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116th Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第116回演奏会

 古楽器の響きで味わう

テレマン 食卓の音楽 第1
The Complete Performance of Telemanns Musique de table Premier Production on period instruments

横浜開港記念コンサート
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第129回 

2023528() 14時開演(1330分開場) 神奈川県民ホール 小ホール 
14:00
 28th May 2023 at  at Kanagawa Kemnin Hall/small hall

主催: アンサンブル山手バロッコ https://yamatebarocco.sakura.ne.jp
後援: 横浜市中区役所 協力: クラングレーデ コンサート事務局

 

出演

朝岡 聡(お話し&リコーダー) 

慶應義塾大学卒業。テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「ニュースステーション」初代スポーツキャスターとして活躍。フリーとなってからはテレビ・ラジオ・CM出演のほか、クラシック・コンサートの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。ソリストや指揮者と繰り広げるステージ上の会話や興味深い内容を軽妙なトークで展開する独自の世界は、新しい芸術ファンのすそ野を広げる司会者として注目と信頼を集めている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。98年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手地区西洋館でのコンサートを継続。日本ロッシーニ協会副会長。東京藝術大学客員教授。

 

大山 有里子(バロック・オーボエ) 

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動、その後関東に活動の場を移し、ピリオド楽器による演奏に専念する。近年はバロックだけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。201619年リサイタル「バロック・オーボエの音楽」を開催し好評を博す。「ダブルリーズ」「古楽団あおば」メンバー。

 

  清野 由紀子(フラウト・トラヴェルソ)

昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを故・中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。アンサンブル山手バロッコメンバー。

 

 曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)

フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の西洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

永谷 陽子(バロック・ファゴット)

桐朋学園大学卒業。同大学研究科及びオーケストラアカデミー修了。バロック・ファゴットを堂阪清高氏に師事。2012年横浜・西洋館 de古楽で、モーツァルトのファゴット協奏曲をピリオド楽器で熱演。第26回国際古楽コンクールにて 奨励賞を受賞。
古楽、モダン両分野でオーケストラや室内楽、CD録音に参加。八王子音楽院、ドルミール音楽教室講師。「ダブルリーズ」他メンバー。

 

小野 萬里(バロック・ヴァイオリン) 

東京藝術大学ヴァイオリン科卒業。1973年ベルギーに渡り、バロック・ヴァイオリンをS. クイケンに師事、以来たゆみない演奏活動を展開している。現在、「ムジカ・レセルヴァータ」メンバー。 アンサンブルSONORE CORDIを指導している。

  

角田 幹夫(バロック・ヴァイオリン)

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慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得。現在、カメラータ・ムジカーレ同人、NHKフレンドシップ管弦楽団団員。山手バロッコ発足メンバー。

  

伊藤 弘祥(バロック・ヴァイオリン)

慶應バロックアンサンブルでヴァイオリン、ヴィオラを演奏。また、同大学の日吉音楽学研究室主催の「古楽アカデミー」に、2010年より第一期生として参加し、バロック・ヴァイオリン、バロック・ヴィオラを演奏している。アンサンブル山手バロッコメンバー。

 

山口 隆之(バロック・ヴァイオリン)

学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコメンバー。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。

 

小川 有沙(バロック・ヴィオラ)

慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコメンバー。

  

坪田 一子 (ヴィオラ・ダ・ガンバ)

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国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。上野学園中学校・高等学校、国立音楽大学非常勤講師。

  

飯塚 正己(コントラバス)

学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典、大黒屋宏昌の各氏より指導を受け演奏を続けている。アンサンブル山手バロッコメンバー。  

野口詩歩梨(チェンバロ)

 

桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業、同大学研究科修了。チェンバロを鍋島元子に師事。これまでに国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。ソロCD「バロックの華」/ワオンレコード(「レコード芸術」誌・準特選盤) 「古楽団あおば」メンバー。

 


アンサンブル山手バロッコ第116回演奏会

 古楽器の響きで味わう

テレマン 食卓の音楽 第1
The Complete Performance of Telemanns Musique de table Premier Production on period instruments

横浜開港記念コンサート
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第129回 

 

 

プログラムノート

(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)

 

 本日は横浜開港記念コンサート「古楽器の響きで味わう テレマン 食卓の音楽 第1集」へお越しいただき、有難うございます。 横浜港と姉妹港の関係にあり、交流を重ねているドイツ・ハンブルク港。このハンブルクの音楽監督として活躍したのが、バロック時代最大の流行作曲家テレマンです。その最高傑作で全3集から成る「食卓の音楽」全曲を演奏するコンサートシリーズを進めています。初回(202165日)には第2集、第2回(2021925日)には第3集をお聴きいただきました。いよいよ完結編の今回は、食卓の音楽 第1集全曲をお聴きいただきます。

 響きの良い神奈川県民ホール小ホールで、横浜とハンブルクとの交流に思いをはせて、様々な組合せ・趣向で味わう音楽のひととき。 会場を往時の劇場や貴族の館に見立てて、当時の楽器の響きでコンサートを再現します。いにしえの貴族や富裕な市民などをとりこにした世界に、みなさまをご案内いたしましょう。

