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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.7

横浜イギリス館 バロック・コンサート

薔薇の香りに包まれて

洋館で親しむバロックシリーズ 第19

2011514()

昼の部 午後2時開演(午後130分開場)

夜の部 午後7時開演(午後630分開場)

横浜イギリス館

 

出演:

クラングレーデ(Klangrede)

クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。

クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。  

------ クラングレーデ(音の言葉)

 

昼の部

 

国枝俊太郎 (リコーダー、フラウト・トラヴェルソ)

東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。
これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」などに出演、CD録音にも参加する。 
現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。

 

大山 有里子 (バロック・オーボエ)

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。モダン・オーボエを大嶋弥氏に師事する。卒業後、関西を中心にオーケストラやアンサンブルで、またソロ奏者として活動する。
1982
年より1993年まで、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心として数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。
そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、 バロック・オーボエを始める。これまでに各地でピリオド楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加している。「アルモニー・アンティーク」メンバー。

 

西谷直己(ヴィオラ・ダ・ガンバ) ゲスト

桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業。同大学研究科終了。宇田川貞夫、中野哲也の各氏に師事。オランダ、デン・ハーグ王立音楽院にてヴィオラ・ダ・ガンバを W.クイケン氏に、アンサンブルをクイケン兄弟他に師事。
2000
年、ソリストディプロマを取得し、同音楽院を卒業。帰国後もヨーロッパと日本での演奏活動を積極的に行っている。桐朋学園大学嘱託演奏員

 

金子浩(リュート) ゲスト

桐朋学園大学古楽器科卒業。オランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学し、リュートを佐藤豊彦氏に師事。1996年同音楽院リュート科ソリストディプロマを得て卒業。
93
年ブルージュ国際古楽コンクールに入選。オランダを中心にソロ・コンサート、またコンバティメント・コンソート・アムステルダムの通奏低音奏者として演奏会、レコーディングに参加する。
帰国後、NHKFMリサイタル、名曲リサイタルに出演。バッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏会やレコーディングに参加。また、コンバティメント・コンソートの日本公演ツアーに参加。キングレコードよりCD「ハートランド」をリリース。
独奏、アンサンブル、通奏低音奏者として活動している。洗足学園音楽大学及び上野学園大学非常勤講師。

 

夜の部

石川和彦 (ヴァイオリン)

大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。
フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。
ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プイステー、桐山建志各氏に師事。オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウ ゲストコンサートマスター。

 

酒井絵美子(チェンバロ)

洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。

故 小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。また、オルガンを家喜美子、フォルテピアノを伊藤深雪の両氏にレッスンを受ける。

CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。2009年横浜イギリス館、2010年横浜山手234番館にてソロ・リサイタルを開催。

現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務めるなど、意欲的に音楽活動を行なっている。


 クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.7

横浜イギリス館 バロック・コンサート

薔薇の香りに包まれて

洋館で親しむバロックシリーズ 第19

2011514()

昼の部 午後2時開演(午後130分開場) 横浜イギリス館

ロンドンのサロンにて〜ヘンデルとその周辺〜 

 

プ ロ グ ラ ム

 

G.F.ヘンデル (1685-1759):歌劇「リナルド」序曲 HWV 7

  Georg Friedrich Händel : Overture (Rinaldo HWV 7)

 

 

J.B.レイエ(1680-1730):トリオ・ソナタ へ長調 作品2-2

Jean Baptiste Loeillet : Sonata op.2-2 in F Major

Largo / Allegro / Largo / Allegro (Menuetto)

 

 

 W.バベル:オーボエと通奏低音のためのソナタ 第5番ト長調

  William Babel (c1690-1723) : Sonata X in G Major

Adagio / Vivace / Allegro

 

 

 

G.F.ヘンデル:リコーダーと通奏低音のためのソナタ ト短調 作品1-2 HWV 360

Georg Friedrich Händel : Sonata in G minor op.1-2 HWV 360

Larghetto / Andante / Adagio / Presto

 

T.A.アーン(1710-1778):トリオ・ソナタ 第6番 ロ短調

  Thomas Augustine Arne : Trio Sonata no.6 in B minor

Largo / Allegro / Larghetto / Allegro

 

G.F.ヘンデル:アリア名曲集

Georg Friedrich Händel : Aria from Opera and Oratorio

1.私を泣かせてください(歌劇「リナルド」HWV 7より)

 Lascia ch'io pianga (Rinaldo HWV 7)

2.おお眠りよ、なぜ私から去るの?(オラトリオ「セメレ」HWV 58 より)

 Oh Sleep, why dost thou leave me? (Semele HWV 58)

3.また私を喜ばせに来て(歌劇「アルチーナ」HWV 34より)

 Tornami a vagheggiar (Alcina HWV 34)

 

S.L.ヴァイス(1687-1750):ファンタジー ハ短調、シャコンヌ ト短調

  Silvius Leopold Weiss : Fantasie c-moll, Chaconne g-moll

 

