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137th Concert
山手西洋館コンサート
三つの古楽器とチェンバロで味わうバロック音楽-IV
Ensemble music of Baroque Flutes, Viola da gamba and
Cembalo
“洋館で親しむバロック音楽”第155回

2026年2月2日(月) 14時開演(13時30分開場) 横浜市イギリス館
14:00 2nd Feburary 2026 at
British House Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコ
出演

清野 由紀子 (フラウト・トラヴェルソ)
昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを故中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。アンサンブル山手バロッコメンバー。
フラウト・トラヴェルソ: Stanesby Jr.(18世紀前半、イギリス)をモデルに、杉原広一(日本)が製作(2025)

曽禰
寛純 (フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
フラウト・トラヴェルソ: Pierre Gabriel Buffardin (18世紀前半、ドレスデン)をモデルに、Martin Wenner(ドイツ)が製作(2024)

坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。国立音楽大学非常勤講師。
ヴィオラ・ダ・ガンバ:Nathaniel Cross製作チェロ(ロンドン1700年代初頭)を20世紀にヴィオラ・ダ・ガンバに改造

和田 章(チェンバロ)
小林道夫氏にチェンバロを師事。慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
チェンバロ:イタリア様式一段鍵盤のチェンバロ(1600年頃)をモデルに、堀 栄蔵(日本)が製作(1990)
アンサンブル山手バロッコ第137回演奏会
山手西洋館コンサート
三つの古楽器とチェンバロで味わうバロック音楽-IV
Ensemble music of Baroque Flutes, Viola da gamba and
Cembalo
“洋館で親しむバロック音楽”第155回
昨年2月に続き、2本のフルート、低音楽器とチェンバロによるコンサートを企画しました。昨年のファゴットに代わりヴィオラ・ダ・ガンバが低音を担当します。山手芸術祭の枠外ですが例年参加の山手芸術祭の期間に、テレマンとバッハの名曲を工夫したサロンコンサートです。テレマンは独奏曲、デュエット、トリオと四重奏曲のバラエティをお楽しみいただきます。バッハは、編曲の楽しみ。ヴィオラ・ダ・ガンバソナタの原曲と考えられるトリオ・ソナタの編成と無伴奏チェロ組曲のチェンバロ独奏への編曲をお聴きいただきます。
♪ ♪ ♪
テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681-1767)は、バッハと同時代のドイツの音楽家で、当時はバッハを遥かにしのぐ名声を獲得していました。この時代のドイツの音楽家たちは、協奏曲に代表される単純明快な形式と歌うような旋律美を特徴とするイタリア様式とともに、いかにも洒落た雰囲気のフランス趣味(舞曲が中心、短い旋律線、装飾音の多用、種々の特徴的なリズムパターン、など)を競って融合しましたが、テレマンほど巧みに行った作曲家はなく、また、楽器の特性を知り尽くし聴いても演奏しても楽しい音楽を作曲しました。テレマンは商売の点でも才能を発揮し自ら楽譜出版を企画し、原版を作成し、予約販売を行い、ヨーロッパ中の音楽関係者(専門家・愛好家)たちからも異例の高い評価を得ていました。
テレマン / 2つのフルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調 「食卓の音楽」第3集より TWV 42:D5
G.P.Telemann / Sonata for two Flutes
and Basso continuo in D-Major from “Tafelmusik” Production-III
アンダンテ – アレグロ – グラーヴェ/ラルゴ/グラーヴェ
– ヴィヴァーチェ
Andante - Allegro - Grave/Largo/Grave –
Vivace

テレマンの数多い作品の中でも有名な「食卓の音楽」は1733年にハンブルクで3つの曲集として出版されました。出版予約名簿の中には、ヘンデルやクヴァンツなど当時の有名作曲家の名もあり、人気のほどがうかがわれます。「食卓の音楽」は、テレマンの器楽曲の集大成とも言える曲集で、いくつかの曲には、元となる初期稿の存在が確認されており、テレマン自身が選んだ傑作選と考えられています。
「2つのフルートと通奏低音のためのソナタ」は、「食卓の音楽」第3集に収められた曲で、食卓の音楽の中でも当時の最新流行のギャラント様式を取り入れて書かれています。形式は伝統的なトリオ・ソナタの4楽章構成を取っていますが、全楽章ともギャラント様式の特徴の比較的おとなしい通奏低音の上で、2本のフルートが表情豊かな旋律を繰り広げます。特に表情や和音が次々と変わるのが特徴です。
テレマン / 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための幻想曲集より 第1番 ハ短調 TWV 40:26
G.P.Telemann / Fantasia in c-minor for Viola da gamba solo
TW40:26
アダージョ - アレグロ - アレグロ
Adagio – Allegro – Allegro

