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18世紀のオーボエによる デュオの楽しみ
洋館で楽しむバロック音楽 第133回
2023年9月23日(土)横浜山手西洋館 エリスマン邸 地下ホール
主催:クラングレーデ
コンサート事務局 協力:アンサンブル山手バロッコ
出演
今西香菜子(バロック・オーボエ)
13歳よりオーボエを始め、これまでにモダン・オーボエを東野正子、故本間正史、故柴山洋に、バロック・オーボエを故本間正史に師事。桐朋学園大学及び同研究科終了。若尾圭介、ジョナサン・ケリー、リチャード・ウッドハムス等のマスタークラスを受講。現在エンゼルミュージック(小田急相模原)、フォレストミュージック(学芸大学)各講師。自宅レッスン、出張レッスン、リード販売、エキストラ出演などの活動を行う。「ダブルリーズ」メンバー。
大山有里子(バロック・オーボエ)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、「大阪コレギウム・ムジクム」のソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。その後ピリオド楽器(バロック・オーボエ)による演奏に専念し、バロック・アンサンブル「アルモニー・アンティーク」等に参加。近年はバロック時代だけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。2016年よりリサイタル「バロック・オーボエの音楽1〜3」を開催し好評を博す。「ダブルリーズ」「古楽団あおば」メンバー。
デュオ・カナリア 西洋館コンサート 第1回
18世紀のオーボエによる デュオの楽しみ
洋館で楽しむバロック音楽 第133回
プログラム
J. B. d. ボワモルティエ:ソナタ
第3番 イ短調 Op.13-3
Joseph Bodin de Boismortier (1689-1755) : Troisiéme
SONATE
Gracieusement / Allemande (Gayment) / Lentement / Gavotte en Rondeau
1曲目はバロック・オーボエでフランスの作曲家ボワモルティエの作曲したソナタでした。オーボエは17世紀の後半にフランスで発明された楽器で、バロック音楽の中でも比較的後期になってから使われるようになりました。いわゆる初期バロック、たとえばモンテヴェルディなんかには出てきません。このボワモルティエも18世紀の後期バロック(ロココ)の作曲家です。
G. Ph. テレマン:二重奏曲
第1番 ト長調 TWV 40:124
Georg Philipp
Telemann (1681-1767) : Sonata (Duo/Duetto) T
Vivace /
Allegretto / Spirituoso
次に後期バロックのスター作曲家、テレマンの二重奏ソナタを演奏します。この曲は1752年に6曲がセットになった形で出版されているのですが、初版には「ヴァイオリン、フルート、またはオーボエ」のためにと書かれています。しかし、調性と音域はフルートに最適になっているようです。オーボエで演奏するには最高音がたくさん出てくるのでやや高い感じです。
C. P. E. バッハ:二重奏曲
ハ長調 Wq 142, H 636
Carl Philipp Emanuel
Bach (1714-1788) : Duet Wq 142, H 636
Adagio e
sostenuto / Allegro
さて、バロック時代、ドイツのライプツィヒ周辺でのみ作られていた大型のオーボエがあります。それがオーボエ・ダモーレです。その当時はオーボエ・ダモールと呼ばれていたそうです。「愛の」という意味です。
この楽器は1713〜1717年頃にライプツィヒで現れ、瞬く間に大流行し、12年ほどの間多くの曲で使われ、40年ほどで早くもすっかり飽きられた(?)、しかもほとんどドイツ限定の一発屋みたいな楽器なのです。これはソロを受け持つ楽器として使われていました。バッハはこの楽器をとても好み、この楽器のためのソロと室内楽のうち約5分の2はバッハの作品です。「ロ短調ミサ曲」「クリスマス・オラトリオ」「マタイ受難曲」など名曲がたくさんあります。また、この楽器が有名になったのは、当時最高の人気をほこっていたテレマンがよく使ったからでしょう。