 G.F.ヘンデル:トリオ・ソナタ ト短調 作品2-5 HWV 390a

  Georg Friedrich Händel : Sonata in G minor op.2-5 HWV 390a

        Larghetto-Adagio / Allegro / Adagio / Allegro

 

 

プログラムノート

 

「ロンドンのサロンにて」というタイトルではありますが、この企画を考えるにあたってヘンデルという作曲家を軸にしようと思っていました。とはいっても、ヘンデルはフラウト・トラヴェルソ(またはリコーダー)、オーボエと通奏低音という編成の曲を残していないため、今回は我々でアレンジした物を集めてみました。ちなみに、ヘンデルは41歳のときにイギリスに帰化して名前を英語風に改めました。その名も「ジョージ・フレデリック・ハンデル」です!世界的にも有名な「メサイア」はそんな時期の代表作ですが、このコンサートを通じて「ハレルヤ・コーラス」ばかりではないヘンデルの魅力を発見していただければ嬉しく思います。

イギリスの音楽事情を考えた時、自国の音楽家というのはそれほどいませんでしたが、諸外国から一旗あげるべくロンドンに渡ってきた音楽家はたくさんいました。その意味では、この時代のロンドンの音楽市場は外国人音楽家の存在によって支えられていたといっても過言ではありません。

18世紀のロンドンではたくさんの楽譜が出版されましたが、それらの多くは外国人作曲家による作品でした。1730年代の後半以降にヘンデルによる作品の独占出版権を得るウォルシュという出版業者は、ロンドンで(良い意味でも悪い意味でも)特に有名な存在でした。本日取り上げる作品の多くは、このウォルシュによって出版された物です。

さて、今回はヘンデルのオペラやオラトリオからいくつかのアリアをアレンジして演奏いたしますが、このような行為は18世紀当時から頻繁に行われていたようで、様々な編成での楽譜も出版されていました。劇場で素晴らしいオペラを聴いた後に「あ〜、私もこの曲を演奏してみたいなぁ」という気持ちになった方はたくさんいたのでしょうし、こうしたアレンジ譜はかなりの需要があったに違いありません。ヘンデルの魅力がたっぷり詰まったオペラやオラトリオのアリア、今回のコンサートがきっかけで少しでも多くの方が彼の声楽曲にも興味を持っていただける事を願うばかりです。

先程ロンドンには自国の音楽家がほとんどいなかったと書きましたが、もちろん全くいなかったわけではありませんし、今日はそうした数少ないイギリス人作曲家の作品も取り上げます。オーボエ奏者として活躍しながら、イギリスではいち早くジャーマン・フルート(=フラウト・トラヴェルソ)の作品も残したジョン・レイエ、劇音楽の作曲家としての活動をしつつ、器楽作品も少なからず残したアーン、短い生涯の中で優れた鍵盤楽器演奏によって名声をほしいままにしたバベル、それぞれに独自の世界を作り上げています。彼らの存在は今となっては決して有名ではありませんが、存命中にはそれぞれヘンデルに負けず劣らず知名度がありました。

イギリス館という実に雰囲気のある空間で、お庭の美しい景色を眺めながら、18世紀にロンドンのサロンで催されていたコンサートに思いを馳せながら楽しんでいただけましたら幸いです。普通のコンサートホールで聴く時とは一味違った空気を、この機会に是非ともご堪能ください。

(国枝俊太郎)

 

 

アンコールはヘンデルの合奏協奏曲 op.6-12から Aria(Larghetto e piano)でした。ありがとうございました。

 

夜の部 午後7時開演(午後630分開場)

18世紀の音楽紀行 〜イタリアからボヘミアまで〜 

 

 

プ ロ グ ラ ム

F.A.ボンポルティ:ヴァイオリンと通奏低音のためのインヴェンツィオーネ へ長調 作品10-3

Francesco Antonio Bonporti (1672-1749): Inventione a Violino solo e Basso in Fa maggiore Op.10-3

        Largo / Aria:Allegro ma comodo / Fantasia:Largo / Allegro assai

 

 

F.ベンダ:「44のカプリース」より 第1番 前奏曲 ハ長調、第21番 イ短調

Franz Benda:(1709-1786):Vierundvierzig CapricenNr.1 Prelude C-DurNr.21 a-moll

 

A.コレッリ:ヴァイオリンとヴィオローネ、またはチェンバロのためのソナタ 第7番 二短調 作品5-7

Arcangelo Corelli(1653-1703): Sonata Z a Violino e Violone o Cimbalo in Re minore Op.5-7

        Preludio:Vivace / Corrente:Allegro / Sarabanda:Largo / Giga:Allegro

 

A.ヴィヴァルディ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 第1番ト短調 Op.2-1,RV 27

Antonio Lucio Vivaldi(1678-1741): SonataTper Violino e Basso in Sol minore Op.2-1,RV 27

        Preludio:Andante / Giga:Allegro / Sarabanda:Largo / Corrente Allegro

 

