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109th Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第109回演奏会
 

西洋館で味わう

〜バロックの家庭音楽 II

House music in Baroque era 

 “洋館で親しむバロック音楽”第119

 

2022716日(土) 15時開演(1430分開場) 横浜市イギリス館(横浜市中区山手町115−3)
15:00
 16th July. 2022 at British house Yokohama

主催:アンサンブル山手バロッコ  

 

出演

 

野口詩歩梨(チェンバロ)

桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業、同大学研究科修了。チェンバロを鍋島元子、アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。クイケン兄弟やL.U.モルテンセン氏などのレッスンを受ける。これまでにM.ラリュー、F.アーヨ、中野哲也 など国内外の数々の音楽家や室内オーケストラと共演。“音の輝きをもとめて”と題したリサイタルシリーズやアンサンブル“ブラヴォー!バロック”のコンサートでは、チェンバロのソロ楽器としての可能性やアンサンブルにおける新たな存在感を示し、各方面より高い評価を得る。ソロCD「バロックの華」/ワオンレコード(「レコード芸術」誌・準特選盤)

 

曽禰 愛子(メゾソプラノ) 

鹿児島国際大学短期大学部音楽科、同専攻科卒業。洗足学園音楽大学大学院 音楽研究科修了。第32回国際古楽コンクール〈山梨〉ファイナリスト。スイス・バーゼル・スコラ・カントルムにてBachelor及びMasterを修了。幅広い時代の作品をレパートリーとし、ソリストおよび声楽アンサンブルメンバーとして活動しており、ヨーロッパ各地でのコンサートに参加。声楽を川上勝功、ウーヴェ・ハイルマン、ゲルト・テュルク、ローザ・ドミンゲスの各氏に師事。

 

曽禰 寛純(クラシカル・フルート)

昭和音楽大学管弦打楽器科卒。卒業後は音楽出版社勤務の傍ら研鑽を続け、モダンフルートを岩花秀文氏、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。バロックアンサンブル『ラ・クール・ミュジカル』主宰。

 

曽禰 寛純(クラシカル・フルート)

フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

 

小林 美耶子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

北鎌倉女子学園中学校音楽コース、同高等学校音楽科卒業。国立音楽大学音楽文化教育学科音楽情報専修卒業。大学在学時よりヴィオラ・ダ・ガンバを坪田一子氏に師事。現在、国立音楽大学西洋古楽コースにて古楽アンサンブルの研鑽中。クラシック音楽Webメディア「おとペディア」編集部メンバーとしても活動。

 


 

 

アンサンブル山手バロッコ第109回演奏会
 

 西洋館で味わう

〜バロックの家庭音楽 II

House music in Baroque era vol.II

 “洋館で親しむバロック音楽”第119

 

プログラムノート

(野口詩歩梨、曽禰寛純)

横浜市イギリス館は、1937年に英国総領事公邸として建設された由緒ある建物で、広々としたテラスで芝生の庭につながっている素晴らしい客間を備えていました。このイギリス館に、女流チェンバロ奏者、野口詩歩梨さんを迎え、メゾソプラノの曽禰愛子さんと、アンサンブル山手バロッコの器楽メンバーと共に、当時の各国の家庭音楽会の雰囲気を味わいます。

♪  ♪  ♪

 

G.B.サンマルティーニ
G.B.Sammartini
16951750

2本のフルートと通奏低音のためのソナタ へ長調
Sonata for two Flutes and Basso continuo in F-Major

アレグロ - アダージョ - アレグロ
Allegro - Adagio
Allegro

ジュゼッペ・バルダッサーレ・サンマルティーニ16951750)は、イタリアの作曲家、オーボエ奏者で、音楽家一家に生まれました。ミラノでの音楽活動を経て、1728年にロンドンに渡り、オーボエの名手として有名になり作曲家や貴族の音楽教師としても活躍し、亡くなるまでこの地で活動しました。 演奏する2本のフルートと通奏低音のためソナタ ヘ長調は、この編成の12曲のセットとしてロンドンで出版されたものです。音楽家を雇い、音楽を消費する大都市ロンドンの愛好家に好まれた、イタリアの協奏曲やソナタの曲集の出版の1つです。曲は、はやいーゆっくりーはやいの3つの楽章からなり、分かりやすい形式の中に、スパイスの効いた部分が隠されています。

 

H.パーセル
H.Purcell (1659 - 1695)

組曲 イ短調 Z.663より アルマンド、 “バラの花より甘く” Z.585
Almand from Suite in a-minor Z.663 and
Sweeter than Roses