音域は普通のオーボエより3度低く、下から順にイ長調の音階になっています(A管)音色は特徴的で、くぐもったような甘い音がします。見た目の特徴はベルが短くてとっくりのような形をしていることです。このベルのせいだけでこの音色になるのかというと、どうもそう単純な話ではなく、全体のバランスがオーボエとは違うからのようです。
オーボエのベルにはレゾナンス・ホールという修正装置の穴が2つあいていますが、ダモーレのベルにはありません。とってもおちょぼ口です。
オーボエ・ダモーレは19世紀に入ったころには滅多に使われなくなり忘れさられました。同じ名前のモダン楽器が使われるようになるのは近代になってからです。有名なところではラベルのボレロなんかに出てきます。先ほどお話ししましたように、この楽器はオーケストラの伴奏に乗っかってソロを吹くという役回りの楽器でして、二重奏曲は書かれていないようですので、今回は、バッハの息子、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作りましたクラリネットのための二重奏曲を演奏してみたいと思います。
F. J. ガルニエ:「オーボエの合理的な奏法」より「正確な速さで」
François Joseph
Garnier (1755-c1825) : Tempo giusto
"Méthode raisonnée
pour le hautbois"
オーボエは楽器が発明されてからすぐに人気が出て、あっという間にヨーロッパ中に広まりました。各国の宮廷楽団ではこぞってオーボエ奏者を召し抱え、曲も多く作られました。ソロソナタや協奏曲も作られて黄金時代が訪れます。しかし、音楽は今と同じく流行りものです。18世紀の終わり頃になるとバロック音楽は古典派の音楽へと変わっていきました。ヨハン・セバスティアン・バッハの音楽と彼の末息子のヨハン・クリスティアン・バッハの音楽が違う時代の音楽であるように、使われていた楽器もだんだんと変わっていきました。そしてモーツアルトの時代、18世紀末にはこちらのような楽器になりました。今はわかりやすいように古典オーボエとかクラシカル・オーボエと呼んでいます。
まだキーは2つですが、全体に細くて華奢で基準ピッチも高いです。その上高い音域が好んで使われました。この時代になると、オーボエはオーケストラにはなくてはならない楽器ですが、ソロソナタはほとんど作られなくなりました。二重奏曲ももっぱら教則本などに載っているものになります。その中からまずはフランス人のガルニエというオーボエ奏者の教則本に載っている短い曲を演奏します。
A. ヴァンダーハーゲン:「新しく合理的なオーボエ奏法」より
二重奏曲 第3番 イ短調
Armand Vanderhagen
(1753-1822) : III Duetto "Méthode nouvelle et Raisonnée
pour le hautbois"
Allegro Moderato
/ Andantino / Allegro
もう一曲、アントワープで生まれたヴァンダーハーゲンの教則本から第3番のデュエットを演奏します。この人はクラリネットの名手としても記録されているようですが、おじさんが同じ名前のオーボエ奏者だったということで、なんだかややこしいのですが、この教則本の作者は年代的にこのクラリネットも吹く作曲家ということになっているようです。
G. Ph. テレマン:二重奏曲
ト長調 TWV 40:107 「忠実な音楽の師」より
Georg Philipp
Telemann : Duetto TWV 40:107
"Der getreue Music=Meister"
Affettuoso / Allegro
/ Andante / Presto
最後の曲になりました。私たちとしましては、もう一度バロック音楽に戻って大好きなテレマンの曲を最後に演奏したいと思います。曲集「忠実な音楽の師」より、二重奏曲
ト長調です。作曲家による楽器の指定は「2つのフルート、またはリコーダー、または高音のヴィオール」となっていまして、オーボエは含まれていないのですが、とてもいい曲で演奏してみたいと思いました。それではお聴きください。
アンコールは、バロック・ファゴットの永谷陽子さんにも手伝ってもらって、リュリの町人貴族から、私たちのユニット名にちなんで「カナリー」でした。カナリーはバロック時代の舞曲の名前です。
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