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123rd Concert
横浜市イギリス館 第17回横浜山手芸術祭コンサート
西洋館で味わうクラシカル・フルートの魅力〜V
Ensemble music of Classical
Flutes, Viola and Violoncello
“洋館で親しむバロック音楽”第138回
2024年2月12日(月) 14時開演(13時30分開場) 横浜市イギリス館
14:00 12th January 2024 at British House Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコン
出演
国枝
俊太郎(クラシカル・フルート)(ゲスト)
リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを故中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとして数々のコンサートに参加し、NHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演、CD録音にも加わっている。また「ムジカ・フラウタ」のメンバーとしても、NHK-FM「名曲リサイタル」に出演する。現在はバロックアンサンブル「クラングレーデ」」「ムジカ・レセルヴァータ」メンバー。
清野 由紀子 (クラシカル・フルート)
昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを故中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。
曽禰
寛純 (クラシカル・フルート)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
小川 有沙 (クラシカル・ヴィオラ)
慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコメンバー。
永瀬 拓輝 (クラシカル・チェロ)(ゲスト)
桐朋学園大学音楽学部器楽科チェロ専攻卒業。東京藝術大学大学院古楽科バロック・チェロ専攻修了。チェロを金谷昌治、花崎薫、倉田澄子の各氏に、バロック・チェロを武澤秀平、E・ジラール、酒井淳、鈴木秀美の各氏に師事。ソロ、室内楽を中心に、モダンおよびバロック・チェロの演奏活動を積極的に行っている。「コーヒーカップ・コンソート」(大塚直哉指揮)メンバー。 現在、永瀬音楽教室、和幸楽器講師。2022年第23回大阪国際音楽コンクールアーリーミュージック部門最高位受賞
アンサンブル山手バロッコ第123回演奏会
横浜市イギリス館 第17回横浜山手芸術祭コンサート
西洋館で味わうクラシカル・フルートの魅力〜V
Ensemble music of Classical Flutes、Viola and Violoncello
“洋館で親しむバロック音楽”第138回
プログラム
横浜市イギリス館は、1937年に、英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。その素晴らしい客間で、クラシカル・フルート、ヴィオラとチェロのアンサンブルによる18世紀のサロンコンサートをお届けします。
クラシカル・フルートのコンサートを始めたのは、わたしたちがバロックのコンサートで使用する楽器はA=415Hzのバロック・フルート(フラウト・トラヴェルソ)が中心で、古典派に向かうA=430Hzのクラシカル・フルートは合奏の機会がなかなかなかったからです。新たな楽器や楽曲を学び、アンサンブルを積み重ねようという考えでコンサートを企画し回を重ねてきました。クラシカル・フルートと同時代の鍵盤楽器であるフォルテピアノとも共演を重ね、また、小編成だけではなく、モーツァルトの協奏曲や交響曲も演奏曲目に加えられるようになり、クラシカル・フルートも徐々に身体の一部になってきています。
前回のクラシカル・フルートシリーズ4回目はハイドンのロンドントリオ全曲などをお届けしました。今回は、前回好評だったバッハの末息子J.C.バッハの四重奏曲集の残りの曲、パリのモーツァルトと称されたフルートの名手ドヴィエンヌとチェロの名手デュポール、そしてベートーヴェンの曲を組み合わせ、ロンドン、パリやウィーンで楽しまれた家庭音楽をお届けします。
♪ ♪ ♪
