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山手洋館コンサート

 

木島千夏ソプラノコンサート Vol.9

洋館で楽しむバロック音楽 第34

山手聖公会で味わう

フェルメールに響く音楽

Music in Vermeer period

20121124日(土)午後2時開演  横浜山手聖公会 

 

1400 24th November. 2012 at Yamate Christ Church

 

主催: アンサンブル山手バロッコ 協力:横浜山手聖公会/財団法人横浜市緑の協会  楽器提供・協力: 木村秀樹(オルガン製作家)

  

 

出演:

木島千夏(ソプラノ):

国立音楽大学卒業後、同大学音楽研究所の研究員としてバロック歌唱の研究と演奏活動に従事した後、ロンドンのギルドホール音楽院に留学。第30回ブルージュ国際古楽コンクールにて4位入賞。翌年同音楽祭に招待され、モーツァルトの「聖墓の音楽」のソロ等を歌った他、ヨーロッパ各地で音楽祭や演奏会に出演。95年に帰国。ロンドンと日本各地でリュートのNigel Northとデュオ・リサイタルを行う。古楽ユニット「ひとときの音楽」シリーズ(1995年〜)、横浜山手の洋館コンサート(2002年〜)の他、2006年にG.F.ピント没後200年記念コンサートをフォルテピアノ(上尾直毅氏)と行う。「カペラ・グレゴリアーナ ファヴォリート」メンバーとしてヴァーツ国際グレゴリオ聖歌フェスティバルに出演。

現在、聖グレゴリオの家教会音楽科講師。横浜合唱協会ヴォイストレーナー。

櫻田 亨(リュート):

日本ギター専門学校でギターを学んだ後、オランダのデン・ハーグ王立音楽院でリュートを佐藤豊彦に師事した。リュート、テオルボ、ビウエラ、バロックギター、19世紀ギターといった撥弦楽器を幅広く演奏し、時代やその音楽にふさわしい楽器を的確に使い分けている。また、すべての楽器にガット弦を用いて歴史的な表現力を引き出す演奏スタイルは、世界でもまだ数少なく、非常に興味深いものである。ソリストとしてのみならず、通奏低音奏者として、共演者の意図を十分に汲み取って盛り立てる柔軟な音楽性は、多くの演奏家から信頼を集めている。《ルストホッファース》《ムジカ エランテ》のメンバー。リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン事務局長。06年ワオンレコードよりリュートソロCD「やすらぎのガット・7つの響き<Varietie of Lute Collections>」をリリース。2010年夏、2枚目のソロCD「皇帝のビウエラ・市民のリュート」リリース。レコード芸術誌にて準特選盤に選ばれる。

吉田恵(ポジティフ・オルガン):

東京藝術大学オルガン科及び同大学院修士課程修了、ハンブルグ音楽大学卒業。オルガンを島田麗子、廣野嗣雄、Z.サットマリー、W.ツェラー、チェンバロを山田貢、通奏低音及び即興実技を鈴木雅明、室内楽をダルムシュタットの各氏に師事。91年 ブルージュ国際オルガンコンクールにてバッハ・モーツァルトプライスを受賞。
1998
4月より20023月まで新潟市民芸術文化会館の専属オルガニストを、20064月より20093月までミューザ川崎シンフォニーホール・ホールオルガニストを務めた。200712月には愛知県立藝術大学アーティスト・イン・レジデンスとして公開講座、及びリサイタルを行う。200412月から20103月まで日本大学カザルスホールにて、全12回のJ.S.バッハオルガン作品全曲演奏会を行った。2012年1月、オクタヴィアレコードからJ.S.バッハオルガン作品集vol.1をリリース。レコード芸術特選盤、Stereo特選盤、毎日新聞今月の一枚等、各誌から高い評価を受けている。
現在、愛知県立藝術大学、日本大学藝術学部音楽学科講師。

 

 


 

山手聖公会で味わう

フェルメールに響く音楽

 

プログラム

 

横浜山手の洋館、山手111番館は、広い芝生を前庭とし、ローズガーデンを見下ろす住宅として大正15年に建てられました。設計者は、ベーリック・ホールを設計したJ.H.モーガン。彼は横浜を中心に多くの作品を残していますが、山手111番館は彼の代表作の一つ。2階まで吹き抜けになった古き香りのただよう西洋館の贅沢な空間で、「主に向かって歌おう」と題して心に直に語りかけるようなアーチリュートの響きとバロック宗教歌曲を中心としたソプラノを味わいました。出演は、ソプラノ木島千夏さん、共演はヨーロッパに本拠を置き、国際的に活躍中の女流リュート奏者の野入志津子さんです。

