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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.1
ヴィヴァルディ
音の宝石箱
2008年9月19日(金)午後7時 開演
近江楽堂
出演:
クラングレーデ(Klangrede)
クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。
国枝俊太郎 Shun-taro
Kunieda (リコーダー Recorder 、フラウト・トラヴェルソ Flauto traverse)
大山 有里子
Ariko Ohyama (バロック・オーボエ Baroque
Oboe)
酒井絵美子 Emiko
Sakai (チェンバロ Cembalo)
【ゲスト】
小野 萬里 Mari
Ono(ヴァイオリン Violin)
6才からヴァイオリンをはじめ東京芸術大学付属高校を経て、同大学を卒業。1973年ベルギーに渡りバロックヴァイオリンをシギスヴァルト・クイケンに師事。以来現在に至るまでソロ、室内楽、オーケストラ、など幅広い分野でたゆみない演奏活動を続けている。現在、東京バッハ・モーツアルト・オーケストラ、コントラポント、アンサンブル・デュファイ、Due Canti、メンバー。アマチュアオーケストラNCCOではトレーナーを務める。
永谷 陽子 Yoko Eitani(ファゴット Fagott)
東京都出身。桐朋学園大学卒業。同大学研究科修了。モダン、バロックファゴット奏者としてオーケストラ、室内楽等で活躍中。また、八王子音楽院講師、日本大学芸術学部演奏補助員を勤める。ファゴットを浅野高瑛、武井俊樹各氏に、バロックファゴットを堂阪清高氏に師事。
クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.1
ヴィヴァルディ
音の宝石箱
プ ロ グ ラ ム
A. ヴィヴァルディ / 室内協奏曲 ニ長調 RV94 リコーダー、オーボエ、 ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音のための
A. Vivaldi / CONCERTO in Re
maggiore per Flauto, Oboe, Violino, Fagotto e Basso continuo
Allegro / Largo / Allegro
A. ヴィヴァルディ / トリオ・ソナタ イ短調 RV86 リコーダー、ファゴット、通奏低音のための
A. Vivaldi / TRIO SONATA in La
minore per Flauto, Fagotto e Basso continuo
Largo / Allegro / Largo
cantabile / Allegro molto
J.S.バッハ - A. ヴィヴァルディ / ヴィヴァルディの原曲によるチェンバロ独奏のための協奏曲
ハ長調 BWV976 (Op. 3-12, RV265)より 第1楽章(アレグロ)
J.S.Bach – A. Vivaldi / CONCERTO di Vivaldi elaborati di J.S.Bach in
Ut Maggiore 1mov.
(Allegro)
A. ヴィヴァルディ / 室内協奏曲 ト短調 RV105 リコーダー、オーボエ、 ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音のための
A. Vivaldi / CONCERTO in Sol
minore per Flauto, Oboe, Violino,
Fagotto e Basso continuo
Allegro / Largo / (Allegro
molto)
*** 休憩 ***
A. ヴィヴァルディ / 協奏曲 ニ長調
RV90「ごしきひわ」 (フルート、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音のための)
A. Vivaldi / CONCERTO in Re
maggiore "Del Gardellino" per Flauto, Oboe, Violino, Fagotto e Basso continuo
(Allegro) / Largo / Allegro
A. ヴィヴァルディ / ソナタ ハ短調
RV53 オーボエと通奏低音のための
A. Vivaldi / SONATA in Ut minore per Oboe Solo e Basso
continuo
Adagio / Allegro / Andante / Allegro
A. ヴィヴァルディ / 協奏曲 ト長調
RV101 (リコーダー、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音のための)
A. Vivaldi / CONCERTO in Sol
maggiore per Flauto, Oboe, Violino, Fagotto e Basso continuo
(Allegro) /
♪♪♪ プログラム・ノート ♪♪♪
国枝俊太郎
本日はお忙しい中「クラングレーデ」第1回コンサートにご来場いただきまして、誠にありがとうございます。笛(リコーダー、フラウト・トラヴェルソ、バロック・オーボエ)とチェンバロという楽器編成を軸に、他の楽器の方をゲストにお招きしながら、今後もシリーズとして継続していくつもりでおりますので、末永く見守っていただけると幸いです。
さて、栄えある第1回はオール・ヴィヴァルディのプログラムを組んでみました。皆様はヴィヴァルディと聞いて何を思い浮かべますでしょうか?おそらく「四季」の作曲者として名前は聞いた事があるかもしれませんが、彼は18世紀初頭に活躍した作曲家の中でもとりわけ多作家として知られていました。作品としては彼自身大変な名手であったヴァイオリンを含むものが多いですが、その他にも宗教曲やオペラなどの声楽作品も多く残しています。
日本におけるバロック音楽ブーム到来のきっかけになったアルバムの一つにイ・ムジチ合奏団が録音したヴィヴァルディの「四季」がありますが、このインパクトがあまりにも強すぎたためか、ヴィヴァルディ=「四季」のようなイメージが定着してしまったように思えます。学校の音楽の授業でも「四季」の他に取り上げられるバロックの作品というと、バッハの管弦楽組曲第2番(ポロネーズとバディヌリ)&第3番(「G線上のアリア」として知られているエアー)くらいでした。
このような事情がそうさせたのかはわかりませんが、日本の学校で習うバロック時代の作曲家というとこの二人とヘンデルくらいです。私のようにリコーダーを吹いている立場としては、この楽器がバロック時代に大変人気があったという事実を教えてくれてもいいのではないかと思っています。もしヘンデルのリコーダー・ソナタを小学校の音楽の授業で聴いていたら、もっとこの楽器に対して違ったイメージを持つのではないでしょうか。
そろそろ協奏曲について触れようと思います。もともと「コンチェルト」という言葉は合奏曲程度の意味で使われていましたが、時代とともに様々な形の曲が生まれる事になります。例えば、バッハにはイタリア協奏曲(BWV 971)という作品がありますが、これはチェンバロ1台で演奏されるもので、彼はこれ以外にも他の作曲家の協奏曲を鍵盤楽器1台用に編曲したものを残しています(オルガン用:BWV 592-97、チェンバロ用:BWV 972-87)。この中にはヴィヴァルディの作品の編曲も含まれています(BWV 593, 594, 596, 972, 973, 975, 976, 978, 980)。
ヴィヴァルディはヴェネツィアの「オスペダーレ・デラ・ピエタ」で教えていた期間に今回取り上げるような器楽作品の多くを作曲しましたが、私はこれらの作品を演奏するたびに「ここにいた女生徒達のレヴェルの高さは一体どれだけだったのか」と考えさせられてしまいます。彼にこのような作品を書かせてしまう程の実力とはどれ程のものだったのか、今となっては知る由もありません。ただ、それぞれのソロを楽しそうに演奏する女生徒達の顔を想像するだけで、こちらまで楽しくなってきます。
今日取り上げる曲には様々な楽器が登場しますが、それらの楽器が作り出す世界はまさに「音の宝石箱」そのものです。どうか今晩のコンサートを通じて様々な音世界をご堪能いただいて、色彩感豊かなヴィヴァルディの世界をお楽しみください。
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