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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.6
山手234番館 バロック・コンサート
音色の魔術師
〜 ヴィヴァルディとボワモルティエ 〜
洋館で親しむバロックシリーズ 第15回
2010年10月9日(土) 午後6時開演
山手234番館レクチャールーム
出演:
クラングレーデ(Klangrede)
クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。
クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。
------ クラングレーデ(音の言葉)
国枝俊太郎 (リコーダー、フラウト・トラヴェルソ)
東京都出身。リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の第16回全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演、またCD録音にも参加する。ムシカ・フラウタのメンバーとしても、NHK-FM「名曲リサイタル」にも出演する。現在はバロック室内楽を中心に、リコーダー・アンサンブルによるルネサンス〜現代までの作品や、ギターとのアンサンブルによる19世紀のサロンピースの演奏、さらには古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。
大山 有里子 (バロック・オーボエ)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。モダン・オーボエを大嶋弥氏に師事する。卒業後、関西を中心にオーケストラやアンサンブルで、またソロ奏者として活動する。1982年より1993年まで、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心として数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、 バロック・オーボエを始める。これまでに各地でオリジナル楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加している。「アルモニー・アンティーク」メンバー。横浜音楽文化協会会員。
石川和彦 (ヴァイオリン)
大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プイステー、桐山建志各氏に師事。オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウ ゲストコンサートマスター。
永谷陽子(バロック・ファゴット、賛助出演)
桐朋学園大学卒業。同大学研究科修了。桐朋オーケストラアカデミー修了。ファゴットを浅野高瑛、武井俊樹、馬場自由郎各氏に、バロック・ファゴットを堂阪清高氏に師事。09年、第12回古楽の森コンサートに、バロック・ファゴットソロで出演。モダン、クラシカル、バロック、ファゴット奏者としてオーケストラ、室内楽等で活躍。八王子音楽院講師、日本大学芸術学部演奏補助員を勤める。09年CD「ヴィヴァルディ:協奏曲『恋人』江崎浩司」にバロック・ファゴットで参加。マイスターミュージックより発売中。
酒井絵美子(チェンバロ)
洗足学園高等学校音楽科を経て、同音楽大学ピアノ科卒業。ピアノを池谷淳子、冨岡英子の両氏に師事。在学中チェンバロに出会い、岡田龍之介、家喜美子の両氏に師事。故 小島芳子、A.プリャエフ、N.パール、M.メイヤーソン、E.バイアーノ、K.ハウグサンの各氏のレッスンを受ける。また、フォルテピアノの伊藤深雪氏のレッスンを受講。CD「篠原理華 リコーダー&ミュゼット」に参加。現在、チェンバロ及び通奏低音奏者として、日本各地で演奏、講習会のアシスタントを務める傍ら、ピアノ奏者として様々なアンサンブルに参加するなど、意欲的に音楽活動を行なっている。
クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.6
音色の魔術師
〜 ヴィヴァルディとボワモルティエ 〜
プ ロ グ ラ ム
いつの時代にも流行に敏感な人はいるものですが、今回取り上げる二人の作曲家、ボワモルティエとヴィヴァルディもそうした面を持っています。彼らは共に多作家として有名でしたが、作品の性格はかなりの違いがあります。そのような点を気に留めながらお聴きいただけると嬉しく思います。
J.B.de.ボワモルティエ(1682-1765)
Joseph Bodin
de Boismortier
ボワモルティエは多くの芸術家がパトロンの援護に頼っていた時代に、そうした庇護者の力を借りずに生活していた完全なるフリーランスの音楽家でした。これは当時としてはかなり珍しい事で、さらに彼は自身で作品番号をつけて楽譜の出版もしていました。
多くの作品を次々と量産していった事に対して、「幸せなボワモルティエ、彼の多作なペン先は毎月苦もなく1巻生み出すことができる」という実に皮肉めいた詩も残されたほどでした。
4声のソナタ ト長調
Sonata for 3 Flutes and Basso continuo G major
