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126th Concert
アンサンブル山手バロッコ第126回演奏会
〜ガンバの大冒険〜
Big Adventure of “Viola da gamba”
“洋館で親しむバロック音楽”第143回
2024年5月28日(火) 19時開演(18時30分開場) 横浜市イギリス館(横浜市中区山手町115−3)
19:00 28th May 2024 at British House
Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコ
https://yamatebarocco.sakura.ne.jp
出演
坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加、ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。国立音楽大学非常勤講師
使用楽器(ヴィオラ・ダ・ガンバ):Nathaniel Cross製作チェロ(ロンドン1700年代初頭)をガンバに改造
加藤
久志(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
洗足学園音楽大学卒業、同大学大学院修士課程を修了。ヴィオラ・ダ・ガンバを福澤宏、武澤秀平、小池香織の各氏に師事。2015年ニース夏期国際音楽アカデミーにてマリアンヌ・ミュラー氏のマスタークラスを受講しディプロマを取得。同年、中野哲也氏のレッスンを受講し、感銘を受ける。古楽を中心に様々な活動を行っている。「古楽団あおば」メンバー。
使用楽器(ヴィオラ・ダ・ガンバ):益子 功(2005年) 製作。 ニコラウス・ベルトラン モデル 7弦バス
野口
詩歩梨(チェンバロ)
桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業、同大学研究科修了。チェンバロを鍋島元子に師事。これまでに国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。「古楽団あおば」メンバー。ソロCD「バロックの華」/ワオンレコード(「レコード芸術」誌・準特選盤)
使用楽器(チェンバロ):AKIRA KUBOTA,1994/ after Ravalemant
Ruckers GG~d3 8’× 8’ ×4 +Lut Decoration by
YUMIKO TAKAKURA
アンサンブル山手バロッコ第126回演奏会
〜ガンバの大冒険〜
Big Adventure of “Viola da gamba”
“洋館で親しむバロック音楽”第143回
プログラム
横浜市イギリス館は、1937年に英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。この素晴らしい客間を使い、バロック時代に活躍したヴィオラ・ダ・ガンバ(以下ガンバ)2本とチェンバロのアンサンブルで、王宮や貴族が親しんだサロンコンサートをお届け致します。「ガンバの大冒険」と題して、バロックの初期にヴィオラ・ダ・ガンバが愛好されたイギリスの作品、そしてドイツのバッハやテレマンの盛期バロックの音楽をお楽しみ下さい。(加藤久志/坪田一子/野口詩歩梨)
♪ ♪ ♪
T. ヒューム/ガンバの魂 、 スイート・エア
Tobias Hume(c1569 - 1645)/ The Spirit of Gambo, Sweet Ayre
17世紀、ヨーロッパ諸国では宮廷を中心にオペラや器楽曲が発展してバロック音楽と呼ばれる時代になっていました。ところが当時のイギリスはその波から遅れ(失礼!)、大陸とは少し違った独特の音楽を育みました。特にガンバのための音楽はその筆頭で、ガンバ弾きにとって17世紀イギリスは音楽の宝箱です。T. ヒューム(1569頃 - 1645)は、本職は兵士という風変わりな音楽家です。愛好家であるにも関わらず、リラ・ヴァイオルのための曲集を二冊出版しました。リラ・ヴァイオルとは、調弦をいろいろに変化させ、タブラチュアという文字譜で演奏する奏法(専用の楽器もありましたが、6弦のガンバなら何でも演奏可能)のことです。当時は入門書なども出版され、大変人気がありました。ヒュームの作品は、そのほとんどが遊び心に溢れた小品です。本日演奏する曲は二冊目の『ヒューム大佐の詩的な音楽』 (1607) に収められています。《ガンバの魂》は、一冊目の曲集でソロとして掲載されていますが、評判が良かったためか、3人で弾けるよう豪華に編曲されています。《スイート・エア》は、一冊目の《死》という曲に当時人気だった「涙のモチーフ」をからめて編曲されています。
T.モーリー/パバーン&ガリアード
Thomas Morely(1557 - 1602) /Pavan & Galliard
イギリス鍵盤音楽の作曲家を上げる時、ヴァージナリスト達の存在は欠かせません。T. モーリー (1557 - 1602) もその1人。ヒュームの《スイート・エア》同様「涙のモチーフ」を主題にした《パバーン & ガリアード》をお聴き下さい。パバーン(=パバーヌ)は男女がペアとなり、ゆっくりと行進する舞曲。それに対してガリアード(=ガリアルダ)は脚を蹴り上げるステップの速い3拍子の舞曲で、この2つはしばしば組み合わせて演奏されます。ちなみにヴァージナルという長方形の楽器がありますが、イギリスではチェンバロと同様、撥弦して音を出す鍵盤楽器の事をまとめてヴァージナルと呼んでいたようです。
M. ロック/ファンタジー〜クーラント〜サラバンド
Matthew Locke (c1621 - 1677)/ Fantazie - Courant – Saraband