 

プ ロ グ ラ ム

横浜山手聖公会は、日本の開国時期からの歴史を持ち、現在の教会も、震災や火災の困難を受けましたが、60年以上山手の代表的な教会のひとつとして親しまれています。本日は、歴史ある教会の素晴らしい空間でフェルメールの時代にヨーロッパに響き渡った音楽を、今年生誕450年にあたる同郷オランダの作曲家スウェーリンクを起点にお聴きいただきます。

 

A. ステッラ/主に感謝するのは良いことです

Andrea Stella / Bonum est confiteri Domino

 

A.   グランディ(1575?-1630)/わたしに答えてください

Alessandro Grandi / Exaudi me Domine

 

A.   グランディ(1575?-1630)/おお、あなたはなんと美しい(O quam tu pulchra es)

Alessandro Grandi / O quam tu pulchra es

 

まず17世紀初期の北イタリアで人気のあった小規模な宗教的な声楽曲のジャンルから、3つの独唱モテットを取り上げます。3曲とも1625年にヴェネツィアのガルダーノ社から出版された「聖なる花輪 Ghirlanda sacra」という曲集の中に収められています。アンドレア・ステッラについては、同時代の作曲家ということ以外には、残念ながら詳しいことは何も残されていません。アレッサンドロ・グランディはフェラーラ、ヴェネツィアを経てベルガモのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の楽長を務めました。ヴェネツィア時代には、モンテヴェルディが指揮者をしていたサン・マルコ大聖堂の聖歌隊の歌手として活躍し、モンテヴェルディの作品にも触れて刺激を受けたと思われます。コンチェルタート様式によるモテットやカンタータを発展させ、ドイツのシュッツにも影響を与えました。

主に感謝するのは良いことです

主に感謝するのは、良いことです。いと高き方よ。あなたの御名にほめ歌を歌うことは。

朝に、あなたの恵みを、夜ごとに、あなたの真実を言い表わすことは。

十弦の琴や六弦の琴、それに立琴によるたえなる調べに合わせて。

主よ、あなたは、あなたのなさったことで、私を喜ばせてくださいましたから、私は、あなたの御手のわざを、喜び歌います。

(新改訳聖書 詩編92:14

 

主よ、わたしに答えてください  

恵みと慈しみの主よ、わたしに答えてください。憐れみ深い主よ、御顔をわたしに向けてください。

わたしの魂に近づき、贖い、敵から解放してください。

神の御名を賛美してわたしは歌い、御名を告白して、神をあがめます。(新共同訳聖書 詩編69:17,19,31

 

おお、あなたはなんと美しい

おお  あなたはなんと美しい!わが愛する者よ、わが小鳩よ、わが麗しき人よ。

あなたの目は小鳩の目のようだ、あなたの髪は山羊の毛のごとし、そして歯は羊の毛のように白い。

来たれレバノンから、わが愛する人よ、わが小鳩よ、麗しき人よ。 来たれ、そして王冠を戴け。

起き上がって急ぐがよい、わが愛する者、汚れなきものよ、立って来たれ、愛の力が褪せぬうち。(雅歌より)

 

 

G. フレスコバルディ(1583-1643)/ トッカータとカンツォーネ「勝利」 --- リュート独奏

Girolamo Frescobaldi / Toccata & Canzone ultima dettra la VittoriaLute solo

ジローラモ・フレスコバルディは、北イタリア、フェラーラの出身で、イタリア初期バロックの鍵盤音楽を代表する作曲家兼オルガニストです。彼は、25才の若さでサン・ピエトロ大聖堂のオルガニストに就任し、以後、生涯にわたって楽譜を出版、数多くの鍵盤曲集を残しました。フローベルガーや大バッハなど、多くの後輩達が師と仰いだ大家です。トッカータとカンツォーネ「勝利」は表題にスピネットもしくはリュートのためのトッカータとある2声の曲をリュート用に和音を加えて編曲されたものを演奏します。トッカータは自由な形式で技巧的な走句を盛り込むことが一般的でしたが、フレスコバルディも自身のトッカータ集の序文に一定の拍節に縛られない表情豊かな演奏を勧めています。

