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アンサンブル山手バロッコ 第7回演奏会
7th Concert

第7回 2002年3月17日(日) PM2:00開演 横浜 山手234番館 レクチャールーム
2:00 pm 17 March 2002 at Yamate 234 House

古楽器で探るバロック音楽の楽しみ」
"Joy of Baroque Music"

出演 EnsembleYamate-Barocco

わたしたち「アンサンブル山手バロッコ」は、98年、横浜山手の洋館 234番館のリニューアルに行なわれた記念のコンサートをきっかけに、山手在住のリコーダー愛好家 朝岡聡を中心に結成された、バロック時代の楽器(古楽器)を使った演奏団体で、継続的に山手の洋館での演奏活動を続けています。本日の演奏メンバーを紹介します。


  朝岡 聡Satoshi Asaoka(リコーダーRecorder
     慶応大学卒業後、テレビ朝日に入社、95年よりフリーキャスターとして活躍中。慶応バロックアンサンブルでリコーダーを演奏。大竹尚之氏に師事。当アンサンブル主宰。

  曽禰 寛純Hirozumi Sone(フラウト・トラヴェルソFlauto Traverso
     フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを独学で学び、慶応バロックアンサンブルで演奏。カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
  江口 陽子Yoko Eguchi(フラウト・トラヴェルソFlauto Traverso
     フルート演奏を経て、フラウト・トラヴェルソを学ぶ。菊池香苗氏に師事。
  角田 幹夫Mikio Tsunoda(バロック・ヴァイオリンBaroque Violin、ヴィオラ・ダ・ガンバViola da gamba
     慶応バロックアンサンブルでバロック・ヴァイオリンを演奏。独学でヴィオラ・ダ・ガンバを学ぶ。現在、カメラータ・ムジカーレ同人。当アンサンブル発足メンバー。
  渡辺 比登志Hitoshi Watanabe(ヴィオラ・ダ・ガンバViola da gamba
     慶応バロックアンサンブルでチェロを演奏。ヴィオラ・ダ・ガンバを神戸愉樹美氏に師事。当アンサンブル同人。カメラータ・ムジカーレ同人。
  中尾 晶子Akiko Nakao(バロック・チェロBaroque Violoncello
     バロック・チェロを西澤央子氏に師事。モダン、バロック・チェロ両面で活躍中。アンサンブル・マレジェンヌ、カメラータ・ムジカーレ同人。
  脇田 美佳Mika Wakita(チェンバロCembalo    
         チェンバロを岡田龍之介氏に師事。大学卒業後、渡邊順生、曽根麻矢子両氏にレッスンを受け、研鑽を積んでいる。カメラータ・ムジカーレ同人。

古楽器で探るバロック音楽の楽しみ
"Joy of Baroque Music"

アンサンブル山手バロッコの第7回演奏会にようこそおいで頂きました。今回は「古楽器で探るバロック音楽の楽しみ」と題してバロック時代のいろいろな楽器をフィーチャーして、当時のスタイルでお届けします。なお、本コンサートは、2月より3回シリーズで実施した山手234番館市民講師紹介講座「古楽器によるバロック音楽の楽しみ」の姉妹編で、3回の講座で少しずつご紹介した曲目を、今日は音楽中心にたっぷり楽しんでいただこうと企画したものです。  
 本日は、リコーダー、フラウト・トラヴェルソ、バロック・ヴァイオリン、バロック・チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロの編成で、お聴き頂きます。

曲目解説

ジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)  コンセール 第5番
J.P.Rameau / 5th Concert
ラ・マレ - ラ・キュピ - ラ・フォルクレイ


 ラモーは、バロック後期のフランスの鍵盤曲およびオペラ作曲家。本日は、コンセール(室内合奏曲集)第5番をお聴き頂きます。この曲はヴァイオリン(またはフルート)、ヴィオラ・ダ・ガンバを従えて、チェンバロの右手と左手が、独立して書かれています。円熟したフランスのチェンバロ(フランス語でクラブサン)音楽の趣味にかなって書かれており、ヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバは伴奏に廻ることも多い曲です。事実、ラモーによる出版譜の注記では2つの弦楽器なしで演奏できるとしていますし、後年、チェンバロ独奏用にいくつかの曲を編曲し出版したくらいチェンバロが中心で活躍します。曲は、はやい、ゆっくり、はやいの3楽章からなりますが、それぞれラモーと同時代のフランスの名演奏家の名前を冠しており、音によるポートレートともなっています。


ヨハン・セバスチャン・バッハ (1685-1750)   リコーダー、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ヘ長調 BWV528から 
J.S.Bach / Sonata for Recorder, Violin and Basso continuo F-major BWV-528

アレグロ

 この曲は、大バッハのオルガン独奏用トリオソナタ集の中の1曲として現在に伝えられています。オルガン用トリオソナタとは、右手、左手と足で3つのパートを別々に弾く難曲で、長男のウィルヘルム・フリーデマンの教育用に作曲されたと言われています。一部の曲は、もともと室内楽用のトリオソナタを元にオルガン用に編曲したとも考えられており、3つの楽器とチェンバロで演奏しても大変美しく響くので当時から合奏の形で演奏することも多かったはずです。

