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アンサンブル山手バロッコ 第5回演奏会
5th Concetr

2001年4月15日(日) 午後3時開演 山手234番館 2Fホール
pm3:00 15 April 2001, Yamate 234 House

オリジナル楽器による 「競い合うバロックの響き」
"Baroque Concerted Music with period instruments"

出演:Ensemble Yamate-Barocco

朝岡聡Satoshi Asaoka: お話&リコーダー Recorder
曽禰寛純Hirozumi Sone: フラウト・トラヴェルソ Flauto Traverso
角田幹夫Mikio Tsunoda、瀬尾和美Kazumi Seo: バロック・ヴァイオリンBaroque Violin,
河合順子Junko Kawai: バロック・ヴァイオリンBaroque Violin、バロック・ヴィオラBaroque Viola
中尾 晶子Akiko Nakao: バロック・チェロBaroque Violoncello
和田章 Aquilla Wada: チェンバロ Cembalo 
脇田美佳 Mika Wakita: チェンバロCembalo

「競い合うバロックの響き」

本日はアンサンブル山手バロッコ234のコンサートにおいで頂きありがとうございました。今回は「競い合うバロックの響き」のテーマで今までより少し大編成の曲もお届け致します。  バロック時代は、複数の声部がお互いに独立したメロディーで時に模倣したり、対抗したりする、いわゆるポリフォニーの伝統が作曲の基盤になっていました。フーガ、カノンなどのタイプの曲がこれにあたります。また、バロック時代は別名通奏低音の時代ともいわれ、曲を通じて演奏される低音(通奏低音:通常チェロとチェンバロ)が音楽の基盤と和声を形作り、ヴァイオリンなどのソロの声部を支えたり、競い合ったりします。また、イタリアを発祥の地として協奏曲〔コンチェルト〕ができたのもバロック時代です。協奏曲は1つまたは複数の独奏楽器が、合奏と競い合う形式で、ヴァイオリンや管楽器の名手が輩出したバロック時代には多いに発展しました。また、バッハが1720年頃にそれまで合奏では通奏低音のうら方だったチェンバロを独奏楽器として発展させ、その後のピアノ協奏曲の源ともなったと言われています。
 今回の選曲は、模倣を中心としたカノン、独奏部と低音が競い合うソロソナタ、この低音が進化してもう一声の協奏部をもったオブリガート付きソナタ、そして独奏部と合奏が競い合う協奏曲と、バロック音楽の協・競の世界を中心に構成しました。それぞれの曲で、バロックの楽器がどのように競い合っているかをお聞き頂ければ幸いです。

 

曲目解説

J.C.ノード(1690頃-1762) リコーダー協奏曲 ト長調 作品17-5
J.C.Naudot/ Concerto for Recorder, 2 Violins and Basso continuo G-major Op.17-5

アレグロ ー アダージョ − アレグロ 

 ジャック・クリストフ・ノードはフランスバロックの作曲家で自身も管楽器の名手だったと言われています。そのためか管楽器のための曲を多く残しています。当時のフランスでは、伝統的にConcert〔コンセール〕は室内楽的なしゃれた合奏曲を意味しており、協奏曲はイタリアから輸入された新しい流行でした。この曲は、はやい―ゆっくり―はやいの3楽章で、2つのヴァイオリンと通奏低音で演奏される合奏の間にリコーダーの独奏が繰り返し入る典型的なイタリアの協奏曲の形式となっていますが、メロディーや独奏部の扱いにフランス風のしゃれた味付けがされた曲で、リコーダー奏者にとっては大切なレパートリーになっています。


M.マレ(1656-1728) ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 「マレジェンヌ」 イ長調より
M.Marais/ sonata for Violins and Basso continuo A-major "la Maresienne"
 
やや重くー 軽快に − やや陽気に − サラバンド − きわめて生き生きと − 重々しく − ジーグ 

 マラン・マレはフランスのヴィオラ・ダ・ガンバの名手で、フランス発祥の組曲(踊りの曲の組み合わせ)を多数残しましたが、ノードの曲と同じように流行のイタリア様式を取り入れた曲も残しています。このマレジェンヌはイタリアのソナタ(独奏楽器が低音と競い合う)形式で書かれており、ヴァイオリンと通奏低音(チェンバロとチェロで演奏します)からなるソロソナタです。曲の構成は、イタリアのソナタの形式に、フランス風の踊りの曲(サラバンド、ジーグなど)をまぜた混合趣味の曲に仕上がっています。この曲は、マレにとって自信作だったのでしょう。曲名に自分の名前をつけ、他のフランス風の曲とあわせ曲集として出版しています。本日は、このソナタから抜粋して演奏します。