M. ロック(1621頃 - 1677)は、宮廷を中心に活躍した音楽家で、伝統的なイギリス音楽に大陸の新しい音楽を融合させました。イギリス最初のオペラ作曲家でもあります。ガンバの音楽では、古いタイプのガンバ・コンソート(大中小のガンバ合奏。ルネサンス的な協和した響きを得られる)にバロックの新しいスタイルを取り入れながらも、イギリス趣味を守ろうとする心意気が感じられます(当時は大陸からやってきた音楽家がもてはやされ、イギリス人の音楽家はそんな状況に反発していました)。本日演奏するバス・ガンバ用の二重奏は大英図書館の Gb-Lbl Add. Ms.17801 というロック直筆の写本に収められています。劇音楽が得意なロックらしく、冒頭のファンタジー(幻想曲ではなくイギリスで発展した模倣様式の器楽曲)は、イギリスの老紳士が語り合う小さなお芝居。続く舞曲ではキャッチーなメロディーが聴こえてきます。
G.Ph. テレマン/ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ イ短調
Georg Philipp Telemann (1681 – 1767)
/Sonata for Viola da gamba and Basso continuo in a-minor TWV 41:a6
ラルゴ - アレグロ - ソアーヴェ - アレグロ
Largo - Allegro - Soave – Allegro
G.P.テレマン(1681-1767)は、後期バロックを代表する作曲家です。当時は後述のJ.S.バッハよりも、名実ともに好評を得ていました。今回演奏する《ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ イ短調》TWV41:a6は1739〜40年に出版された『音楽の練習帳Essercizi Musici』に収録されています。この『音楽の練習帳』は『食卓の音楽』や『忠実な音楽の師』に並ぶテレマンの重要な作品集とされています。『音楽の練習帳』は、当時の家庭で親しまれていた各楽器を、様々な組み合わせによる編成の楽曲を集めた24曲からなる曲集です。
《休憩》
J. S. バッハ/前奏曲 BWV998より
Johann Sebastian Bach (1685 -
1750)/Prelude BWV998-1
後半は、バッハの曲をお届けします。J. S. バッハ
(1685 - 1750)は、バロック時代の最後を飾る音楽家です。バッハが生きた時代、ガンバの役割はヴァイオリンやチェロが取って代わるようになっていましたが、それでもガンバは、「昔の哀愁をおびた楽器」として、有名な《マタイ受難曲》やカンタータの中で、特別な楽曲に効果的に登場します。ところで、本日のコンサート「ガンバの大冒険」は、当初はバッハのチェンバロとガンバのための作品を普通に弾いて普通に聴いていただくつもりでおりました。が、せっかくならちょっと冒険、いやいやいっその事(ネズミが主人公のアニメと被らないように)大冒険しようではないか、ということで、このようなタイトルになった次第です。リュートまたはチェンバロのために書かれたBWV 998のプレリュードに続いて、ガンバの大冒険をお楽しみ下さい。
J. S. バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV 1027
Johann Sebastian Bach(1685 - 1750)/ Sonata in G-major BWV1027
アダージョ - アレグロ マ ノン タント - アンダンテ - アレグロ モデラート
Adagio - Allegro ma
non tanto - Andante – Allegro moderato
ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番と呼ばれるBWV1027(自筆譜1742頃)は、《2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ト長調》BWV1039(同時代の人よる譜)と同じ音楽です。大冒険コンサートでは当初、この編成を採用し、《2本のガンバと通奏低音のためのソナタ》にしようかと安易に考えていました。しかし、やってみると、通奏低音のバス・パートが大活躍するので、1本のガンバはそちらにまわることにしました。
J. S. バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1029
Johann Sebastian Bach(1685 -
1750)/Sonata in g-minor BWV1029
ヴィヴァーチェ - アダージョ - アレグロ
Vivace - Adagio – Allegro
ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番と呼ばれるBWV1029には自筆譜は無く、バッハの最後の弟子ペンツェルトによって、バッハの死後伝えられました。協奏曲風の威風堂々とした作品で、大冒険ではどうしたものかと思案した結果(それほど選択肢はありませんが)、チェンバロの右手パートをオクターブ下げて1本のガンバが演奏し、《2本のガンバと通奏低音のためのソナタ
ト短調》と相成りました(が、少しばかり工夫をしています。お分かりになる人は?)。
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たくさんの拍手をいただきましたので、
アンコールに、もう1曲残されているJ.S.バッハ ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ニ長調 BWV1028より第2楽章アレグロを、もう1つ別の構成でお聴きいただきます。
フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音(チェンバロ+ヴィオラ・ダ・ガンバ)の編成(フルート曽禰寛純)です。ありがとうございました。
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