J.C.バッハ / 2本のフルート、ヴィオラとチェロのための四重奏曲 ニ長調 作品19-2
J.Ch.Bach(1735 - 1782) / Quartet D-Major for two flutes. Viola and violoncelloOP.19-2 WB62
アレグロ - アンダンテ - アレグロ アッサイ
Allegro - Andante - Allegro assai
ヨハン・クリスチャン・バッハ(1735 〜1782)は、大バッハの末息子でライプチッヒで生まれ、ロンドンで亡くなりました。活躍の中心はロンドンで、音楽監督としてオペラ、交響曲やカンタータを作曲上演し、また鍵盤楽器の名手として協奏曲や室内楽曲を多く残しました。「バッハ・アーベル演奏会」シリーズなどを通じてバロックから古典派への扉を開き、モーツァルトとも親交がありました。演奏する四重奏曲は、バッハ・アーベル演奏会のパトロンのアビントン伯爵のために1770年代以降に作曲されました。曲はフルート2本とチェロのトリオにヴィオラを加えた四重奏の形式で、いっそう豊かな響きが楽しめます。
最初に演奏する四重奏曲 作品19-2 は、フルートが良く響く二長調で、その輝かしい調性にふさわしく、明るく活気にあふれた曲になっています。歌うようなアレグロで始まる第1楽章、メヌエットのリズムを借りたロンド形式の第2楽章を経て、活気にあふれる軽快なジーグのリズムの第3楽章で曲が閉じます
F. ドヴィエンヌ / 3本のフルートのためのトリオ ト短調 作品19-5
F.Devienne(1759-1803) Trio
for three flutes g-minor OP.19-5
アレグロ ポコ アジタート - ラルゴ - プレスト/ロンド
Allegro poco agitato - Largo - Presto/Rondo
フランソワ・ドヴィエンヌ(1759〜1803)は、フランスのジョワンヴィルでモーツァルトより3歳年下に生まれ、歌うような旋律を特徴とした作曲家として、また卓越したフルート、ファゴットの演奏家としても知られていました。その作風と若くして不遇の死を迎えたことから、フランスのモーツァルトとも呼ばれています。早くから才能を発揮し、演奏や作曲で活躍し、宮廷楽団のファゴット奏者として、またパリ音楽院の初代フルート教授として、指導や教則本の出版をするなど活躍しています。
3本のフルートのためのトリオ ト短調(作品19-5)は6曲のフルート・トリオ 作品19の中で唯一短調の作品です。第1、第3楽章のフランス革命前夜を思わせる激しい主題と華々しく技巧的なメロディー、また2楽章の声楽的な息の長いフレーズはフルート三重奏の魅力を遺憾なく発揮させてくれるものとなっています。
J. L.デュポール / チェロのための21の練習曲より 第7番 ト短調、第8番 ニ長調
J.L.Duport(1749-1819) Etude
No.7 g-minor and No.8 D-major from 21 Etudes
アレグロ - アダージョ・カンタービレ
Allegro - Adagio cantabile
ジャン・ルイ・デュポール(1749〜1819)は、兄ピエールとともにフランスのチェロの先駆者で、二人はコンセール・スピリチュエルでデビューし、活躍していましたが、1790年にフランス革命を逃れて音楽を愛好するベルリンのフリードリッヒ・ヴィルヘルム2世の宮廷に仕えました。(宮廷を訪れたベートーヴェンは二人の妙技に触発されて、チェロ・ソナタ第1、2番を作曲しました。)その後、1806年のナポレオンのベルリン侵攻を機にパリへ移り、パリ国立高等音楽学院の教授として後進の育成に活躍しました。後世に残る功績としてチェロ奏法の教則本「チェロの運指および運弓に関する試論」(1806年)があります。ここでデュポールは、チェロの左手の運指法を体系的に示し、運弓法や演奏法についても詳細に解説しており、今日でも重要な資料となっています。演奏する「21の練習曲集」は、この試論の巻末に付録として掲載されているものですが、演奏する2曲のように、コンサートでの演奏曲としても素晴らしいものが含まれています。
L.v.ベートーヴェン / フルート三重奏曲 ニ長調 op.87より 第3/第4楽章
L.v.Beethoven(1770〜1827)
3rd and 4th movement from Trio in D-major for three flutes OP.87
メヌエット – プレスト
