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83rd Concert


アンサンブル山手バロッコ第83回演奏会
開港160周年記念コンサート

古楽器の響きで味わう

モーツァルトの協奏曲と交響曲 
Mozarts Concertos and Symphony with period instruments

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第89回 

201961日(土) 14時開演(1330分開場)
横浜市開港記念会館講堂  
14:00
 1st June 2019 at Yokohama Port Opening Memorial Hall

主催: アンサンブル山手バロッコ

特別協力: 横浜市中区役所 後援:横浜アーツフェスティバル実行委員会 
協力:Atelier Moet 森田朋子、野神俊哉(鍵盤楽器製作家)

 

出演

 

朝岡 聡(お話)

横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。1995年からフリー。TV・ラジオ・CMの他、コンサートソムリエとしてクラシック演奏会の司会や企画にもフィールドを広げている。特に古楽とオペラでは親しみやすく本質をとらえた語り口が好評を博している。リコーダーを大竹尚之氏に師事。著書に「笛の楽園」(東京書籍)「いくぞ!オペラな街」(小学館)など。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手地区西洋館でのコンサートを継続している。「横濱・西洋館de古楽」実行委員長。

 

大村 千秋(フォルテピアノ)

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 東京藝術大学大学院古楽科チェンバロ専攻を大学院アカンサス音楽賞を得て修了。2009年度文化庁新進芸術家海外研修員としてオランダに留学、アムステルダム音楽院チェンバロ科およびフォルテピアノ科にて学ぶ。これまでに崎川晶子、大塚直哉、ボブ・ファン・アスペレン、リチャード・エガーの諸氏に師事。 第21回古楽コンクール山梨において最高位受賞。2011年に帰国後は、チェンバロ、フォルテピアノのソリストとして、また通奏低音奏者として国内外で演奏を行うほか、CD録音や音楽祭、レクチャーコンサートなど多方面で活躍している。現在、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。 http://www.chiakiomura.wordpress.com 

 

曽禰 寛純(クラシカル・フルート)

フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で習得、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

大山 有里子(クラシカル・オーボエ)

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大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。近年はバロック時代だけでなく古典期のオーボエ曲のピリオド楽器による演奏にも取り組んでおり、関東を中心に活発に活動している。2016年よりリサイタル「バロック・オーボエの音楽13」を開催。「クラングレーデ」、「ダブルリーズ」メンバー。

 

今西香菜子(クラシカル・オーボエ)

13歳よりオーボエを始め、これまでにオーボエを東野正子、故 本間正史、故 柴山洋の各氏に師事。リチャード・ウッドハムス、若尾圭介、ジョナサン・ケリー等のマスタークラスを受講桐朋学園大学および同大学研究科修了。在学中よりバロック・オーボエを始め、故 本間正史氏に師事。アルバート・ロトによる室内楽のレッスンを受講。現在フリーで演奏活動中。エンゼルミュージック、フォレストミュージック講師。 「ダブルリーズ」、「アンサンブル・ミラコ」メンバー。

 

石野 典嗣(クラシカル・オーボエ、クラシカル・ファゴット)

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バロック・オーボエ、バロック・ファゴットを独学で学ぶ。古楽器演奏家の追っかけと押しかけレッスン受講歴有り。現在、カメラータ・ムジカーレ同人、アンサンブル山手バロッコメンバー。 

 

永谷 陽子(バロック・ファゴット)

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桐朋学園大学卒業。同大学研究科及びオーケストラアカデミー修了。バロック・ファゴットを堂阪清高氏に師事。2012年横浜・西洋館 de古楽で、モーツァルトのファゴット協奏曲をピリオド楽器で熱演。第26回国際古楽コンクールにて 奨励賞を受賞。古楽、モダン両分野でオーケストラや室内楽、CD録音に参加。八王子音楽院、ドルミール音楽教室講師。「ダブルリーズ」他メンバー。

飯島さゆり(クラシカル・ホルン)

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東京芸術大学、フランクフルト音楽大学を卒業、ブリュッセル音楽院を修了。在独中、トリア市、及びドルトムント市立歌劇場管弦楽団の契約団員を務める。 ホルンを故千葉馨、故田中正大、守山光三、堀内晴文、マリー・ルイゼ・ノイネッカー、ヨアヒム・ペルテル、故アンドレ・ファン・ドリーシェの各氏に、ナチュラルホルンを、クロード・モーリー氏に師事。埼玉県立大宮光陵高校及び神奈川県立弥栄高校音楽科専攻ホルン非常勤講師。

