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アンサンブル山手バロッコ 第6回演奏会
6th Concert
第6回 2001年9月23日(日) 14時開演 横浜 山手234番館 2Fレクチャールーム
pm2:00 23 Sept. 2001, Yamate 234 House
「古楽器で探る笛の響き」
"Sound of Flutes"
出演 EnsembleYamate-Barocco
朝岡聡Satoshi Asaoka: お話&リコーダー
Recorder
山本勉:アルトリコーダーRecorder、ヴォイス・フルートVoice
Flute
曽禰寛純Hirozumi Sone: フラウト・トラヴェルソ
Flauto Traverso
角田幹夫Mikio Tsunoda:
バロック・ヴィオラ Baroque Viola, ヴィオラ・ダ・ガンバ
Viola da gamba
和田章 Aquilla Wada: チェンバロ
Cembalo
「古楽器で探る笛の響き」
"Sound of Flutes"
アンサンブル山手バロッコ234の第6回演奏会にようこそおいで頂きました。今回は「古楽器で探る笛の響き」と題してバロック時代の縦笛(リコーダー)と横笛(フラウト・トラヴェルソ)をフィーチャーして、バロック時代の楽器と当時の楽器を忠実に再現した楽器(これらをオリジナル楽器とも言います)を組み合わせ、当時のスタイルでお届けします。
本日は、リコーダー、フラウト・トラヴェルソ、バロック・ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロをお聞き頂きます。
本日のメインの縦笛:リコーダーは、ルネサンスからバロックにかけて、最も重要な管楽器として、高音(小)から低音(大)まで、独奏から合奏まで広く使われました。特にバロックの初期から中期にかけては、フルートと言えばこのリコーダーを指すくらい、職業演奏家にも、王侯貴族などの愛好家にももてはやされた存在でした。バロック時代はこの楽器の完成を見た時代です。全ての穴をふさいで出す最低音が「ファ(F)」のF管のアルト・リコーダーが独奏楽器として活躍しました。本日の演奏では、このF管に加えて、最低音が当時のフルートと同じレ(D)の音であるヴォイス・フルートも使用します。このヴォイス・フルートは、人間の声に近い甘い音色が出ますので、声楽と器楽を組み合わせを好むフランスで特に好まれました。
さて、もう一つの主役、横笛:フラウト・トラヴェルソはバロック時代のフルート。キーを1つ持つ以外は、指でふさぐ穴が空いているだけで、現代のフルートに比べ他の楽器とよく溶け合う響きを持っています。特に17世紀の終わりに、フランスの楽器製作・演奏家のオットテールが、改良し、独奏楽器としての機能を確立したあとは、表現力を拡大したことや、フランスやドイツの名人が輩出したこともあり、貴族や愛好家の間で広く使用されるようになり、その後の(モーツアルトなど)古典派時代にはフルートと言えば横笛を指すようにまでなりました。本日の演奏曲目はちょうど縦と横の笛が対等に共存した時代の曲目を選んでいますので、それぞれの音色をお楽しみ頂けると思います。
バロック・ヴィオラは、羊の腸(ガット)の弦を文字通り弓型になったバロックボウ(弓)で演奏し、現代のヴィオラ比べ軽やかで響き合いやすい音がします。
ヴィオラ・ダ・ガンバはバロック初期まで弦楽器の王様の座を得ていた楽器で、大小各種のサイズがありました。そのうちで後期バロックまで生き残ったのは、チェロと同じ大きさの低音を受け持つこの楽器ヴィオラ・ダ・ガンバです。
チェンバロは古典派の時代にピアノ(ピアノフォルテ)登場までは鍵盤楽器の中心として、長く独奏・合奏に使われました。弦を鳥の羽茎ではじく独特の音色や複数の弦を切り替える音色の変化も当時の趣味に合致していました。
曲目解説
ヨハン・フリードリッヒ・ファッシュ(1688~1758) / フルート、2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタ ト長調
J.F.Fasch/ Sonata for Flute, two Recorders and
Basso continuo G-major
アンダンテ - アレグロ - アフェトゥオーソ - アレグロ
ファッシュは、1688年生まれのドイツの作曲家。ライプチッヒで、大作曲家のクーナウに音楽を学び、プラハやドイツ(ゼルブスト)の宮廷音楽家として活躍しました。その実力は、敗れたとはいえ、ライプチッヒの音楽監督のポストをバッハと競ったほどでした。この曲の作曲の年代や目的は不明ですが、おそらく宮廷での演奏会用に作曲されたと考えられています。曲は、新進楽器であるフルートを、2本のリコーダーが支えるように書かれており、フルートは協奏曲の独奏楽器のように活躍します。(本日演奏するテレマンの四重奏曲では、逆にリコーダーが協奏曲の独奏のように活躍し、2本のフルートがそれを支えます。)