♪  ♪  ♪

テレマンと市民音楽 

 テレマン(1681-1767は、ドイツのエアフルト近郊に生まれました。テレマン家は大学で学び教会関係に勤める教養のある家柄に生まれ、音楽一家ではありませんでしたが、テレマンは若くから音楽の才能に恵まれ、独学で音楽を修めました。1701年ライプツィヒ大学に入ると、教会のカンタータを作曲し始め、学生オーケストラ「コレギウム・ムジクム」を創設し、市民の人気を博しました。1721年ハンブルクの音楽監督に就任して以来1760年代まで、ドイツで最も有名かつ影響力のある音楽家になりました。台頭した市民階級の音楽需要を満たすために市民音楽会や家庭音楽会が多く開かれるようになりましたが、テレマンは、その機会に望まれるあらゆる組み合せの楽曲を作曲し、自ら楽譜出版を手がけ財を成しました(バッハも購入者として記録が残っています。) バッハとの親交も厚く、バッハの次男カール・フィリップ・エマニュエルの名付け親にもなるほどで、ハンブルクで亡くなった後には、当地の音楽監督のバトンをこのエマニュエル・バッハに渡すことになります。

 

 

食卓の音楽

 テレマンは、台頭した市民階級のために、楽譜出版という新たな商売を開始して成功した作曲家として有名です。1720年代にスタートした自費および公認の出版は、1765年まで続き、生涯で60以上の曲集の出版譜を世に送り出しました。テレマンは、楽譜の出版を企画し、作曲から、銅板に楽譜を彫る作業や宣伝までも自ら行い、流行の先端を行く音楽を提供することで、欧州中に知れ渡る作曲家となりました。

 「食卓の音楽」とは、ルネサンス時代からバロック時代に至るまで、貴族や富豪の邸宅での会食の際に、楽師たちによって楽しみのために演奏される音楽のことを意味します。1733年に出版したテレマンの「食卓の音楽」の企画は、饗宴の音楽を提供するというよりも、その時点での自信作を、バラエティに富んだ器楽曲集に編み、同時に購買者の注目を引く名称「食卓の音楽」を採用したと考えられています。

 テレマンの狙いは大成功し、3つの曲集から成る大作の「食卓の音楽」は206人の予約出版の申し込みがありました。うち、55人はドイツ以外(33人はフランス)と購入の拡がりが良く分かります。購入者のなかには、ロンドンのヘンデル、ドイツのクヴァンツピゼンデルのような有名な音楽家の名前も含まれています。バッハはこの曲集は申し込んでいませんが、5年後の1738年に出版されたパリ四重奏曲集を申し込み購入しました。ライプツィヒのコレギウム・ムジクムなどの市民音楽の機会にバッハも演奏したのではないかと考えられています。

テレマンの「食卓の音楽」の第1集から第3集にはそれぞれ、フランス風序曲から始まる「組曲」、得意分野でもある「四重奏曲」に続いて、「協奏曲」「トリオ・ソナタ」「ソロソナタ」と続いて最初の序曲と同じ編成による「終曲」の6つの曲で構成されています。多くの楽器を自在に操ったテレマンならではの「弾いて楽しく〜聴いて楽しく」を最高のレベルで提供する曲集であり、どれ一つとして同じ楽器編成はありません。例えば、序曲(組曲)に登場する独奏楽器は、第1集は2本のフルート、第2集はトランペットとオーボエ、第3集は2本のオーボエです。協奏曲も、フルート、ヴァイオリンとチェロ(第1集)、3本のヴァイオリン(第2集)そして2本のホルン(第3集)とバラエティ豊かです。

(一方で、編成が大きな組曲〜最小のソロソナタまで、アンサンブル人数に幅がありますので、現代ではCDなどで聴く以外に、曲集全体を聴く機会がほとんどありません。名曲の多い曲集ですので、その中の曲を選んで(つまみ食い)演奏する機会は多く、わたしたちアンサンブル山手バロッコも何度も演奏してきましたが、全曲(フルコース)で一緒にこの傑作を味わいたいと考えたわけです。

おかげさまで、第2集、第3集のコンサートを開催し、お客様と演奏者と一緒に楽しい時間を共有させていただきました。いよいよ全3集の完結となる第1集全曲演奏を迎えることになりました。)

 

GPh. テレマン(16811767
G
Ph.Telemann

2つのフルート、弦楽合奏と通奏低音のための序曲 ホ短調 TWV 55:e1
Overture (Suite) in
E minor for two flutes, strings and continuo

 

 

序曲 – 喜び –ロンド – ルール – パスピエ - エア - ジーグ
Lentement/Vite/Lentement
Rejouissance Rondeau Lourée - Passepied Air un peu vivement Gigue

 

