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山手234番館 古楽器コンサート
NEW!!
18th Concert
アンサンブル山手バロッコ 第18回演奏会
〜サロンで楽しむハイドン・モーツァルト〜
"Ensemble Pieces of Mozart & Haydn"
2006年4月16日(日) 午後1時開演
山手234番館 2Fレクチャールーム(元町公園前、えのき亭隣り)
1:00pm 16 April 2006 at Yamate234 House
出演 アンサンブル山手バロッコ
わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 山手234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。
曽禰寛純 Hirozumi Sone(フラウト・トラヴェルソFlauto
traverso,):
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
角田幹夫Mikio Tsunoda(ヴァイオリンViolin、ヴィオラViola):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
小松久子Hisako Komatsu(ヴァイオリンViolin):
慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブルEFFEコンサートミストレス。
原田純子Junko Harada(ヴァイオリンViolin、ヴィオラViola):
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。バロック・ヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。現在はモダンとバロック楽器の両方で活躍。
中尾晶子Akiko Nakao(チェロVioloncello):
2000年〜03年の都留音楽祭に参加。アマチュア・チェリストとして、モダン、バロック・チェロで活躍中。カメラータ・ムジカーレ同人。
飯塚正己Masami Iizuka(コントラバスContrabass):
学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。
酒井絵美子Emiko Sakai(チェンバロCembalo):
洗足学園音楽大学ピアノ科卒。チェンバロを岡田龍之介氏に師事。現在、ピアノ及びチェンバロ奏者として幅広く音楽活動を行っている。
浅川真理Mari Asakawa、曽禰愛子Aiko
Sone(ソプラノSoprano):
声楽を川上勝功氏に師事。横浜雙葉学園聖歌隊メンバー。
アンサンブル山手バロッコ 第18回演奏会
〜サロンで楽しむハイドン・モーツァルト〜
"Ensemble Pieces of Mozart & Haydn"
プログラム
Program
横浜山手の洋館での古楽器による音楽のひとときに、ようこそおいでいただきました。
今回のコンサートは、モーツアルト生誕250年を祝して、モーツアルトとモーツアルトに深くかかわりのある2人の作曲家ハイドンとグルックの劇場風の曲を中心に、貴族や商人の館などサロンで楽しまれたアンサンブルの形でお届けします。
W.A.モーツアルト(1756〜1790)/フルート、チェンバロと弦楽のための 協奏曲 ハ長調 K299より アレグロ
W.A.Mozart / Allegro from "Concerto for Flute and Harpsichord C-Major" KV.299
1778年パリに旅行中に、「たぐいまれなフルートの名手」ド・ギーヌ伯爵と「ハープを見事に弾いた」伯爵の令嬢のために作曲されました。フルート、ハープともにフランスの上流階級で愛されていた楽器で、またパリで流行していた複数の独奏楽器を使った協奏交響曲(合奏協奏曲)の形をとっています。その意味で、モーツアルトの協奏曲の中でも際立って優雅で、ギャラント(おしゃれ)な響きを持った協奏曲で、比較的控え目なオーケストラをバックに、フルート(父)とハープ(娘)の掛け合ったり、響きを揃えあったりして曲が進みます。
