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129th Concert
バッハ ナンバーツー〜第2番を集めて〜
Collection of 2nd
Pieces of Bach’s Cembalo Works
“洋館で親しむバロック音楽”第146回
2025年1月16日(木)14時開演(13時30分開場) 横浜市イギリス館
14:00 16th January 2025
at British House Yokohama
主催:アンサンブル山手バロッコ 協力:寺村朋子コンサート事務局
出演
寺村朋子 (チェンバロ)
東京藝術大学卒業。同大学大学院修士課程修了。山田貢、鈴木雅明の両氏に師事。第7回国際古楽コンクール‹山梨›チェンバロ部門にて第2位入賞。シエナ、ウルビーノ、インスブルック、アントワープなど国内外の講習会を受講し研鑽を積む。NHK「FM リサイタル」に出演。マスタークラスの伴奏やバロックダンスとのアンサンブルなど様々な団体の通奏低音奏者、またはソリストとして活動。近年では中世声楽やフォルテピアノにも取り組み、活動に広がりを見せている。「フルート・バロックソナタ集」「J.S.バッハ作品集」(増刷)を編曲、出版。チェンバロ・ソロ CD「お気に召すまま Capriccio」(レコード芸術準推薦)リリース。宮地楽器チェンバロ科講師。日本チェンバロ協会会員。(一財)チェンバロ振興財団クープラン理事。現在YouTubeチャンネル「Cembalo チェンバロう!」を開設し演奏動画を配信中。
演奏するチェンバロ
16世紀にいち早く完成されたイタリア様式のチェンバロ。細長く軽やかな胴体を持ち、美しく純化されたチェンバロの原型。
1990年にチェンバロ製作家 故・堀栄蔵氏により製作され、長くコンサートサービス(演奏会への楽器の提供)で使われていましたが、2003年より横浜山手の百段音楽室に置かれ、山手バロッコのアンサンブルやコンサートに利用されている。
様式:イタリアの1600年ごろの作者不詳の楽器をモデルに製作。製作No.181
仕様:1段鍵盤。 8‘ 8’の構成
音域:GG-d’’’
アンサンブル山手バロッコ第129回演奏会
バッハ ナンバーツー〜第2番を集めて〜
Collection of 2nd Pieces of Bach’s Cembalo Works
“洋館で親しむバロック音楽”第129回
プログラム
横浜市イギリス館は、1937年に、英国総領事公邸として建設された由緒ある建物です。このイギリス館の庭園をのぞむ素晴らしいホールで、チェンバロの響きをたっぷりお聴きいただきます。
いにしえのサロンコンサートの愉しみを、「バッハ ナンバーツー〜第2番を集めて〜」と題して、チェンバロを中心に据え、バッハの様々な名曲をその響きとともに味わいます。
♪ ♪ ♪
まずこのコンサートの企画をされた寺村朋子さんに、うかがってみました。
前回の第1回(バッハのナンバーワン)では、チェンバロとの出会い、演奏家になった経緯をお伺いして、中学校の音楽室でのチェンバロとの出会いや、その後のチェンバロの先生との出会いをお話しいただき、バッハの曲は「何度開けても飽きない大切な宝箱」ともお話しいただきました。
ー 第1回(バッハのナンバーワン)のコンサートの手応えと今回の第2回への思いを教えてください。
「ナンバーワンでは、組曲(舞曲)を並べることにより、パターン化されないアイデアに驚かされました。
ナンバーツーは、また違う要素で作られており、このバッハの奥深さを皆様と共有させて頂きたいと思います。」
ー 今回のプログラムでは、2人の息子たちのナンバーツーの曲もお聴かせいただきますが、それも含めて、どのように味わっていただきたいですか?
