これまでの演奏会へ戻る

 NEW!!
123rd Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第122回演奏会

ブラフ18番館 第17回横浜山手芸術祭コンサート

バッハ ナンバーワン〜第1番を集めて〜

Collection of 1st Pieces of Bachs Cembalo Works

“洋館で親しむバロック音楽”第137

 

2024211日(日) 14時開演(1330分開場) ブラフ18番館
14
00 11th Feburary 2024 at  Bluff No.18 House Yokohama

主催:寺村朋子コンサート事務局 協力:アンサンブル山手バロッコン

 

出演

 

寺村朋子 (チェンバロ)

東京藝術大学卒業。同大学大学院修士課程修了。山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール‹山梨›チェンバロ部門にて第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外の講習会を受講し研鑽を積む。NHKFM リサイタル」に出演。マスタークラスの伴奏やバロックダンスとのアンサンブルなど様々な団体の通奏低音奏者、またはソリストとして活動。近年では中世声楽やフォルテピアノにも取り組み、活動に広がりを見せている。「フルート・バロックソナタ集」「J.S.バッハ作品集」(増刷)を編曲、出版。チェンバロ・ソロ CD「お気に召すまま Capriccio(レコード芸術準推薦)リリース。宮地楽器チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会会員。(一財)チェンバロ振興財団クープラン理事。現在YouTubeチャンネル「Cembalo チェンバロう!」を開設し演奏動画を配信中。

 

演奏するチェンバロ

16世紀にいち早く完成されたイタリアン様式のチェンバロ。細長く軽やかな胴体を持ち、美しく純化されたチェンバロの原型。

1990年にチェンバロ製作家 故・堀栄蔵氏により製作され、長くコンサートサービス(演奏会への楽器の提供)で使われていましたが、工房じまいの機会に、横浜山手の百段音楽室に置かれ、山手バロッコのアンサンブルやコンサートに利用されている。

 

様式:イタリアの1600年ごろの作者不詳の楽器をモデルに製作。製作No.181

仕様:1段鍵盤。 8‘ 8’の構成

音域:GG-d’’’

 

調律はLehmanを使用しました。


アンサンブル山手バロッコ第122回演奏会

ブラフ18番館 第17回横浜山手芸術祭コンサート

バッハ ナンバーワン〜第1番を集めて〜

Collection of 1st Pieces of Bachs Cembalo Works

“洋館で親しむバロック音楽”第137

 

プログラム

 

横浜山手西洋館、ブラフ18番館での山手芸術祭コンサートへようこそ。歴史ある建物やイタリア山公園の素晴らしい庭園を眺めるブラフ18番館にて、いにしえのサロンコンサートの愉しみを、「バッハ ナンバーワン〜第1番を集めて〜」と題して、チェンバロを中心に置き、バッハの様々な名曲をその響きとともに味わいます。

コンサートでは登場された寺村朋子さんが短い曲(バッハの小プレリュード 第1番 ハ長調)を演奏してスタートし、ナンバーワンを集めた思いなどをお話しいただき、プログラムの曲が演奏されました。

ここでは、コンサートの企画をされた寺村朋子さんに、うかがってみた内容を最初に掲載いたします。
(曲の説明は、インタビューの次にありますので、ご安心ください)

 

- まず、最初に寺村さんとチェンバロとの出会い、チェンバロ奏者になった経緯など教えていただけますか?

「通っていた中学の音楽室に小さなチェンバロが置いてあり、大人になったらお金を貯めて買いたいなぁ、趣味で弾ければ良いなぁと思ったことが最初の出会いです。その後、習っていたピアノの先生からのご縁でチェンバロの先生を紹介して頂き、チェンバロを弾く機会に恵まれ今に至ります。」

 

- バッハは、チェンバロ奏者にとって、どのような存在ですか?

「何度開けても飽きない大切な宝箱」

 

- 今回のテーマは「バッハ ナンバーワン〜第1番を集めて〜」ということですが、何百曲もあるバッハの曲でNo.1を集めるというプログラムの狙いは何でしょうか?

「それぞれ曲集ごとにまとめたCDや全曲演奏会などはありますが、第1番だけを集めた試みは、あまり聞いたことが無いので以前から挑戦してみたい!と思っていました。」

 

-今回のプログラムのナンバーワンたち、どのように味わっていただきたいですか?

