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25th Concert
山手西洋館 夏の宵のコンサートシリーズ
〜 夏の宵のバロック 〜
アンサンブル山手バロッコ第25回演奏会
(洋館コンサート10周年記念)
"Baroque Music in a Summer Night"
2008年7月5日(土) 午後4時開演 山手234番館 レクチャールーム(元町公園前、えのき亭隣り)
4:00pm 5th July.. 2008 at Yamate-234 House
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
朝岡 聡Satoshi Asaoka (お話し、リコーダー
Recorder &
Talk):
元テレビ朝日アナウンサー。現在はフリー。リコーダーを大竹尚之氏に師事。愛好暦は30年以上。著書「笛の楽園」(東京書籍)のほか、コンサート司会・FM番組でもクラシック活動中。
曽禰寛純Hirozumi Sone(フラウト・トラヴェルソ Flauto traverso,):
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
中尾晶子Akiko
Nakao(チェロVioloncello):
チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。
ゲスト
国枝俊太郎Shuntaro Kunieda (フラウト・トラヴェルソ Flauto traverso,):
東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演、またCD録音にも参加する。ムシカ・フラウタのメンバーとしても、NHK-FM「名曲リサイタル」にも出演する。現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。「クラングレーデ」メンバー。
大山 有里子Ariko
Ohyama (バロック・オーボエBaroque Oboe ):
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。モダン・オーボエを大嶋彌氏に師事。1982年〜1993年「アンサンブル・シュッツ」のメンバーとして、またフリーで活動するかたわらバロック・オーボエを始める。これまでに各地でオリジナル楽器によるアンサンブルやオーケストラに参加している。「アルモニー・アンティーク」、「クラングレーデ」メンバー。横浜音楽文化協会会員。
野口詩歩梨 Shihori
Noguchi (チェンバロCembalo):
福井県生れ。桐朋学園大学古楽器科卒業、同研究科修了。ピアノを伊原道代、雨田信子、チェンバロを故鍋島元子、又アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。その後クイケン兄弟、モルテンセン氏などの指導を受ける。現在東京を中心に通奏低音奏者、ソリストとして幅広く活動。これまでにもフルートのM.ラリュー、F.アーヨ、中野哲也など数々の音楽家や室内オーケストラと共演。2000年、2002年、2004年「音の輝きをもとめて」と題したソロリサイタルを開催、各方面より好評を得る。古楽情報誌アントレ製作ビデオ等に出演。
山手西洋館 夏の宵のコンサートシリーズ
〜 夏の宵のバロック 〜
アンサンブル山手バロッコ第25回演奏会
(洋館コンサート10周年記念)
横浜山手の洋館での夏の宵のコンサートにようこそおいでいただきました。山手234番館は、昨年、一昨年に続き、古楽器によるバロック音楽のひとときを、お届けいたします。どうぞお楽しみください。今回のコンサートは、結成10周年の私たちアンサンブル山手バロッコのコンサートに、素晴らしいゲストの方が駆けつけてくださいました。バロックの名曲、ゲストとの夏の宵の出会いをお客様と一緒に楽しみたいと存じます。
"Baroque Music in a Summer Night"
Ensemble Yamate-barocco 10 years anniversary concert
プログラム
Program
G.P.テレマン(1681-1767)
2つのフルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調 「食卓の音楽」第3集より