「親子で同時代を生きていながら、数十年の違いで音楽の変化、雰囲気の違いなどを、味わって頂けましたら幸いです。」
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J.S.バッハ / 4つのデュエットより 第2番 ヘ長調 BWV803
Johann Sebastian Bach(1685-1750) /
Duett No.2 in F-Major
BWV803
1739年にはクラヴィーア練習曲の第3巻を出版しました。パルティータ集でスタートした2集がチェンバロのための曲集でしたが、この第3巻はオルガンのための曲集で礼拝の構成から成り立っていることが特徴です。演奏するデュエット ヘ長調(BWV803)は、この曲集に含まれる4曲のデュエットの第2番です。歯切れのよい2拍子のテーマで始まる、模倣をしながら曲が展開され、最初の部分に戻って曲を閉じます。
J.S.バッハ / イギリス組曲 第2番
イ短調 BWV807
Johann Sebastian Bach(1685-1750) /
English Suite N No.2 in a-minor BWV807
プレリュード- アルマンド – クーラント - サラバンド/サラバンドの装飾 – ブーレI/II - ジーグ
Prélude – Allemande – Courante– Sarabande/ Les agréments de la même Sarabande - Bourrée I/II –
Gigue
ヨハン・ゼバスチャン・バッハは、1685年ドイツのアイゼナハで、音楽家の家系に生まれ、1750年にライプチッヒで亡くなるまで、音楽活動を継続し、バロック音楽の頂点に立つ音楽家とも言われています。
10歳の時に父を亡くし、オールドルフの長兄で音楽家であるヨハン・クリストフ・バッハのもとに引き取られ、鍵盤楽器の演奏法を学び、その後、リューネブルクで学びました。18歳の時には、ヴァイマールの宮廷楽師を経て、アルンシュタットの教会オルガニストに就任しました。4年間のオルガニストとしての活動の記録は少ないですが、4年目の1707年10月に又従妹マリア・バルバラ・バッハと結婚し、その後、ヴァイマール時代の1710年に長男ウィルヘルム・フリーデマンを、1714年に次男カール・フィリップ・エマヌエルという2人の名を残す鍵盤楽器の名手で音楽家となる男の子が生まれました。
1708年23歳の時にはヴァイマールの宮廷オルガニストになり、楽師から1714年には、楽師長に昇格します。ヴァイマールの時代には、イタリア由来の鍵盤楽器のためのトッカータが作曲され、またヴィヴァルディの曲など、当時の新しいスタイルである協奏曲を鍵盤楽器のために編曲・演奏し、その様式を学びました。1717年32歳の時には、ケーテンの宮廷楽長として就任し、音楽好きの殿様のもと、有名なブランデンブルク協奏曲を含む協奏曲、組曲やソナタなどの器楽曲の作曲と宮廷での演奏の充実した期間を過ごしました。
ケーテンの宮廷楽長の時期、最初の曲集であるチェンバロ独奏のための組曲集「イギリス組曲」を作曲しました。フランス様式の曲である組曲に、イタリア由来の協奏曲やドイツのフーガの要素を取り入れた新しい試みの曲集です。
お聴きいただく「第2番 イ短調 BWV807」は、鍵盤用組曲の基本形に従っていて、最初の協奏曲の原理を取り入れた前奏曲につづいて、ドイツの舞曲アルマンド、イタリアの舞曲クーラント、スペインの舞曲サラバンド(装飾と名付けられた変奏付き)が続き、はやりの舞曲を自由に挟み込む部分では、フランスの活発な舞曲ブーレが挿入され、最後は、イギリス由来のジーグで締めくくられます。
なお、イギリス組曲という名称はバッハがつけたものでなく、伝記作者ニコラウス・フォルケルが「ある高貴なイギリス人のために書かれた」と記しているほか、シリーズの前回演奏した第1番の前奏曲のテーマは、ロンドンで活躍したフランス人作曲家 シャルル・デュパールの組曲のジーグのテーマを借用していることなどが、そのイギリスとの関係を示しているようです。
W.F.バッハ/ ソナタ 第2番 イ長調
Fk.8
Wilhelm Friedemann Bach(1710–1784) / Sonata No.2 in A-Major Fk.8
アレグロ- ラルゴ コン テネレッツァ- アレグロ アッサイ
Allegro - Largo
con tenerezza - Allegro assai
バッハの子供のうち、4人の息子が音楽家として、次の時代に父親以上にバッハの間を高めました。長男ウィルヘルム・フリーデマンと次男カール・フィリップ・エマニュエルは、バッハと最初の妻の間に生まれ、父親から鍵盤楽器の演奏や作曲の英才教育を受けました。(本日演奏の組曲も教育目的にも使われました)本日演奏する息子たちの2曲は、父親の死後、1770年代の後半に作曲されたもので、ハイドン、ベートーヴェンにつながる新しい音楽の趣味やフォルテピアノの台頭も感じさせる曲になっています。
W.F.バッハのソナタ 第2番 イ長調 は1779年に出版する計画だった2曲のソナタの1つで、速い、ゆっくり、速いの3つの楽章からなり、シンコペーションの軽やかなリズムと駆け回るパッセージが印象に残る第1楽章、優しく緩やかな第2楽章が続き、最後の第3楽章は、軽快なテーマで始まり、ユニゾンの力強い部分に続き、3連符で駆け巡りながら展開して曲を閉じます。