F.ベンダ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 変ロ長調

Franz Benda: Sonate für Violine und Basso continuo B-Dur  

Adagio / Molto Allegro / Presto

 

J.S.バッハ:組曲  へ短調  BWV 823

Johann Sebastian Bach (1685-1750): Suite f-moll BWV823

Prélude / Sarabande en Rondeau / Gigue

 

J.S.バッハ:シンフォニア 第10番 ト長調 BWV 796

Johann Sebastian Bach: Sinfonia Nr.10 G-Dur BWV 796

 

J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV 1021

Johann Sebastian Bach: Sonate für Violine und Basso continuo G-Dur BWV 1021

                Adagio / Vivace / Largo / Presto

 

プログラムノート

 

世界中に情報が瞬時に広がるような時代ではなかった頃、個々の地方や国では、音楽がデジタルではなく、作曲家の足と耳によってさまざまな様式や個性が伝えられ花開きました。17世紀初頭にイタリアに端を発したバロック音楽は18世紀に素晴らしい実を結び、最盛期を迎えます。今宵はそんな18世紀に生きた作曲家達による作品をご紹介していきます。

フランチェスコ・アントニオ・ボンポルティ(1672-1749)はイタリアのトレントで活動したのですが、カトリック司祭とアマチュア(無報酬の)作曲家という異色の経歴の持ち主です。インヴェンツィオーネ作品10は、「創意・工夫」というもともとの意味を持つこの言葉その通りの斬新な曲集になっています。後にJ..バッハが「インヴェンションとシンフォニア」で表題を引用しているだけではなく、チェンバロ曲に編曲までしています。

フランツ・ベンダは本日取り上げる中で一番新しい作曲家(1709-1786,コレッリの56年下)です。ここまで来るともうモーツァルト(1756-1791)と重なってきます。彼はボヘミア(現在のチェコ)の音楽家一族ベンダ家で生まれ、ウィーン、ワルシャワ(ポーランド)で宮廷ヴァイオリニスト、作曲家として活動しました。彼の作品は未出版の物も多く、後半のソナタはドレスデンの図書館にある草稿譜を用います。古典派の匂いが感じられる作品で、随所にヴァイオリニストの彼らしい技巧的なパッセージがちりばめられています。全体的にドイツの内向的な色も垣間見えます。前半演奏するカプリースという表題はパガニーニであまりにも有名ですが、こちらもパガニーニ同様、無伴奏ヴァイオリンの為の技巧的な曲集です。本日はその中から2曲演奏します。

イタリアのアルカンジェロ・コレッリ(1653-1713) は現在まで続くヴァイオリン技術の源流と言うべき人物で「ラ・フォリア」があまりにも有名です。当時から尊敬を一身に集め、ローマやパリ、ドイツの宮廷に呼ばれ、その名声はヨーロッパ全土に広がりました。本日は殆ど弦楽の曲しか書かなかった彼のヴァイオリン・ソナタ集 作品5から7番を取り上げます。奇をてらわない、極めてシンプルな中にイタリアらしい乾いた爽やかさが感じられます。

「四季」で有名なアントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)ですが、189世紀は忘れられた存在でした。彼は500を超える協奏曲の他、ソナタも約70曲書いています。その大部分はカトリック司祭としての職務の傍ら、ヴェネツィアのピエタ慈善院付属音楽院でヴァイオリン、合奏を指導していた頃に書かれたものです。名人芸を誇示する協奏曲に比べ簡素に書かれていますが、ヴァイオリンを熟知した彼らしくシンプルに響くように書かれています。

当時の作曲家は同時代人の音楽を自分のものにする為各地を回って交流を深めましたが、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)は終生ドイツを離れる事はありませんでした。探究心旺盛な彼は、フランス、イタリア音楽の最先端の趣味を吸収する為にいち早く楽譜を手に入れスタイルを自分の物としていきました。本日はチェンバロソロとヴァイオリン・ソナタを演奏します。組曲はヴァイマールの宮廷に仕えていた23歳の頃の若い作品で、ヘ短調という物憂げな調性に当時ドイツの宮廷で流行したフランス舞曲のスタイルが取り入れられています。シンフォニア第10番はピアノ学習者には良く知られた「インヴェンションとシンフォニア」の中の一曲です。長男フリーデマンのクラヴィーア教育の為に書かれた曲で、音符に埋め尽くされた駆け上がるような躍動感があります。最後のソナタは1720年には成立されバッハの手になる真作と考えられていますが、自筆譜が失われている上、バス声部が共通した別のトリオ・ソナタがある為に議論の余地がある曲です。しかし大変美しい作品で流れるような主題から終楽章のフーガまでよく練られた作品です。

本日の演奏によって今回の甚大な震災により、不安を抱えておられる皆様の心に少しでも光を差し込めたらと思います。

(石川和彦)

 

 

アンコールはA.コレッリ:ヴァイオリンとヴィオローネ、またはチェンバロのためのソナタ 第1番 ニ長調 作品5-1 より 第3楽章アレグロでした。ありがとうございました。

 

 

 

 

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