アンダンテ – アレグロ – グラーヴェ/ラルゴ/グラーヴェ – ヴィヴァーチェ
G. Ph. Telemann / Sonata for two Flutes and Basso continuo D-Major from “Tafelmusik” Production-III
Andante – Allegro – Grave/Largo/Grave - Vivace
テレマンは、バッハと同時代のドイツの音楽家で、当時はバッハを遥かにしのぐ名声を獲得していました。この時代のドイツの音楽家たちは、協奏曲に代表される単純明快な形式と歌うような旋律美を特徴とするイタリア様式とともに、いかにも洒落た雰囲気のフランス趣味(舞曲が中心、短い旋律線、装飾音の多用、種々の特徴的なリズムパターン、など)を競って融合しましたが、テレマンほど巧みに行った作曲家はなく、また、楽器の特性を知り尽くし聴いても演奏しても楽しい音楽を作曲しました。テレマンは商売の点でも才能を発揮し自ら楽譜出版を企画し、原版を作成し、予約販売を行い、ヨーロッパ中の音楽関係者(専門家・愛好家)たちからも異例の高い評価を得ていました。
テレマンの数多い作品の中でも有名な「食卓の音楽」は1733年にハンブルグで3つの曲集として出版されました。食卓の音楽とは当時流行した名称で、宴で演奏される音楽といった意味です。出版予約名簿の中には、ヘンデルやクヴァンツなど当時の有名作曲家の名もあり人気のほどがうかがわれます。「食卓の音楽」は、超多作家テレマンの器楽曲の集大成とも言える曲集で、いくつかの曲には、元となる初期稿の存在が確認されており、ベストアルバムに残る名曲としてテレマン自身が選んだ傑作選と考えられています。
2つのフルートと通奏低音のためのソナタは、第3集に収められた曲で、食卓の音楽の中でも当時の最新流行のギャラント様式を最も取り入れて書かれています。形式は伝統的なトリオソナタの4楽章制を取っていますが、全楽章ともギャラント様式の特徴の比較的おとなしい通奏低音の上で、2本のフルートが表情豊かな旋律を繰り広げます。特に表情や和音が次々と変わるのが特徴です。
J.J.フローベルガー(1616-1667)
トッカータ U ニ調
J.J.Froberger / Toccata II in d
フローベルガーは、17世紀ドイツの鍵盤音楽において重要な作曲家として知られています。各地を旅した彼は、イタリアの鍵盤の大家フレスコバルディや、フランスの作曲家ルイ・クープランから多様な技法や様式を学び、それらを自ら発展させました。70年ほど後に登場する大バッハにも多大な影響を与えたと言われています。
トッカータは、鍵盤上を素早く走り回るような技巧的な部分と対位法で書かれた模倣的な部分が交互に表れるスタイルの曲です。フローベルガーのトッカータには、フレスコバルディから受けた影響が見て取れます。即興的に展開されていく中で、奥深い情熱とスケールの広さが存分に感じられる作品となっています。
G.P.テレマン(1681-1767)
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのソナタ ホ短調
アフェトゥオーソ – アレグロ – グラーヴェ - アレグロ・アッサイ
G. Ph. Telemann / Sonata for Recorder, Oboe and Basso continuo
e-minor
Affetuoso – Allegro – Grave – Allegro assai
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのソナタは、現在ドイツのダルムシュタットの図書館に自筆譜が保管されていますが、成立時期や成立過程はよく判っていません。トリオ・ソナタはバロック期に好んで演奏された形態の室内楽で、旋律を奏でる楽器が2つ、それを支える低音という3つのラインから音楽が構成されています。テレマンはこの分野で数多くの傑作を残していて、このオーボエとリコーダーを使ったトリオ・ソナタも楽器の特徴を生かした作品です。
