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63rd Concert

  

アンサンブル山手バロッコ第63回演奏会

洋館サロンで味わう

ハイドン&ベートーヴェンの協奏曲

Symphony Concertos of Haydn and Beethoven

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第61

201627日(日)18時開演(1730分開場) ベーリックホール(横浜市中区山手町72 番地) 
18
00 7th February 2016 at Yamate Berrick Hall

 

主催:「横濱・西洋館de古楽」実行委員会

共催:公益財団法人横浜市緑の協会/横浜古楽プロジェクト 後援:横浜市中区役所

協力:横浜山手聖公会/アンサンブル山手バロッコ/オフィスアルシュ/The TableALICE”(主宰

 

出演

 

橋 弘治(クラシカル・チェロ)

 

 

桐朋学園大学音楽学部、及び、ブリュッセル王立音楽院古楽器科卒業。2001年、ラ・プティット・バンドのヨーロッパ・ツアーにおいてソリストを務める。その後、2007年までラ・プティット・バンドのメンバーとして演奏活動を行う。その活動はヨーロッパ各国、日本、そしてメキシコにまで及ぶ。帰国後は古楽器オーケストラに参加するほか、2011年よりチェンバリスト岡田龍之介氏の主宰する古楽アンサンブル「ムジカ・レセルヴァータ」のメンバーとして演奏活動を行っている。201511月には指揮者として三重県四日市市にて「四日市シンフォニックコーラス」第27回定期演奏会にてヘンデルのオラトリオ「メサイア」全曲を指揮するなど活動の場を広げている。現在、「神戸バッハ・カンタータ・アンサンブル」トレーナー。桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」名古屋教室 講師。ー。

 

崎川 晶子(フォルテピアノ)

 

 

桐朋学園大学ピアノ科卒業。ピアノを故井口基成、兼松雅子、ジャン=クロード・ヴァンデンエイデン、指揮伴奏を故斎藤秀雄に師事。ベルギーにてチェンバロに開眼し、シャルル・ケーニッヒ、渡邊順生、パリの古楽コンセルヴァトワールでノエル・スピース、フォルテピアノをパトリック・コーエンに師事。ドレスデン・カンマーゾリステン、デイヴィッド・トーマスなど外国アーティストとも共演多数。現在ソロ、コンチェルト、室内楽など多方面で活躍中。ソロCD「ア川晶子/クラヴサンの魅力」「モーツァルトの光と影」「夢見る翼」(ア川晶子のために書き下ろされた上畑正和作品集)等をリリース、好評を博している。「モーツァルト・フォルテピアノ・デュオ」(渡邊順生氏と共演)は、2006年度レコードアカデミー賞(器楽部門)受賞。「音楽の泉シリーズ」主催。2011年には「バッハ/アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」を、2014年には「没後250年記念 『ジャン=フィリップ・ラモーの肖像』」をCDリリース、各誌で絶賛を受ける。 「横濱・西洋館de古楽2012および2013」でモーツァルトのピアノ協奏曲を演奏、好評を博す。

 

 

小野 萬里 (バロック・ヴァイオリン)

東京芸術大学ヴァイオリン科卒業。1973年ベルギーに渡り、バロック・ヴァイオリンをS. クイケンに師事、以来たゆみない演奏活動を展開している。現在、コントラポント、クラシカルプレイヤーズ東京、チパンゴコンソート、ムジカ・レセルヴァータのメンバー。

 

大山 有里子 (クラシカル・オーボエ)

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後「大阪コレギウム・ムジクム」のソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。その後ピリオド楽器(バロック・オーボエ)による演奏に専念し、バロックアンサンブル「アルモニー・アンティーク」等で活動。現在、関東を中心に活発に活動している。 「クラングレーデ」 ,「ダブルリーズ」メンバー。

 

 

朝岡 聡 (ナビゲーター)

 

 

1959年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後テレビ朝日にアナウンサーとして入社。フリーとなってからはTV・ラジオ・CM出演のほか、コンサート・ソムリエとしてクラシックやオペラの司会や企画構成にも活動のフィールドを広げている。リコーダーを大竹尚之氏に師事。「音楽の友」などに音楽関連の連載多数。1998年にフラウト・トラヴェルソの曽禰寛純と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続している。横濱・西洋館de古楽2016実行委員長。

 

 

石野 典嗣(クラシカル・オーボエ)

 

 

バロック・オーボエを独学で学ぶ。古楽器演奏家の追っかけと押しかけレッスン受講歴有り。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。