Ø  イギリス組曲第1番:喜びに満ち溢れ迸るような音の流れを、ご一緒に感じることが出来ましたら嬉しいです。

Ø  インヴェンションとシンフォニア第1番:その場の空気を整えるようなイメージを持っています。皆様は如何お感じになられますでしょうか。

Ø  フランス組曲第1番:イギリス組曲とパルティータは、舞台のような華やかな雰囲気を受けますが、フランス組曲は一人芝居の語りに似た内向きのエネルギーを感じます。引かれず、惹かれる音楽を作りたいです。

Ø  パルティータ第1番:何かが始まることへの静かな期待と感謝を感じます。ご自由に楽しんで頂けましたら幸いです。

 

♪ ♪ ♪

 

J.S.バッハ / インヴェンション 第1番 ハ長調 BWV772 シンフォニア 第1番 ハ長調 BWV787 

 Johann Sebastian Bach1685-1750) /  Invention No.1 in C-major BWV772 and Sinfonia No.1 in C-major BWV787

1720年、長男のヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ10歳になったのを機会に、教材としての鍵盤曲を次々と作曲し教育に使用しました。この教材集「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための音楽帳」には、お聴きいただく、「インヴェンションとシンフォニア」が含まれています。バッハは序文で、鍵盤楽器の愛好家・学習者が「2つの声部をきれいに弾きこなし」さらに「3つの声部を正しく手際よく演奏し」「楽想を展開し、カンタービレな奏法、作曲の手引きとなる」と述べているように、2声のインヴェンション、3声のシンフォニア、それぞれ15曲が、長調短調で作曲されており、フリーデマン・バッハだけでなく、あらゆるバッハの弟子たち、(そして現在のピアノ学習者)のレッスンの友となっていました。

演奏する「インヴェンション ハ長調 BWV772、シンフォニア ハ長調 BWV787」はそれぞれの曲集の第1番にあたる曲で、最初に現れるテーマを、2声、3声の模倣曲として整然と展開しています。

 

J.S.バッハ / イギリス組曲 第1番 イ長調 BWV806 

Johann Sebastian Bach1685-1750) /  English Suite No.1 in A-Major BWV806

 プレリュード- アルマンド – クーラントI/II - サラバンド – ブーレI/II - ジーガ(ジーグ)   
Prélude
Allemande Courante I/II Sarabande - Bourrée I/II - Gigue

ヨハン・ゼバスチャン・バッハは、1685年ドイツのアイゼナハで、音楽家の家系に生まれ、1750年にライプチッヒで亡くなるまで、音楽活動を継続し、バロック音楽の頂点に立つ音楽家とも言われています。

10歳の時に父を亡くし、オールドルフの長兄で音楽家であるヨハン・クリストフ・バッハのもとに引き取られ、鍵盤楽器の演奏法を学び、その後、リューネブルクで学びました。18歳の時には、ヴァイマールの宮廷楽師を経て、アルンシュタットの教会オルガニストに就任しました。4年間のオルガニストとしての活動の記録は少なく、チェンバロのための描写音楽である「最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリッチョ」が知られています。

170823歳の時にはヴァイマールの宮廷オルガニストになり、楽師から1714年には、楽師長に昇格します。ヴァイマールの時代には、イタリア由来の鍵盤楽器のためのトッカータが作曲され、またヴィヴァルディの曲など、当時の新しいスタイルである協奏曲を鍵盤楽器のために編曲・演奏し、その様式を学びました。

171732歳の時には、ケーテンの宮廷楽長として就任し、音楽好きの殿様のもとで、有名なブランデンブルク協奏曲を含む協奏曲、組曲やソナタなどの器楽曲の作曲と宮廷での演奏の充実した期間を過ごしました。

この時期、最初の曲集であるチェンバロ独奏のための組曲集「イギリス組曲」を作曲しました。フランス様式の曲である組曲に、イタリア由来の協奏曲やドイツのフーガの要素を取り入れた新しい試みの曲集です。