op.34-2
Vivace/Allegro/Largo/Allegro
「4声のソナタ ト長調」は1731年に出版されたop.34に収められていますが、3本のトラヴェルソが指定されている旋律パートを、今回は別々の楽器3つで演奏いたします。
ファゴット・ソナタ
ホ短調
Sonata for Bassoon and Basso continuo e minor
op.50-1
Andante-Staccato/Allemanda
Allegro/Aria affetvos/Gavotte Presto
「ファゴット・ソナタ ホ短調」は1734年に出版されたop.50に収められていますが、彼はこの編成のために全部で6巻もの曲集を残していて、低音楽器の魅力を無理なく引き出す事に成功しています。
フルートとヴァイオリンのためのソナタ
ニ長調
Sonata for Flute and Violin D major op.51-3
Largo/Allegro ma non
Presto/Adagio/Allegro
「トラヴェルソとヴァイオリンのためのソナタ ニ長調」は1734年に出版されたop.51に収められていますが、通奏低音なしで繰り広げられる2つの楽器のやり取りはなかなかスリリングです。
5声の協奏曲 ホ短調
Concerto for Recorder, Violin, Oboe, Bassoon
and Basso continuo e minor op.37-6
Allegro/Adagio/Allegro
「5声の協奏曲 ホ短調」は1732年に出版されたop.37に収められていますが、それぞれの楽器のソロが華麗な技巧を披露しながら対話を繰り広げる、実に色彩感溢れる力作です。
A. ヴィヴァルディ(1678-1741)
Antonio
Vivaldi
ヴィヴァルディは今でこそ「四季」の作者として特に有名ですが、ヴェネツィアのピエタ慈善院付属音楽院でヴァイオリンの教師として、またある時はオペラ作曲家としても名声を得ていました。
晩年は不遇のうちに世を去ったとされているようですが、詳細はよくわかっていません。
一昔前まで「ヴィヴァルディは555曲の協奏曲を書いたのではなく、同じ協奏曲を555回書き直しただけだ」という皮肉めいた言われ方をされていて、それが彼に対する正当な評価の妨げになっていました。
最近は器楽曲だけでなく、宗教曲やオペラなど、今まであまり日の目を見なかったような曲も徐々に演奏されるようになってきました。
室内協奏曲
ニ長調「ラ・パストレッラ」
Concerto for Recorder, Oboe, Violin, Bassoon
and Basso continuo D major RV95
“La Pastorella”
Allegro/Largo/Allegro
今回取り上げる2曲の室内協奏曲は、おそらく彼が教えていたピエタの音楽院で女生徒達が演奏する目的で作られたと思われます。非常に技巧的に作られた各楽器のパートを見ると、彼女達がいかに高い水準で演奏していたかを窺い知る事が出来ます。
J.S.バッハ編 協奏曲 ト長調
Vivaldi/Bach
Concerto G major BWV973(RV299 op.7-8)
Largo/Allegro
「協奏曲 ト長調より」は、J.S.バッハがイタリアの様式を学ぶべくヴィヴァルディなどの協奏曲を鍵盤楽器1台だけで演奏できるように編曲した一連の作品群の一つで、原曲はヴィヴァルディのop.7-8です。
N.シェドヴィーユ(伝ヴィヴァルディ)
「忠実な羊飼い」より
ソナタ ト短調
Nicolas Chedeville
Sonata for Recorder and Basso continuo g minor
RV58(op.13-6) from “Il Pastor Fido”
Vivace/Alla breve Fuga
da Capella/Largo/Allegro ma non
presto
「忠実な羊飼い」はずっとヴィヴァルディのop.13として信じられてきましたが、今ではパリの熱烈なヴィヴァルディ信奉者であったN.シェドヴィーユの作だという事が判明しています。
「ソナタ ト短調」の最終楽章にヴィヴァルディのop.4-6からのモチーフが現れるのも、この曲集がヴィヴァルディの作であると信じられ続けた原因かもしれません。
室内協奏曲 ト短調
Concerto for Flute, Oboe, Violin, Bassoon and
Basso continuo g minor RV107
Allegro/Largo/Allegro
このように、互いにキャラクターの全く異なる二人の作曲家の作品を一晩のコンサートに並べる事で、
それぞれの国の音楽的特徴や国民性の違い、そしてイタリアの音楽がフランスでも熱狂的に迎えられる時代が到来した事を目の当たりにしていただけると思います。
どうぞ、最後までお楽しみください。
(国枝俊太郎)
アンコールはボワモルティエのコンチェルト
ハ長調(作品28より) 第1楽章アレグロ および ヴィヴァルディ コンチェルト 作品99 より第3楽章 アレグロでした。ありがとうございました。
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