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山手洋館 古楽器コンサート
アンサンブル山手バロッコ 第20回演奏会
〜サロンで楽しむハイドン・モーツァルトPart-II〜
"Ensemble Pieces of Mozart &
Haydn, Volume-II"
2007年4月14日(土) 午後2時開演
ベーリックホール(元町公園内)
2:00pm
14 April. 2007 at
Berrick Hall
出演
アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
曽禰寛純 Hirozumi Sone(フラウト・トラヴェルソFlauto
traverso,):
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
角田幹夫Mikio Tsunoda(バロック・ヴァイオリンViolin、バロック・ヴィオラViola):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
小松久子Hisako Komatsu(バロック・ヴァイオリンViolin):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブルEFFEコンサートミストレス。
原田純子Junko Harada(バロック・ヴァイオリンViolin、バロック・ヴィオラViola):
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロック・ヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。現在はモダンとバロック楽器の両方で活躍。
中尾晶子Akiko Nakao(バロック・チェロVioloncello):
2000年〜03年の都留音楽祭に参加。アマチュア・チェリストとして、モダン、バロック・チェロで活躍中。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己Masami Iizuka(コントラバスContrabass):
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
和田 章Aqulla Wada(チェンバロCembalo):
小林道夫にチェンバロを師事。慶応バロックアンサンブルで演奏。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
酒井絵美子Emiko Sakai(チェンバロCembalo):
洗足学園音楽大学ピアノ科卒。チェンバロを岡田龍之介氏に師事。現在、ピアノ及びチェンバロ奏者として幅広く音楽活動を行っている。
浅川真理Mari Asakawa、曽禰愛子Aiko Sone(ソプラノSoprano):
声楽を川上勝功氏に師事。横浜雙葉学園聖歌隊メンバー。
山手洋館 古楽器コンサート
アンサンブル山手バロッコ 第20回演奏会
〜サロンで楽しむハイドン・モーツァルトPart-II〜
"Ensemble Pieces of Mozart &
Haydn"
プログラム
Program
横浜山手の洋館での古楽器による音楽のひとときに、ようこそおいでいただきました。今回のコンサートは、2人の作曲家ハイドンとモーツァルトの交響曲、宗教曲を含め、貴族や商人の館などサロンで楽しまれたアンサンブルの形でお届けします。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
ディヴェルティメント へ長調 KV.138
アレグロ – アンダンテ - プレスト
W.A.Mozart / Divertimento F-Major KV.138
Allegro - Andante - Presto
モーツァルトはもちろん世俗的な器楽曲の分野でも早くから天才を発揮しました。1772年、16歳の時にザルツブルクで作曲した3つのディヴェ」ルティメントは青年モーツァルトのアイデアと作曲の腕前を遺憾なく発揮した名曲として今日でもしばしば演奏されます。この曲は、モーツァルトの自筆譜で現代に伝わっていますが、ディヴェルティメントという表題は、他の人の手によるものであるため、独奏の弦楽四重奏で演奏する室内楽か、弦楽合奏のための曲なのか、また、どのような目的で作曲されたかなど、学者の間でも意見の分かれる曲のようです。しかし、そのような議論を忘れさせるほど若きモーツァルトの才能を感じさせる佳品です。