J.S.バッハ(1685-1750) ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV-1050 より第1楽章
J.S.Bach/ Brandenburg Concerto No.5 D-major BWV-1050 1st Movement

アレグロ

 ヨハン・セバスチャン・バッハはバロック最大の作曲家で、昨年没後250年を迎えましたので、メディアや演奏会で多数取り上げられました。このブランデンブルグ協奏曲は、ブランデンブルク辺境伯に捧げられた事からこの名前を残していますが、もともとバッハは「種々の楽器による6つの協奏曲」と題しています。ブランデンブルク協奏曲は、バロックの協奏曲の最高の傑作で、また、その5番は世界で初めて鍵盤楽器〔チェンバロ〕を独奏楽器にした協奏曲である点が特長になっています。バッハがケーテン公の宮廷楽長だったときに新しい立派なチェンバロを購入した記録が残っており、ヨーロッパ中に名声のとどろく名鍵盤奏者であったバッハがその楽器で自分で演奏するために、フルートとヴァイオリンを従え、チェンバロを独奏楽器に作曲したんだろうと考えられています。事実、本日演奏する一楽章には、3つの独奏楽器が腕前を披露したあと、チェンバロだけで演奏するカデンツァが65小節も組み込まれており、「演奏者バッハに拍手!」の曲作りになっています。 
 


 J.パッヘルベル(1653-1706) カノン ニ長調
J.Pachellbel/ Canon for 3 Violins and Basso continuo D-major 

 パッヘルベルは、バッハの先輩に当たるドイツの作曲家です。本日演奏する曲は「パッヘルベルのカノン」として種々の編成で親しまれています。曲は8つの音からなる低音が繰返し演奏される上に、全く同じメロディーを少しづつ遅れて3回重なって見事な音楽を形作っています。原曲は、このカノンのあとに短い踊りの曲ジーグが対に置かれていますが、本日は有名なカノンの部分だけを、オリジナルの楽器編成(3つのヴァイオリンと通奏低音)でお聞きいただきます。


J.S.バッハ(1685-1750) ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ へ短調 BWV-1018
J.S.Bach/ Sonata for Violin and Cembalo f-minor BWV-1018 

ラルゴ − アレグロ − アダージョ − ヴィヴァーチェ

 バッハは、チェンバロ協奏曲で時代のさきがけとなっただけでなく、室内楽〔ソナタ〕の分野でも新しい取り組みをしました。それはオブリガート付きソナタと呼ばれる形式で、ソロ楽器〔この曲ではヴァイオリン〕とチェンバロの右手がメロディーを演奏し、チェンバロの左手が低音をひき全体を支えるものです。バッハはチェンバロが伴奏でなく、ソロ楽器と対等に競い合うこの形式がお気に入りだったらしく、フルートなど他の楽器のためにも同種の曲を残しています。このヴァイオリンソナタは、バッハがケーテン公の宮廷楽長をしていたときに作曲された6曲のソナタの5番目で、へ短調というバッハが瞑想的な曲想を書くときに使う調性で書かれており、深い玄人好みの仕上がりになっています。曲は、一部の譜面では「嘆きの歌」と題された1楽章をはじめ、先に述べた3つの声部が競い合う形式になっていますが、3番目の楽章は、チェンバロが分散した和音を奏でる上を、ヴァイオリンが和音を弾く、めずらしい曲想になっています。


G.P.テレマン(1681-1767) リコーダー、フルートと弦楽合奏のための協奏曲 ホ短調
G.Ph.Telemann/ Concerto for Recorder, Flute and String Orchestra e-minor
 

ラルゴ − アレグロ − ラルゴ − プレスト

ゲオルグ・フィリップ・テレマンは、ドイツバロック最大の流行作曲家で、あらゆるジャンルのありとあらゆる楽器の組み合わせでの作品を数多く残しています。しかし、縦吹きのフルート(リコーダー)と横吹きのフルート(フルート・トラヴェルソ)のための 協奏曲は大変珍しく、貴重なレパートリーとなっています。曲は、ノードやバッハのブランデンブルク協奏曲の3楽章形式とは異なり、ゆっくり・はやい・ゆっくり・はやいの四楽章形式になっています。それぞれの楽章は、合奏部分と独奏部分が繰り返しから構成されていますが、華やかな掛け合いを中心としたギャラント様式(2楽章、3楽章)や、民謡風のテーマの採用(4楽章)など、テレマンらしい演奏しても、聴いても楽しい楽曲に仕上げられています。

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