 

慶野 未来(クラシカル・ホルン)

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東京芸術大学附属高校を経て、東京芸術大学器楽科を卒業。オーケストラ、室内楽をはじめとする演奏活動の他、歌曲、合唱曲の作曲者としても時々活動している。 現在神奈川県立弥栄高校 音楽科非常勤講師。 

 

  

小野 萬里(クラシカル・ヴァイオリン)

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東京藝術大学ヴァイオリン科卒業。1973年ベルギーに渡り、バロック・ヴァイオリンをS. クイケンに師事、以来たゆみない演奏活動を展開している。現在、「チパンゴ・コンソート」、「ムジカ・レセルヴァータ」メンバー。  

 

片桐 恵里(クラシカル・ヴァイオリン)

東京藝術大学卒業、同大学院修了。埼玉県新人演奏会に出演。ヴァイオリンを掛谷洋三、浦川宜也の各氏に、バロック・ヴァイオリンを小野萬里氏に、室内楽をピュイグ・ロジェ、ルイ・グレーラーの各氏に師事。東京ハルモニア室内オーケストラのメンバーとして、国内外でのコンサートに出演。室内楽、古楽アンサンブルを中心に活動している。古楽トリオ「ヴィアッジョ・ムジカーレ」メンバー。

 

角田 幹夫(クラシカル・ヴァイオリン)

慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを習得。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。

 

原田 純子(クラシカル・ヴァイオリン)

洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏に師事。慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブル「デュナミス」、アンサンブル山手バロッコメンバー。

 

伊藤 弘祥(クラシカル・ヴァイオリン)

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慶應バロックアンサンブルでヴァイオリン、ヴィオラを演奏。また、同大学の日吉音楽学研究室主催の「古楽アカデミー」に、2010年より第一期生として参加し、バロック・ヴァイオリン、バロック・ヴィオラを演奏している。

 

榎本憲泰(クラシカル・ヴァイオリン)

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学生時代は慶応バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。卒業後は各種オーケストラやアンサンブルに参加。大学の友人とともにアンサンブル・リンクス主催。

 

山口 隆之(クラシカル・ヴィオラ)

学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコメンバー。都留音楽祭実行委員。歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。

 

小川 有沙(クラシカル・ヴィオラ)

慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコメンバー。

 

黒滝 泰道(チェロ)

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矢島富雄、三木敬之、山崎伸子各氏の指導を受ける。慶應バロックアンサンブルOB。弦楽合奏団、古楽アンサンブルなどで活動。現在麻生フィルハーモニー管弦楽団、ザロモン室内管弦楽団メンバー。

 

北村 貞幸(チェロ)

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慶應ワグネル・ソサイエティ・オーケストラなどでチェロを演奏。現在、古楽器とモダン楽器で主にバロック音楽や古典〜近代の室内楽を演奏。

  

飯塚 正己(コントラバス)

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学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を続けている。アンサンブル山手バロッコメンバー。

 

和田 章(フォルテピアノ)  

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小林道夫氏にチェンバロを師事。慶應バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ発足メンバー。


アンサンブル山手バロッコ第83回演奏会
開港160周年記念コンサート

古楽器の響きで味わう

モーツァルトの協奏曲と交響曲 
Mozarts Concertos and Symphony with period instruments

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第89回 

 

本日は開港160周年のコンサート古楽器の響きで味わうモーツァルトの協奏曲と交響曲へお越しいただき有難うございます。 2009年に横浜開港150周年の記念行事としてスタートした横浜市開港記念会館での開港記念コンサート、 今回のテーマは、開港と共に日本に流れ込んだクラシック音楽の中でも、日本人に愛され続けてきたモーツァルトです。開港記念会館を往時の劇場や貴族の館に見立てて、フォルテピアノやクラシカル・ホルンなど当時のスタイルの楽器の響きでコンサートを再現します。いにしえのパリやウィーンの貴族や市民をとりこにした天才モーツァルトの世界に、みなさまをご案内いたしましょう。  

♪ ♪ ♪

 

