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春爛漫のバロック音楽Vol.2
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第139回
2024年3月16日 (日) 14:00 開演 横浜市イギリス館
主催:アンサンブル山手バロッコ/クラングレーデ コンサート事務局
後援:日本チェンバロ協会
出演
大山有里子(バロック・オーボエ)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動、その後関東に活動の場を移し、ピリオド楽器による演奏に専念する。近年はバロックだけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。アンサンブル山手バロッコ主催のコンサートにおいては、バロック期のオーボエ協奏曲のソロやモーツァルトのオーボエ四重奏などをはじめとして多数出演。2016〜19年リサイタル「バロック・オーボエの音楽」を開催し好評を博す。「ダブルリーズ」「古楽団あおば」メンバー。
加藤久志(ヴィオラ·ダ·ガンバ)
洗足学園音楽大学・ジャズコースをベース専攻で卒業、同大学大学院修士課程・弦楽器コースをコントラバス専攻で修了。コントラバスを藤原清登氏に、ヴィオラ・ダ・ガンバを福澤宏、武澤秀平、小池香織の各氏に師事。2015年ニース夏期国際音楽アカデミーにてディプロマを取得。マリアンヌ・ミュラー氏のマスタークラスで学ぶ。これまでに藍原ゆき、中野哲也、ジョシュ・チータム、トーマス・バエテ、上村かおりの各氏のレッスンを受ける。2019-2020年、日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会・会報担当理事を担当。楽器は他に、エレクトリック・ベース、コントラバスでも演奏活動を行なっている。「古楽団あおば」メンバー。
岡田龍之介(チェンバロ)
慶應義塾大学、東京藝術大学卒業、藝大大学院修了。チェンバロを有田千代子、渡邊順生各氏に師事。全国各地で演奏活動を行い、国内外の優れたバロック奏者との共演を通じてアンサンブル経験を深める。最近は「ザロモン室内管弦楽団」や「Ars Nova新潟」の指揮者を務める等、指揮活動にも力を注ぐ。第13、23回山梨古楽コンクール審査員。ソロCD「銀色の響き」(レコード芸術誌準特選盤)をはじめ12枚のCDをリリース。都留音楽祭講師(~2017)、洗足学園音楽大学講師(2021)。古楽アンサンブル「ムジカ•レセルヴァータ」主宰。FM鴻巣「クラシックの散歩道」パーソナリティ。日本チェンバロ協会前会長。
春爛漫のバロック音楽Vol.2
“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第139回
横浜港を見下ろす「港が見える公園」は、3月下旬、春の花が咲き乱れ芳しい香りに包まれます。
英国総領事館として建てられた西洋館「横浜市イギリス館」のホールで、昔のスタイルの楽器(バロック・オーボエ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ)によるバロック音楽を演奏いたします。春のひと時、ゆったりとお楽しみください。
プログラム
G. F. ヘンデル:オーボエと通奏低音のためのソナタ ヘ長調 HWV 363a
Georg Friedrich Händel (1685-1759):Sonata F-Dur HWV 363a
Adagio / Allegro / Adagio / Bourrée anglaise /
Menuet
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルは生涯を通じて劇場作品(オペラやオラトリオ)の作曲家として活躍しましたが、室内楽作品も数多く作曲しました。ソロ楽器と通奏低音のためのソナタは、著作権などというものが確立していなかった当時のことですから、出版の際に作者に無断でソロ楽器が変更されたものもあり、偽作も含まれ、海賊版も出版され、同じ曲でも作品番号がちがっておる等、やや複雑です。そんな中、本日演奏するヘ長調のソナタは、ヘンデルがオーボエをソロ楽器として作曲したことがわかっています。若い頃のみずみずしい作品です
J. シェンク:組曲
イ長調「音楽の楽しみ」Op.6より
Johannes Schenck(1660-1712):Suite A-Dur (Scherzi Musicali Op.6)
Preludium / Allemande / Courante / Sarabande / Gigue /
Rondeau / Menuet
ヨハネス・シェンクはJ.S.バッハの少し前の時代に活躍したバロックの作曲家で、ドイツ系の両親のもと、1660年にアムステルダムに誕生しました。ガンバの腕前が評判となり、ドイツのデュッセルドルフ、プファルツ選帝侯ヨハン・ヴィルヘルムT世のもとに招かれ、宮廷楽団の顧問官に就任、その地で活動を展開します。晩年の足取りは分かっておらず、いまだに謎大き作曲家として知られています。 1701年または、それ以前に出版、ジョバンニ・グリエルモ氏へ献呈された「音楽の楽しみ」Op.6は、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のために書かれた曲集です。通奏低音の参加は任意となっており、ヴィオラ・ダ・ガンバの独奏としても演奏可能です。シェンクはヨハネス、の他に様々なペンネームを持ち、本作は自身の名前をイタリア語風に綴りジョバンニの名で発表されました。当時は、複数の言語を操れることが、教養人の証と考えられていました。シェンクの作品は、ポリフォニックなスタイルに、ヴェルサイユ風の手法と、微妙な陰翳表現を兼ね備え、ヴィオラ・ダ・ガンバの性能をフルに引き出したものです。同時代にフランスで活躍したマラン・マレのヴィオール作品などと比べると異なる趣味となっており、フランスやイタリア、ドイツの音楽を融合させたような独特の作風となっています。