テレマンは自叙伝の中でこう語っています。「私は特にトリオ・ソナタの作曲に精根を傾けた。つまり、第2のパートがあたかも第1のパートを思わせるように作り、またバスは自然なメロディで上声部と親密な調和を保ち、しかも一音一音が、まさにそれ以外ではあり得ないといった動きをするように作曲した」。皆様も3つの声部の快活で情感あふれる『会話』をお楽しみください!(第1楽章は歌謡的、第2楽章は伝統的な対位法的、第3楽章は新しいギャラント的、そして第4楽章は協奏曲のようなソロも隠し味に仕上げています。)
J.F.クラインクネヒト(1722-1794)
フルート、オーボエと通奏低音のためのトリオ ハ短調
アレグロ・モデラート - アモーレヴォレ、ポコ レント - アレグロ・アッサイ
J.F. Kleinknecht / Sonata for Flute, Oboe and Basso
continuo c-minor
Allegro moderato –Amorevole, poco Lento –Allegro assai
クラインクネヒトは、本日演奏する作曲家では一番若い世代になり、バロックから古典派へ切り替わる世代の作曲家です。あまり知られていませんが、ドイツの音楽ファミリーに生まれ、フルートやヴァイオリンの名手として、またバイロイトの宮廷楽長としても活躍しました。フルート、オーボエと通奏低音のためのトリオは、バロック時代に大流行したフルート、オーボエを旋律楽器とし、通奏低音がそれを支えるという様式に則りながらも、新しい時代精神を反映し、表情が大きく、また何度も変化する多感様式で書かれています。
G.P.テレマン(1681-1767)
リコーダー、2本のフルートと通奏低音のための四重奏曲 ニ短調 「食卓の音楽」第2集より
アンダンテ – ヴィヴァーチェ – ラルゴ – アレグロ
G. Ph. Telemann / Quartett for Recorder, Two Flutes and Basso continuo
d-minor from “Tafelmusik” Production-II
Andante – Vivace – Largo –
Allegro
リコーダー、2本のフルートと通奏低音のための四重奏曲は、第2集に収められた四重奏曲で、縦と横の3本の笛が織りなす響きにテレマンならではの魅力をたたえた名曲です。テレマン自身演奏を得意としたリコーダーによる協奏的名人芸が展開される第2楽章、ポーランド風の野趣に富んだ主題の第4楽章などが特徴的です。
アンコール
どうもありがとうございました。
沢山の拍手をいただきましたのでG.P.テレマン(1681-1767) /「食卓の音楽」第3集 組曲より バディヌリをお送りします。
もともとはオーボエと弦楽の大編成の曲ですが、本日はこのメンバーで演奏できるようにアレンジしてお届けします。
どうもありがとうございました。
* * *
アンコール後には、お楽しみ抽選会が開催され、会場の皆様と一緒に楽しみました。
プレゼントを提供いただいた山手234番館/ベーリックホールの館長さま、演奏家の岡田龍之介(チェンバロ)さま、木島千夏(ソプラノ)さま、クラングレーデ(古楽アンサンブル)さま
ありがとうございました。
* * *
対談 「アンサンブル山手バロッコの歩み」
アンサンブル山手バロッコ 朝岡聡・曽禰寛純
曽禰(以下S):朝岡さん、アンサンブル山手バロッコのスタートは何でしたっけ?
朝岡(以下A):10年ほど前に引っ越して来た時に、たまたま御近所にトラヴェルソを吹く曽禰さんがいると伺って、ご近所同士のバーベキューか何かの席で2人で演奏したのが始まりだったはず。それ以来仲間を呼んでは合奏していたのが西洋館という古楽器に最適の空間と結びついたのは幸せでしたね。お互い学生時代から古楽器の演奏に親しんでいて、つながりのある友人や演奏家も西洋館の空間が気に入って、アンサンブル山手バロッコには喜んで参加していただいて感謝です。古楽器演奏は17〜18世紀の王侯貴族の音楽と言っても良いのですが、現在の大ホールのような空間ではなく、限られた親密な空間で楽しまれました。
我々の使う楽器も現代の楽器に比べると音量やメカニズムではだいぶ差があります。しかし昔の楽器には今の楽器が失ってしまった味わいもたくさんあって、それが魅力でもあるのです。西洋館の空間は、その魅力を楽しむには最適ですね。お客さまとの距離も近いし、私のお話で音楽や楽器をより身近に感じていただける工夫もこらしています。
ところで、曽禰さんには、いつもマネジメントなどもお願いしているのですが、山手バロッコには何人演奏家が登場して、何曲くらい演奏したんでしたっけ?
