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バロック・オーボエの音楽
2016年4月29日(金)14:00開演
東京オペラシティ 近江楽堂
主催:クラングレーデ
コンサート事務局 協力:アンサンブル山手バロッコ
出演
大山有里子(バロック・オーボエ)
大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、「大阪コレギウム・ムジクム」のソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。
その後ピリオド楽器(バロック・オーボエ)による演奏に専念し、バロック・アンサンブル「アルモニー・アンティーク」等に参加。
近年はバロック時代だけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。「クラングレーデ」「ダブルリーズ」メンバー。
橋弘治(バロック・チェロ)
桐朋学園大学音楽学部、及び、ブリュッセル王立音楽院古楽器科卒業。2001年、ラ・プティット・バンドのヨーロッパ・ツアーにおいてソリストを務める。その後、2007年までラ・プティット・バンドのメンバーとして演奏活動を行う。
帰国後は古楽器オーケストラに参加するほか、2011年よりチェンバリスト岡田龍之介氏の主宰する古楽アンサンブル『ムジカ・レセルヴァータ』のメンバーとして活動を行っている。
2015年11月には指揮者として三重県四日市市にて「四日市シンフォニックコーラス」第27回定期演奏会にてヘンデルのオラトリオ「メサイア」全曲を指揮するなど活動の場を広げている。
現在、桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」名古屋教室 講師。
寺村朋子(チェンバロ)
東京芸術大学チェンバロ科卒業。同大学大学院修士課程修了。チェンバロと通奏低音を山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外の講習会を受講し研鑽を積む。
NHK「FMリサイタル」に出演。その他オーケストラやバロックダンスとのアンサンブル、ソロ、マスタークラスの伴奏など多方面で活動し、多くの団体と様々なコンサートを行う。
トリム楽譜出版より1999年「フルート・バロックソナタ集」、2002年「J.S.バッハ作品集」(2009年増刷)を編曲、出版。2010年チェンバロ・ソロCD「お気に召すままCapriccio」(レコード芸術準推薦)リリース。
小金井アネックス(宮地楽器)チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会正会員。「ダブルリーズ」メンバー。
バロック・オーボエの音楽
ご挨拶、バロック・オーボエのこと 大山有里子
本日は「バロック・オーボエの音楽」にお越し下さいまして、まことにありがとうございます。このコンサートでは、18世紀に演奏されていたスタイルのオーボエ(当時の英語ではオーボイHautboy)と、バロック・チェロ、チェンバロの演奏をお聴きいただきます。
オーボエは17世紀の後半にフランスで成立しました。それ以前からあったダブルリードの楽器(ショーム)に革新的な改変が加えられ、オペラのオーケストラで弦楽器や歌とともに使えるような楽器になりました。その後オーボエは、古典派〜ロマン派〜近代〜現代と音楽とともに変化していき、今のオーケストラで見られる姿と音色のオーボエになりました。18世紀のオーボエは忘れ去られ、幸運にも残された楽器は博物館などに眠っており、長い間誰も吹きませんでした。
1950年代に、古楽の復興運動 HIP (Historically Informed Performance)が起こり、音楽作品が作曲された当時の音を探る試みがさかんになりました。私の憧れであったブルース・ヘインズ氏が初めてバロック・オーボエを手にしたのが1965年、真剣に演奏し始めたのが1968年だったそうです。ほかにも数人のパイオニアたちがこの未知の分野に乗り出しました。
オーボエがリコーダーやトラヴェルソなど他の木管楽器と違うところは、決め手となるオリジナルのリード(オーボエの発音部分。葦で作られる)が、消耗品のためわずかしか残されていないことです。微妙な点に関しては今も昔も奏者の個人的秘密の部分が多く、情報は限られます。オリジナル楽器のピッチは、使われていた土地によってまちまちで、テクニックに関しても一旦失われたことが多く,しかも理想的な音がどんな音だったのか録音がある訳ではありません。そんな中、パイオニアたちによる気の遠くなるような試行錯誤が繰り返されたのでした。
とはいうものの、私がこの楽器を選んだのは、それが歴史的に正しい、というような理由ではありません。初期のHIPの熱気にあふれた演奏,特にブルースの音と音楽を聴いて惚れ込んでしまったからです。それは、古楽という名前の、わくわくさせる、その当時の最先端の音楽だったのです。
プログラム
G.F.ヘンデル:オーボエと通奏低音のためのソナタ
変ロ長調 HWV 357
Georg Friedrich Händel (1685-1759):Sonata pour l'Hautbois Solo [sic.] HWV 357
1.Allegro
/ 2.Grave / 3.Allegro
ヘンデルは生涯を通じて劇場作品(オペラやオラトリオ)の作曲家として活躍しましたが、室内楽作品も数多く残されています。このようなソロ楽器と通奏低音のためのソナタは、著作権などというものが確立していなかった当時のことですから、出版の際に作者に無断で楽器を変更されたものもあり、偽作も含まれ、海賊版も出版され、同じ曲でも作品番号がちがっていたり....と、やや複雑です。そんな中、本日演奏する3曲はすべて、ヘンデルがオーボエをソロ楽器として想定して作曲したことがわかっています。どの曲も若い頃のみずみずしい作品です。
