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ヴィオラ・ダ・ガンバについて

名称とサイズ  

ヴィオラ・ダ・ガンバ viola da gamba(またはヴィオラ・ディ・ガンバ viola di gamba)はイタリア語で、「脚(あし)のヴィオラ」という意味です。楽器を脚(膝、またはふくらはぎ)で支えることから、このように名付けられました。 

viola     =    弓で弾く弦楽器の総称 

da (di)     =     英語の for、by、of などに相当する前置詞 

gamba     =    脚(正確には膝から足首まで)  

英語ではヴァイオル viol、フランス語ではヴィオール viole です。英語でもフランス語でも、もともとはイタリア語を外来語としてそのまま(つづりと発音を多少変えて?)使っていたと思われますが、これらの国ではよく使われるようになったため、省略形の名前が定着したのでしょう。

この楽器はイタリアではあまり人気がなかったので、イタリア語の名前は省略形にならなかったと思われます。ドイツ語にはガンベ Gambe という言葉がありますが、当時のドイツではふつう楽器の名前はイタリア語が使われました。  

ソプラノ(英語ではトレブル)、テノール、バスの基本サイズがあります。大きさと音域は、ソプラノがヴァイオリンと、バスがチェロと、それぞれほぼ同じです。バスがもっともよく使われたので、単にヴィオラ・ダ・ガンバといえばふつうはバスのことです。  以下、とくに必要な場合以外は「ガンバ」と書きます。

形と材質  

胴体の形はヴァイオリン属(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど)と似ていますが、中央部のくびれが少なく、全体に丸みがあり、裏板は平らです。しかし、変則的な形も多く、チェロをガンバに改造したものもあります。表板の中央にある響孔の形は一般的には C 字型ですが、f 字型や火焔型、蛇型もあります。表板は主にマツ、裏板と側板はカエデなどが使われ、ヴァイオリン属に比べて板は薄く作られています。  

弦は6本あり、材質はヴァイオリン属と同じくガット(羊の腸)で、低音弦には金属が巻かれています。調弦法(隣接する弦の音の間隔)は、ヴァイオリン属の5度に対して、ガンバはギターに似て4度が基本で、中央の1ヵ所だけが長3度です。 指板にはフレットがありますが、ギターのフレットと異なり、材質は弦と同じガットで、指板に固定せず巻き付けてあるだけなので、上下に少し動かせます。

特  徴  

ガンバの最大の特徴は、小さなサイズでも脚で支えることです。また、弓は現代のチェロのように上から木部をつかむのではなく、箸を持つように、掌を上に向けて下から木部と毛を支えて持ちます。  ガンバのもう一つの特徴であるフレットは、隣接する弦の音程が狭いこととも相俟って、多くの音からなる密集した和音を弾きやすくしています。  

ヴァイオリン属と比べて弦の張力が弱いガンバは、柔らかく繊細で、くすんだ音がします。その抑制された響きのメランコリックな印象から、当時ガンバは「高貴な楽器」とみなされていました。

歴  史  

ガンバの起源についてはよくわかっていませんが、ルネサンス時代の15世紀にスペインで誕生し、すぐにイタリアに伝わり、16世紀中頃にはほぼ形とサイズが定まったと考えられています。バロック時代に入ると、イタリアではヴァイオリン属の圧倒的人気に押されて、ガンバはほとんど忘れられてしまいますが、それに代わってイギリスで、続いてフランスとドイツで全盛期を迎え、これらの国々でも多くのガンバが作られました。  

16世紀の中頃以降、楽器の形、構造などはあまり変化していませんが、胴体内部に補強材が少しずつ加えられ、音量はいくらか大きくなりました。また、17世紀後半にフランスで低音弦を追加した7弦のバスが考案され、この7弦用の曲には当然のことながら6弦では出せない音があります。

レパートリー  

ガンバ独自のレパートリーとして重要なのは、イギリスのコンソート音楽と無伴奏独奏曲、フランスおよびドイツの独奏曲や二重奏曲です。  「コンソート consort」とは各パート1人ずつによる合奏(すなわち重奏)のことで、もともとは種類の異なる楽器の組合せでしたが、同属楽器の組合せもコンソートと呼ばれています。16世紀後半〜17世紀半ばのイギリスでは、主にガンバのためにおびただしい数のコンソート音楽が作られました。一方、無伴奏独奏曲は、和音を弾きやすいというガンバの特徴を活かして、ギターやリュートのように主旋律と伴奏を独りで同時に弾くものです。  17世紀半ば以降、フランスとドイツでガンバのための独奏曲(多くは通奏低音を伴う)や二重奏曲がたくさん書かれました。とくにフランスでは7弦のバスが好まれ、4オクターブに迫る広い音域と重音奏法を活かした作品が数多く残されています。その中には高度な技巧を要する曲も少なくありません。

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