 

G. フレスコバルディ(1583-1643)/こんなふうに僕を蔑むのか

Girolamo Frescobaldi / Cosi mi disprezzate

「こんなふうに僕を蔑むのか」は3拍子のパッサカリアの部分と2拍子のレチタティーヴォ風の部分が交互に現れ、つれない彼女への恨みと未練の間を揺れ動く想いを歌った曲です。

 

こんなふうに僕を蔑むのか

こんなふうに僕を蔑むのか?  この誠実な気持ちを拒絶して僕を苦しめればいい、僕のため息をあざ笑うがいい、

君が美しいってことは否定しないよ。黄金の髪、バラ色の頬、愛の神が君に与えた贈り物。

でも美などというものはあっという間に消え去ってしまうもの。 その時は僕が笑ってやる番さ。

 

 

G. フレスコバルディ(1583-1643)/カンツォーン ベルガマスカ --- オルガン独奏

Girolamo Frescobaldi / Canzon Bergasca(Organ solo)

カンツォーンとベルガマスカは、共に「音楽の花束」に収められている作品で、イタリア古様式の対位法に則って書かれています。カンツォーンが短いテーマを用い、器楽的展開を成しているのに対して、ベルガマスカは長いテーマを用いた声楽的展開で構成されています。

 

 

C. モンテヴェルディ(1567-1643)/すべての民よ、喜びの声をあげよ

 Claudio Monteverdi / Jubilet tota civitas

クラウディオ・モンテヴェルディはマントヴァのゴンザーガ家の宮廷楽長を務め、沢山のマドリガーレやオペラを作曲しました。後にヴェネツィアへ移り、サン・マルコ大聖堂の楽長となって教会音楽を作曲しました。ルネサンスからバロック時代への転換期に活躍し、新しい作曲技法を大胆に取入れて声楽曲において独自の作風を展開した、イタリア・バロックの重要な音楽家です。すべての民よ、喜びの声をあげよ は「倫理的、宗教的な森 (Selva morale et spirituale)」の中の一曲で、Canto(歌)とTacet(沈黙)の対話によって、聖人の祝日を祝う内容です。

 

すべての民よ、喜びの声をあげよ

「すべての民よ、喜びの声をあげよ、母なる教会は、永遠の神、われらの救い主に栄光の賛美を喜び歌え。」

「優しき聖母よ、心にあふれるこの喜びのわけは何なのか教えて下さい。」

「今日は神と人の前で偉大なみ業を行った聖人の祝いの日。」

 「神の掟のために命をかけ、働きを成し遂げたその聖人とは誰なのですか?」

「それは聖クレメンス! おお、祝福された聖人!信徒が彼をほめ讃えて歌うのはふさわしいことです。」

「すべての民よ、喜びの声をあげよ、母なる教会は、永遠の神、われらの救い主に栄光の賛美を喜び歌え。アレルヤ。」

 

J. P. スウェーリンク(1562-1621) /菩提樹の下で---オルガン独奏

Jan Pieterszoon Sweelinck / Onder de Lindegroene (Organ solo)

ヤン・ピータースゾーン・スウェーリンクはオランダ・アムステルダムで活躍したオルガニストであり、教育者として、オルガニストの育成にも高い評価を得ていました。プレトリウス、シャイデマン、シャイトといった、現在でもその作品が後世に広く伝えられているスウェーリンクの元で勉強したオルガニストが、当時の北ドイツの主要な教会で活躍していきました。ヴェネツィアの高名な音楽理論家、ツァルリーノの「和声教程」に精通し、またヴェネツィア楽派の最高峰であるガブリエリ一族の作品にも親しんでいたといわれています。菩提樹の下での原曲は、当時のドイツの俗謡です。スウェーリンクは、素朴かつ、闊達な雰囲気を持つこの旋律を用いて、様々な表情を持つ4つの変奏を書いています。

 

