロ・スカルラッティを父としてイタリアのナポリに生まれました。若いときは地元の教会音楽家としてスタートし、当時イタリアを訪れていたヘンデルとチェンバロやオルガンの腕前を競ったと言われています。30代半ばでポルトガルのリスボンに渡り、王女(マリア・バルバラ)の音楽教師として仕え、スペインに嫁いだ王女に同行し、亡くなるまでマドリードで活躍しました。オペラ、宗教曲、協奏曲など幅広いジャンルの曲を残していますが、何と言っても555曲残されているチェンバロのためのソナタが、質的にも量的にも圧倒的です。ソナタと言っても1楽章だけの曲なのですが、内容的にはイタリアの歌うような旋律に、チェンバロ演奏の様々なテクニックを加えただけでなく、ポルトガルやスペインの香りを感じさせる曲想や和声で独特な世界を作り出し、同時代の他の作曲家にも大いなる影響を与えました。
本日はそのうち2曲を演奏します。1曲目は若いイタリア時代の作品で哀愁ただよう曲です。2曲目はスペイン時代の作品で、急激な転調、低音(左手)の跳躍が特徴的です。
G.F.ヘンデル(1685〜1759)
オーボエ、 2本のヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲 変ロ長調
ヴィヴァーチェ - フーガ(アレグロ) - アンダンテ - アレグロ
G.F.Handel / Concerto for oboe, two violins and basso continuo
Bb-major
Vivace – Fuga(Allegro) – Andante - Allegro
スカルラッティと同年にドイツで生まれたヘンデルは、バッハと並んでバロックの代表的な作曲家の一人です。ドイツとイタリアで修行し、海を渡りロンドンで成功し、生涯イギリスでオペラやオラトリオの作曲、興行など精力的に活躍しました。
本日演奏する協奏曲は,1740年にJ.ウォルシュが出版した曲集のなかに含まれています。構想の細部ならびにリズムとフレージングからみてこの協奏曲は初期の作品であると思われ、以前に別々の楽章として作曲されたものを(出版社が)一緒にしたのではないかとも考えられます。しかし、各楽章はヘンデルの作曲であり、第1、2楽章はシャンドス・アンセム第8番の器楽楽章に基づいており、第3、4楽章はシャンドス・アンセム第5番の序曲と同じ曲です。
*** 休憩 ***
G.Ph.テレマン(1681〜1767)
2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタ ハ長調 「忠実なる音楽の師」より
グラーヴェ/ヴィヴァーチェ - アンダンテ - クサンティッペ(プレスト) - ルクレチア(ラルゴ) - コリーナ(アレグレット) - クレリア(ヴィヴァーチェ) - ディドー(悲しく/絶望的に)
G.Ph.Telemann / Trio for two recorders and basso continuo
C-Major from “Der getreue Musikmeister”
Grave/Vivace - Andante –Xantippe – Lucretia – Corinna – Clelia
- Dido
2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタは、「忠実な音楽の師」という名称で、定期的に出版された曲集の中に収められた曲です。楽章をばらばらに出版することで、読者は、定期刊行物を続けて購入し全曲の楽譜を手に入れることに意欲を燃やすように商売的にも工夫を凝らした曲集です。購読者をふやすためか、リコーダーの他に、フルートやヴァイオリンでも演奏できるようになっていますが、曲想的にはリコーダーが一番しっくりくるように思います。曲はソナタという名称ですが、フランス風の組曲の形式をとっており、序曲で始まり、いくつかの小曲・舞曲が続きます。当時フランスで流行っていたポートレート(楽章のタイトルに女性の名前をおき、その雰囲気を曲想で表す)の手法を採用しています。クサンティッペは、ソクラテスの妻で世界三大悪妻の一人とされています、意地っ張りで争うようなリズムにその思いが表れているように思います。(そういえばテレマン自身の奥さんも悪妻だったとか)。ルクレチアは、古代ローマの女性で、貞淑な夫人を象徴していおり、悲劇的な最後を表すようなため息が聴こえてきます。コリーナは田舎の陽気な女性、クレリアが誰かは不明ですが、快活で舞曲風の曲。最後のディドーは、古代カルタゴの悲劇の女王、悲しみと荒々しいまでの絶望で曲を閉じます。
