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アンサンブル山手バロッコ 第4回演奏会
4th Concert

2000年6月25日(日) 午後2時開演 山手234番館 2Fホール
pm2:00 25 june 2000, Yamate 234 House

オリジナル楽器による「バッハ家の休日」(J.S.バッハ没後250年記念演奏会)
"Bach's Family Concert"

出演 EnsembleYamate-Barocco
    朝岡聡Satoshi Asaoka: お話&リコーダー Recorder
    曽禰寛純Hirozumi Sone: フラウト・トラヴェルソ Flauto Traverso
    大沢信行Nobuyuki Ohsawa: バロック・ヴァイオリン Baroque Violin
    角田幹夫Mikio Tsunoda: ヴィオラ・ダ・ガンバ Viola da gamba
    河合順子Junko Kawai: バロック・ヴィオラ Baroque Viola
    渡辺比登志Hitoshi Watanabe: ヴィオラ・ダ・ガンバ Viola da gamba
    和田章 Aquilla Wada: チェンバロ Cembalo

 

バッハ家の休日

バッハ(1685-1750)は、ドイツのアイゼナッハに生まれ、ちょうど250年前にライプチッヒで亡くなったバロック最大の作曲家です。今年は没後250年ということで、この偉大なる作曲家バッハのコンサートや記念式典が、世界中で数多く行われています。
 バッハは当時は、オルガン、チェンバロ演奏の大家としてヨーロッパ中に知られている名演奏家でした。2度の結婚で、たくさんの子供に恵まれ、子供たちも何人もの有名な音楽家になりました。バッハも自慢げに「子供たちは、皆生まれながらの音楽家で...」と話しているように、ライプチッヒのトーマス教会の音楽監督時代には、ソプラノ歌手でもあった2度目の奥さんのアンナ・マグダレーナと成長した子供たちや多くの弟子で、家庭音楽も楽しんでいたことでしょう。また、バッハの高名を頼って、ヨーロッパ各地の名演奏家も頻繁にバッハ家に訪れていたようですので、バッハとその人たちとの共演する家庭音楽会は本当に贅沢な時間だったのでしょう。音楽室に飾られたいかめしい肖像画やミサ曲や受難曲などの大曲から想像される教会音楽家の世界以外に、家庭音楽などのくつろいだ音の世界もバッハを代表するもうひとつの顔なのだと思います。事実、バッハは週末にコーヒーハウスで開かれる公開演奏会を主催し、音楽好きの大学生やバッハの弟子、息子たちを集めた楽団「コレギウム・ムジクム」を指揮して長くライプチッヒ市民を楽しませました。そこでは、きっと肩肘を張らないバッハのもうひとつの顔、バッハ家の休日の雰囲気が感じられたのではないでしょうか。
 本日は、「バッハ家の休日」と題して、ライプチッヒ時代のバッハ家でひょっとしたら聴かれたのではないかという曲を選んで、当時のスタイルで、お届けいたします。
 さあ、タイムカプセルにのって、バッハ家を訪問してみましょう…

バッハ家の肖像画(といわれている)。左端がバッハ。

曲目解説

リコーダー,ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV-525
J.S.Bach / Sonata for Recorder, Violin and Basso continuo G-major BWV-525

速い(指定なし)ーゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)

 この曲は、オルガン独奏のためのトリオソナタ集の1曲として現在に伝えられています。オルガンのためのトリオソナタとは、右手、左手と足で3つのパートを別々に弾く難曲で、長男のウィルヘルム・フリーデマンの教育用に作曲されたと言われています。一部の曲は、もともと室内楽用の(3つの楽器の)トリオソナタを元にオルガン用に編曲したとも考えられており、3つの楽器とチェンバロで演奏しても大変美しく響くので当時から合奏の形で演奏することも多かったはずです。本日は、右手をリコーダー、左手をヴァイオリン、足をヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロ、と4人がかりでバッハの長男に挑戦です。
 曲は、速い−ゆっくり−速いの3つの楽章からなっています。楽しげな曲想を追いかけながら右手と左手がからみあう第1楽章、イタリアのゆっくりした舞曲(シシリアーノ)によるしっとりした第2楽章につづき、踊り跳ねるような第3楽章で軽快に曲をしめくくります。

フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ト長調 (ソナタ第1番) BWV-1027
J.S.Bach / Sonata for Flute, Viola da gamba and Basso continuo G-major BWV-1027

ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ・マ・ノン・タント)ーゆっくり(アンダンテ)−速い(アレグロ・モデラート)

バッハは当時、徐々にチェロにその座を取って代わられつつあったヴィオラ・ダ・ガンバのために3曲のソナタを残しています。自身演奏したかは定かでありませんが、楽器の特性やテクニックについて良く知っており教会カンタータや受難曲でここぞという場所でヴィオラ・ダ・ガンバの音色や表現を使っています。(特にマタイ受難曲のアリア「来るのだ、甘い十字架よ、と私は言おう」はフランスで円熟したヴィオラ・ダ・ガンバの最高のテクニックを駆使して書かれています。) 
 この3曲のソナタが誰のために、どのような機会に作曲されたかは良くわかっていませんが、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの右手が2つの上声部を、チェンバロの左手がバス声部を演奏する、バッハが時代に先駆けて作曲したヴァイオリン・ソナタやフルート・ソナタと同じ形式になっています。3曲ともに他の曲をヴィオラダガンバ用にアレンジしたとも考えられています。事実、この第1番は、2つフルートのための版も残されています。本日はチェンバロの右手の声部をフルートで演奏します。バッハの息子ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルトはフルートが上手かったといわれています(惜しくも若くして亡くなりました)ので、ひょっとしたらこのような組み合わせで家庭音楽を楽しんでいたかもしれませんね。
 曲は、ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ・マ・ノン・タント)−ゆっくり(アンダンテ)−速い(アレグロ・モデラート)の四楽章からなります。



ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 二長調 (ソナタ第2番)  BWV-1028
J.S.Bach / Sonata for Viola da gamba and Cembalo D-major BWV-1028

ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)ーゆっくり(アンダンテ)−速い(アレグロ)

 この第2番のソナタは、3曲中で唯一、ヴィオラ・ダ・ガンバらしい重音奏法がある、チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバと別々のソロ部分を持っている、低音の第7弦目を追加した円熟期の楽器を想定している、など、このヴィオラ・ダ・ガンバを意識した構成になっています。バッハ家を訪れた名ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者との共演を契機にできたのかも知れませんね。
 本日は、オリジナルの編成であるヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロでお送りします。曲は、一番と同じに、ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)−ゆっくり(アンダンテ)−速い(アレグロ)の四つの楽章からなります。特に最終楽章では、チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバがそれぞれ特長のある独奏を交代で披露し、この曲を閉じます。


ヴィオラとチェンバロのためのソナタ ト短調 (ソナタ第3番)  BWV-1029
J.S.Bach / Sonata for Viola da gamba and Cembalo g-minor BWV-1029

速い(ヴィヴァーチェ)ーゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)

 この第3番のヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタは、3曲中でただひとつ、協奏曲の原理を室内楽に取り入れた意欲作であり、たいへん入念に書かれ、バッハ特有の雰囲気を明確に持っているので、バッハの室内楽の中でも名曲として親しまれています。ヴィオラ・ダ・ガンバらしい重音奏法がなく、別の楽器でも演奏効果があるので、チェロ・ピッコロ(小型のチェロ)やヴィオラでの演奏も盛んに行われています。本日は、バロック・ヴィオラとチェンバロで演奏します。
 バッハ自身はヴィオラを弾き、この楽器を愛したといわれていますので、バッハがヴィオラ、息子がチェンバロでの演奏もひょっとしたらあったかもしれません。なお、有名なブランデンブルグ協奏曲第6番は、2つのヴィオラが大活躍します。バッハは、自分が大好きな楽器で、普段あまり注目されない縁の下の力持ち的なヴィオラを桧舞台にあげ、「立派な独奏ができるんだぞ」と言わせたかったのかもしれません。このソナタ3番と共に、ヴィオラ奏者の大切なレパートリーになっています。
 曲は4楽章構成の第1番、2番とは異なって、バロック時代の協奏曲の定番である3楽章構成、つまり、速い(ヴィヴァーチェ)−ゆっくり(アダージョ)−速い(アレグロ)の三つの楽章からなります。



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