S: 何と10年間で40名近い演奏者の皆さんが参加してくださっています。演奏した曲もアンコールを除いて150曲を超えているんですよ。われながらびっくりです。演奏には古楽で活躍されているプロの方も多く参加いただいているのですが、基本がボランティアコンサートなので、随分と協力していただいて成り立っているわけで本当に有難いです。
何度も出演してくださるかたが多いのは、お客さんの表情が見え、演奏者の息遣いと一体になって音楽が響く不思議な魅力があるからかもしれませんね。いつも一緒に音楽を楽しんでいただけるお客様がいてくださること、気持ちよくコンサートを迎えていただく西洋館の館長さんやスタッフの皆さんがいてくださることでここまで来られたんだなぁ、とあらためて思いました。
われわれのコンサートは、何となく次回のテーマが決まり、仲間が集まって・・・というスタイルが多いと思いますが、朝岡さんにとっての山手西洋館のコンサートの楽しみ、長続きしている理由など思い至ることはありますか?
A: あんまり考えすぎないでやっているところでしょうか(笑)。演奏するほうが楽しまないと、聴いている方は楽しめませんからね。メンバーも比較的自由に構成していますからバリエーションに富んだプログラムが組めるのも理由かもしれません。それと、西洋館自体がとても魅力的なのが大きいです。歴史を刻んだ建物は訪れるだけでホッとするでしょう。お客様もそうでしょうけれど、演奏する人間もこういう場所で音楽ができるのはこの上ない喜びですから。
今年で10周年を迎えたわけですが、これからの山手バロッコはどのような方向に行きましょうか?
S: 古い音楽・楽器にこだわりながらも、新たな発見・出会いを楽しみながら、朝岡さんと一緒に「そろそろやってみようか」「こんどはこんなこと面白いんじゃない?」という感じで、やっぱりあんまり考えすぎないで行きましょうか(笑)。今後も、演奏者もお客様と一緒に楽しんでしまうという、山手の西洋館の手作りコンサートを大切にして続けていきたいですね。
じゃ、そろそろ練習始めましょうか・・・・。 (終)
アンサンブル山手バロッコ結成10周年 おめでとうございます
山手234番館 元館長 国井和子
山手234番館館長 渡辺毬子
ベーリックホール館長 布川栄子
朝岡さんと曽禰さんが、アンサンブル山手バロッコとして始めて山手234番館でコンサートを開かれたのは、1998年の夏、山手234番館が市民と行政のコラボレーションで実験活用として開館したときのことだったと思います。その実験活用が成功し、その成果を踏まえて山手234番館は翌年の1999年7月20日に正式に開館しました。
当時山手の西洋館は、見学施設としてエリスマン邸、ブラフ18番館、外交官の家が開館していました。山手234番館は市民が使えて楽しめる西洋館を目指し、開館記念イベントを前年夏の実験活用に参加してくださった方々に呼びかけ、開催を企画しました。そこで、朝岡さんにコンサートのお誘いをし、快く引き受けていただき、その後の定期的なボランティアコンサートへとつながっていったと思います。ここ数年は夏の宵のコンサートが定番になりましたね。また、バロックの音楽講座を連続で開催していただいたこともありました。
山手234番館は元アパートという建物の性格上いろいろ使いにくいこともあり、皆様にはご苦労をおかけしています。10年たって固定的なファンの方も多く、もう少し居間が広ければ、もっと多くの方に聞いていただけるのにといつも残念に思っております。よい点は奏者と参加者の距離が近く、間近で演奏を見られる点でしょうか。演奏しにくいとは思いますが…。
山手の西洋館はその後2000年4月に女性館長へと組織替えを行い、すべての西洋館を見るだけではなく使えて楽しめる西洋館として、市民の方との協働を大切に運営するようになりました。演奏やフラワーアレンジをはじめとして、たくさんのボランティアの方々の善意に支えられて今にいたっています。10年前からの皆様の活動が、現在の山手西洋館のスタイルにつながってきたと言っても過言ではないと思います。これからも末永く、山手西洋館で楽しんでくださるようお願いいたします。
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