F.クープラン(1668〜1733) リュリ讃
荘重に – 優美にしとやかに - 非常に速く
– 高貴に – 速く -甘美に – 軽快に – ラルゴ – 優美にしとやかに – 優雅に、しかし遅すぎずに
F.Couperin / Apotheose de Lulli
Lulli aux Champs Elises - Air pour les memes - Vol de
Mercure aux Champs Elises, pour avertir qu'Apollon y va descendre
–
Descente d'Apollon, qui vient offrir son violon a Lulli; et sa place au
Parnasse - Rumeur souterraine causee par les auteurs comtemporains de Lulli
- Plaintes des memes, pour les flutes, ou les violons tres adoucis - Enlevement
de Lulli au Parnasse
- Accueil entre-doux, et Agard, fait a Lulli par Corelli, et par les Muses
ilalienes - Remerciment de Lulli a Apollon - Essai
クープランはルクレールより少し先輩のフランスの代表的な作曲家です。バッハと並ぶといわれる音楽一族の出身ですが、大クープランと呼ばれるように一族で最大の作曲家で、ルイ14世―15世に仕え、オルガン、クラブサン(チェンバロ)の名人でもありました。リュリ讃は、フランスの大作曲家でクープランの先輩にあたるリュリ(1632〜1687)を讃える曲で、優れた音楽家が死後、音楽の女神であるミューズたちのいるパルナス山に導かれて、音楽の主神アポロンから冠を授けられることを表しています。クープランはこの曲をトリオソナタの形式による表題つきの組曲で作曲し、前半を組曲に、後半をソナタに仕立てています。本日は、前半の組曲の部分を演奏しますが、表題を演奏する楽章の楽想記号とあわせて紹介しましょう。
クープランはこの曲のタイトルを「たぐいまれなリュリ氏の不滅の想い出のために作曲したアポテオーズ(讃)のテーマによる合奏曲」と記して最初の楽章「リュリはシャンゼリゼ(エリジアの野)で詩の聖霊たちと音楽を奏でる(荘重に)」を序曲形式で始めます。
次は「リュリと詩の聖霊たちのためのアリア(優美にしとやかに)」でしっとりとリュリの様子を描きます。続いてドラマが始まります。「シャンゼリゼにマーキュリーが飛んできて、アポロンがそこに降り立つことを告げる(非常に早く)」「リュリにヴァイオリンを授け、パルナス山にその場所を与えるためにアポロンが降りてくる(高貴に)」。リュリは偉大な作曲家でしたが、同時に独裁的な権力を持っていました。そのためでしょうか、「リュリの同時代の作曲家たちから起こるひそかなつぶやき(速く)」と「柔らかな音色のフルートまたはヴァイオリンで演奏されるそれらの人々の嘆き(甘美に)」
のような複雑で物悲しい楽章が続きます。それを断ち切り、「パルナス山へ連れて行かれるリュリ(軽快に)」で、リュリはパルナス山へ旅立ちます。パルナス山では「コレッリとイタリアの音楽の女神たちによるリュリへの様々なもてなし(ラルゴ)」とリュリと並んで称されるイタリアの作曲家コレッリも登場しリュリを歓迎します。そして、「アポロンへのリュリの感謝(優美にしとやかに)」が演奏されます。フランスのリュリ、イタリアのコレッリが登場したところで「アポロンは、リュリとコレッリにフランスとイタリアの趣味の融合が完全なる音楽をつくるのだと説く」と語り、「序曲形式のエッセイ(優雅に、しかし遅すぎずに)」で前半の山場を迎えます。この序曲では、旋律の2声が、リュリ、コレッリに割り当てられています。リュリはフランス様式の楽譜で書かれ、コレッリはイタリア様式の楽譜で書かれていますが、一緒に演奏すると完全に融合するように作曲されています。クープラン自身が、フランスの優美さとイタリアの歌心を併せ持つ曲を理想としてきたことを、リュリを讃える曲のなかで主張しているように思います。
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたので、
F.クープランの諸国の人々「フランス人」より「シャコンヌ」
をお送りします。
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