ヘンリー・パーセル (16591695)は、イギリス音楽史上最大の作曲家です。宮廷楽団の作曲家、ウエストミンスター寺院や王室礼拝堂のオルガニストを歴任し、王室向けの追悼音楽や祝典音楽も作曲するなど、まさにイギリス音楽界のあらゆる重要な地位を獲得しましたが、働き盛りの30代半ばで夭折しました。自由奔放、不規則なフレージング、拍子とリズムの衝突など、情熱に身をまかせるような作風であるとともに、幼少時に学んだエリザベス朝時代の音楽家たちの様式とイタリア、フランス音楽の構成を取り入れ、独自の輝かしい個性を確立していきました。チェンバロソロのための組曲は全8曲あり、すべてアン王女に捧げられています。歌への序奏としてイ短調の組曲のアルマンドを演奏します。続けて歌われる「ばらの花よりも甘く」ノートンの戯曲≪パウサニアスまたは祖国を裏切るもの≫で歌われる曲で、静かに始まりますが、後半は勝ち誇る恋をファンファーレのように歌い上げます。

 

J.B.ボワモルティエ
J.B.Boismortier
1691-1755

フルートとチェンバロのためのソナタ ト短調 作品91-2
Sonata for Flute and Cembalo in g-minor Op91-2

快活に - 優雅に  - 快活に 
Gayement - Gracieusement
Gayement

ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ1691-1755)はフランスの作曲家です。オペラバレー、カンタータなどの大きな作品から、室内楽や無伴奏のソロ、デュエット、トリオなど数多くの作品を作曲し、出版し、成功しました。100作品以上の出版をした多作家としても有名でした。演奏するト短調のオブリガートチェンバロとフルートのためのソナタを含む6曲から成る曲集(作品91は、フルートとチェンバロの右手が協奏的に競い合うソナタ・協奏曲というイタリア由来の形式に、フランスらしい舞曲や明暗のニュアンスを加えたもので、1740年代の初めにパリで出版された、フランスで初めてフルートと独奏チェンバロの構成としても知られています。曲は、イタリアの協奏曲風に始まる第1楽章、フランスらしい揺らぎをもった第2楽章、そして舞曲風の快活な第3楽章の3つの楽章から構成されています。

 

 

C.P.E.バッハ
C.P.E.Bach
17141788

2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ト長調 Wq.153
Sonata for two flutes and Basso contiuo in G-Major Wq.153

アンダンテ - アレグレット - アレグロ
Andante - Allegretto
Allegro

カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ17141788)は、大バッハの次男で、ベルリンのバッハ、ハンブルクのバッハと呼ばれ、バロック時代とハイドンモーツアルトの時代との橋渡しをした重要な作曲家です。1738年に父のもとを離れ、ベルリンのフリードリヒ大王の宮廷の鍵盤奏者として仕えたのち、1767年に、父バッハと親交があり自身の名付け親でもあったテレマンの後任として、ハンブルク市の音楽監督に就任し、父親をしのぐ名声を手に入れました。本日演奏する2つの旋律楽器と通奏低音の編成(Wq.153と、フルートとオブリガート・チェンバロ(右手で旋律、左手で低音)の編成の(Wq.86)2つが残されていますが、ベルリンで1755年に作曲され、ベルリンの宮廷で好まれた、ゆっくり、はやい、はやいの3つの楽章から構成されています。初めに作曲されたのは、フルートとヴァイオリンと通奏低音のための編成で、本日はヴァイオリンのパートをフルートで演奏します。ト長調の幸せな響きが全曲を通じて感じられ、楽章ごとの拍子やテンポの変化も楽しめる佳曲だと思います。

 

P.D.フィリドール
P.D.Philidor  (1681
1731)

2本のフルートのための組曲 第11番 ホ短調 作品3-11
Suite for two flutes in e-minor Op.3-11

コントルフェズールによるロンド - アルマンド - サラバンドによるアリア- ガヴォット - フーガ
Rondeau en contrefaiseurs - Allemande - Air en sarabande - Gavotte
Fugue

ピエール・ダニカン・フィリドール(1681 1731)は、フランスの管楽器演奏家の一族の一員で、1697年から1704年に王立礼拝堂の大王厩舎の楽団で、オーボエとヴァイオリンを務め、4年後に王宮の楽団プチ・ヴァイオロンに加わり、フランソワ・クープランマラン・マレの同僚として活躍しました。演奏する2本のフルートのための組曲は、1718年にパリで出版された曲集に含まれています。この楽器のための初期のデュエットの1つで、組曲の5つの楽章には、フランス趣味の装飾が書き込まれています。(当時フランスで使われていた楽器を元にしたフルートで演奏しますので、他の曲で使用するA415Hzのバロックピッチより更に半音低い、A=392Hzのピッチで演奏します。)