W.A.モーツァルト1756-1791)は、ザルツブルクで生まれ、幼少から父親レオポルトの英才教育と欧州各地の音楽先進地への音楽旅行を通じて、早くから演奏と作曲の才能を開花させ、30余年の短い生涯に多種多様なジャンルに多くの名曲を残しました。16歳の時にオーストリアの地方都市ザルツブルクの宮廷楽団に就職しましたが、その後も就職活動を兼ねて欧州の都市への旅行を重ねました。22歳の時には、2度目のフランス旅行をし、パリの貴族と接し、またコンセール・スピリチュエルのような音楽舞台でも注目されました。25歳でザルツブルクの司教と決別し、ウィーンへ移りフリーランスの音楽家として教師、演奏、作曲と幅広く活躍しました。

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朝岡聡の司会でモーツァルトの時代のコンサートへご案内。4つの管楽器について説明中。


W.A.
モーツァルト/管楽器のための協奏交響曲 変ロ長調 KV.297b より 第1楽章 アレグロ   

Wolfgang Amadeus Mozart / Sinfonia Concertante in E-flat major for Flute, Oboe, Horn, Basoon and Orchestra KV.297b 1st Movement  Allegro

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モーツァルトは、17782月滞在中のマンハイムからパリに向かいます。パリに向かったのは、欧州中に有名だった公開演奏会コンセール・スピリチュエルで自分の作曲や演奏を披露して、就職活動をするためでした。3月にパリに到着するとコンセール・スピリチュエルの支配人グロと親しくなり、パリのテュイルリー宮殿で開催されるコンセール・スピリチュエルのために4月には4つの管楽器(フルート、オーボエ、ホルン、ファゴット)のための協奏交響曲(KV.297b)を作曲しました。

 協奏交響曲とは、複数の独奏楽器とオーケストラの編成で(バロック時代のコンチェルトグロッソのように)全奏と独奏が交互にあらわれ、ソロ奏者は独奏でまた独奏楽器のアンサンブルで、全奏のテーマを展開させ、腕前を披露するものです。特に管楽器を独奏とする協奏交響曲は、このパリのコンセール・スピリチュエルを中心に18世紀の最後に大変栄えました。(モーツァルトも、パリ到着後ド・ギーヌ侯爵と令嬢のためにこのジャンルのフルートとハープのための協奏曲を作曲)

モーツァルトは、177845日に、父レオポルド宛てに、「これからフルートのウェンドリング、オーボエのラム、ホルンのプント、ファゴットのリッターのために協奏交響曲を書くところです・・・」と喜ばしげに手紙を書いています。パリに滞在中のこの4人は、欧州各地を股に掛けて活躍する管楽器の名手たちで、マンハイム滞在を通じて旧知の間柄でした。ところが、この曲は作曲されたものの支配人グロの手に渡ったまま、なぜかコンセール・スピリチュエルでの演奏は実現されず、楽譜も消失していまいました。

 その後、モーツァルトの研究者で伝記作家のオットー・ヤーン(18131869)の遺品の中から1800年代の手描きのスコアで、モーツァルトのオーボエ、クラリネット、ファゴットとホルンのための協奏交響曲が発見されました。これが失われたパリの協奏交響曲で、当初とは異なる楽器の編成にモーツァルトが編曲したものとされ、演奏もされてきました。ところが、20世紀に入り様式的に疑わしいという研究発表が続き、新モーツァルト全集では、偽作として扱われているなど、現在まで議論の絶えない曲です。

 これに対して、アメリカの音楽学者でフォルテピアノ奏者のロバート・レヴィンが、1988年に400ページを超える大著、「誰がモーツァルトの4つの管楽器のための協奏交響曲を作曲したのか?」で、当時のパリで演奏されたさまざまな作曲家の協奏交響曲との比較や当時の楽器の音域、4人のソリストの特徴、またモーツァルトの楽曲との比較などを通じて、「ソロパートはモーツァルトの真作を新しい楽器編成に19世紀に組み替えられたものであり、オーケストラの伴奏は、新たに編曲者が作曲追加したものである」と結論づけました。さらに、当初のソロパートと、新たなオケパートを加えた復元を行いました。

 現在ではこの復元版の演奏もされるようになりましたが、当時の楽器での演奏にはお目にかかったことが無かったので、このレヴィンの復元稿を元に、私たちの編成で演奏するため修正を加え、1楽章アレグロを演奏します。音にならなかったパリの香り立つモーツァルトの響きをお聴かせすべく、当時の名人達への尊敬の念をもって演奏します。