N. ヴァレット(c.1585-c.1650)/菩提樹の下で---リュート独奏

Nicholas Valette / Onder de Lindegroenelute solo

N. ヴァレット(c.1585-c.1650)/デカパン道化師---リュート独奏

Nicholas Valette / Les Pantalonslute solo

ニコラス・ ヴァレットはフランス生まれのリュート奏者です。当時のオランダは小国でありながら、海外貿易が盛んでヨーロッパの経済大国として栄えていました。その経済繁栄によりヴァレットのような海外の演奏家もアムステルダムで活躍しました。菩提樹の下ではまさにオランダの風景を思わせる牧歌的な曲です。一方デカパン道化師は時々ずっこけそうになる、あまり洗練されていない、ひょうきんなオランダ的なユーモアの曲です。この頃にはリュートは低音弦も増えて10コース(19本)の楽器へと変化しました。

 

 

H. パーセル(1659-1695)/祭壇に王冠を捧げ、神殿を飾れ

Henry Purcell / Crown the altar, deck the shrine

H. パーセル/恋人たちの心配

Henry Purcell / The cares of lovers

H. パーセル/バラの花より甘く

Henry Purcell / Sweeter than roses

H. パーセル/組曲 第2番 より、プレリュード、アルマンド、クーラント---オルガン独奏

Henry Purcell / Suite No.2 Organ solo
Prelude
Almand - Courant

H. パーセル/夕べの賛歌

Henry Purcell / Evening Hymn

ヘンリー・パーセルはイギリスのオルフェウスと呼ばれながら、惜しくも36歳の若さで夭折した英国を代表する作曲家。王室礼拝堂の少年聖歌隊員に始まり、王室のオルガン調律助手、王室合奏団の指揮者兼作曲家、ウェストミンスター寺院のオルガニスト、王室礼拝堂のオルガニストを歴任しました。祭壇に王冠を捧げ、神殿を飾れ は「メアリー女王の誕生日のためのオード」の中の一曲。パーセル得意のグラウンド・バスに乗って、厳かな雰囲気で祝祭の準備を歌います。恋人達の心配 は劇音楽「アテネのタイモンTimon of Athens」の中のソング。ほとんどレシタティーヴォのように歌われ、心配(cares)、驚き(alarms)、喜び(pleasure)などの言葉を音で絵を描くように表現しています。バラの花より甘く も劇音楽「パウサニアスPausanias」の中で、女王パンドーラが恋人の帰還をまちわびて歌う情熱的な愛の歌です。夕べの賛歌 は「ハルモニア・サクラHarmonia sacra」という宗教的な歌曲集の中に収められています。単純なグラウンド・バスにのせて、これほど豊かで心に残る旋律を生み出すことができるパーセルの非凡な才能を感じさせる珠玉の作品です。組曲第2番は、パーセルの死後、妻によって1696年に出版された、レッスン選曲集の中に収められている作品です。しかし、プレリュードのみ、二つの楽譜が残されており、一つは前述の曲集、もう一つは大英博物館の補遺に載っています。今回、プレリュードはこの補遺稿で演奏します。続く、アルマンドとクーラントは、当時実際に使われていた舞曲と比べて壮大な作風を持っています。

 

祭壇に王冠を捧げ、神殿を飾れ。

祭壇に王冠を捧げ、神殿を飾れ。

見よ、輝かしい天使の群れが私たちのハーモニーに加わろうとしている。聖歌隊が待ちかねている。

 

恋人たちの心配

恋人たちの心配、驚き、ため息、涙はすごい力を持っている。

苦しみがそれほど甘いものなら、うっとりするほどの幸せ!

恋の痛みがそれほど快く優しいものなら、嘆き訴えることもまた喜び!

 

バラの花より甘く

バラの花より甘く、夕べのそよ風よりも涼しい、花咲く海辺での口づけ。

初めは凍えたように震え、次の瞬間、火花が飛び散ったわ。恋とはなんという不思議な力を持っているのだろう。

あの口づけ以来、見るもの触れるもの全てが私には愛だとわかるようになったのですもの。

 

夕べの賛歌

今や太陽はその光をベールに隠し、世界におやすみを告げる。

私は柔らかなベッドに身を横たえるが、私の魂はどこで憩うだろう。

神よ、それはあなたのみ腕の中以外にはありません。

私の魂よ、その安らぎの場所へ行き、お前の日々を長からしめたもう恵みをほめ歌え。 ハレルヤ!

 

 

 

アンコール 

「グリーンスリーブス」でした。ありがとうございました。

 

♪♪♪♪♪

 

 

 

 

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