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J.S.バッハ / フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813
Johann Sebastian Bach / French Suite No.2 in c-minor BWV813
アルマンド - クーラント - サラバンド – エール - メヌエットI/II - ジーグ
Allemande – Courante – Sarabande – Air – Menuet I/II –
Gigue
1720年35歳のバッハは、妻マリア・バルバラを病気で亡くし、翌年、歌手であり音楽家であるアンナ・マグダレーナと再婚しました。この機会に6曲の「フランス組曲」が作曲され、その元となる版は、「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」にバッハの自筆で記入されました。組曲はそもそもフランス由来なので、フランス組曲は、何も言っていないことになりますが、前述のバッハの伝記作者フォルケルも「この曲はフランス趣味で書かれているのでフランス組曲と呼ばれている」と記述しています。イギリス組曲と異なり、前奏曲なしに、舞曲(アルマンド)でスタートし、中間に挿入される当世風の舞曲のバラエティ豊かなこともあり、変化に富み、洒落た曲になっています。お聴きいただく「第2番 ハ短調 BWV813」は、曲集の2曲目として優しく、のびやかな、歌うような曲が連なっており、親しみやすい曲と言えます。楽章は、組曲の定番のアルマンド、クーラント(イタリア風)、サラバンドに続き、当世風のエール、メヌエットが続き、定番のジーグ(イタリア風)で締めくくられます。
C.P.E..バッハ / ロンド 第2番 ト長調 Wq57/3
Carl Philipp Emanuel Bach(1714–1788) / Rondo No.2 in G-Major Wq57/3
ポコ アンダンテ
Poco andante/
C.P.Eバッハのロンド 第2番 ト長調は、1781年に出版された、専門家と愛好者のためのフォルテピアノのためのソナタとロンド(集)の2曲目に収められています。C.P.Eバッハは1779年より鍵盤楽器のソナタ集を出版開始し、人気を呼びました。この曲集は3番目のソナタ集で、ロンドとソナタが対になって3組、計6曲が収められています。このロンドは曲集のなかでは一番コンパクトな曲です。ロンドは無邪気で魅力的なテーマでスタートし、曲が進むにしたがって発展していきます。
J.S.バッハ / パルティータ 第2番ハ短調 BWV826
Johann Sebastian Bach /
Partita No.2 in c-minor
BWV826
シンフォニア- アルマンド – クーラント- サラバンド
– ロンドー – カプリッチョ
Sinfonia – Allemande – Courante – Sarabande – Rondeaux – Capriccio
1723年38歳のバッハは、ケーテンの宮廷に別れをつげ、ライプチッヒの音楽監督に就任しました。新たな環境で教会音楽の作曲と演奏に最初の数年は没頭することになります。1725年に、バッハは新しい鍵盤楽器のための組曲を「パルティータ 第1番 変ロ長調」として出版しました。これは、バッハが初めて出版してその曲を世に問う初めての試みでしたので、自信作だったと思います。1730年まで毎年1曲ずつ出版し、31年には6曲のセットとして出版しました。「クラヴィーア練習曲集・・・・愛好家の心を楽しませるために、ザクセン公およびヴァイセンフェルス公の楽長兼ライプチッヒの音楽監督 ヨハン・ゼバスチャン・バッハが作曲。作品1・・」とタイトルが付けられていて、当時画期的な曲(かつ難曲)として大きな反響を呼んだと記録されています。
演奏する「パルティータ 第2番 ハ短調(BWV826) 」は、1727年に出版されたもので、付点リズム〜アンダンテを経て速いフーガからなる3部分からなる雄大なシンフォニアで始まり、最後はカプリッチョで締めくくる構成となっています。この2つの楽章の間に、定番のアルマンド、クーラント(フランス風)、サラバンドに続き、当世風舞曲のロンドが挟まれています。
たくさんの拍手をいただきましたので、
アンコールにJ.S.バッハ シンフォニア 第2番 ハ短調 BWV788をお聴きいただきます。
ありがとうございました。
参考文献:
1)礒山雅/小林義武/鳴海史生 : バッハ事典、東京書籍(1996)
2)日本チェンバロ協会: チェンバロ大事典、春秋社(2022)
3)C.Wolff / The New Grove Bach Family, W.WNorton & Company (1983)
4)D.Hurwitz / C.P.E. - A listner’s Guide to the other Bach -, Amadeus Press (2016)
5)久保田慶一/ バッハの四兄弟:音楽之友社(2015)
6)金澤正剛/ バッハ:クラヴィーア練習曲集第3巻曲目解説、吉田恵CD解説(2015)
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