 

W.A.モーツァルト/交響曲 第40番 ト短調 KV.550 (1稿)

Wolfgang Amadeus Mozart /  Symphony No.40 in G minor KV.550 (1st version) 

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モルト・アレグロ - アンダンテ - メヌエット(アレグレット)/トリオ - アレグロ・アッサイ

Molto Allegro Andante Menuetto (Allegretto)/Trio - Allegro assai

 交響曲第40番ト短調KV.550)は、モーツァルト32歳の17887に作曲されました。短調の交響曲はわずか2曲しかないこともあって、作曲家の死後も特別な曲として、ロマン派から近代にいたるまで興味を持って論じられ、演奏されてきました。しかし最近になって、そのような主観的な考えをそぎ落とし、作曲の時期に立ち戻って研究を進めることで、モーツァルトの三大交響曲と呼ばれる39番(変ホ長調)、40番(ト短調)、41番(ハ長調)は3カ月余りで完成された3部からなるセットで、それぞれの性格が全く異なる曲でありながら、動機や構成、和声など多様性と統一を意図したものだと考えられるようになりました。ニコラウス・アーノンクールはこの3曲を器楽によるオラトリオ」と呼び、39番の導入から、ト短調を経て、41番のフーガへと終結される言葉のない宗教劇だと考えて、3つをセットで録音し、コンサートでもひと続きで演奏していました。

あまりにも有名な曲ですので、曲についての説明は割愛し、関連する事柄について2つお届けします。

Q1: この曲には初演の記録が残っていませんが、実際に演奏されたのでしょうか?

A1: 三大交響曲はどの曲も、初演の記録は残されていませんが、その構想から実際に音にしない前提でモーツァルトが作曲したとは想定できません。このト短調交響曲についても、翌年の始めに2楽章の改訂を行っていることが分かり、モーツァルトが演奏を聴かずに改訂をすることは考えられないため、作曲の年に(おそらくブルグ劇場で)演奏されたと考えられます。さらに、後にモーツァルトはこの曲にクラリネットを加え、木管楽器のパートの見直しをした改訂版を作っていますので、演奏されたのは確実だと思います。

Q2: モーツァルト時代のオーケストラは、現代と異なる楽器を使っていたそうですが、どのような編成で演奏し、舞台配置はどうなっていたのでしょうか?

A2 当時の弦楽器はガット弦の響き、管楽器も、キーの少ない木管楽器バルブのないクラシカル・ホルンといった軽やかな音色が現代楽器とは大きく異なる点と思います。また、フォルテピアノも現代のピアノに比べるとずっと軽やかで立ち上がりの良い音を響かせます。オーケストラのサイズは、大きなパトロンの楽団は大規模であり、小都市や個人邸宅での演奏では小規模の楽団が用いられました。第1ヴァイオリンが2から6程度が一般的でしたが、ベートーヴェンが試演を多くしたパトロンのロプコヴィッツ侯爵の邸宅では、弦楽器各パート1名だったという研究もあり、随分小さな規模もあったようです。管楽器は弦楽器の本数にかかわらずほぼ一定(各パート1本)であったことが分かっています。私たちの今回の編成は、ライプチヒ・ゲバントハウス(1794年) 、プラハ劇場オケの編成に近く、管楽器もほぼ当時のバランスです。また、通奏低音については、当時は殆どのオケで利用されています。まだ独立した指揮者でなくコンサートマスターを中心に、作曲者自身が鍵盤楽器につくというケースが多かったためと考えられています。私たちも指揮者なしで演奏しますので、通奏低音(鍵盤)楽器は重要と考え、フォルテピアノで通奏低音を演奏します。

舞台配置は、様々ですが、ヴァイオリン1と2は左右に対向配置。中央に低弦楽器、後列にホルン含む木管楽器としました。なお、ピアノ協奏曲は、弦楽器と管楽器とピアノフォルテの会話が聴こえるように、左に弦、中央にフォルテピアノ、右側の管楽器の編成を予定しておりましたが、会場で響きを確認し、交響曲と同じ配置といたしました。

 参考に、当時のオーケストラの楽器編成表とモーツァルトの年表を今回演奏する曲を中心にまとめました。

 