ジャック・マルタン・オトテール(1680頃〜1761頃)  2本のフルートのための組曲 ロ短調 作品4
J.M.Hotteterre / Suite for two Flutes b-minor Op.4

荘重に/快活に − アルマンド − ロンド − パッサカリヤ

 ジャック・マルタンは、フランスで知られた楽器製作者・演奏家オトテール一族の中でも、最も有名な人物で、若いころローマに留学していたことから、「ローマ人」のあだ名を持って親しまれました。事実、彼の作品はフランスの伝統的な様式の中に、イタリア趣味を巧みに取り入れています。本日演奏する組曲は、当時新進の楽器であったバロックフルートのための最も優れた曲のひとつで、当時のフランスの舞曲を中心に、楽器の特長を生かし、また独特の装飾法(リズムを揺らす、指で音を振るわせるなど)をはっきり記述してあることから当時の演奏技法を理解するのにも役立ちます。ゆっくり−速いのフランス風の序曲で始まり、アルマンド、快活なブレを経て、堂々たるパッサカリア(同じ音形の上につむぎだされる変奏曲)で曲が閉じられます。

ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)  パリ四重奏曲(新しい四重奏曲集)第2番 イ短調
G.Ph.Telemann / Quartett for Flute, Violin, Violoncello and Basso continuo a-minor from "Paris Quartetts"

Allegrement−Flatteusement−Legerement−Vite−Coulant

 テレマンがパリに招聘された折に作曲され、パリのフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロの名手とテレマン自身のチェンバロで演奏された、この四重奏曲は、「パリ四重奏曲」として有名です。自伝「音楽家の栄誉の門」の中で「(パリの名手達による)演奏は宮廷と町の人たちの耳を異常なまでに引きつけたので、しばらくの間、私には大変な栄誉が与えられ、いつでも丁重にもてなされた」と誇らしげに書いています。曲は、フルート協奏曲のような序曲で始まり、各楽器が組み合わさり、微妙な色合いをつむぎ出すいくつかの舞曲が続きます。最後は、フランス趣味のガヴォットのテーマに基づく変奏曲で、チェロ、フルート、ヴァイオリンの順で名人芸を披露したあと、テーマに戻ってこの組曲を閉じます。

ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750) 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
J.S.Bach / Chromatic Fantasy and Fuga  d-minor BWV-903

 バッハは言うまでもなくバロック最大の作曲家ですが、当時はむしろ鍵盤楽器の名手としてヨーロッパ中に知られていました。この曲は、バッハの鍵盤曲の中でも最も有名で、バッハの死後も忘れられずに演奏され続けた曲で、バッハの人並み外れた名手振りと緻密な作曲技法が凝縮されている名作です。後年バッハの息子達と交友関係を持ち、その聞き取りをもとにバッハの伝記を書いたフォルケルは「このひときわ技巧的な作品は、きれいに演奏すれば、あらゆる聞き手に感動を与える」と書き残しています。一説では、フランスのチェンバロの名手マルシャンとのドレスデン宮廷での腕比べに臨み、このテクニックを要する名曲を作曲したとも言われています。曲は、半音階的に走るような曲想と語りかけるような曲想を交互に配した幻想曲で始まり、後半は半音階のテーマが3声部で掛け合う厳かなフーガが徐々に自由な形に変化し、最後には最初の華麗な雰囲気を加えて曲を閉じます。

ヨハン・シェンク(1656-1717頃) 2つのヴィオラ・ダ・ガンバのための組曲からシャコンヌ
J.Schenck / Chaconne from "Suite for two Viola da gamba"

 シェンクは、大バッハの−世代前のドイツのヴィオラ・ダ・ガンバの演奏家・作曲家で、先のラモーの曲でたたえられたフランスの名手 マラン・マレーと並ぶ名手として知られています。この曲は、シェンクが2つのヴィオラ・ダ・ガンバのために書いた組曲集「ラインの妖精」に含まれており、2本のヴィオラ・ダ・ガンバが対等に競い合い、また、対位法(2本のガンバが掛け合う)やガンバの重音奏法による重厚な和音も楽しめます。

ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767) 
ヴォイス・フルート、チェンバロと通奏低音のためのソナタ イ長調 (「Esseruzii Musici」 1738より)
G.Ph.Telemann / Sonata for Voice Flute,Cembalo and Basso continuo A-major from "Esseruzii Musici"

ラルゴ − アレグロ − ラルゴ −ヴィヴァーチェ

 テレマンはハンブルクの音楽監督時代に、商業都市で新たに台頭した商人や貴族の趣味の音楽に対して、曲集の提供を商売として始めました。さまざまな楽器で演奏できる、各国のお国振りや最新流行の舞曲などを取り入れたこの音楽出版「Esseruzii Musici」は大成功しました。本日演奏する曲は、ドイツでは特に好まれたフルートとチェンバロのためにかかれたソナタです。この曲は4つの楽章からなりますが、チェンバロが伴奏でなく、旋律も(右手で)演奏し、フルート、右手、左手の三重奏でかかれている点、一部フルート協奏曲のような扱いをしている点、和音を補うための第2チェンバロを加えた点が特長です。本日はフルートのパートは、同じ音域をもつD管リコーダー(ヴォイス・フルートといいます)で、第2チェンバロはチェロで演奏します。

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