G. Ph. テレマン:序曲(組曲)ト短調 TWV 41: g4 「忠実な音楽の師」より
Georg Phillip Telemann (1681-1767):Ouverture g-moll TWV 41: g4 "Der Getreue
Music-Meister"
Ouverture / Sans Souci / Hornpipe / Gavotte / Passepied
/ Irlandoise (Vivement)
ゲオルク・フィリップ・テレマン作曲の「オーボエと通奏低音のための組曲 ト短調」 は、「忠実な音楽の師」という全68曲からなる曲集に含まれています。様々な楽器のための音楽が含まれているこの曲集は、1年間にわたって少しずつ刊行されるという、当時としてはたいへん新しい発表形式をとりました。このト短調の組曲の冒頭には「ヴァイオリンまたはオーボエ (で演奏する)」と書かれています。最初はフランス風序曲のスタイルで始まり、サン−スーシ、ホーンパイプ、ガボット、パスピエ、アイルランド人、という5曲の音楽が続きます。
♪ ♪ ♪
J. C. F. フィッシャー:第3組曲「メルポメネー」イ短調「音楽のパルナッソス山」より
Ferdinand Fischer (1656-1746):Melpomene a-moll (Suite No.3) "Musikalischer Parnassus"
Praeludium / Allemande / Passepied / Rondeau / Chaconne / Gigue
この曲集には9つの組曲が収められており、各々の組曲はギリシャ神話に登場する、音楽を司る9人の女神の名前が付けられています。メルポメネーは「悲劇」・「挽歌」の女神と言われており、前奏曲以下8つの舞曲で構成されています。フィッシャーはリュリの管弦楽曲の影響を強く受けており、鍵盤作品においてもリュリのフランス風舞曲の様式が取り入れられているのが特徴と言えるでしょう。
D. ブクステフーデ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ
ニ長調 BuxWV 268
Dieterich Buxtehude (c1637-1707):Sonate D-Dur BuxWV
268
I.- / II.- / III. Allegro - Adagio
ディートリヒ・ブクステフーデの出生の記録は定かではなく、1637年頃にデンマークのヘルシンボリに誕生したとされています。17世紀の北ドイツおよびバルト海沿岸地域、プロイセンを代表する作曲家・オルガニストです。声楽作品においては、バロック期ドイツの教会カンタータの形成に貢献する一方、オルガン音楽においては、北ドイツ・オルガン楽派の最大の巨匠であり、その即興的・主情的な作風はスティルス・ファンタスティクス(幻想様式)の典型とされています。彼の音楽にJ. S. バッハが心酔していたことでも知られています。20歳のバッハが370kmの道のりを歩いてリューベックを訪問、ブクステフーデのオルガン演奏に衝撃を受けて、休暇は4週間の予定だったのが4か月近くも滞在して大問題になった、という有名なエピソードがあります。バッハの代表作『トッカータとフーガ ニ短調』にも、ブクステフーデは色濃い影響を与えています。
本作は、急緩急という3楽章構成となっていますが、明確な楽章ごとの区切りは無く、それぞれの楽章が流れるように繋がって演奏されます。シンプルな通奏低音の上で、ヴィオラ・ダ・ガンバが転がるように多彩な旋律を奏でます。
J. S. バッハ:トリオ・ソナタ
ホ短調(BWV 78/8 及び 528よりの編曲)
Johann Sebastian Bach (1685-1750):Triosonate e-moll nach BWV 76/8 und 528
Adagio / Andante / Un poc'allegro
本日演奏するトリオ・ソナタは、現存するいくつかのオリジナルの楽譜を参照してピーター・ダークセンPieter Dirksen氏が復元したものです。復元の元となる音楽の一つ、J. S. バッハのオルガン・ソナタ第4番 ホ短調 (BWV 528) は、1730年頃にバッハ本人が清書にまとめました。しかしそれは、当時新たに作曲された作品なのではありません。1723年のカンタータ第76番のシンフォニアには、第1楽章の初期バージョンが記録されています。 中間セクションと終結も、少なくとも 2つの初期の曲集で単一のオルガン曲として残されています。
研究によると最初に作曲された、最も密接に関係している作品はワイマール時代に遡ると考えられています。ワイマール時代は「オルガン及び弦楽器」と「オーボエ」は基準のピッチが違っていたため、残されている楽譜は調が違うのですが、実際には現在そのような低いピッチのオーボエをピッチ基準の違う楽器と混ぜて使うということはまずありません。そこで3度低いオーボエ・ダモーレ(移調楽器)を使うとうまく適応します。それはちょうどバッハがライプツィヒのオーボエ・ダモーレを使ってカンタータBWV 76のシンフォニアに転用した事情とも合致しています。そういうわけで、本日演奏する形での楽譜の実物が(バッハの生前に存在していて)現存しているというわけではなく、また、当時このように演奏されたという証拠があるわけではないのですが、この復元版のトリオ・ソナタはワイマール中期の器楽曲のレパートリーがどのようなものであったのか想像しながら演奏してみたいと思います。
たくさんの拍手をありがとうございました。アンコールにバッハのカンタータBWV 197a いと高き神に栄光あれ
よりバスアリア「私の心の中にあなたを留めておきます」を演奏いたします。
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