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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.8

水の都ヴェネツィアから

2011930() 午後7時開演

近江楽堂

 

出演:

クラングレーデ(Klangrede)

クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。

クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。  

------ クラングレーデ(音の言葉)

 

 

国枝俊太郎 (リコーダー、フラウト・トラヴェルソ)

リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてCD録音に参加したり、NHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演。また、ムシカ・フラウタのメンバーとしてもNHK-FM「名曲リサイタル」に出演。現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品やギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、また最近は古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。「ソフィオ・アルモニコ」メンバー。

大山 有里子 (バロック・オーボエ)

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。モダン・オーボエを大嶋弥氏に師事する。卒業後、関西を中心にオーケストラやアンサンブルで、またソロ奏者として活動する。1982年より1993年まで、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心として数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、 バロック・オーボエを始める。その後関東に活動拠点をうつし「アルモニー・アンティーク」等で活動。これまでに各地でオリジナル楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加している。

石川和彦 (ヴァイオリン)

大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プィステー、桐山建志各氏に師事。

永谷 陽子(ファゴット)  賛助出演

 桐朋学園大学卒業。同大学研究科修了。桐朋オーケストラアカデミー修了。ファゴットを浅野高瑛、武井俊樹各氏に、バロックファゴットを堂阪清高氏に師事。モダン・クラシカル・バロック・ファゴット奏者としてオーケストラ、室内楽等で活躍中。

酒井絵美子(チェンバロ)

洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。故 小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。また、オルガンを家喜美子、フォルテピアノを伊藤深雪の両氏にレッスンを受ける。CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年横浜イギリス館、2010年横浜山手234番館にてソロ・リサイタルを開催。現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務めるなど、意欲的に音楽活動を行なっている。


 クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.8

水の都ヴェネツィアから

 

プ ロ グ ラ ム

この度は私どもクラングレーデの第8回公演「水の都ヴェネツィアから」にお越しいただきまして、真にありがとうございます。今回はヴィヴァルディを中心として、彼と同じヴェネツィア出身の作曲家や、イタリアの影響を受けたフランスやドイツの作曲家の作品も一緒にお楽しみいただく事にいたしました。今年は311日の大震災がきっかけで、音楽の持つ意味についていろいろと考えさせられましたが、今晩のコンサートが皆様の心に残るステージになりましたら、メンバー一同嬉しく思います。

 

A.   ヴィヴァルディ:室内協奏曲 ヘ長調 RV 98 「海の嵐」

Antonio Vivaldi(1678-1741): Concerto in Fa maggiore RV 98Tempesta di mare

(Allegro) / Largo / Presto

 

ヴィヴァルディはピエタの孤児院で教えていた時期にたくさんの器楽曲を作曲しましたが、今日取り上げる曲もそうした時期に作曲された物です。「室内協奏曲 ヘ長調 RV 98「海の嵐」」は1730年頃にアムステルダムで出版されたフルート協奏曲集(op.10)に収められた第1番の原曲となった物で、オーボエ・ヴァイオリン・ファゴットを伴った室内楽編成で織りなされる多彩な色彩が感じられます。 それでは、「音によるヴェネツィア旅行」を存分にお楽しみください!

 

G.B.プラッティ:オーボエ、ファゴットと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調

Giovanni Benedetto Platti (ca1700-1763)Triosonate in c-moll

         Adagio / Allegro / (Mesto) / (Allegro)

 

プラッティはヴェネツィア出身の音楽家で、1722年以降はヴュルツブルクで「作曲家、声楽教師」、そして「フルート、オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、チェンバロ、そして必要ならテノール」歌手として活動していました。今で言うところのマルチタレントといった感じでしょうか。「オーボエとファゴットのためのトリオ・ソナタ ハ短調」は、リード楽器の事を熟知していた彼ならではの非常にスリリングな展開が堪能できます。

 

B.マルチェッロ:リコーダーソナタ ハ長調 作品2-6

Benedetto Marcello1686-1739: Sonata in Ut maggiore op.2-6

Adagio / Allegro / Adagio / A Tempo Giusto Vivace

 

B.マルチェッロはヴェネツィアの貴族の家に生まれて、法律家を生業としていました。音楽家としての顔は、彼自身の言葉を借りれば「ディレッタント(アマチュア)」と呼んでいました。「リコーダー・ソナタ ハ長調 op.2-6」は1712年にヴェネツィアで出版された12曲のソナタ集に収められていて、この曲集は1715年にアムステルダムで第2版、そして1732年にはトラヴェルソ用に移調した第3版がロンドンで出版されています。

 

A.ヴィヴァルディ:室内協奏曲 ハ長調 RV 88

Antonio VivaldiConcerto in Ut maggiore RV 88

          Allegro / Largo cantabile / Allegro molto

 

「室内協奏曲 ハ長調RV 88」も(海の嵐と)同じ編成で書かれていますが、「海の嵐」と同様リコーダーとトラヴェルソの使い分けに明確な意図は見られません。

 

*** 休憩 ***

 

J.ボワモルティエ:5声の協奏曲 ホ短調 作品37-6

Joseph Bodin de Boismortier (1689-1755)Concerto à 5 parties en mi mineur op.37-6

Allegro / Adagio / Allegro

 

ボワモルティエはパリで活躍していましたが、この当時としては珍しいフリーランスの音楽家でした。彼はフランス人としてはいち早く協奏曲の様式を取り入れて、フランスとイタリアの様式をうまく混ぜ合わせた独自の世界を作り上げました。「5声の協奏曲 ホ短調」は1732年にパリで出版されたop.37に収められていて、それぞれの楽器が華麗なソロを披露しあう魅力的な逸品です。

 

J.S.バッハ:ヴィヴァルディの原曲によるチェンバロ独奏のための協奏曲 ニ長調 BWV 972Op.3-9RV 230

Johann Sabastian Bach1685-1750):CONCERTO di Vivaldi elaborati di J.S.Bach in Re maggiore BWV 972Op.3-9RV 230

       Allegro / Larghetto / Allegro

 

J.S.バッハは若い頃にヴィヴァルディなどの協奏曲を鍵盤楽器独奏用に編曲しました。この編曲の過程でイタリア様式を学んで、それが後の「イタリア協奏曲(BWV971)」につながります。それらは原曲の魅力を残しつつ、バッハならではの濃厚な旋律の絡みが楽しめるように工夫されています。「協奏曲 ニ長調 BWV 972」は1711年にアムステルダムで出版されたヴィヴァルディの「調和の霊感」(op.3)に収められている第9番の協奏曲が原曲です。

 

A.ヴィヴァルディ:協奏曲集「ラ・ストラヴァガンツァ」より第6番 ト短調 RV 316a

  Antonio Vivaldi: Concerto in Sol minore (La Stravaganza) op.4-6 RV 316a

       Allegro / Largo / Allegro 

 

1715年頃にアムステルダムで出版された「ラ・ストラヴァガンツァ」(op.9)はヴァイオリン・ソロの華麗な妙技が楽しめる曲集ですが、今回はこの中から第6番を我々の編成で演奏出来るようにした「クラングレーデ・バージョン」をお聴きいただきます。このような編曲作業は18世紀当時も普通に行われていたでしょうし、原曲とは一味違った魅力をお楽しみください。

 

 

 

 (国枝俊太郎)

 

 

アンコールはヴィヴァルディの室内コンチェルトト短調 第3楽章でした。ありがとうございました。

 

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