G.F.ヘンデル:前奏曲 ト短調 HWV 572
Georg Friedrich Händel :Prelude g-moll HWV 572
G.F.ヘンデル:オーボエと通奏低音のためのソナタ
ハ短調 HWV 366
Georg Friedrich Händel :Sonata Op.1/8, HWV 366
1Largo / 2.Allegro / 3.Adagio / 4.Bourrée anglaise – Allegro
G.F.ヘンデル:組曲 第8番 ヘ短調 HWV
433より 「前奏曲」「アレグロ」
Georg Friedrich Händel:Achte Suite in f-moll HWV 433
1720年にロンドンで出版されたこの組曲を、音楽史家F.クリュザンダーは「どんな時代にもそれは人々の喜びであろうし、弛まない溌剌とした清新さを現して止まないであろう」と述べています。組曲
第8番はアダージョで模索するような旋律が半終止へ導かれ、それに、はっきりと答えを出すようにアレグロのフーガのテーマが登場します。推進力が広がりを見せ幕を閉じます。
G.F.ヘンデル:オーボエと通奏低音のためのソナタ
ヘ長調 HWV 363a
Georg Friedrich Händel :Sonata Op.1/8, HWV 363a
1.Adagio / 2.Allegro / 3.Adagio / 4.Bourrée anglaise / 5.Menuet
♪ ♪ ♪
. J.S.バッハ:トリオ・ソナタ ハ長調 BWV 529
Johann Sebastian Bach(1685-1750):Triosonate C-Dur BWV 529
1.Allegro
/ 2.Largo / 3.Allegro
バッハがオルガンのために作曲した6曲のトリオ・ソナタ(BWV525-530)のうちの1曲です。「トリオ・ソナタ」とはバロック音楽の時代に非常に流行した形式で、2つの旋律と通奏低音(バス)という3つのパートからなる曲です。通常は、たとえば2つのヴァイオリンとチェロとチェンバロという風に4人で演奏することが最も多いのですが、この曲でバッハは、3つのパートをオルガン奏者一人で(右手、左手、足鍵盤で)演奏するものとして作曲しました。今回のコンサートでは、オーボエ、チェンバロの2人で演奏します。
F.ジェミニアーニ:チェロ・ソナタ ハ長調 Op.5/3 H.105
Francesco Geminiani (1687-1762):Cello Sonata Op.5/3 H.105
1.Andante
/ 2.Allegro / 3.Affetuoso / 4.Allegro
イタリア・ルッカ出身のフランチェスコ・ジェミニアーニ(1687年〜1762年)は作曲家、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、音楽理論家として主にロンドンで活躍しました。
6曲のチェロ・ソナタ集 作品5はジェミニアーニがチェロのために残した唯一の作品で、作曲者本人の手によってヴァイオリン用にも編曲されました。1746年にパリで出版されたのを皮切りにオランダのハーグ、そしてロンドンでも出版されましたが、大変高度な演奏技術を要求され演奏するのが難しいためか、彼の他の作品よりもあまり売れなかったようです。作風は当時の作品としては一風変わっていますが、後年発表された大規模な管弦楽を用いたバレエ音楽「魅惑の森」の中にチェロ・ソナタ集からの一節が用いられているように、どのソナタも演劇の舞台を思わせます。
C.Ph.E.バッハ:オーボエ・ソロ ト短調 Wq.135
Carl Philipp Emanuel Bach(1714-1788):Hoboe solo g-moll Wq.135
1.Adagio
/ 2.Allegro / 3.Vivace
J.S.バッハの次男C.Ph.E.バッハは、後にベルリンとハンブルクで活躍したため、「ベルリンのバッハ」または「ハンブルクのバッハ」と呼ばれています。生前は世俗的な成功をおさめ、父よりも有名になりました。今日ではバロック音楽から古典派音楽への橋渡しとして重要な役割を担ったと評価されています。
本日取り上げます「Hoboe solo」と題された、オーボエと通奏低音のための曲が作曲されたのは、ベルリンに行くよりもずっと前の1731年から1735年、おそらくライプツィヒでのこととされています。 父ゼバスティアンはトーマス教会のカントルで、エマヌエル自身はライプツィヒ大学の学生だったころということになります。若干17歳〜21歳!彼は学生でありながら、父の助手のようなことや、写譜、演奏もこなしていて、父の指導のもと作曲も始めていました。
同じころの父ゼバスティアンの代表作は、管弦楽組曲第2番、第3番、クリスマス・オラトリオなどがあります。曲の規模や目的など全く違うので一概に比較できませんが、同じころに息子が作ったこの「オーボエ・ソロ」、特に第1楽章があまりにも独創的!お父さんに見せただろうか?ゼバスティアンはなにか感想をのべたのだろうか?だれかが演奏したのだろうか?興味はつきません。トーマス学校で教育を受けて合唱にも参加していたであろうエマヌエルは、父ゼバスチャンのカンタータの素晴らしいオーボエのソロに触発されてこの楽器を独奏楽器に選んだのではないでしょうか。
アンコールは、たくさんの拍手をいただきましたので、ヘンデル:オーボエ協奏曲第3番よりサラバンド をお届けします。
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