食卓の音楽の第1集は3つの曲集から成るこの大作の最初を飾る曲集です。多くの曲でフルートが活躍することもあり♯系の曲が多く含まれます。巻頭を飾る序曲(組曲) ホ短調は、当時流行した舞曲を組み合わせた楽曲です。現在は管弦楽組曲と呼ばれています。フランスで活躍した大作曲家リュリのオペラの序曲と舞曲を起源を持つ管楽器と弦楽合奏、通奏低音からなる合奏曲です。当時は冒頭に置かれるフランス風序曲にちなんで組曲全体を序曲(Overture)と呼んでいました。この曲は、2本のフルートと弦楽合奏という編成で、テレマンは「序曲(Overture)」と記載しています。独奏楽器として、フルート、ヴァイオリンとチェロ(ヴィオラ・ダ・ガンバとファゴットで演奏)が序曲や舞曲の中間部分で活躍します。

 

GPh. テレマン(16811767
G
Ph.Telemann

2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 変ホ長調 TWV 42:Es1
Trio in E-flat major for two violins and continuo

  アフェトゥオーソ – ヴィヴァーチェ – グラーヴェ - アレグロ
Affetuoso
Vivace Grave Allegro 

2つのヴィオリンと通奏低音のためのソナタ 変ホ長調は、管楽器が活躍する曲集のなかで弦楽器だけの構成で、曲も♭系の暖かな調性を採用しており、対比が見事です。通奏低音に支えられた2つのヴァイオリンが、ある時はカノン風に追いかけあい、ある時は同じ動きでメロディを奏でるなど、きわめて完成度の高い緻密な作品となっています。

 

GPh. テレマン
G
Ph.Telemann

フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための四重奏曲 ト長調 TWV 43:G2
Quartet in G major for flute, oboe, violin and continuo

ラルゴ/アレグロ – ヴィヴァーチェ/モデラート –グラーヴェ – ヴィヴァーチェ
Largo/Allegro
Vivace/Moderato Grave Vivace 

フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための四重奏曲 ト長調は、3つの異なった高音楽器と通奏低音のために書かかれています。それぞれの楽器の特長が生かされた名曲で、単独で演奏されることも多い曲です。緩やかに3つの楽器の音色が重なり合う第1楽章に続いて、第2楽章でオーボエが協奏曲の独奏のように、フルートとヴァイオリンを従えて活躍します。この楽章では中間部でロ短調に転じます。同じくロ短調の短い第3楽章に続いて舞曲風の軽快な第4楽章が演奏されます。

 

GPh. テレマン
G
Ph.Telemann

フルートと通奏低音のためのソナタ ロ短調 TWV 41:h4
Sonata in B minor for flute and continuo

カンタービレ – アレグロ – ドルチェ - アレグロ
Cantabile
Allegro Dolce Allegro

フルートと通奏低音のためのソナタ ロ短調は、しっかりとした構成を持つだけでなく、フルートならではの妙技もあらわれる、バロック時代のフルートソナタの名作です。第1楽章は、低がメロディを奏で、それにフルートが重なって緻密な音楽を響かせます。第2楽章では、快活なフルートの主題から始まり、随所に当時流行したロンバルディア・リズムを散りばめ軽やかに続きます。大きな表現力を求められる緩やかな第 3 楽章に続き、最終楽章は、ジーグのリズムに乗ってフルートが駆けめぐり華やかに曲を閉じます。

 

GPh. テレマン(16811767
G
Ph.Telemann

フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲 イ長調 TWV 53:A2
Concerto in A major for flute, violin, Viola da gamba, strings and continuo

ラルゴ –アレグロ – グラチオーソ – アレグロ
Largo
Allegro Gratioso Allegro

フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲 イ長調は、2つの独奏楽器に加えてヴィオラ・ダ・ガンバ(テレマンの指定はチェロ)もしばしば独奏に加わります。協奏曲にしては珍しく、すべての楽章が同じ調(イ長調)で統一されていますが、速いテンポの第2楽章と第4楽章では短調の部分が挟み込まれており、独奏楽器がもの悲しい調べを奏でます。なお、食卓の音楽の楽譜はヘンデルも購入しており、自身の合奏協奏曲「アレクサンダーの饗宴」にこの曲の第4楽章の主題が転用されています。 

         

 

GPh. テレマン
G
Ph.Telemann

2つのフルート、弦楽合奏と通奏低音のための終曲 ホ短調 TWV 50:5
Conclusion in E minor for two flutes, strings and continuo

アレグロ/ラルゴ/アレグロ
Allegro / Largo / Allegro
 

終曲は、最初の序曲と同じ編成の予告されたアンコールのような曲です。2つのフルートが再び華やかに活躍し、弦楽で演奏されるゆっくりとした中間部を経て最初の速い部分に戻り、食卓の音楽の曲集を締めくくります。

 

アンコール

たくさんの拍手をいただきましたので、最初に演奏した組曲からロンドをアンコールとして全員で演奏しました。ありがとうございました。

 

参考文献:

1J.Rifkin u.a. / North European Baroque Masters Telemann (W.W.Norton & Company, 1985)

2) S.Zohn / Music for a Mixed Taste Style, Genre, and Meaning in Telemanns Instrumental Works  (Oxford University Press, 2008)

その他、これまでの演奏会のプログラムノートやCD解説などを参考にいたしました。    

 

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