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104th Concert
三つの古楽器とチェンバロで味わうバロック音楽-II
「短調の魅力」
Baroque Ensemble Music with
Three Melody Instruments and Cembalo Vol.2 “Master Pieces in minor mode”
“洋館で親しむバロック音楽”第113回
2021年11月23日(祝) 14時開演 横浜市イギリス館(横浜市中区山手町115-3)
14:00 23rd Oct 2021 at British house Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコ
出演
坪田 一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
国立音楽大学楽理学科卒業。在学中よりヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。ベルギーでヴィーラント・クイケン氏、ポルトガルでパオロ・パンドルフォ氏のマスタークラスに参加。ヨーロッパの中世からルネサンス・バロック音楽まで、アンサンブルを中心に演奏活動をしている。上野学園中学校・高等学校、国立音楽大学非常勤講師。
曽禰 寛純(フラウト・トラヴェルソ)
フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年に朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。
角田 幹夫(バロック・ヴァイオリン)
慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得。現在、カメラータ・ムジカーレ同人、NHKフレンドシップ管弦楽団団員。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
和田 章(チェンバロ)
小林道夫氏にチェンバロを師事。慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。
アンサンブル山手バロッコ第104回演奏会
三つの古楽器とチェンバロで味わうバロック音楽-II
「短調の魅力」
Baroque Ensemble Music with Three Melody Instruments and
Cembalo Vol.2 “Master Pieces in minor mode”
“洋館で親しむバロック音楽”第113回
プログラムノート
(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)
ようこそいらっしゃいました。西洋館サロンでバロック音楽をご一緒に味わいたいと思います。「三つの古楽器とチェンバロで味わうバロック音楽」というタイトルは、本日登場する3つの旋律楽器(フラウト・トラヴェルソ、バロック・ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ)それぞれの個性を聴いていただき、またあらゆる楽器を包み込みアンサンブルを支えるチェンバロの不思議な力を聴いていただきたいということで付けました。3月に開催したところ良い評価をいただき、同じメンバーでコンサートを再びというリクエストをいただきました。
今回も「西洋館で出演者が楽しんで、お客様も楽しんで・・」という朝岡聡さんの山手バロッコ創設時のコンセプトに従って(?)、ドイツとフランスの作曲家のバロックからロココにかけての濃い曲目を集めて演奏します。演奏する曲の候補の相談で、選んだ曲がすべて短調、しかも3曲はト短調・・・でしたが、選曲を優先し「短調の魅力」として進めることにしました。
♪ ♪ ♪
G.P.テレマン(1681−1767)
G.P.Telemann
フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための四重奏曲 ト短調 パリ(ハンブルク)四重奏曲 ソナタ第2番 TWV.43:g1
Quartet in g minor for Flute,
Violin,Viola da gamba and Basso continuo from “6 Quadri" TWV.43:g1
アンダンテ - アレグロ – ラルゴ - アレグロ
Andante –
Allegro – Largo – Allegro
テレマンはドイツのマクデブルクに生まれ、幼少のときから多くの楽器を演奏する楽才に恵まれていました。20歳の時には、ライプチヒの大学に入学し法学を学びますが、大学でコレギウム・ムジクム(学生を中心とした演奏団体)を組織し活動をはじめ評判を呼びました。卒業後は音楽家として活躍をはじめ、アイゼナッハやフランクフルトの宮廷楽長を経験した後、1721年、40歳の時に、現在では横浜港と姉妹港であるハンブルク港を持つ商業都市ハンブルクの音楽監督に就任し、生涯その地で精力的な音楽活動を続けました。テレマンは、当時ヨーロッパ中に知られた最も有名な作曲家となり、あらゆるジャンルの大変な数の曲を残していますが、本日はその中でも彼の得意とした3つの旋律楽器と通奏低音を組み合わせた四重奏曲をお聴きいただきます。
1730年に出版した「6つの四重奏曲」は、今日では「ハンブルク四重奏曲集」または「パリ四重奏曲集」と呼ばれています。当時の音楽に関する関心事は、イタリア趣味とフランス趣味の優劣でしたが、テレマンは両者の融合こそが最高の音楽を生み出すことをこの作品で示そうとしました。曲集の評判は上々で、気位の高いパリの音楽界も唸らせ、1736年にはフランス語のタイトルを付けてパリでも出版されました。そして翌年、パリの一流の音楽家たちがテレマンをパリへ招待し、テレマンは、さらに新しく6曲の四重奏曲を共演し大評判となったのです。本日は、この1730年に出版された四重奏曲集から