お聴きいただく「第1番 イ長調 BWV806は、ヴァイマール時代の筆写譜(異稿)が残されているなど、早くに作曲されたものと考えられています。曲は、鍵盤用組曲の基本形に従っていて、最初の自由な前奏曲につづいて、ドイツの舞曲アルマンド、イタリアの舞曲クーラント、スペインの舞曲サラバンドが続き、はやりの舞曲を自由に挟み込む部分では、フランスの活発な舞曲ブレが挿入され、最後は、イギリス由来のジーグで締めくくられます。このジーグは、バッハに特有な対位法(フーガ)の様式が終始組み込まれているのが印象的です。

なお、イギリス組曲という名称はバッハがつけたものでなく、伝記作者ニコラウス・フォルケルが「ある高貴なイギリス人のために書かれた」と記しているほか、第1番のジーグのテーマは、ロンドンで活躍したフランス人作曲家 シャルル・デュパールの組曲のプレリュードのテーマを借用していることなどが、そのイギリスとの関係を示しているようです。

 

♪ ♪ ♪

 

J.S.バッハ / フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812

Johann Sebastian Bach /  French Suite No.1 in d-minor BWV812

アルマンド - クーラント - サラバンド - メヌエットI/II - ジーグ

Allemande Courante Sarabande - Menuet I/II Gigue

1720年35歳のバッハは、妻マリア・バルバラを病気で亡くし、翌年、歌手であり音楽家であるアンナ・マグダレーナと再婚しました。この機会に6曲の「フランス組曲」が作曲され、その元となる版は、「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」にバッハの自筆で記入されました。組曲はそもそもフランス由来なので、フランス組曲は、何も言っていないことになりますが、前述のバッハの伝記作者フォルケルも「この曲はフランス趣味で書かれているのでフランス組曲と呼ばれている」と記述しています。イギリス組曲と異なり、前奏曲なしに、舞曲(アルマンド)でスタートし、中間に挿入される当世風の舞曲のバラエティ豊かなこともあり、変化に富み、洒落た曲になっています。お聴きいただく「第1番 ニ短調 BWV812」は、曲集の最初に相応しい優雅で同時にしっかりした全体構想を持って作られた曲と言えます。楽章は、組曲の定番のアルマンド、クーラント、サラバンドに続き、当世風のフランス舞曲メヌエットが続き、定番のジーグで締めくくられます。

 

J.S.バッハ / パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825

Johann Sebastian Bach / Partita No.1 in Bflat-Major BWV825

プレリューディウム(前奏曲) - アルマンド - コレンテ - サラバンド - メヌエット I/II -ジーガ

Praeludium Allemande Corrente Sarabande Menuet I/II Giga

172338歳のバッハは、ケーテンの宮廷に別れをつげ、ライプチッヒの音楽監督に就任しました。新たな環境で教会音楽の作曲と演奏に最初の数年は没頭することになります。1725年に、バッハは新しい鍵盤楽器のための組曲を「パルティータ 第1番 変ロ長調」(BWV825)として出版しました。これは、バッハが初めて出版してその曲を世に問う初めての試みでしたので、自信作だったと思います。1730年まで毎年1曲出版し、31年には6曲のセットとして出版しました。「クラヴィーア練習曲集・・・・愛好家の心を楽しませるために、ザクセン公およびヴァイセンフェルス公の楽長兼ライプチッヒの音楽監督 ヨハン・ゼバスチャン・バッハが作曲。作品1・・」とタイトルが付けられていて、当時画期的な曲(かつ難曲)として大きな反響を呼んだと記録されています。

 

演奏する「パルティータ 第1番 変ロ長調」は、前任地のケーテンのお殿様に男の子が生まれたお祝いに献呈した曲です。3声のインヴェンション風の親しみのあるプレリュードで始まり、定番のアルマンド、クーラント、サラバンドに続き、メヌエットが挿入され、最後は、左右の腕の交差が華やかなジーグが締めくくるといった、全体に華やかで分かりやすい曲想になっています。

 

 

たくさんの拍手をいただきましたので、

アンコールに平均率クラヴィーア集第1巻より、プレリュード第1番 ハ長調をお聴きいただきます。

ありがとうございました。

 

参考文献:

 

1)礒山雅/小林義武/鳴海史 : バッハ事典、東京書籍(1996

2)日本チェンバロ協会: チェンバロ大事典、春秋社(2022

これまでの演奏会へ戻る

Home