 

J.-H. ダングルベール
Jean-Henri d'Anglebert (1629
1691)

組曲 ト短調
Suite in g-minor

プレリュード - アルマンド - クーラント - 2クーラント- サラバンド - ジーグ
Prelude - Allemande - Courante
Courante - Deuxième Courante Sarabande Gigue

ジャン・アンリ・ダングルベール(16291691)は、17世紀後半のフランスバロック音楽全盛期にパリで活躍した作曲家、鍵盤楽器奏者です。1662年にはルイ14世のヴェルサイユ宮殿のクラヴサン(チェンバロ)奏者に任命されました。宮殿ではジャン=バティスト・リュリ(16321687)と親交があり、彼のオペラやバレー音楽をクラヴサン用に編曲しています。

本日は1689年に出版された『クラヴサン曲集』に収められているト短調の組曲より、6つの楽章を選んで演奏いたします。拍節感のない自由なプレリュードの後、アルマンド(4/4拍子)、クーラント 、第2クーラント(共に6/4拍子)、サラバンド(3/4拍子)、ジーグ(12/8拍子)の舞曲が続く構成です。蔦が絡み合うような独特の装飾が各所に散りばめられた作品を、当時のヴェルサイユ宮殿の中にタイムスリップした気分でお楽しみいただきたいと思います。

 

J.S.バッハ
J.S.Bach
16851750

カンタータ《急げ、渦巻く風ども》BWV201よりアリア 「やる気はいっぱいでも」
Aria
 ”Aufgeblasne Hitze from Cantata "Geschwinde, geschwinde, ihr wirbelnden Winde" BWV201

ヨハン・セバスティアン・バッハ16851750)は、ドイツの音楽一族の家系に生まれ、その一生をドイツの国内で送りました。音楽家としてのスタートは宮廷楽団員でしたが、教会オルガニストとしてその経歴を積み、いくつかの宮廷の楽長を経験し、1723年には、商業都市ライプチッヒの音楽監督に就任し亡くなるまでここで活動し、就任直後から、毎週の礼拝で演奏される教会カンタータの作曲・演奏に精力的に取り組みました。また、1729年には、ライプチッヒ大学の音楽愛好家を中心とした市民のための演奏団体コレギウム・ムジクムの指揮者に就任し、広く知られるコンサート・演奏団体に育て上げました。ここでは、バッハ独奏によるチェンバロ協奏曲をはじめとした器楽曲や音楽劇(ドラマ・ペル・ムジカ)と名付けられた世俗カンタータが数多く演奏されました。

1729年に作曲された世俗カンタータ《急げ、渦巻く風ども(フェーブスとパンの争い)》は、自筆譜に「音楽劇」という記載があるように、神話上の神々が登場して物語を進めるものです。故事にちなんで歌合戦を繰り広げる2人(新しいギャラントで分かりやすい音楽を歌う牧神パンと伝統的で高度な音楽を歌う太陽神フェーブス(アポロン)を通じて、バッハ自身の音楽観を示した作品としても知られています。演奏するアルトのアリアは、商業の神でライプツィヒの守護神でもあるメルクリウスが、フェーブスを擁護するものです。「やる気があっても知恵がなければ」良い音楽にはならないことを、舞曲風な様式のなかに、2本のフルート、アルトと通奏低音の四重奏曲のような凝った曲として表現しています。ここでのアルト声部は、バッハの曲の中でもとりわけ器楽的・技巧的に書かれています。

 

たくさんの拍手をいただきましたので

J.S.バッハマニフィカート BWV243より、Esurientes implevit bonis(飢えた者たちを良い物で満たし)をお聴きいただきます

ありがとうございました。

 

参考文献

1) 礒山雅・小林義武・鳴海史生/バッハ事典(東京書籍、1996年)

2) C.ヴォルフ, T.コープマン/バッハ=カンタータの世界II 世俗カンタータ(東京書籍、2001

3) C.Wolff/The New Grove BACH FAMILY, Norton & Company1983

4) J.Westrup/Henry Purcell in The New Grove North European Baroque Masters, Norton & Company1985

5) G.Braun/J.B.de Boismortier Six Sonatas for Flute and Harpshichord Op.91,Universal Edition(1984)

 

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