 

 

曽禰寛純(フラウト・トラヴェルソ)

 

 

フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶應バロックアンサンブルで演奏。1998年にリコーダーの朝岡聡と共に、アンサンブル山手バロッコを結成し、横浜山手の洋館でのコンサートを継続。カメラータ・ムジカーレ同人。

 

 

原田純子(バロック・ヴィオラ)

 

 

洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏に師事。慶應バロックアンサンブルでヴァイオリンを演奏。卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブル「デュナミス」メンバー。

 

 

山口 隆之(クラシカル・ヴィオラ)

学生時代、独学でバロック・ヴァイオリン、ヴィオラを始める。アンサンブルを千成千徳氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。都留音楽祭実行委員。アンサンブル山手バロッコメンバー、歌謡曲バンド「ふじやま」リーダー。

 

小川 有沙(クラシカル・ヴィオラ)

慶應バロックアンサンブルでヴィオラを演奏。卒業後、オーケストラ、室内楽の両面で活動している。アンサンブル山手バロッコ メンバー。

 

中尾 晶子(クラシカル・チェロ)

チェロを佐々木昭、アンサンブルを岡田龍之介、花岡和生の各氏に師事。カメラータ・ムジカーレ同人。アンサンブル山手バロッコ メンバー。

 

飯塚 正己(コントラバス)

学生時代よりコントラバスを桑田文三氏に師事。卒業後河内秀夫、飯田啓典の各氏より指導を受け演奏を

続けている。アンサンブル山手バロッコ メンバー

 

大村 千秋(フォルテピアノ)

東京藝術大学大学院チェンバロ科、アムステルダム音楽院チェンバロ科およびフォルテピアノ科にて学ぶ。崎川晶子、大塚直哉、ボブ・ファン・アスペレン、リチャード・エガーの各氏に師事。第21回古楽コンクール山梨にて最高位受賞。チェンバロ、フォルテピアノのソリスト、通奏低音・アンサンブル奏者として活動を行っている。


アンサンブル山手バロッコ第63回演奏会

洋館サロンで味わう

ハイドン&ベートーヴェンの協奏曲

Symphony Concertos of Haydn and Beethoven

“洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第61

     

 ハイドン、モーツァルトとベートーヴェンの生きた18世紀。ピアノ協奏曲や交響曲が室内楽用に編曲されて上流階級のサロンで楽しまれていました。また、ハイドンの仕えたエステルハージの宮廷では小編成のアンサンブルでチェロ協奏曲が演奏されていました。イギリスの伝統的サロンを持つベーリックホールで18世紀風演奏会を再現します。親しみやすいアンサンブルで立派に響く交響曲や協奏曲は品格に満ちた美しさ。古楽器ならではの響きを生かしたユニークなプログラムは聴く人の心をとらえて離さないはずです。ご好評にお応えし、今回も新たな趣向でお楽しみいただきます。18世紀サロンコンサートへ私がご案内いたします。(朝岡聡)

 

 

プログラム

 

ハイドン(1732-1809/ザロモン(1745-1815):交響曲 第73番 ニ長調 「狩」 Hob.I:73
J. Haydn/ J. P. Salomon : Symphony No.73 in D-Major, La Chasse Hob.I:73
 

アダージョ/アレグロ- アンダンテ- メヌエット(アレグロ) – 「狩」(プレスト)
Adagio/Allegro
Andante - Menuett(Allegro) – La ChassePresto

 ハイドン交響曲第73番「狩」は、1781年に仕えていたエステルハージ宮廷で作曲されました。この曲は、ハイドンが、ウィーンで出版し音楽の都に自作を問うた最初の交響曲であり、自信作であったと考えられています。題名の「狩」は第4楽章に野外の楽器オーボエとホルンによる狩りのテーマが現れ、ハイドン自身もこの楽章に La Chasse〔狩〕という名称をつけたためです。ハイドンの友人で演奏家・作曲家のザロモンはハイドンをロンドンに招聘し、ハイドンの交響曲をコンサートマスターとして演奏したことで知られていますが、この機会・経験を生かして、ハイドンの多くの交響曲を室内楽編成(フルートと弦楽四重奏、通奏低音のフォルテピアノ付き)に編曲し出版しました。大変巧みな編曲で当時のサロンでの演奏に適し、原曲をイメージさせる変化のある演奏ができることで評判を呼び、同時代の室内楽への編曲のモデルになりました。この第73番も、ザロモンの形式をモデルに交響曲から室内楽編成に編曲された出版譜が知られていましたが、最近になって指揮者・演奏家のクリストファー・ホグウッドがザロモンの自筆楽譜を発見し、それに基づいた原典版を出版しました。本日は、この原典版による室内楽編成に、コントラバスを加えて演奏いたします。