ヨハン・マッテゾン(1681~1764) / 3本のフルートのためのソナタ ト短調
J.Mattheson / Sonata for three Flutes
g-minor
アンダンテ - アフェトゥオーソ - アレグロ
3本のフルート(通奏低音なし)の為の12のソナタ 作品1(1708 年にアムステルダムで出版)に収められた曲です。マッテゾンは現在では当時の音楽事情を知る上で貴重な音楽学者としての著作により知られていますが、オペラ・宗教曲や器楽曲を数多く作曲しています。この作品は、後にマッテゾン本人が、若い時代には「リコーダーの音より美しいものはないと思っていた」と述べている比較的初期の曲で、第3楽章のシャコンヌ(同じメロディーの低音の上で変奏が繰り返される舞曲)が特徴的です。本日は第3リコーダーのパートはフラウト・トラヴェルソで演奏します。
ヨハン・クリスチャン・カンナビッヒ(1731~1798) / フルートとヴィオラのためのデュエット ハ長調
J.C.Cannabich / Duet for Flute and Violin
C-major
アレグロ・スピリトーソ − バレット(プレスト)
本日の中で一番新しい時代に属するカンナビッヒは、、父親も作曲家およびフルート奏者という環境で育ち、多数の交響曲やバレー音楽を残し、また当時有名であったマンハイムの宮廷オーケストラの指揮者としても活躍しました。 モーツアルトも、父レオポルト・モーツアルトに「カンナビッヒくらい良い友人はいない...今まで、こんな素晴らしい指揮者に出会ったことはない...」などと書き送っています。この曲は、フルートとヴィオラという珍しい編成のためにかかれた6曲のデュエットの5番目の曲で、ロココ風の軽快なメロディーで始まり、高音域のフルートと中音域のヴィオラが対等に掛け合い、軽やかに曲を進めます。2楽章は得意の軽快なダンスの曲想で、中間に短調のエピソードを挟んで始めの楽しいダンスに戻ってから静かに曲が終わります。
ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685~1750) 平均律クラヴィーア曲集 第2巻より 第5番 ニ長調
J.S.Bach / Prelude and Fuga D-major from 2nd
"Well-tempered Clavier"
前奏曲 − フーガ
バッハは、ご存知のようにバロック時代の最大の作曲家ですが、同時にヨーロッパ中にその名を知られた鍵盤楽器の名演奏家であり、多くの弟子(演奏家,作曲家,理論家)を育てた名教師でもありました。特にケーテンの宮廷楽長時代に長男のフリーデマン・バッハの教育を機に、教育と演奏の目的で鍵盤楽器(チェンバロ)のため曲集を作りはじめました。その中でも、オクターブの全ての全音と半音 12音を主調とする「平均律クラヴィーア集」は、斬新な試みとして時代をつくりました。 12音の短調と長調の計24曲からなる曲集をバッハは2巻、計48曲を残し、(後世に音楽の新約聖書とたたえられるベートーベンのピアノソナタとともに)、旧約聖書にたとえられるほどの大作となりました。本日は、2つある曲集のうち第2巻から5曲目のニ長調を演奏します。ライプチッヒのコーヒーハウスでのバッハ指揮の演奏会「コレギウム・ムジクム」でも演奏されたのではないかと考えられていますが、第2番もトランペットのファンファーレを思わせるテーマをつかって堂々たる演奏会作品に仕上げられています。
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681~1767)
2本のフルート、リコーダーと通奏低音のための四重奏曲 ニ短調
G.Ph.Telemann /
Quartett for Recorder, two Flute and
Basso continuo
g-minor from 2nd "Table Music"
アンダンテ − ヴィヴァーチェ − ラルゴ − アレグロ
テレマンの数多い作品の中でも有名な「食卓の音楽」(1733にハンブルクで出版)の第2集に収められた四重奏曲で、縦と横の3本の笛が織りなす響きにテレマンならではの魅力をたたえた名曲です。テレマン自身演奏を得意としたリコーダーによる協奏的名人芸が展開される第2楽章、ポーランド風の野趣に富んだ主題の第4楽章などが特徴的です。本日は第2フルートを同じ音域を持つリコーダー(ヴォイス・フルート)で演奏します。「食卓の音楽」は、超多作家テレマンの器楽曲の集大成とも言える曲集で、無数にある自作の傑作選と考えられています。この四重奏曲についてもフランクフルトで初期稿の存在が確認されており、ベストアルバムに残る名曲としてテレマン自身が選んだものと言えましょう。
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