曲は、主和音の分散和音の堂々とした主題で始まり、その後、伸びやかな旋律や細やかな動き、各楽器の対話を楽しみながら楽章が展開します。激しい感情を内在した2部形式の2楽章を経て、最後に軽快な主題と楽器の応答が特長的なロンド形式の第3楽章で曲を締めくくります。 本日の演奏では、各パート1人の室内楽編成をとることにし、また、低音にはバロック時代の通奏低音(チェンバロと低弦楽器の組み合わせ)の名残も感じられる事から、チェロ、コントラバスとチェンバロで低音を演奏することにしました。
J.ハイドン(1732〜1809)
フルート、ヴァイオリンとチェロのためのトリオ ト長調 作品38-4
アダージョ - スケルツオ・アレグロ - プレスト
J.Haydn / Trio in D-major for Flute, Violin
and Violoncello Op.38-4
Adagio – Schelzo, Allegro – Presto
古典派の父として今日知られるハイドンは、長らくエステルハージ候の宮廷楽長として、オペラ、宗教曲、交響曲、協奏曲や室内アンサンブルの作曲と演奏を行いました。田舎の宮廷にとどまってはいましたが、前衛的で完成度の高い彼の作品は広く筆写譜や出版譜として取引され、その名声はヨーロッパ中に鳴り響いていました。またモーツァルトとも親交が深く、モーツァルトが斬新な弦楽四重奏曲を献呈し、現在ハイドンセットとして代表作となっているのも天才同士の交流ゆえのものと考えられます。
今日演奏するトリオは、1784年にロンドンで出版されました。もともとは宮廷お抱えのヴァイオリン、フルートとチェロの名手によるアンサンブルを披露するために作られたと考えられますが、台頭してきたアマチュア演奏家を目当てにイギリスで6曲セットにして売り出され、晩年のロンドンでの大活躍を予感させるものです。本日演奏する第4曲は、バリトン(ヴィオラ・ダ・ガンバににた弦楽器)三重奏曲の編曲ですが、緩やかな歩みを楽しむ第1楽章で始まり、軽快なスケルツオを経て、フーガ形式で書かれた、走り抜けるようなの終楽章の3楽章からなっています。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
戴冠式ミサ曲 ハ長調より 「神の子羊」 KV.317
アンダンテ ソステヌート
W.A.Mozart / Agnus Dei from
Missa in C-major, "Kronungsmesse" KV.317
Andante sosutenuto
この教会ソナタが書かれた同じころに、モーツァルトは何曲もミサ曲を作曲し演奏しています。戴冠式ミサ曲は、1779年にザルツブルクの大聖堂で初演されたものです。モーツァルトが正式に教会オルガニストに任命された直後の作品で、晴れやかな曲調をもつこのミサ曲は特に有名です。演奏するアニュスデイ(神の子羊)は、後年のオペラ「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「楽しかった日はいずこ」の旋律を思い起こすようなソプラノの独唱が、弱音器をつけた弦楽に乗って歌われる、短いけれども大変美しい曲に仕上がっています。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
モテット 「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」より第一楽章 ハ長調 KV.165
アレグロ
W.A.Mozart / 1st movement from
Motet for Soprano “Exsultate, jubilate” KV.165
Allegro
1773年にイタリアを旅行したモーツァルトは、イタリアのカストラート歌手のために珠玉の作品を作曲します。ミラノの教会で初演されたこのモテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」は、ラテン語の神への賛美の曲ながら、名歌手ラウィツィニの名人芸を披露する一種の声楽協奏曲のような形をとっており、最終楽章のアレルヤがとても有名です。曲はソプラノ、オーボエ、ホルンと弦楽合奏のためのものですが、1979年になって、ザルツブルクで演奏された際のモーツァルトの自筆譜が発見され、楽器編成がオーボエでなくフルートであり、歌詞も若干の変更がされています。本日は、第一楽章を演奏します。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
「主の保護のもとに」 ヘ長調
KV.198
アンダンテ
W.A.Mozart / “Sub tuum praesidium” for two sopranos in F major KV 198
Andante
モテットの翌年の作曲と考えられる奉献唱「主の保護のもとに」は、モーツァルトの真作かどうかの議論が分かれている曲ですが、新モーツァルト全集では、他の奉献唱やミサ曲との親近性から1774年頃のモーツァルトの曲としています。曲は、聖母マリアへの祈願曲で、2人のソプラノが、緩やかな歩みの弦楽器の伴奏に乗って、交互に登場し、掛け合いや重唱で祈りの気持ちを歌います。コロラトゥーラを避け、しみじみとした旋律と弦楽器のみの伴奏が、愛らしい美しさを際立たせています。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