W.A.モーツァルト/ピアノ協奏曲 第17番 ト長調 KV.453 

Wolfgang Amadeus Mozart / Piano Concerto No.17 in G major KV.453 

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アレグロ - アンダンテ - アレグレット/プレスト  

Allegro Andante Allegretto/Presto

178125歳のモーツァルトは、ザルツブルクの大司教と宮廷音楽家の生き方と決別し、音楽の都ウィーンへ移住し、翌年にはコンスタンツェと結婚をし、生涯この地でフリーランスの音楽家として生活することになります。ウィーンの貴族や裕福な市民にフォルテピアノを教え、自身の作曲と演奏でコンサートをし、楽譜を出版するなど、精力的な活動が始まります。ピアノ協奏曲第17KV.453)は、多くのピアノ協奏曲を作曲し、コンサート活動の充実した年、17844に、愛弟子プロイラー嬢のために作曲されました。このト長調の協奏曲では、新たに管楽器セクション、弦楽器セクションの対比を強め、オーケストラが独奏フォルテピアノと交響曲のような充実した響きを追及しています。

曲の解説の代わりにエピソードを2つお届けします。

その1:「山手バロッコで一度この曲をやってみたいのですが、好きですか?」と伺ったときの感想を、独奏を弾いてくださる大村さんは、「とにかく驚きました。17番は留学中に出会って以来、繰り返し聴いてきた大好きな曲だったからです。古楽の世界に足を踏み入れる前、20番と23番を弾いたことがありましたが、17番は、それら有名な20番代とはまったく異なる愉悦あふれる軽やかさと優雅さがあるように思います。聴くたびに『こんなに楽しい曲を弾けたらどんなにか幸せだろう!』と思っていましたので、好きですかと聞かれた時は、え〜!! と目がまるくなったのを覚えています。」

その2:モーツァルトは、この年の527日、4月に作曲したばかりのこの協奏曲の第3楽章の冒頭のテーマの口笛が聴こえ、それが近くのペットショップのムクドリ(ホシムクドリ)がさえずっているのだと分かって、そのムクドリ購入し家で飼うことにしました。モーツァルトはその歌った旋律を記譜し、「それは美しかった!」と感想も書き加えています。これまで初演は6月に郊外の宮廷でされたと考えられていました。しかし、ムクドリはどうやって、このメロディーをさえずることができたのでしょうか?

生態学者リン・ハウプトは同種のムクドリを実際に自宅で飼育し、当時の音楽関係の記録なども参考に研究を進め、大変面白い本を出しています。以下はその内容をさらに想像たくましく広げたものです。

Q1: はたしてムクドリに曲を歌い、しかも作曲者の前で披露するということなどできるのでしょうか?

A1: 声帯と音の認識能力が高く、曲(ありのままの音)を正確にさえずる能力があり、さえずり鳥の典型として、完全に覚えるまで執拗に繰り返し、自分のものにする傾向があるということが分かっています。また社会性のある(群れ)鳥であり、音を状況と関連付けて記憶することができ、状況に合わせて音を発するという能力を持っています。店をしばしば訪れる近所の作曲家を知っていたかもしれませんね。

Q2: 4月に作曲した曲を、なぜ初演とされる6月より前に歌えたのでしょうか?

A2: 売れっ子モーツァルトが作曲の完成した4月から2カ月も新作を演奏しないということは考えにくく、作曲早々にウィーン(ブルグ劇場など)で演奏したということが考えられます。録音のなかった当時、劇場からの帰り道に、聴衆の何人かが、ペットショップの前を、この鳥のさえずりのようなテーマを口笛で吹きながら通ったのではないかと推測しています。

参考に、当時のオーケストラの楽器編成表とモーツァルトの年表を今回演奏する曲を中心にまとめました。

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参考文献: 

1) 海老澤 敏/ モーツァルト事典 (東京書籍)

 2) Robert D Levin /Who Wrote the Mozart Four-wind Concertante? (Pendragon Press, 1988

3) Lyanda Lynn Haupt/モーツァルトのムクドリ(天才を支えたさえずり) (青土社 2018年)

4) N..Zaslaw/Mozarts Symphonies- Context, Performance Practice, Reception (Oxford University Press, 1989)

     その他 アーノンクールの三大交響曲のCD解説を参考にさせていただきました。(アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)

 

アンコール

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たくさんの拍手をいただきましたので、ピアノ協奏曲 第17番 第3楽章よりプレスト、お届けします。 



ありがとうございました。

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