ソナタ第2番 ト短調を演奏します。ゆっくり-速い-ゆっくり-速いの4つの楽章で構成され、全ての楽章でフルート、ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバが旋律楽器として活躍し、チェンバロが通奏低音で支えます。
C.P.E.バッハ(1714−1788)
C.P.E.Bach
フルート、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ短調 Wq. 145, H. 569
Sonata for Flute, Violin and Basso
continuo in d minor Wq. 145, H. 569
アレグレット - ラルゴ - アレグロ
Allegret- Largo – Allegro
次に演奏するフルート、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ短調を作曲した、カール・フィリップ・エマニュエル(C.P.E.)バッハは、大バッハの次男で、ベルリンのバッハ、ハンブルクのバッハと呼ばれ、バロック時代とハイドンやモーツアルトの活躍した古典派との橋渡しをした重要な作曲家です。エマニュエル・バッハは、父バッハと親交があり自身の名付け親でもあったテレマンの後任としてハンブルク市の音楽監督に就任し、父親をしのぐ名声を手に入れました。 この曲は、もともとは親元にいた17歳頃の作品で、バッハ家の家庭音楽の場やコーヒーハウスの音楽会で演奏されたようですが、エマニュエルは、父のもとから自立した後に初期の作品は焼き捨てたり、大幅な改作をしたりしていますので、1747年の手稿譜の形で残っているこの曲は、フルート好きの王様(プロシアのフリードリヒ大王)に仕えた後年の趣味を色濃く表した改作とも考えられています。
3つの楽章とも、歌うような旋律や急激な気分の変化など、新しい時代の息吹を感じさせる一方で、第2楽章の低音の動きなど、父親を思い起こさせる部分もある佳品に仕上がっています。
J.S.バッハ (1685-1750)
J.S.Bach
ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1029
Sonata for Viola da Gamba and Cembalo in
g minor BWV1029
ヴィヴァーチェ - アダージョ - アレグロ
Vivace - Adagio – Allegro
バロック時代には、2つの旋律楽器と通奏低音のためのソナタ(トリオ・ソナタ)が、大変好まれ数多く作曲・演奏されました。ヨハン・セバスチャン・バッハはこのジャンルに新しい構成を開拓し貢献しました。それは、2人で演奏するトリオです。旋律楽器と旋律と低音を同時に担当するチェンバロで3つの声部を演奏するトリオソナタです。6曲から成なヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集がその代表曲ですが、フルートとチェンバロ、そして本日演奏するヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの編成の曲も残しています。バッハのヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタは3曲が残されていますが、1曲(ト長調)がライプチヒ時代の自筆譜が残されている以外は、バッハの死後の筆写譜で伝えられているため作曲の経緯や時期は明確でありません。長く(ヴィオラ・ダ・ガンバを愛好した領主のいた)ケーテン宮廷の楽長時代の作とされていましたが、資料的な裏付けもなく、今では、ライプチヒでの活動に関連して作曲されたとも考えられています。演奏するト短調のソナタは、3曲中でただひとつ、協奏曲の原理を室内楽に取り入れた意欲作であり、たいへん入念に書かれ、バッハ特有の雰囲気を明確に持っているので、バッハの室内楽の中でも名曲として親しまれています。曲は4楽章構成の第1番、2番とは異なって、バロック時代の協奏曲の定番である3楽章構成、つまり、速い(ヴィヴァーチェ)−ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)の三つの楽章からなります。第1楽章はブランデンブルク協奏曲を思わせるような快活なメロディで始まります。穏やかな2楽章が続き、最後は力強いテーマとカンタービレのテーマが交互に登場する充実した第3楽章で締めくくられます。
J-M.ルクレール(1697-1764)
J-M.Leclair
組曲 ト短調 「音楽の愉しみ 第2集」 作品8
Deuxieme Recreation OP.8
序曲 - フォルラーヌ - サラバンド - メヌエットI/II - バディナージュ(戯れ) - シャコンヌ - タンブーランI/II
Ouverture - Forlane - Sarabande - Menuet/autre/Menuet - Badinage -
Chaconne - Tambourin/autre/Tambourin
ルクレールはフランスのヴァイオリニスト、作曲家です。彼はルイ15世の宮廷音楽家、舞踏家としても活躍し、それに相応しい、素晴らしい伝統的な組曲を書き上げました。それが「音楽の愉しみ 第1集」 作品6 (1736年)と「音楽の愉しみ 第2集」作品8 (1737年)です。第2集はフルートまたはヴァイオリンの2つの旋律楽器と通奏低音のトリオ(ソナタ)の編成による舞曲からなる構築力のある作品で、組曲というフランス様式の枠組みを用いながらも独特の世界を描く、当時のフランスとしては画期的な曲で、序曲から始まり、壮大なシャコンヌを経て、タンブーランで終わります。
表: このコンサートに登場する音楽家、作品と世の中の出来事
アンコール
たくさんの拍手をいただきましたので
J.P.ラモーの合奏用クラヴサン曲集より、タンブーランをお聴きいただきます。
ありがとうございました。
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