テレマンはファンタジア(幻想曲)と名のつく無伴奏作品をヴァイオリン(12曲)、フルート(12曲)、チェンバロ(36曲)のために作曲しています。ヴィオラ・ダ・ガンバのための作品集(12曲)についても作曲の記録はあるものの、紛失したと考えられていました。ごく最近になって(2015年)個人所蔵のコレクションのなかから発見され、知られるようになりました。
「無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための幻想曲
第1番 ハ短調 TWV 40:26 」は、冒頭の分散和音が印象的です。第1楽章は、この重厚なAdagio と半音階のテーマを持った軽快な Allegro がセットとなって現れます。そして、ジーグを思わせるリズミカルな第2楽章でしめくくられます。短いながらも様々なエッセンスが盛り込まれ、演奏し甲斐がある上、聴いている方にも分かりやすく書かれており、さすがテレマンと思わせられます。
テレマン / 2つのフルートのためのソナタ ホ長調 TWV 40:106 Op.2-6
G.P.Telemann / Sonata for two Flutes in E-major TWV 40:106 Op.2-6
アフェトゥオーソ - プレスト - ソアーヴェ(柔らかに) - スピリトゥオーソ
Affettuoso - Presto - Soave – Spiritoso

テレマンはフルートを含む多種多様な室内楽作品を数多く残しており、その作品群はこのジャンルの 「宝庫」 となっていますが、多作家の彼にしては2本のフルートによる二重奏曲集の数は少なく、主要な作品は、4つの曲集のみです。演奏する曲の含まれる 『6つのソナタ 作品(TWV 40 : 101-106) は全6曲とも4楽章構成の典型的な教会ソナタ (緩・急・緩・急) 様式で書かれ、1727年にハンブルクで出版されました。彼の二重奏曲中最も知られた名曲で、構築力があり対位法的にも優れ、良い趣味の二重奏曲集です。
演奏する「2つのフルートのためのソナタ ホ長調 TWV 40:106 Op.2-6」は、現代のフルート奏者にも知られており演奏もされていましたが、バロック時代のFlauto Traversoで演奏してみると、ホ長調という難しい調整なのでモダンフルートでの演奏と違う世界を作れるように思います。時代観と古楽器であることを意識し、各楽章に特徴的なテレマンらしさを追求し、また第2第、4楽章のフーガがしっかりと書かれているのを大切に演奏するように取り組んでいます。
テレマン / 2つのフルートとヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための四重奏曲 イ短調 TWV
43:a1
G.P.Telemann / Quartet in a-minor for two flutes, Viola.da.gamba
and chembalo TWV43:a1
アンダンテ - ディヴェルティメント1(ヴィヴァーチェ) −ディヴェルティメント2(悲しく)- ディヴェルティメント3(アレグロ)
Andante - Divertiment1 Vivace -
Divertiment2 Treste - Divertiment3 Allegro

次に演奏する「2本のフルート、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための四重奏曲 イ短調 TWV 43:a1」は、1733年に出版された2本のフルート(またはヴァイオリン)と2本のチェロ(またはファゴット)とチェンバロのための6曲の四重奏曲集の5番目に納められたものです。テレマンの他の四重奏曲と同じように4楽章構成ですが、アンダンテの第1楽章に続き、フランス様式を取り入れた、3つのDivertimento が続きます。各楽章は愛らしくかつコンパクトにまとめられています。曲は、チェンバロの通奏低音の上に、2本のフルートが寄り添いまた対話して進行しますが、それにヴィオラ・ダ・ガンバが第3の声部として積極的に絡みます。
J.S. バッハ / チェロ組曲 第6番
ニ長調 BWV1012より (チェンバロ独奏)
J.S.Bach / Suite in D-Major BWV1012 (Cembalo
solo)
サラバンド〜ガボットI/II〜ジーグ
Sarabande - Gavotte I & II ‐
Gigue

バッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750)はバロック時代を代表するドイツの作曲家にして鍵盤楽器の名手です。アンサンブルの中では鍵盤楽器以外に、曲全体が見渡せるヴィオラを演奏したと伝えられています。自分の楽器であるチェンバロやオルガンのためのソナタや組曲に加えて、ヴィオラの両脇のヴァイオリンとチェロのために優れた無伴奏曲を作ったことで有名です。管楽器については、唯一フルート独奏のための無伴奏パルティータ(組曲)が残されています。ヴァイオリンやチェロの無伴奏曲は、バッハや弟子の手によりチェンバロやリュートでの演奏曲として(多声部のフーガや暗示的な対位法などをより直接的な声部や和音として加えるなど)編曲したものが残されています。
演奏する「チェロ組曲 第6番 ニ長調 BWV1012 」については同時代の編曲が残されていないことから、現代の名手(故)グスタフ・レオンハルトがチェンバロ独奏に編曲しレコーディングもしています。レオンハルトは現代におけるチェンバロの復興の中心となる演奏家で、この編曲の自筆楽譜が2012年の没後に遺族からの提案で公開されました。本日はサラバンド〜ガボット〜ジーグの3つの楽章を演奏します。チェロによる単旋律だった曲が、まるで初めからチェンバロで演奏するために書かれたと錯覚するほど見事な仕上がりになっています。
J.S. バッハ / 2本のフルートと通奏低音のためソナタ ニ長調 BWV1028
J.S.Bach / Sonata for two Flutes and Basso continuo in D-Major BWV1028
アダージョ –
アレグロ – アンダンテ – アレグロ
Adagio - Allegro - Andante – Allegro

ライプチッヒ時代のバッハは、市民のための活動(コレギウム・ムジクム)のために多数の曲を提供する必要があり、自作だけでなく、自作の編曲や他の作曲家の作品も利用したことが分かってきています。2006年に発表されたJ.リフキンの管弦楽組曲第2番の原曲を探る長大な論文では、組曲2番の原曲ソロはヴァイオリンだったことの証明に加えて、現在に残されている協奏曲、室内楽曲の原型とライプチヒでの転用について総合的な図解をしています。
演奏する「2本のフルートと通奏低音のためソナタ ニ長調 BWV1028」も、現存する(ライプチッヒ時代の)ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタをトリオ・ソナタの原曲に再構成したものです。バッハのヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタは、ライプチッヒ時代の作と考えられており、3曲が残されていますが、その1曲(第1番ト長調)は原曲(2本のフルートと通奏低音のためのソナタ)とライプチッヒ時代の自筆譜が残されています。そこで、本日はこの形に従って、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの曲(第2番ニ長調)を、2本のフルートと通奏低音(ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ)に戻す試み(Joseph Boppによる)という訳です。現存しているニ長調のソナタは、(低音域が拡大された)7弦のヴィオラ・ダ・ガンバを想定したもので、チェンバロの右手がもう1つの旋律を、左手が低音を担当します。
本日演奏する形では、ヴィオラ・ダ・ガンバの声部は、原曲より高い音域で、しかもチェンバロの右手を担当するフルートと、同じ楽器同士の2本の旋律が響き合う新鮮な曲に仕上がりました。瞑想的な第1楽章で始まり、活発な第2楽章に続いて、息の長い旋律が歌い交わされる深い味わいを持つ第3楽章が印象的です。技巧的な独奏部分が挟み込まれた協奏曲のような第4楽章で曲を閉じます。
たくさんの拍手をいただきましたので、アンコールとして
テレマンの食卓の音楽第3集より、2本のフルート、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための四重奏曲 ホ短調 TWV 43:e2より 第4楽章アレグロをお聴きいただきます。ありがとうございました。
参考文献:
@ 礒山雅他編 / バッハ事典、東京書籍 (1996)
A R.D.P.Jones / The Creative Development of Johann Sebastian Bach (Vol.II), Oxford University Press (2013)
B C.Wolff / The New Grove Bach Family, W.W.Norton & Company (1983)
C J.Rifkin/ The “B-Minor Flute Suite” Deconstructed: New Light on Bach’s Ouverture bwv 1067, Bach Perspectives Volume 6, University of Illinois Press (2006)
D S.Zohn / Music for a Mixed Taste – Style, Genre, and Meaning in Telemann’s Instrumental Works Oxford University Press(2008)
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