Menuetto – Presto
べートーヴェン(1770〜1827)は20代の1794年に2本のオーボエとイングリッシュホルンという3本のダブルリード楽器のためのトリオを作曲し、出版しました。このトリオは、オリジナルの編成以外に様々な編成に編曲され、出版し親しまれました。演奏する3本のフルートのための編曲版は、べートーヴェンの晩年1825年にイギリスで出版され、原曲以上に有名になりました。
当時べートーヴェンの曲のカタログを作成したキンスキーは、この曲の演奏には経験豊かで各パートを味わい深く、丁寧に表現できる演奏者が必要だと書いています。本日はこの曲の4つの楽章のうち、第3楽章(メヌエット)と第4楽章(プレスト)をお聴きいただきます。メヌエットは中間部に洒落た味わいがあり楽しめます。プレストは、駆け抜けるように3本のフルートが動き回り曲を閉じます。
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F. ドヴィエンヌ: 2本のフルートとチェロのためのトリオ ト長調 作品19-6
F.Devienne Trio two flutes and cello G-Major OP19-6
アレグロ - プレスト
Allegro - Presto
ドヴィエンヌの2本のフルートとチェロのためのトリオ ト長調は1790年頃に出版された作品19の第6曲に納められている曲で2つの楽章から構成されています(先のフルート・トリオとは別の曲集です)。軽快で2本のフルートが寄り添い、また競い合う第1楽章アレグロ、ここではチェロも独奏楽器として旋律の一翼を担っています。第2楽章は、駆け抜けるような下降音型のテーマで始まる軽快な楽章で、この主題がフルートに交替で現れ、またチェロにも表れます。主題の間は、3連符や16分音符で織りなされる軽やかな間奏でつながれ、最後は堂々と曲を(曲集を)締めくくります。
J.C.バッハ / 2本のフルート、ヴィオラとチェロのための四重奏曲 ハ長調 作品19-1
J.Ch.Bach / Quartet C-Major for two
flutes. Viola and violoncello OP.19-1 WB61
アレグロ - アンダンテ - ロンド.アレグレット
Allegro -
andante - Rondo. Allegretto
最後に演奏する四重奏曲 ハ長調 作品19−1は、最初にお聴きいただいた二長調の四重奏曲が含まれる作品19の四重奏曲集の巻頭を飾る曲です。全体にこの編成の特徴を生かした念入りな作曲がされており、最後は当時流行の二拍子のロンドで曲が閉じます。
たくさんの拍手をいただきましたので、
アンコールにJ.C.バッハの五重奏曲 ニ長調から第3楽章アレグロアッサイをお聴きいただきます。ありがとうございました。
メンバーの使用楽器を以下にまとめておきます。
クラシカル・フルート:
@ 1キーフルート J.Preston (1800年頃、ロンドン)(国枝)
A 1キーフルート Goulding&co.(1800年頃ロンドン)(国枝)
B 1キーフルート C.A.Grenserをモデルに、J.J.Melzer(フランス)が製作(清野)
C 1キーフルート F.G.A Kirst をモデルに、木下邦人氏(日本)が製作(曽禰)
D 6キーフルート W.H.Potter (1800年頃、ロンドン)(国枝)
E 8キーフルート C.A.Grenserをモデルに、R. Cameron(米国)が製作(清野)
F 8キーフルート F.G.A.Kirst (1790年頃)をモデルに、C.Soubeyran(フランス)が製作(曽禰)
クラシカル・ヴィオラ C.Ogle工房(中国)製作
クラシカル・チェロ 作者不詳、17〜18世紀のチェコ製?
参考文献:
1)平野昭/ ベートーヴェン、音楽之友社(2012)
2)久保田慶一/ バッハの息子たち、音楽之友社(1989)
3)D.Schulenberg/ Mozart, J.C.Bach. and the Bach Tradition, Bach Perspectives-14, University of Illinois Press (2022)
4)L.Baldini u.a./ Introduction to ”Trois Sonates”、Edition J.M.Fuzeau s.a.(2005)
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