 第1楽章は序奏につづいてアレグロが主調の下属調から開始されるという不安定さを持っていますが、それが音楽を前進させる力となっています。第2楽章は、自作の歌曲「相愛」をテーマとした変奏曲。第3楽章メヌエットは中間部で管楽器が活躍します。最終楽章はエステルハージ侯の宮廷で上演されたオペラ「報いられた誠」の序曲を転用したものです。「報いられた誠」は、恋人の誠実を題材にしたオペラで、女神ダイアナが登場します。狩りの女神にちなんで狩猟ホルンのモチーフを使った序曲が作られました。楽章の途中に登場するオーボエとホルンのファンファーレ(本日はフルートと弦で演奏)は18世紀はじめから知られていた狩猟で使われるメロディー(獲物を見つけたときに吹く合図)であり、当時の貴族はこのモチーフを聴いた瞬間に、狩場の景色が目に浮かんだことと思います。この自作のオペラ序曲で華々しく曲を閉じます

 

ハイドン(1732-1809):チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1
J. Haydn
Concerto in C major for Violoncello and orchestra  Hob.VIIb-1

モデラート  - アダージョ - アレグロ モルト
Moderato - Adagio - Allegro molto

 ハイドンは、このハ長調の協奏曲(チェロ協奏曲第1)と1780年代に作曲されたニ長調の協奏曲(チェロ協奏曲第2番)の2曲のチェロ協奏曲を残していますが、この第1番がどのような機会に作曲されたかは良く分かっていません。自作目録を1765年につけ始めたハイドンは、このチェロ協奏曲ハ長調を、この目録に記入していましたので、その存在は知られていましたが, 曲(楽譜)は発見されず、どのような曲なのか謎に包まれたままでした。 ようやく20世紀(1961年)になって、プラハの博物館で楽譜(18世紀に作られた筆写譜)が発見され、出版されたことにより、現在ではチェロ奏者の重要なレパートリーになっています。

 1761年にエステルハージ侯の宮廷楽団の楽長に就任したハイドンは、この楽団の若くて有能なチェリスト、ヨゼフ・ヴァイグルと出会い、彼のためにこの協奏曲を書いたと考えられています。作曲年代は、音楽的特徴と自作目録の記述から、1762年から1765年の間に作曲されたと考えられます。曲はハイドンのまだ30代の作であり、交響曲も発展・実験が繰り返されていた時期でもあり、バロック時代のなごりも見られますが、一方で次の時代に突き抜けるような特徴的で技巧的なチェロのパートが書かれています。このことだけでも、このチェロ奏者が大変な名手だったということが窺われますが、さらに彼はこの時期の交響曲に特徴的な、大活躍する独奏チェロのパートも演奏しました。

 

 様式的にはこの時期の交響曲の特徴を多く持っています。第1、第3楽章では、リトルネロ形式の採用など、多くの点でバロック式の協奏曲の名残やギャラントな好みへの傾斜が見られますが、快速なソナタ形式で書かれており、バロックから古典派の転換のエネルギーも感じます。第2楽章は、チェロが歌手に感じられるような、弦楽のみの伴奏で、ゆったりとした曲想に代わります。

 なお当時の宮廷楽団では現在のオーケストラに比べてはるかに小規模のアンサンブルで演奏されていました。現在のコンサートホールと異なり、小規模で響きの良い部屋で演奏されたことにより豊かで親密な響きが楽しまれたと考えられています。本日は、オリジナルのオーボエ2本、ホルン2本、弦楽合奏の編成を、オーボエ2本、第1、第2ヴァイオリン各1本、ヴィオラ1本、ホルンパートを補完するヴィオラ1本、独奏チェロ、伴奏チェロ、コントラバスと通奏低音のフォルテピアノの編成で演奏します。

 

ベートーヴェン(1770-1827) :ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15
L. van Beethoven : Concerto in C major for Fortepiano and orchestra Op.15