チェンバロ、2本のヴァイオリンと低音のためのソナタ(教会ソナタ) ハ長調 KV.328&336
アレグロ – アレグロ
W.A.Mozart /
Allegro - Allegro
昨年、生誕250年で沸いたモーツァルトについては、もう説明の必要がないくらい有名ですが、1781年にウィーンに出て独立した音楽家として活躍するまでのザルツブルク時代には、大司教に仕える教会音楽家でもあり、多くの教会に関わる曲を作っています。
教会ソナタは、ザルツブルグの大聖堂での、礼拝の合間に演奏された器楽曲で、主として2台のヴァイオリン、1台のチェロとオルガンの編成で、数十曲が残されています。そのためか、単一楽章のソナタで1曲5分足らずの演奏時間です。殆どは弦楽が主体の楽曲ですが、数曲はオルガンが独奏楽器として活躍します。本日はオルガンのパートをチェンバロに替えてサロン版として2曲続けて演奏いたします。KV.328は、1779年に作曲されたと推定されており、前半は弦とチェンバロが拮抗し、最後にはチェンバロのソロが前面になって終了します。KV.336はわずか1年の違い(1780年)ですが、鍵盤楽器の活躍が中心になり、協奏曲のように弦楽は主題提示と伴奏に終始しチェンバロが大活躍します。
W.A.モーツァルト(1756〜1791)
チェンバロ、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのためのアダージョとロンド KV.617
アダージョ – ロンド(アレグレット)
W.A.Mozart / Adagio and Rondo in F-Major for Cembalo, Flute, Violin, Viola and Violoncello KV.138
Adagio – Rondo(Allegretto)
時代は下がり、モーツァルトの最後の年、魔笛、レクイエムなどの大曲の影で、1791年5月、最後の室内楽曲として、モーツァルトは極めて珍しい楽器編成の曲アダージョとロンドを作曲しました。編成はグラスハーモニカとフルート、オーボエ、ヴィオラ、チェロというものです。グラスハーモニカは、1760年頃アメリカの有名な科学者ベンジャミン・フランクリンによって考案され、瞬く間にヨーロッパで評判になりました。大文豪ゲーテもこの音色を「世界の深奥の生命を聞くようだ」と評し、多くの作曲家がこの楽器の神秘的でロマンチックな音色のために曲を作りました。しかし楽器としては機能面で欠点が多かったため、1830年頃には音楽の舞台から姿を消していきました(ちなみに、今のハーモニカとはまったく別の楽器です)。
曲はハ短調の序奏にハ長調のロンドが続く単一楽章で書かれています。晩年のモーツァルト独特の、純粋で澄み切った響きの中に内面の深い翳りを宿した小品です。今日はグラスハーモニカの代わりにチェンバロで、オーボエの代わりにヴァイオリンで演奏します。
J.ハイドン(1732〜1809)/J.P.ザロモン(1745〜1815)
フルート、弦楽とチェンバロのための交響五重奏「時計」より 第2楽章、第4楽章 ニ長調
アンダンテ – ヴィヴァーチェ
J.Haydn/J.P.Solomon / 1st and 4th movements from
Symphony quintet D-major for Flute, String Quartet and harpsichord
"Clock"
Andante – Vivace
ハイドンは、エステルハージ候がなくなり、自由の身になった晩年には、ロンドンで活躍するザロモンの招聘を受けロンドンに滞在し、12曲の名作「ロンドン交響曲」を作曲・演奏し、熱烈な歓迎を受けました。ザロモンは、ハイドンより13歳下のドイツ生まれのヴァイオリニスト、作曲家で、1780年にロンドンに渡り、音楽の興行でも活躍しました。ハイドンのこの交響曲の演奏の際にコンサートマスターを務め、公演の後には、これらの交響曲の版権を買い取り、弦楽四重奏にフルートと通奏低音を加えた交響五重奏曲として編曲出版しました。本日はこの交響曲集のなかでも有名な交響曲101番「時計」の第2楽章と第4楽章をザロモンの出版譜で演奏いたします。(なお、時計というニックネームは2楽章に出てくる「刻み」の音形から名づけられましたが、ハイドンの死後になっての命名のようです。)
アンコールは、J.ハイドン フルート、弦楽とチェンバロのための交響五重奏「時計」より、” 第3楽章メヌエット”でした。 どうもありがとうございました。
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