本日は、第一楽章のアレグロを、弦楽五重奏を伴奏とした版で、またハープ部分をチェンバロで演奏します。この曲のハープ部分は、チェンバロやピアノフォルテの語法で作られていることと、18世紀もかなり後までチェンバロが使われているので、本日はこの編成で演奏してみます。この曲はハープを使っているためか、転調は少ないですが、それを補う意味で次々と新たな楽想(メロディー)が登場し玉手箱を眺めるようなきらびやかな感覚を楽しむことができます。
時代はバロックから古典派へ移っていますので、今日演奏する古楽器では文字通り鍵盤(音域)の端から端まで使うことになり、演奏者にとってはスリリングな曲にもなっています。
C.W.グルック(1714〜1787) / オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」より 「精霊の踊り」、アリア「エウリディーチェを失って」
C.W.Gluck / "Dance of the Blessed Spirits" and Aria "Che faro senza Euridice" from Opera "Orfeo ed Euridice"
グルックは1714年生まれの作曲家で、古典派のオペラ作曲家として有名です。この「オルフェオとエウリディーチェ」は、1761年に発表され、有名な歌手を引き立たせるように書かれていた当時のオペラに対し、音楽と演劇的要素のバランスのとれた曲作りをし、新風を吹き込んだとして、一躍注目を浴びた作品です。モーツアルトは、ウイーン時代にグルックと知り合い親交を結びました。もちろんオペラはグルックの新しいオペラの影響を色濃く受けていますし、グルックの作曲した曲を主題にしたピアノ曲も残しています。 さて、「オルフェオとエウリディーチェ」は、ギリシャ神話に題材をもつオペラで、美しい妻エウリディーチェを亡くしたオルフェオが、黄泉の国まで妻を求めた旅をし、妻への愛情ゆえに妻を連れ戻すことに失敗するのですが、最後は愛の女神の計らいで愛する妻を取り戻すことができる、といった筋書きです。
「精霊の踊り」は、オペラの中盤で黄泉の国の世界を描写する器楽曲ですが、大変美しいメロディーなのでフルートの曲として独立してもよく演奏されます。初演楽譜では、他の部分は「横吹のフルート」とはっきりフルートが指定されているのに対し、この曲では単に(当時はリコーダーをも意味する)フルートと指定されています。バッハの教会音楽でもリコーダーは、死や弔いの鐘などと関連付けて用いられているので、グルックは黄泉の国を表すのにリコーダーを指定したのかもしれません。(本日はフルートと弦楽合奏の形で演奏します。)
「エウリディーチェを失って」は、主人公のオルフェオが妻エウリディーチェを失った悲しみを歌うアリアで、「エウリディーチェを失って、私はどうすればよいのか?愛する妻を失って、どこへ行けばよいのだか?愛するこの人なしに、どこで何をすればよいのだろう?エウリディーチェ!エウリディーチェ!おお愛する妻よ、答えてくれ!ああ何も答えてくれない。もはや私には救いも希望もない、この世にもあの世にも救いはない!」という歌詞を持ちます。オルフェオの役は当時男性高音歌手(カストラート)が担当しましたので、アルトのアリアになっています。
W.A.モーツアルト(1756〜1790)/オペラ「フィガロの結婚」K492より
アリア「恋とはどんなものかしら」、 デュエット「何と柔らかなそよ風が(手紙の歌)」
W.A.Mozart / Aria "Voiche sapete" and Duetto "Sull'aria" from Opera "Le Nozze di Figaro" KV.492
グルックの改革したオペラを一層推し進め新たな境地に展開したのがモーツアルトだと言えるかもしれません。フィガロの結婚は、1786年ウイーンで初演されました。結婚を控えた伯爵の従僕フィガロと伯爵夫人の侍女スザンナ、倦怠期を迎えスザンナに思いを寄せる伯爵、それを悲しく思う伯爵夫人や夫人に想いを寄せる小姓ケルビーノとの間で繰り広げられる4幕の喜劇オペラです。
「恋とはどんなものかしら」は、恋多き小姓ケルビーノが伯爵夫人に想いを込めて歌うアリアで全曲の中でも有名です。ギターの伴奏で恋を語る設定なので、オーケストラが軽やかな伴奏で恋歌を引き立てます。曲の歌詞は、「恋とはどんなものかご存知のあなた、今、僕の心は恋をしているのでしょうか!僕の心に感じるものをお話ししましょう。それは何だか分からない新しいもの!憧れに満ちた感情を感じます。時にはそれは喜び、またあるときは苦しみ。凍ったかと思えば燃え上がり、そうかと思えばまた冷めてしまいます。自分以外の人に幸福を求めるのですがそれが何なのか、誰が持っているのか僕には分かりません。訳もなく溜息をつき、訳もなく胸が高鳴り、昼も夜も心に平安はありません。でもこの苦しみが幸せでもあるのです。恋とはどんなものかご存知のあなた、今、僕の心は恋をしているのでしょうか!」という内容です。