アレグロ コン ブリオ – ラルゴ – ロンド(アレグロ)
Allegro con brio - Largo -  Rondo
Allegro

ベートーヴェンは、179222歳の時に、ハイドンの弟子となり生まれ故郷のボンからウィーンに旅立ちます。ここでハイドンに教えを乞うのに加え、他の音楽家からも対位法や演奏法を貪欲に学び、自作の交響曲やピアノ協奏曲によるウィーン音楽界へのデビューに備えていました。ピアノ協奏曲第1は、1794年に作曲が始まり、1795年の3月にウィーンでサリエリの指揮、ベートーヴェンの独奏で初演されました。さらにその年の12月にはイギリスより帰国したハイドンの指揮、ベートーヴェンの独奏で再演されています。

 この協奏曲は、ウィーンで活躍した先輩モーツァルトの晩年のピアノ協奏曲をモデルとしたと言われています。伴奏の編成は弦楽合奏に加え、フルート、2本のオーボエ、2本のクラリネット、2本のファゴット、2本のホルン、2本のトランペットとティンパニという大きな編成になっています。この大編成のほか、5本の弦楽器(第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の伴奏に編曲された19世紀の出版譜も残されており、劇場でのコンサートに加えて、サロンでの演奏も楽しまれていたことが分かります。また、研究者シュテーファン・ヴァインツィールは、ベートーヴェン時代のサロン(貴族の邸宅の音楽室)の音響を調査し、現代のホールよりもはるかにパワフルな響きをもっていたことを明らかにし、またベートーヴェンのパトロンのロプコヴィッツ侯爵の邸宅で、交響曲「英雄」をはじめ、多くの大編成の管弦楽曲、協奏曲を試演したという事実を、その部屋のサイズや音響を総合判断し、この邸宅での演奏では、各パート1名という編成で演奏されたと推論しています。今回の演奏は、第1、第3楽章は、各パート1本ずつの弦楽5部、フルート、2本のオーボエに、ファゴット・金管セクション部分などを演奏するヴィオラとチェロを加えた編成でオリジナルの大編成をサロン形式で再現し、中間の第2楽章は、19世紀の編曲による弦楽5部の伴奏でお聴きいただきます。

 (プログラムノート: アンサンブル山手バロッコ 曽禰寛純)

 

 

楽器について

本日の曲が演奏された時代は、バロックの時代の楽器が、短い期間で古典派の楽器に変化し、楽器の変化と作曲家の楽器への要求の相乗効果により、ロマン派に向け、さらに大きく変化し続けた時期に当たります。特に変化の大きかったのはフォルテピアノで、音域、ペダルや楽器構造が変化し、ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲は、その作曲時期により、5オクターブから6オクターブまでの異なったタイプの楽器を必要とするほどです。本日の楽器は、ウィーンの楽器製作者ホフマンの楽器に基づいた5オクターブ半の楽器です。チェロはガット弦を張った楽器(製作者不詳)ですが、演奏につかう弓はバロック時代の軽やかな音形に適した形からより力強い発音のできる形に変化しています。管楽器も、12個の鍵のついたバロックの楽器から、より多くの半音階を強い音で演奏でき、より広い音域を演奏できるように鍵の数が増加し、リード、歌口の形や管の内径も変化しました。オーボエ奏者の大山有里子さんは、その変化の早さを、ご自身の楽器とベートーヴェン交響曲第2番を素材にして、次のような話に仕立てて紹介しています※。 

Cisキーのついた最新モデルの楽器が自慢の1番オーボエ奏者。フィナーレの中ほど、管楽器のソロがからみあうこの箇所を、高揚した気分で颯爽と吹ききり、フレーズ最後の低いCis の後をオーケストラがフォルテで引き継いだとき、彼は心の中で『どやっ!』とつぶやいた。隣の2番奏者は思った『俺も早よ新モデル買わなあかん』 ・・・ 」      

 
フォルテピアノ : P. McNulty, after F. Hoffman(1790)

 
チェロ : 製作者不詳


オーボエ(上から) : S. Dalton, after J.H.Grundmann (c1774)M.& F. Ponseele, after J.F.Grundmann c178090)、 
フルート : C. Soubeyran, after F.G.A.Kirst (c1790) 

※:「ベートーヴェン時代のオーボエ (http://blog.livedoor.jp/klangredeconcert/archives/46590325.html) 」参照

 

アンコール

どうもありがとうございました。

沢山の拍手をいただきましたので、

モーツァルトのチェロとフォルテピアノのためのアンダンティーノ KV Anh.46(374g)をお聴きいただきました。

ありがとうございました。

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