「何と柔らかなそよ風が(手紙の歌)」は、伯爵夫人とスザンナが相談し、伯爵夫人が伯爵の想いの人スザンナになりすまし浮気心をもつ伯爵を懲らしめるために、誘いの手紙を2人で書きあげるシーンで歌われます。夫を誘う文面を伯爵夫人が考え、スザンナがそれを手紙に書く・・・という歌なので、2人が同じフレーズを繰り返しながら歌っていきます。歌詞は「優しいそよ風がそよぐ夕べに、松林の中で・・・後は分かるでしょう。ええ分かるでしょう・・・」という意味深なものです。
W.A.モーツアルト(1756〜1790)/ディヴェルティメント ニ長調 KV. 136
アレグロ − アンダンテ − プレスト
W.A.Mozart / Divertimento D-Major KV.136
Allegro - Andante - Presto
1772年、16歳の時にザルツブルクで作曲されたこの曲は、モーツアルトの自筆譜で現代に伝わっていますが、ディヴェルティメントという表題は、他の人の手によるものであるため、独奏の弦楽四重奏で演奏する室内楽か、弦楽合奏のための曲なのか、また、どのような目的で作曲されたかなど、学者の間でも意見の分かれる曲のようです。しかし、そのような議論を忘れさせるほど若きモーツアルトの才能を感じさせる佳品で、よく知られていますので、どこかでお聴きになったことがあるのではないでしょうか。
曲は、第一ヴァイオリンの軽やかな下降音形で徐々に運動性が増す絶妙の主題で始まり、その雰囲気をたっぷりと楽しみながら楽章が展開します。第2楽章は、2つのヴァイオリンが、中低音の上で、響きを揃え美しい旋律を奏でます。最後にはじける軽快な主題で始まる活発な第3楽章で曲を締めくくります。 本日の演奏では、各パート1人の室内楽編成をとることにし、また、低音にはバロック時代の通奏低音(チェンバロと低弦楽器の組み合わせ)の名残も感じられる事から、チェロ、コントラバスとチェンバロで低音を演奏することにしました。山手バロッコらしい響きがでるといいのですが。
J.ハイドン(1732〜1809)/J.P.ザロモン(1745〜1815)/フルートと弦楽のための五重奏曲(交響曲)「驚愕」
アダージョ/ヴィヴァーチェ・アッサイ − アンダンテ − メヌエット(アレグロ・アッサイ) − アレグロ・ディ・モルト
J.Haydn/J.P.Solomon / Symphony quintet D-major for Flute, String Quartet and harpsichord "Surprise"
Adagio/Vivace assai - Andante - Menuet - Allegro di molto
1732年生まれのハイドンは長らくエステルハージ候の宮廷楽長として、交響曲、協奏曲や室内アンサンブルの作曲と演奏を行いました。田舎の宮廷にとどまってはいましたが、前衛的で完成度の高い彼の作品は広く筆写譜や出版譜として取引され、その名声はヨーロッパ中に鳴り響いていました。またモーツアルトとも親交が深く、モーツアルトが斬新な弦楽四重奏曲を献呈し、現在ハイドンセットとして代表作となっているのも天才同士の交流ゆえのものと考えられます。
ハイドンは、エステルハージ候がなくなり、自由の身になった晩年には、英国の興行師ザロモンの招聘を受けロンドンに滞在し、一連の名作「ロンドン交響曲」を作曲・演奏し、熱烈な歓迎を受けました。ザロモンは、ハイドンのこの交響曲の演奏の際にコンサートマスターを務めた名ヴァイオリニストであり、作曲家でもありました。彼はハイドンの交響曲の版権を買い取り、弦楽四重奏にフルートとピアノを加えた室内楽曲として編曲出版しました。本日はこの交響曲(五重奏曲)集のなかで、もっとも有名な「驚愕」をザロモンの出版譜で全曲演奏いたします。
アンコールは以下の曲でした。
W.A.モーツアルト(1756〜1790)/フルート、チェンバロと弦楽のための 協奏曲 ハ長調 K299より アンダンティノ
W.A.Mozart / Andantino from "Concerto for Flute and Harpsichord C-Major" KV.299
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